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カルテ5 筋人
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「えっ?」
朝一、リビングでマニキュアをしていた私は、開いた口を慌てて抑える。目に映るのは、平凡なデジタルカレンダーだった。
「そっか。もうすぐ八月が――」
終わるんだ。
その現実を前に、艶やかで滑らかな金髪へ指を絡ませて、自分を落ち着かせる。なぜならそれは、看護業務の契約終了を、意味していたから。
「終わる――? このお仕事が」
思い返せば七月の終わりごろ、違約金を払ってでも辞めたいなんて言っていた自分がいた。今となっては、それも全く理解できないけど。
溜息を吐きつつアゴを引き、長いまつ毛を伏せて首から下を見る。開けた胸の谷間は張りがあり、股下が極端に短い桃色の看護師服から生え出る脚は、シミ一つなく、細くてしやなかだった。
「天職を見つけられたのになぁ」
沁み一つ無い天井へそうボヤく。
患者様への献身的なおシモのお世話、これ以上に自分に合う職務なんて想像できない。十九年間生きてきて、もっとも充実した一ヶ月半とすら言える気がした。
それは精神的な充足だけじゃなく、身体の状態を見ても明らかだった。髪質や肌の絶好調さが、肉体的な快活さも示していた。まるで磨き抜かれた女みたいに。
「ふぁ――ンンッ」
マニキュアを置いて、服の上から乳房と股間を軽く虐める。最近は自分を慰める余裕すらあった。――けれども、患者様達との交わりを知ってしまった今、自分の指でなんて全く愉しめなかった。それどころか近頃、性的欲求の満たされ具合に、C棟以外の患者様では物足りなさすら感じていた。
昨日なんてC棟にて、全身が緑のゼリー状の患者様のお相手をした。最初、お風呂に入るみたくゼリーの身体に浸からせてもらい、不思議な一体感に恍惚にされちゃった。そして、ゼリー内にて二つの口唇が形成されたかと思うと、乳首を同時に吸われて、さらに二本の立派なオチンコに、オマンコとアナルを同時に突き刺してもらった。首や腋を複数の舌で舐められつつ、膣内射精を何度もされて、キスで酸素を供給してもらった。もう、本当に蕩けそうな時間で、三時間以上も愛し合って……。
コンコン。
「! は、はい」
赤らめた顔のまま服の乱れを直す。扉が開くと、もちろんそこには――。
「今、いいかしら? 波留ちゃん」
「あっ、看護師長」
慌てて立ち上がり、背筋を伸ばす。胸の谷間がプルンと揺れた。看護師長は長い栗色の柔らかな髪を揺らし、妖艶な目で舐めるみたく私を見つめる。ドキドキしつつ近寄る看護師長へ、期待しながら、そして。
――ムニュウ。
「ぁん」
その細くて綺麗な指が、私の看護師服の中に忍び込んだかと思うと、左乳房を優しく揉みしだかれる。
ピリリッ、と桃色の電気が上半身へ流れて、思わず喘ぎ声をあげちゃった。そして、私なんかと比べられないくらい綺麗なマニキュアが塗られた人差し指が、意地悪そうに乳首の辺りを――んんっ――引っかかれちゃう。
「か、看護師、ちょう」
頬を赤くする私は、物欲しそうに、甘い声をあげてしまう。
……お盆明けくらいだった。夜に看護師長と二人で、業務改善の勉強が終わるころ、ふと人肌に寂しくなってしまった。俯きながらそれとなく伝えると、顔を上げた瞬間、看護師長の柔らかな唇にキスをされた。そのまま夜な夜な同性愛なプレイをする関係を作ってしまった。
だって繊細で、けど情熱的な、まるで手解きみたいな性戯は、患者様達とは真逆な研磨されたみたいな快感で、私を桃色に染め上げた。女性ならではの優しく情熱的な愛撫に、自制心を溶かされて、あっと言う間に虜にされちゃった。
それに隠れSな看護師長と、ドMな私は身体の相性も抜群で、地味に妊娠しない安心もあった。おまけに、見た目に若い私達の淫猥な絡み合いは、一種の美の様なものすら発散させていて、自己陶酔に酔い知れつつ、情事に耽り続けた……。
「朝早くからセクハラなんかして、ごめんなさい」
媚笑を浮かべつつ、私の乳房から指先を離すと、私の髪を揉むみたいに撫でてくれた。うっとりと気持ち良さげにする私は、頬を赤くしたままトロンとしてしまう。
「――ひょっとして、少し落ち込んでいた?」
! すごい。私のこと、何でもわかるんだ。けど、看護師長に見透かされるのは、不思議と安心と心地よさを覚えるから不思議だった。
