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五本目 代償と負債 ★☆☆
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「幸くん。どうかした?」
「え? あ、いや。なんでもない、よ」
……お義姉さんと抱き合った三日後の夜、寝室でベッドに腰を掛けていた。水玉模様の寝間着姿のカナちゃんは、携帯をラックの上に置いた。
「そう? 一昨日くらいから、ボーッとしていることが多い気がして」
グレーのタンクトップに短パンの僕は、どうも窓から外の暗闇を、ジッと眺めていたみたいだった。
――理由はもちろん、お義姉さんとの情事についてだった。日中なんかの仕事中ですら、休憩時にはつい思い出しては、罪悪感を振り払い、しかも股間を脱力させるのに苦労していた。
燃え盛ったみたいなあの日、夜明けまで肌を重ね擦って濡らし合った後、お義姉さんはタクシーにて帰宅した。僕の方は、疲労や緊張に酔い、何より罪悪感と快感の余韻にもみくちゃにされ、まるで淫夢に包まれたみたいに、泥のように眠った。それは同時に、カナちゃんの顔をまともに見られない日々の始まりだった。
そして気になるのはあの日以降、お義姉さんから一切の連絡が無くなった。自分から連絡を取ろうものなら、浮気のことで頭がいっぱいになって、意味不明な連絡をしてしまいそうで怖かった。
そもそも、これはまごう事なき浮気、いや不倫であり、僕は越えてはいけない一線を越えてしまったのだ。お義姉さんがカナちゃんにバラせば、僕の全てが終わる。今更ながら、その代償の大きさと、負債の重さに怯える。けど結局は、自分の保身だけを考える、ただの卑怯者だった。
「――ねぇ、幸くん」
それにしてもなぜ、お義姉さんは暴露しないのだろう。快楽主義者のあの女性が、どうして? 超加虐者なお義姉さんのことだから、逃げようのない状態の僕を想い、愉しんでいるとか? それならその様子を見に、一度くらい家に来てもおかしくはない。
ギュッ。
「! か、カナちゃん?」
右腕を抱きしめ引っ張られて、思わず向き直る。無邪気な妻からのスキンシップは、逆に冷たい自責の念を生み出した。まるで脊髄の中が冷えるみたいな、五感が鈍るような奇妙な感覚がした。
「きょ、今日さ。そのぉ――久々にしない?」
恥ずかしそうに前髪の隙間から僕を覗き込んでくる。
……正直、今はカナちゃんを正視するのすらできないくらいの精神状態で、ご勘弁願いたかった。
けど、申し訳ないと本当に思うなら、むしろ彼女の求愛を受け入れるべきでは? そう自分勝手に心を整理した。
「(どうであれ最低だけど)う、うん。もちろん」
僕が両腕でぎこちなく抱き締めると、小柄なカナちゃんも、顔や前半身を僕の身体に擦り付けてくる。お義姉さんの時とは全く異なる、穏やかなスキンシップだった。
「カナちゃん。チューするね」
「うん」
そっと唇を重ねる。お義姉さんのより少し小さく、濡れがおとなしい唇へ。しばらく繰り返した後、舌を入れようとする。
チュピ。
――けどカナちゃんは前歯を閉じたままで、舌を絡めるみたいな深いディープキスへは発展せず、唇をそっと離していった。
「じゃ、じゃあ触るね」
「いいよ」
パジャマのボタンを外して、薄緑のブラジャーも脱がせる。小振りなオッパイの中央には、小指くらいの色素の薄い乳首がある。
ついついお義姉さんのと見比べてしまい、質感やサイズ感では劣ると感じてしまう。今日まで胸の大きさなんかで、こんな不満を抱くことはなかったのに……。
「ジッと見られたら恥ずかしいよ~」
! 僕はぼやけた表情を隠しつつ、そういうプレイと偽りながら、右側の乳首を口に含む。
ロレ、チュブ。
軽く吸いつつ、舌で乳輪をなぞり舐める。口内へ含んでは、口全体で吸っていく。けど小さな乳首は、吸いごたえが物足りなくて――。
「ッ。ゆ、幸くん。ちょっ、痛い」
早く硬くさせようと、つい力みすぎてしまう。
「チュポ――ご、ごめん」
ううん、と首を振るカナちゃんへ、目で謝る僕は、焦りつつ服や下着を脱ぐ。いつもと違いすぎる夫婦間のセックスに戸惑いながら、カナちゃんの下半身へ指先を伸ばす。
「下も脱がすよ」
「えぇ? 恥ずかしいから自分で脱ぐって(笑)」
「そ、そうだね……」
背中をこちらへ向けて脱衣し始めて、やがて薄緑の一般的なパンツ一枚になる。こうやってボディラインを見ると、腰のくびれなんかもあんまりないんだ。
パンツも脱いでもらうと、あまり手入れしていない、まぁ普通の陰毛が現れる。
「(初めての時は、何にでも興奮したのになぁ)――じゃあ、舐めるね」
ベッドの上で四つん這いになり、顔を近づけると、カナちゃんは股をサッと閉じた。
「い、いやいや。な、舐められるなんて恥ずかしいからヤメてって」
左手で口を隠すカナちゃんは、右手で手を振る。あれ、前戯でクンニしたことなかったっけ?
