禁断介護 老いた木に咲く若花

ニッチ

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最終話 狂い咲き

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 網戸の隙間から入り込む秋風に、微かな金木犀キンモクセイの香りが宿っていた。二階の自室にて机へ向かう私の、ショートポニーテールがそっと揺れる。
 白のの私は、書き終えたB5の日記帳をそっと閉じて、そのタイトルへ目をやる。三冊目になるそれは、お爺ちゃんと私のネットリで濃密な甘い思い出が、たくさん詰まっていた。

「もう八ケ月か。涙も枯れちゃったなぁ」

 ――私が高校二年生になった春ごろ、お爺ちゃんが亡くなった。平日のお昼、自宅の階段を踏み外して転落して、頭を打ったのが原因だった。
 亡くなったと聞いた私は、処女喪失の時よりも激しく強い痛みで、心身がバラバラになりかけた。同時に、ことに、改めて気づかされた。性的関係を結んだ中三の秋の日から丸二年、性欲だけの繋がりと思っていたけど、心まで癒着ゆちゃくしていたことを、その激痛が教えてくれた。
 誰よりも悲しむ私に、親戚の皆から同情が寄せられる中、お爺ちゃんが亡くなった一週間後くらいだった。お義母さん達で二階の遺産整理をしていると、色んな書類がわんさか現れた。立ち会っていなかったから、あまり詳しくは知らないけど、不動産関係の権利書や借地件、有価証券、社債や手形なんかの、色褪せた証書だったらしい。
 現金とかはほぼなくて、しかも土関係地だって七割はあまり地価が無かったらしい。けど、一つか二つは狭いけど都心の重要な土地だったみたいで、ちょっと女子高生には口にできない時価だったみたい。もちろん相続税という形で半分近くは国のお金になるみたいだけど、それでも全部合わせれば、億? に届くとかなんとか。

「お爺ちゃん。お金持ちだったんだね」

 問題はここからで、一緒に出て来た遺書について、『全ての相続において、村居花梨を受取人とする』みたいな内容の公正証書遺言? なる紙が、昔馴染みの弁護士さんの元で作成されていたのだった。家族も親戚のみんなも目を丸くする中、お父さんが『骨肉の争いになるかも』って不安気に言っていた。
 けど、悲しみを引きずっていた私はそれどころじゃなく、お爺ちゃんの使っていた下着や肌着だけをこっそり隠れ集め持って、ただ泣くだけだった。
 でも結局、相続について親戚からの裁判みたいな展開にはならず、相続することになった。というのも、私が二年弱もの間、献身的な介護? をしたというのと、という、よくわからない理由で。

「――まぁ、お金も大事だけどさ」

 そう言って、服の下端をめくり上げる。キチキチで透ける赤いブラとパンティは、いわゆるセクシーランジェリーなる下着だった。お爺ちゃんが喜ぶかなと買って身に着け、何度もたのしんだ大人の下着だった。
 ――そうそう。お爺ちゃんが亡くなってから、寂しさをまぎらわせるために、学校の先輩や合コンで知り合った男子と一度だけエッチした。でも、お爺ちゃんとシタみたいな心地よさや興奮からは程遠く、その一回きりだった。私はスケベだけど、見境なくのセックスが好きなのじゃなくて、お爺ちゃんとのセックスが好きだったと、そこでも気づかされちゃった。

「くしゅん! ……窓しめよ」

 初めてエッチした日も、肌寒い夜だったなぁ。そんなことを考えつつ、自分の皮膚を眺めた。どこもかしこも、お爺ちゃんの指や唇、舌やオチンチンが触れた私の身体。
 そっと左手を伸ばして、机の上のぬるくなったココアを一口。そして、そして右手で――
 ドクン。
 お爺ちゃん以外とは避妊具ゴムをしていたから、間違いなかった――。
 妊娠が隠せなくなってきた夏の終わりに、学校へは休学届を提出した。お父さんやお義母さんへの説明でも、
 困惑する二人だったけど、最近は似たニュースもたまに聞いたりしてか、『パパが誰かは黙っていてもいいし、産みたいなら産んでいいから』って言ってくれた。多分、彼氏とか同学年の男子に妊娠させられたと思っているっぽかった。
 だましているみたいで申し訳ないと思いつつ、お腹を優しく抑える。最近はたまに蹴ったりして、とっても元気なのが嬉しかった。

「ママはずっと傍にいるからね……」

 早く早く会いたいなぁ。だってこの子の半分は、大好きな大好きな、私のお爺ちゃんなんだもん。
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