「は、はい。あの、実は」
思い切って、胸の内を明かした。この職場でずっと働きたいことを、男になんて戻りたくないことを――。
その一言一句をしっかりと聞いてくれた後、私の肩にそっと手を置く。微かに潤む瞳で、そっと看護師長を見上げた。
「……そう言ってくれるのは大変ありがたいし、とても嬉しいわ。波留ちゃんは、ここの職場にとても向いていると思う。とても熱心でもあるし」
「! じゃ、じゃあ」
けど、喜ぶ私から顔を背ける看護師長の、その視線の先を追う。部屋の隅にある、何の変哲もない大型の青いポリバケツだった。蓋の隙間から高額紙幣が雑にはみ出ている。
「六千万円くらいは貯まってそうだけど、本当に使わなくていいの? 就労の契約を更新してしまったら、また地下での生活だけど?」
? あぁ、お金を使わないのか、って意味なのね。――そう言えば、働き始めた頃はやたらとお給金を気にしていた気がする。もう霞がかかったみたく、あまり思い出せないし、何だかいやしい記憶に思えて、小さく頭を振る。
「大丈夫です。お金を使うよりも、大切なことを知ったんです。患者様のためのご奉仕――お世話をさせてもらえることこそが生き甲斐なんだって。そのためなら、どんな事でもいたします!」
真っすぐにそう言い放つ。自分でも、不思議なくらいに自信をまとっていた。
――するとまるで、知っていたという風に、看護師長が、小さく頷く。
「……波瑠ちゃん。女に二言は無いわね」
私の瞳のさらに奥へ語りかけるみたくそう言うと、私の手をそっと握った。私が指を絡めるみたく握り返したのは、言うまでもなかった――。
* * *
ギギギ、ゴォォン。
重厚な鉄が互いに擦れ合う鈍い音の後、鉄板のごとき扉が開き、先の見えない薄暗い廊下が現れる。早々に血と腐敗臭が鼻腔へ飛び込んでくる中、不善で重たい空気が、私の露出した胸や脚を撫でてくる。
D棟。聞く限りでは最下層にあたる病棟で、もちろんながら、今日はじめての入棟となった。上層の棟とは全く異なり、廊下ですら暗く、汚れて、異臭が絶えず、また不思議とそれらに馴れることが出来なかった。さらに建物の構造自体も他と全く異なり、廊下と病室という単純な造りではなく、まるで一昔前の古い大病院を、無理やり継ぎ接ぎしたみたいな構成だった。
「こっちよ」
明滅する照明の下、小さなペンライトを点けて、足音を殺し歩く看護師長の後ろに引っ付く。自分でも、さっきまで威勢はどこにいったのかと、身体を縮こめながら歩む。
だ、だって、まるで建物そのものが不浄というか、異質というか――。
「か、看護師長」
「D棟も昔は色々な患者様がいたけど、今となってはたった一人を収容しているだけなの」
ふと廊下の端を見ると、砕け散った医療器具の下、まるで人の形を崩したみたいなヒトガタが倒れていた。どことなくだけど、かつてA棟でお相手した、全身がケロイド状の――その、ゾンビみたいな患者様を思い出した。
「その患者様は、ある生物と人間の女性の子供達の一人なの。筋力が強く凶ぼ……少し発作が激しい時があってね」
「あの、そもそもこの病院は――」
ピタッ。
大きな鉄扉の前で立ち止まる。あちこちに赤黒いゲルみたいなのが付着していて、後付けされた中央の電子錠だけが、赤く小さく瞬いていた。
「この病院の運営理念や目標については、正職員になったあかつきに」
――教えてあげる――
「(つまりそれは、D棟の患者様のお相手を)……わ、分かりました。扉を開けてください」
ピッ――ゴォンゴォン。
網膜や指紋認証、さらにパスコード入力によって開き始める。滅多に開閉しないためか、錆びついた鉄塊を、油圧で無理くり動かすみたいな酷い音だった。開くに従って、中で滞留していた濁った空気が二人を包むけど、私だけ足を前後させる。
「帰れる時間は院内放送するから。それじゃ――」
扉が閉まる前、看護師長は目を細めて私を正視した。まるでそれは、私の姿を記憶に焼き付けるみたく。
ガッシャン。
……薄暗い中で目を凝らすと、そこは広い手術室みたいに思えた。天井からぶら下がるいくつもの無影灯は暗いままで、複数ある手術用の寝台は、どれも赤黒く汚れていた。
「ア……ゥ」
! 声のした方へ目をやると、崩れかけた棚の下、全裸の女性がしだれかかっていた。
「だ、大丈夫ですか?」
近寄って伺う。黒髪のショートヘアはサラサラで血色も良く、肌も瑞々しかった。胸やお尻はふっくらとしていて、外傷なども特になかった。
ただお腹が膨らんでいて――妊婦さん?