「どうしたの幸くん。いつものエッチと、なんか違うよ?」
ドキッ。
お義姉さんとの溶け合うようなセックスが、瞬間回想して言葉に詰まる。
「――あ、いや、その。マンネリ防止のためだよ」
裸のままベッドの上にて頭をかく自分自身が、ひどく情けなく思えた。何より、セックスしているというよりは、夫婦間会話の延長のようにすら感じた。
「ふ~ん。でも今日はいつも通りにお願いしていい?」
うん、以外に選択肢の無い僕は、もう一度カナちゃんを抱き締める。唇と頬に軽くキスして、股間の小陰唇部分を人差し指の腹でそっと撫でる。
十分くらい続けてから、膣口を割って指先を差し込み、濡れ具合を確認する。
「んんっ」
いつも通りの表情で目をつむるカナちゃんの肩へ手を回しつつ、おそるおそる指を膣内へ埋め込んでいく。第一関節が入ったくらいで、膣の内側を軽く擦り撫でる。
「……えと。もう少し、上で」
「あ。そ、そうだったね」
カナちゃんは痛がりやすいから、時間をかけて緩やかに手マンする必要があった。Gスポットの辺りを指の腹で刺激したいけど、爪を切り忘れていて、やたら時間がかかってしまった。
クチュ、クチ。
さらに五分ほどで、水音がしてくる。少しずつ奥へと――。
「痛っ」
第二関節が入った辺りでストップが入る。ゆっくりと抜いて、一つ前の所の刺激に戻ろうとするけど、もう僕の方が萎え気味だった。
「幸くん?」
「え?」
「その。今日は男性器が元気ないな~って」
そっか。男の方が萎えるとか、女性からしたらあんまりピンと来ないかもしれないな。
「(でも今日は、ドロップアウトしたらダメだ)ご、ごめんごめん。続けるよ?」
手マンを再開するけど、ずっと人さし指だから疲れてくる。中指に変えたいけど、指に付いた分だけ愛液が減ってしまうから、疲れながらもそのまま続ける。
クチ。ピチ。
「……」
無言で目をつむるカナちゃんへキスするけど、それだけだった。頭でチラつくお義姉さんとの性行為が、どうしてもカナちゃんとの夫婦生活を貶める。
――いや、そんな言い方はおかしい。僕が一時の欲望に負けて、カナちゃんを裏切ったのであり、当然の代償だ。
「疲れてるの?」
パチリと目が開くカナちゃんは、何かしらの違和感を感じているみたいだった。
「あ、っと。その」
そもそもこんな精神状態で続ける図々しさも性欲も、僕なんかにあるわけがなかった。『明日のプレゼンが気になって』なんて嘘の上塗りもまた、ためらわれた。
……結局その日は白けたムードのまま、中折れすらできずに終わってしまった。特に不審がっていない様子のカナちゃんが横になる中、僕は人さし指の愛液を、安物のティッシュで拭いた。
「え? あ、いや。なんでもない、よ」
……お義姉さんと抱き合った三日後の夜、寝室でベッドに腰を掛けていた。水玉模様の寝間着姿のカナちゃんは、携帯をラックの上に置いた。
「そう? 一昨日くらいから、ボーッとしていることが多い気がして」
グレーのタンクトップに短パンの僕は、どうも窓から外の暗闇を、ジッと眺めていたみたいだった。
――理由はもちろん、お義姉さんとの情事についてだった。日中なんかの仕事中ですら、休憩時にはつい思い出しては、罪悪感を振り払い、しかも股間を脱力させるのに苦労していた。
燃え盛ったみたいなあの日、夜明けまで肌を重ね擦って濡らし合った後、お義姉さんはタクシーにて帰宅した。僕の方は、疲労や緊張に酔い、何より罪悪感と快感の余韻にもみくちゃにされ、まるで淫夢に包まれたみたいに、泥のように眠った。それは同時に、カナちゃんの顔をまともに見られない日々の始まりだった。
