おぞましい治療

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エピローグ 転院

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「あっ、んっ、あ!」

 今日はB棟の21にて、気持ちのイイ汗をかいていた。当室の患者様は二物にもつの症状があり、頭部と男性器を二つお持ちであった。そのため両乳首での乳吸いを受け持ちつつ、女性器オマンコ肛門アナルでの挿入セックスにて恥療中ちりょうちゅうであった。

「ふぁ、んん!」

 栗色の髪を振り乱し、オッパイに吸い付く岩肌みたいな頭を優しく抱きしめる。正常位にて、岩のように硬いオチンコを挿し込まれるつど、快感いたみで喘ぎ声があふれちゃう。
 ヴヴ、ヴヴヴ。
 良いところで、架台に乗せていた電子パットが強制的に開いて通話状態になる。院長ね。

伊美原いみはら看護師長。今いい?」

 必死に乳吸いする患者様の頭部を、抱き締めている片方の手を離して、音声部分を接続させる。
 パン、ズニュニョ、パン!

「――あら。深夜こんなじかんまで業務?」

 若くて張りのある女性の声が耳に入る。

「なん、ですっ、かぁ!」

 ゴリュリュ。
 んあんっ。こっちに集中しろとばかりに、オマンコの奥までねじり込まれて、タメ息が出ちゃう。カチコチの硬くなった乳首を歯で擦られて、んもぅ、最高。

「だっ、てぇ! あたし一人で、全員をっ、てるんですものぉ!」

 あぐっ。肛門が拡張されては収縮するこの感覚、オマンコとは一味違うのっ。

「ハァ。いい加減、バイトも含めて片っ端からD棟へ送るのは止めたら? 職員候補を探すこっちの身にもなってよ」

 パン、ズンチョ。パンッ、グヌチョ。

「んぁ――い、ん長。患者様の――ふあっ――前、ですよぉ」

 ジュボロア。充血した乳首から口を離したかと思うと、硬い舌がねじ込まれて、恋人みたいなディープキスをする。

「幸せそうな顔して……とりあえず、後でかけ直して」

「ふぁ――いいっ」

 二人きりになったことで、再び愛欲のまま患者様を慰撫いぶし続ける。口も、乳首も、脇も、手も、オマンコも、肛門も、脚も全て使ってご奉仕を繰り返す。半刻ほどで、膣内および肛門内にて吐精してもらった。溜まりに溜まってたみたいで、体内も表皮も灰色の精液で染め上げられちゃった。後で避妊剤ピル飲んでおかないとね。

 * * *

 看護師長室へ戻って軽くシャワーを浴びてリビングへ向かう。バスタオルだけを羽織って、バカラのグラスを取り出してガラステーブルへ置く。十五年以上熟成させたスコッチの水割りに唇をつけつつ、院長へリダイヤルをする。

「お待たせしました。院長」

 画面に映るのは、研究所らしい設備を背景に、シルクの寝間着に身を包み、若くて美しく、また知的な雰囲気をまとう早美サミ院長であった。ちなみに早美は名前で、姓の方は知らなかった。年齢については、どんなうがった見方をしても、三十歳手前にしか見えない彼女は、実際の年齢は不明だった。

「遅くに悪いわね。――研究データの方はどう?」

「先月に送った報告書レポート以上のことは特にございません。不活性化の問題については、DNAというよりはRNAとの関係性の方がまだ説明がつきそうです。ただ、受容器レセプトにおける特異な動きの検証については、被検体が耐えられず――」

 遺伝子とは、神が人類にのこした設計図だと、誰かが言った。私はむしろ図面の破片と思っている。どちらであれ、正しく組み合わされば正しい生物が産まれ、誤って組み合わさればだけのこと。
 倫理的にとかどーこー言っていては、永劫えいごう神にはなれない。もっとも、神になりたいわけではないけど、結果的に神になるのかもしれない。

「……ハァ。これだけがんばっても、老化の停滞、女体化、性的特長の増進、くらいの副産物しか得られない。真理には程遠いわね」

「十分すごいと思いますけど」

「適正する遺伝子層の幅が狭すぎるのよ」

 悩ましく息をはく院長は、熱心で頭も良く、また冷徹れいてつな面も持ち合わせていた。様々な国家資格を持ち、また北米や欧州の有名大学や研究機関で実地を積んできた。そんな彼女でも、成し遂げられないほど研究で、私も受け持ちの範囲しか詳細は知り得なかった。
 欠伸あくびをかみ殺す私は。

「そう言えば、カルテを見直して気付いたんですけど、D棟の患者様を産んだのって、院長の(女体化した)元旦那さんだったんですか?」

「あら、今頃な話ね。四年くらい前だったかしら」

 眉一つを動かさずの回答だった。う~ん、夫を女体化させて検体と交配実験とか、すごいパワーワードだなぁ。そして、おつまみのカマンベールチーズを舐める。院長は、頬杖を突きつつ。

「そんなことより、あなたもいい加減で研究所こっちへ来たら? てかいくら好きモノでも、一人でA棟からC棟の全て患者との淫行ちりょうはキツいでしょ?」

「でも、後任で適した方も見つかりませんしぃ」

 スコッチを飲み干し、透明に輝くグラスを置く。

「全員をD棟に送るからじゃない。わかってやってるんでしょ?」

「あはは。けど院内放送で、戻りたい人は戻っていいですよ、って入れますから。誰一人として手を挙げないだけで」

「確信犯ねぇ。あそこでは種付けと出産だけが思考を埋めて、不安も希望すら塗りつぶされるからね。ある意味で天国と言えるかもね。被験体の精液によって、老化が極端に遅くなって、摂食の心配もないし――」

「私も行こうかなぁ」

「その前に、後任を見つけてからにしてね。……そういえば、あの最近入ったバイトの子もD棟送り? 戻って来てないの?」

 そう言われれば、この前のバイトの子、名前も忘れたけど、どうしてるかしら。

「さぁ? この職員棟へ戻っていないことだけは間違いないです」

「ハァ。とりあえずそっちの病院でもデータ収集は続けてね。今までビクともしなかった扉を、突然開けてくれたりするのが、患者様こと、なんだから。特に下層の病棟ほどね」

「は~い」

 電子パットが黒くなる。代わりとばかりに、壁掛けのモニターにて、D棟の内部映像を映し出す。あっちこっちに、かつての男性こと、女体化した職員やバイトが、精液塗れで寝転がっていた。皆、口元に小さな笑みを浮かべながら。
 幸せそうなその表情に股間をうずかせつつ、カメラを切り替えていく。

「――お、おっ、ンオオッ!」

 あ、いたいた。白目を剥きだし、膨らんだ乳から母乳を垂らす彼女が。大きくなったお腹を揺らせつつ、狂喜の表情でひたすら姦通かんつうされていた。う~ん、これは呼びかけても戻ってこなさそうだなぁ。

「割と見込があったんだけどなぁ――ん?」

 電子パットからナースコールが鳴り響く。今度はC棟からか。

「はいは~い。すぐに行きますね~。にしても、女体化してこのお仕事に従事できて、ホント幸せ」

 ノーパンノーブラで看護師服に袖を通す中、既に股間はシットリ濡れていた。暗くした部屋では、その後も彼女の――彼女達の美しくにごった嬌声きょうせいが、ず~っと鳴り響いた。まるで壊れた宝石細工のオルゴールみたいに。

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