「あ、アノコ、アノコハ?」
そうやって開いた口と股間から、精液みたいな白い粘液が垂れる。しかも、まるで私なんて視界に入っていないみたく、目を虚空へ向けたまま、お腹を撫でるだけだった。
「あの、まさか、ここの職員さんでは?」
けど呼びかけに返事は無く、やっぱり視線も合わせてくれなかった。命に別状も無さそうなので、帰り際に連れて帰ろうと、立ち上がって奥へと進む。
破砕した機器や壁の礫で足を怪我しないよう注意して進む。左右のあちこちから若い女性の高いうめき声が聞こえるから、そのつど確認した。共通点として、みんな若く綺麗だけど、全裸の身体にはセックスの痕がいくつもあった。妊娠しているかだけはまちまちだけど、乳首から母乳を垂らしている女性もいた。
そもそも、この人達は一体? この病院へ来てから、看護師長以外の職員さんとは誰一人として会わなかったけど、何か関係が? それに食料なんて無さそうなのに、どうして健康な上に美容まで保てているの――?
「マンマ」
ビリ、ビリビリッ。
「――えっ?」
重く低い、けど幼児みたいな単語が耳に入ったかと思うと、まるで紙ペラを引きちぎるみたいな音がして、身体が軽く揺すられた。
ストン。いつの間にか布切れになってしまったナース服が、床に落ちる。
「な――」
ガシッ。
「へっ?」
恐怖すら追いつかない早さで、背後から持ち上げられると同時に、M字に開脚される。背中に当たる感覚は、温もりと生きた鋼みたいな、とてつもない硬さだった。わけも分からず振り向くと同時に――。
チュボ。
「んんっ!」
口の中が筋肉質な舌でいっぱいになると同時に、私は目を見開いた。
――まるで小中学校の理科室にあった人体模型みたく、頭髪も表皮もない男性。顔は筋繊維と眼球だけで構成されていて、身長は優に二メートルを超えで、筋肉の塊みたいな身体だった。私の口の中を味見するみたく力強い舌で――クチャグチョ――とされるも、次に。
スリリ。
「!」
お、お尻の間に、硬くて熱い棒状の―—おそらくオチンチンが、擦り当てられる。お尻の間に挟み込むみたいな姿勢を強要されると、脈打つ血管の太さすら肌で感じた。
「ジュルル、ロレレ」
口一杯に、注ぎ込まれる唾液は、無味無臭だけど、飲み込むつど、喉がヒリつくみたいで、頭がボーッとしてきちゃう。
この、方が、D棟唯一の、患者様?