そして気になるのはあの日以降、お義姉さんから一切の連絡が無くなった。自分から連絡を取ろうものなら、浮気のことで頭がいっぱいになって、意味不明な連絡をしてしまいそうで怖かった。
そもそも、これはまごう事なき浮気、いや不倫であり、僕は越えてはいけない一線を越えてしまったのだ。お義姉さんがカナちゃんにバラせば、僕の全てが終わる。今更ながら、その代償の大きさと、負債の重さに怯える。けど結局は、自分の保身だけを考える、ただの卑怯者だった。
「――ねぇ、幸くん」
それにしてもなぜ、お義姉さんは暴露しないのだろう。快楽主義者のあの女性が、どうして? 超加虐者なお義姉さんのことだから、逃げようのない状態の僕を想い、愉しんでいるとか? それならその様子を見に、一度くらい家に来てもおかしくはない。
ギュッ。
「! か、カナちゃん?」
右腕を抱きしめ引っ張られて、思わず向き直る。無邪気な妻からのスキンシップは、逆に冷たい自責の念を生み出した。まるで脊髄の中が冷えるみたいな、五感が鈍るような奇妙な感覚がした。
「きょ、今日さ。そのぉ――久々にしない?」
恥ずかしそうに前髪の隙間から僕を覗き込んでくる。
……正直、今はカナちゃんを正視するのすらできないくらいの精神状態で、ご勘弁願いたかった。
けど、申し訳ないと本当に思うなら、むしろ彼女の求愛を受け入れるべきでは? そう自分勝手に心を整理した。
「(どうであれ最低だけど)う、うん。もちろん」
僕が両腕でぎこちなく抱き締めると、小柄なカナちゃんも、顔や前半身を僕の身体に擦り付けてくる。お義姉さんの時とは全く異なる、穏やかなスキンシップだった。
「カナちゃん。チューするね」
「うん」
そっと唇を重ねる。お義姉さんのより少し小さく、濡れがおとなしい唇へ。しばらく繰り返した後、舌を入れようとする。
チュピ。
――けどカナちゃんは前歯を閉じたままで、舌を絡めるみたいな深いディープキスへは発展せず、唇をそっと離していった。
「じゃ、じゃあ触るね」
「いいよ」
パジャマのボタンを外して、薄緑のブラジャーも脱がせる。小振りなオッパイの中央には、小指くらいの色素の薄い乳首がある。
ついついお義姉さんのと見比べてしまい、質感やサイズ感では劣ると感じてしまう。今日まで胸の大きさなんかで、こんな不満を抱くことはなかったのに……。
「ジッと見られたら恥ずかしいよ~」
! 僕はぼやけた表情を隠しつつ、そういうプレイと偽りながら、右側の乳首を口に含む。
ロレ、チュブ。
軽く吸いつつ、舌で乳輪をなぞり舐める。口内へ含んでは、口全体で吸っていく。けど小さな乳首は、吸いごたえが物足りなくて――。
「ッ。ゆ、幸くん。ちょっ、痛い」
早く硬くさせようと、つい力みすぎてしまう。
「チュポ――ご、ごめん」
ううん、と首を振るカナちゃんへ、目で謝る僕は、焦りつつ服や下着を脱ぐ。いつもと違いすぎる夫婦間のセックスに戸惑いながら、カナちゃんの下半身へ指先を伸ばす。
「下も脱がすよ」
「えぇ? 恥ずかしいから自分で脱ぐって(笑)」
「そ、そうだね……」
背中をこちらへ向けて脱衣し始めて、やがて薄緑の一般的なパンツ一枚になる。こうやってボディラインを見ると、腰のくびれなんかもあんまりないんだ。
パンツも脱いでもらうと、あまり手入れしていない、まぁ普通の陰毛が現れる。
「(初めての時は、何にでも興奮したのになぁ)――じゃあ、舐めるね」
ベッドの上で四つん這いになり、顔を近づけると、カナちゃんは股をサッと閉じた。
「い、いやいや。な、舐められるなんて恥ずかしいからヤメてって」
左手で口を隠すカナちゃんは、右手で手を振る。あれ、前戯でクンニしたことなかったっけ?