ズボッ。
「――ぷはっ」
酸欠気味の私の口から、大きな舌が引き抜かれる。肩で息をする私の眼前に、大きな皮膚の無い顔が、マジマジと見つめてくる。
「あ、あの」
グィン、ビチチッ。
股間から、何かが突き破られるみたいな音がしたかと思い、目線を下げた。幼児の腕くらいのオチンコが、生きたナイフみたいに、私の下着を破いた。我慢汁といくらかの愛液が溶け合う股間は、熱と湿気の発生地になりつつあった。けど未だに事態を飲み飲めていない私は、震える唇を動かす。
「ハァ、ハァ。えと、あ――」
ズブリュ。
「んのおおおっ!」
あぎっ! た、立ち後背位で、一瞬で、膣内を、オチンコで、埋められ、ちゃう。
ギチチチッ。
い、今まで何本ものオチンコや指、舌や触手が挿入られたオマンコだけど、比にならないくらいの圧倒的な体積だった。あまりの圧迫感に、視界が赤く明滅する。
ジュンチョ、グニョチョチョ、ビチュヌチョ!
「(性器が出す音と、思えなイ)――お、ぐ、うぇ」
立ち後背位のまま、まるで小腸を押しどけられたり、引き抜かれそうになる新感覚に圧倒される。だけど、この感覚、なんか、覚えが?
――そう、だ。女体化し始めた時も、こんな風に、臓器や骨なんかの、身体の内側が、ドロクチャに、されて。
パン、パンッ、パァン!
鋼の肉体が繰り出す鋼のオチンコは、正確無比に私の膣穴をえぐり続けた。
「へっ、はっ、へ!」
犬みたいな呼吸でもって、少しでも衝撃を逃がそうと、儚い抵抗を試みる。白目を剥きそうな視界の中、患者様は無表情のまま、ただただジッと私を見ているだけだった。
ビク、ビビクッ。
膣内の、肉棒が収縮する。これ以上、拡張されると、流石にっ。
ドピュ! ドポポ、ピュルル。ビュービュー!
「づぉ、あぁあ」
まる、まるで鉄砲水みたいな勢いで、膣内射精をされる。けど膣内は出入口も含めて巨大オチンコで完全に封鎖されていて、否が応でも子宮口へ精子がのぼってくる。
す、すご。こ、こんなの、絶対に子宮になだれ込んでこられる。つまりは、妊娠しちゃうよ。こんな風に、オチンコで蓋をされ続けたら。
――ズヌグチョ、ガボボッ。
「んはぁ! ハァ、ハァ――えっ?」
痺れるみたいな痛気持ちイイ感触が股間で弾けたかと思うと、勢いよくオチンコが引き抜かれる。私の股間は、まるで不潔な滝みたいに、白い精液がダラダラとこぼれていった。
これで終わり? い、一体。
……ヌググチョ。グッチョヌグッチョ!
「んっ、おあアあォアッ!」
う、嘘? さ、さっきと同じか、それ以上の硬度で、再び極太熱棒によるピストンが再開される。グチョグチョの膣内は再び下品なオナホールにされて、もしくはダッチワイフみたく機械的に上下させられる。
気持ちイイのか苦しいのか、きっと両方な私は舌を出して、喉から嬌声を絞り出す。そんな雌化する私を、つぶらな瞳でずっと眺められた。
パン! グチョヌチョ。パン! ニチョズチョ。
「いっ、あ゛ぬぉ、ををん!」
こ、れは、セックス、なの?
――う、ううん。きっとこれが、これこそが交尾なんだ。打算も、愛情も、支配も、快感すらいらない。力のある雄が、妊娠に適した雌を種付けする、生物にもっとも必要な循環。女は種付けされた命を産むために存在している。そう理解した瞬間、今まで感じたことのない多幸感がアタシを満たした。
すると、乳首が腫れるみたいに勃起し、膣内はさらに愛液を噴射し始めちゃった。体内でも何かの成分が分泌され始めたのか、あるいは偉大な雄様に遺伝子を注ぎ込まれたためか、肉体も、精神すら、雌らしさに満たされるのを感汁。
永遠に動き続けそうな肉棒を膣で出来る限り締付け、温め、媚びて、せがんで。
「マンマ、マンマ」
……やがて、オチンコが私の身体の一部と認識してしまう寸前、最後の理性が告げた。周囲の妊娠している人達、もしくは出産後の人の、赤ちゃんはどこへ? へその緒一つ見当たらない中、この暗くて不潔で広いD棟のどこかに託児所があるとでも? それとも産まれてすぐに、看護師長が回収に来るとでも?
そもそもマンマって、ママのこと? それ、とも――アッ。
朝一、リビングでマニキュアをしていた私は、開いた口を慌てて抑える。目に映るのは、平凡なデジタルカレンダーだった。
「そっか。もうすぐ八月が――」
終わるんだ。
その現実を前に、艶やかで滑らかな金髪へ指を絡ませて、自分を落ち着かせる。なぜならそれは、看護業務の契約終了を、意味していたから。
「終わる――? このお仕事が」
思い返せば七月の終わりごろ、違約金を払ってでも辞めたいなんて言っていた自分がいた。今となっては、それも全く理解できないけど。
溜息を吐きつつアゴを引き、長いまつ毛を伏せて首から下を見る。開けた胸の谷間は張りがあり、股下が極端に短い桃色の看護師服から生え出る脚は、シミ一つなく、細くてしやなかだった。
「天職を見つけられたのになぁ」
沁み一つ無い天井へそうボヤく。
患者様への献身的なおシモのお世話、これ以上に自分に合う職務なんて想像できない。十九年間生きてきて、もっとも充実した一ヶ月半とすら言える気がした。
それは精神的な充足だけじゃなく、身体の状態を見ても明らかだった。髪質や肌の絶好調さが、肉体的な快活さも示していた。まるで磨き抜かれた女みたいに。
「ふぁ――ンンッ」
マニキュアを置いて、服の上から乳房と股間を軽く虐める。最近は自分を慰める余裕すらあった。――けれども、患者様達との交わりを知ってしまった今、自分の指でなんて全く愉しめなかった。それどころか近頃、性的欲求の満たされ具合に、C棟以外の患者様では物足りなさすら感じていた。
昨日なんてC棟にて、全身が緑のゼリー状の患者様のお相手をした。最初、お風呂に入るみたくゼリーの身体に浸からせてもらい、不思議な一体感に恍惚にされちゃった。そして、ゼリー内にて二つの口唇が形成されたかと思うと、乳首を同時に吸われて、さらに二本の立派なオチンコに、オマンコとアナルを同時に突き刺してもらった。首や腋を複数の舌で舐められつつ、膣内射精を何度もされて、キスで酸素を供給してもらった。もう、本当に蕩けそうな時間で、三時間以上も愛し合って……。
コンコン。
「! は、はい」
赤らめた顔のまま服の乱れを直す。扉が開くと、もちろんそこには――。
「今、いいかしら? 波留ちゃん」
「あっ、看護師長」
慌てて立ち上がり、背筋を伸ばす。胸の谷間がプルンと揺れた。看護師長は長い栗色の柔らかな髪を揺らし、妖艶な目で舐めるみたく私を見つめる。ドキドキしつつ近寄る看護師長へ、期待しながら、そして。
――ムニュウ。
「ぁん」
その細くて綺麗な指が、私の看護師服の中に忍び込んだかと思うと、左乳房を優しく揉みしだかれる。
ピリリッ、と桃色の電気が上半身へ流れて、思わず喘ぎ声をあげちゃった。そして、私なんかと比べられないくらい綺麗なマニキュアが塗られた人差し指が、意地悪そうに乳首の辺りを――んんっ――引っかかれちゃう。
「か、看護師、ちょう」
頬を赤くする私は、物欲しそうに、甘い声をあげてしまう。
……お盆明けくらいだった。夜に看護師長と二人で、業務改善の勉強が終わるころ、ふと人肌に寂しくなってしまった。俯きながらそれとなく伝えると、顔を上げた瞬間、看護師長の柔らかな唇にキスをされた。そのまま夜な夜な同性愛なプレイをする関係を作ってしまった。
だって繊細で、けど情熱的な、まるで手解きみたいな性戯は、患者様達とは真逆な研磨されたみたいな快感で、私を桃色に染め上げた。女性ならではの優しく情熱的な愛撫に、自制心を溶かされて、あっと言う間に虜にされちゃった。
それに隠れSな看護師長と、ドMな私は身体の相性も抜群で、地味に妊娠しない安心もあった。おまけに、見た目に若い私達の淫猥な絡み合いは、一種の美の様なものすら発散させていて、自己陶酔に酔い知れつつ、情事に耽り続けた……。
「朝早くからセクハラなんかして、ごめんなさい」
媚笑を浮かべつつ、私の乳房から指先を離すと、私の髪を揉むみたいに撫でてくれた。うっとりと気持ち良さげにする私は、頬を赤くしたままトロンとしてしまう。
「――ひょっとして、少し落ち込んでいた?」
! すごい。私のこと、何でもわかるんだ。けど、看護師長に見透かされるのは、不思議と安心と心地よさを覚えるから不思議だった。
「は、はい。あの、実は」
思い切って、胸の内を明かした。この職場でずっと働きたいことを、男になんて戻りたくないことを――。