「どうしたの幸くん。いつものエッチと、なんか違うよ?」
ドキッ。
お義姉さんとの溶け合うようなセックスが、瞬間回想して言葉に詰まる。
「――あ、いや、その。マンネリ防止のためだよ」
裸のままベッドの上にて頭をかく自分自身が、ひどく情けなく思えた。何より、セックスしているというよりは、夫婦間会話の延長のようにすら感じた。
「ふ~ん。でも今日はいつも通りにお願いしていい?」
うん、以外に選択肢の無い僕は、もう一度カナちゃんを抱き締める。唇と頬に軽くキスして、股間の小陰唇部分を人差し指の腹でそっと撫でる。
十分くらい続けてから、膣口を割って指先を差し込み、濡れ具合を確認する。
「んんっ」
いつも通りの表情で目をつむるカナちゃんの肩へ手を回しつつ、おそるおそる指を膣内へ埋め込んでいく。第一関節が入ったくらいで、膣の内側を軽く擦り撫でる。
「……えと。もう少し、上で」
「あ。そ、そうだったね」
カナちゃんは痛がりやすいから、時間をかけて緩やかに手マンする必要があった。Gスポットの辺りを指の腹で刺激したいけど、爪を切り忘れていて、やたら時間がかかってしまった。
クチュ、クチ。
さらに五分ほどで、水音がしてくる。少しずつ奥へと――。
「痛っ」
第二関節が入った辺りでストップが入る。ゆっくりと抜いて、一つ前の所の刺激に戻ろうとするけど、もう僕の方が萎え気味だった。
「幸くん?」
「え?」
「その。今日は男性器が元気ないな~って」
そっか。男の方が萎えるとか、女性からしたらあんまりピンと来ないかもしれないな。
「(でも今日は、ドロップアウトしたらダメだ)ご、ごめんごめん。続けるよ?」
手マンを再開するけど、ずっと人さし指だから疲れてくる。中指に変えたいけど、指に付いた分だけ愛液が減ってしまうから、疲れながらもそのまま続ける。
クチ。ピチ。
「……」
無言で目をつむるカナちゃんへキスするけど、それだけだった。頭でチラつくお義姉さんとの性行為が、どうしてもカナちゃんとの夫婦生活を貶める。
――いや、そんな言い方はおかしい。僕が一時の欲望に負けて、カナちゃんを裏切ったのであり、当然の代償だ。
「疲れてるの?」
パチリと目が開くカナちゃんは、何かしらの違和感を感じているみたいだった。
「あ、っと。その」
そもそもこんな精神状態で続ける図々しさも性欲も、僕なんかにあるわけがなかった。『明日のプレゼンが気になって』なんて嘘の上塗りもまた、ためらわれた。
……結局その日は白けたムードのまま、中折れすらできずに終わってしまった。特に不審がっていない様子のカナちゃんが横になる中、僕は人さし指の愛液を、安物のティッシュで拭いた。
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