その一言一句をしっかりと聞いてくれた後、私の肩にそっと手を置く。微かに潤む瞳で、そっと看護師長を見上げた。
「……そう言ってくれるのは大変ありがたいし、とても嬉しいわ。波留ちゃんは、ここの職場にとても向いていると思う。とても熱心でもあるし」
「! じゃ、じゃあ」
けど、喜ぶ私から顔を背ける看護師長の、その視線の先を追う。部屋の隅にある、何の変哲もない大型の青いポリバケツだった。蓋の隙間から高額紙幣が雑にはみ出ている。
「六千万円くらいは貯まってそうだけど、本当に使わなくていいの? 就労の契約を更新してしまったら、また地下での生活だけど?」
? あぁ、お金を使わないのか、って意味なのね。――そう言えば、働き始めた頃はやたらとお給金を気にしていた気がする。もう霞がかかったみたく、あまり思い出せないし、何だかいやしい記憶に思えて、小さく頭を振る。
「大丈夫です。お金を使うよりも、大切なことを知ったんです。患者様のためのご奉仕――お世話をさせてもらえることこそが生き甲斐なんだって。そのためなら、どんな事でもいたします!」
真っすぐにそう言い放つ。自分でも、不思議なくらいに自信をまとっていた。
――するとまるで、知っていたという風に、看護師長が、小さく頷く。
「……波瑠ちゃん。女に二言は無いわね」
私の瞳のさらに奥へ語りかけるみたくそう言うと、私の手をそっと握った。私が指を絡めるみたく握り返したのは、言うまでもなかった――。
* * *
ギギギ、ゴォォン。
重厚な鉄が互いに擦れ合う鈍い音の後、鉄板のごとき扉が開き、先の見えない薄暗い廊下が現れる。早々に血と腐敗臭が鼻腔へ飛び込んでくる中、不善で重たい空気が、私の露出した胸や脚を撫でてくる。
D棟。聞く限りでは最下層にあたる病棟で、もちろんながら、今日はじめての入棟となった。上層の棟とは全く異なり、廊下ですら暗く、汚れて、異臭が絶えず、また不思議とそれらに馴れることが出来なかった。さらに建物の構造自体も他と全く異なり、廊下と病室という単純な造りではなく、まるで一昔前の古い大病院を、無理やり継ぎ接ぎしたみたいな構成だった。
「こっちよ」
明滅する照明の下、小さなペンライトを点けて、足音を殺し歩く看護師長の後ろに引っ付く。自分でも、さっきまで威勢はどこにいったのかと、身体を縮こめながら歩む。
だ、だって、まるで建物そのものが不浄というか、異質というか――。
「か、看護師長」
「D棟も昔は色々な患者様がいたけど、今となってはたった一人を収容しているだけなの」
ふと廊下の端を見ると、砕け散った医療器具の下、まるで人の形を崩したみたいなヒトガタが倒れていた。どことなくだけど、かつてA棟でお相手した、全身がケロイド状の――その、ゾンビみたいな患者様を思い出した。
「その患者様は、ある生物と人間の女性の子供達の一人なの。筋力が強く凶ぼ……少し発作が激しい時があってね」
「あの、そもそもこの病院は――」
ピタッ。
大きな鉄扉の前で立ち止まる。あちこちに赤黒いゲルみたいなのが付着していて、後付けされた中央の電子錠だけが、赤く小さく瞬いていた。
「この病院の運営理念や目標については、正職員になったあかつきに」
――教えてあげる――
「(つまりそれは、D棟の患者様のお相手を)……わ、分かりました。扉を開けてください」
ピッ――ゴォンゴォン。
網膜や指紋認証、さらにパスコード入力によって開き始める。滅多に開閉しないためか、錆びついた鉄塊を、油圧で無理くり動かすみたいな酷い音だった。開くに従って、中で滞留していた濁った空気が二人を包むけど、私だけ足を前後させる。
「帰れる時間は院内放送するから。それじゃ――」
扉が閉まる前、看護師長は目を細めて私を正視した。まるでそれは、私の姿を記憶に焼き付けるみたく。
ガッシャン。
……薄暗い中で目を凝らすと、そこは広い手術室みたいに思えた。天井からぶら下がるいくつもの無影灯は暗いままで、複数ある手術用の寝台は、どれも赤黒く汚れていた。
「ア……ゥ」
! 声のした方へ目をやると、崩れかけた棚の下、全裸の女性がしだれかかっていた。
「だ、大丈夫ですか?」
近寄って伺う。黒髪のショートヘアはサラサラで血色も良く、肌も瑞々しかった。胸やお尻はふっくらとしていて、外傷なども特になかった。
ただお腹が膨らんでいて――妊婦さん?
「あ、アノコ、アノコハ?」
そうやって開いた口と股間から、精液みたいな白い粘液が垂れる。しかも、まるで私なんて視界に入っていないみたく、目を虚空へ向けたまま、お腹を撫でるだけだった。
「あの、まさか、ここの職員さんでは?」
けど呼びかけに返事は無く、やっぱり視線も合わせてくれなかった。命に別状も無さそうなので、帰り際に連れて帰ろうと、立ち上がって奥へと進む。
破砕した機器や壁の礫で足を怪我しないよう注意して進む。左右のあちこちから若い女性の高いうめき声が聞こえるから、そのつど確認した。共通点として、みんな若く綺麗だけど、全裸の身体にはセックスの痕がいくつもあった。妊娠しているかだけはまちまちだけど、乳首から母乳を垂らしている女性もいた。
そもそも、この人達は一体? この病院へ来てから、看護師長以外の職員さんとは誰一人として会わなかったけど、何か関係が? それに食料なんて無さそうなのに、どうして健康な上に美容まで保てているの――?
「マンマ」
ビリ、ビリビリッ。
「――えっ?」
重く低い、けど幼児みたいな単語が耳に入ったかと思うと、まるで紙ペラを引きちぎるみたいな音がして、身体が軽く揺すられた。
ストン。いつの間にか布切れになってしまったナース服が、床に落ちる。
「な――」
ガシッ。
「へっ?」
恐怖すら追いつかない早さで、背後から持ち上げられると同時に、M字に開脚される。背中に当たる感覚は、温もりと生きた鋼みたいな、とてつもない硬さだった。わけも分からず振り向くと同時に――。
チュボ。
「んんっ!」
口の中が筋肉質な舌でいっぱいになると同時に、私は目を見開いた。
――まるで小中学校の理科室にあった人体模型みたく、頭髪も表皮もない男性。顔は筋繊維と眼球だけで構成されていて、身長は優に二メートルを超えで、筋肉の塊みたいな身体だった。私の口の中を味見するみたく力強い舌で――クチャグチョ――とされるも、次に。
スリリ。
「!」
お、お尻の間に、硬くて熱い棒状の―—おそらくオチンチンが、擦り当てられる。お尻の間に挟み込むみたいな姿勢を強要されると、脈打つ血管の太さすら肌で感じた。
「ジュルル、ロレレ」
口一杯に、注ぎ込まれる唾液は、無味無臭だけど、飲み込むつど、喉がヒリつくみたいで、頭がボーッとしてきちゃう。
この、方が、D棟唯一の、患者様?
ズボッ。
「――ぷはっ」
酸欠気味の私の口から、大きな舌が引き抜かれる。肩で息をする私の眼前に、大きな皮膚の無い顔が、マジマジと見つめてくる。
「あ、あの」
グィン、ビチチッ。
股間から、何かが突き破られるみたいな音がしたかと思い、目線を下げた。幼児の腕くらいのオチンコが、生きたナイフみたいに、私の下着を破いた。我慢汁といくらかの愛液が溶け合う股間は、熱と湿気の発生地になりつつあった。けど未だに事態を飲み飲めていない私は、震える唇を動かす。
「ハァ、ハァ。えと、あ――」
ズブリュ。
「んのおおおっ!」
あぎっ! た、立ち後背位で、一瞬で、膣内を、オチンコで、埋められ、ちゃう。
ギチチチッ。
い、今まで何本ものオチンコや指、舌や触手が挿入られたオマンコだけど、比にならないくらいの圧倒的な体積だった。あまりの圧迫感に、視界が赤く明滅する。
ジュンチョ、グニョチョチョ、ビチュヌチョ!
「(性器が出す音と、思えなイ)――お、ぐ、うぇ」
立ち後背位のまま、まるで小腸を押しどけられたり、引き抜かれそうになる新感覚に圧倒される。だけど、この感覚、なんか、覚えが?
――そう、だ。女体化し始めた時も、こんな風に、臓器や骨なんかの、身体の内側が、ドロクチャに、されて。
パン、パンッ、パァン!
鋼の肉体が繰り出す鋼のオチンコは、正確無比に私の膣穴をえぐり続けた。
「へっ、はっ、へ!」
犬みたいな呼吸でもって、少しでも衝撃を逃がそうと、儚い抵抗を試みる。白目を剥きそうな視界の中、患者様は無表情のまま、ただただジッと私を見ているだけだった。
ビク、ビビクッ。
膣内の、肉棒が収縮する。これ以上、拡張されると、流石にっ。
ドピュ! ドポポ、ピュルル。ビュービュー!
「づぉ、あぁあ」
まる、まるで鉄砲水みたいな勢いで、膣内射精をされる。けど膣内は出入口も含めて巨大オチンコで完全に封鎖されていて、否が応でも子宮口へ精子がのぼってくる。
す、すご。こ、こんなの、絶対に子宮になだれ込んでこられる。つまりは、妊娠しちゃうよ。こんな風に、オチンコで蓋をされ続けたら。
――ズヌグチョ、ガボボッ。
「んはぁ! ハァ、ハァ――えっ?」
痺れるみたいな痛気持ちイイ感触が股間で弾けたかと思うと、勢いよくオチンコが引き抜かれる。私の股間は、まるで不潔な滝みたいに、白い精液がダラダラとこぼれていった。
これで終わり? い、一体。
……ヌググチョ。グッチョヌグッチョ!
「んっ、おあアあォアッ!」
う、嘘? さ、さっきと同じか、それ以上の硬度で、再び極太熱棒によるピストンが再開される。グチョグチョの膣内は再び下品なオナホールにされて、もしくはダッチワイフみたく機械的に上下させられる。
気持ちイイのか苦しいのか、きっと両方な私は舌を出して、喉から嬌声を絞り出す。そんな雌化する私を、つぶらな瞳でずっと眺められた。
パン! グチョヌチョ。パン! ニチョズチョ。
「いっ、あ゛ぬぉ、ををん!」
こ、れは、セックス、なの?
――う、ううん。きっとこれが、これこそが交尾なんだ。打算も、愛情も、支配も、快感すらいらない。力のある雄が、妊娠に適した雌を種付けする、生物にもっとも必要な循環。女は種付けされた命を産むために存在している。そう理解した瞬間、今まで感じたことのない多幸感がアタシを満たした。
すると、乳首が腫れるみたいに勃起し、膣内はさらに愛液を噴射し始めちゃった。体内でも何かの成分が分泌され始めたのか、あるいは偉大な雄様に遺伝子を注ぎ込まれたためか、肉体も、精神すら、雌らしさに満たされるのを感汁。
永遠に動き続けそうな肉棒を膣で出来る限り締付け、温め、媚びて、せがんで。
「マンマ、マンマ」
……やがて、オチンコが私の身体の一部と認識してしまう寸前、最後の理性が告げた。周囲の妊娠している人達、もしくは出産後の人の、赤ちゃんはどこへ? へその緒一つ見当たらない中、この暗くて不潔で広いD棟のどこかに託児所があるとでも? それとも産まれてすぐに、看護師長が回収に来るとでも?
そもそもマンマって、ママのこと? それ、とも――アッ。
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