ユーチューバーに転職した話する?

いずくかける

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現役JKユーチューバー エリリンTV!!

缶コーヒーを奢ってもらいました。嬉しかったです。

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「幸おじさんって、アニメとか見る?」

 平日の夕暮れ、相変わらず荒川公園にて俺は師匠の講義を受けている。
 見るからに気が落ち込んでそうな師匠が唐突に俺にそう質問してきた。

「あんまり見ないかな。なんで?」

「じゃあYouTubeに上がってるアニメの存在は知ってる? TV番組でも同じだけど」

 それならば見たことがある。
 たまに急上昇ランクにも乗ってくるからな。

「ああ、たまに上がってるよな……。でもあれ見ずらくないか? 画面を小さくしてたりするだろ?」

「そうね。見ずらいわよ。でも手軽見れるYouTubeだと、それを気にしないで見る人が多いわ」

 師匠は何が言いたいんだろう?
 もしかして俺に手を出せって事か?

「まあ急上昇ランクに載るくらい人気のコンテンツなんだろうな。わかった。俺も上げてみる」

「駄目よ! 絶対にダメ!」

 師匠は強く言い放った。

「幸おじさん。『フェアユース』って知ってる?」

「ふぇあゆーす? いや、知らない」

 師匠の講義によると、フェアユースと言うのはアメリカの定める著作権の一つの規則だという事だった。YouTubeJAPANの規約にもそれが明記されている。
 少し難しい話なので順を追ってなるべく簡単に説明しよう。

 先ほど挙げたアニメをそのままアップロードする投稿者。
 これは完全にアウトだ。お前らもたまに『この動画は著作者の意向により削除されました』と表示される動画を見つけたことはないだろうか?
 まあ、そのままの意味で、著作者に削除を申請されて消された動画なんだろう。
 それ以前に、YouTubeにはフィルターがある。
 そのフィルターを搔い潜る為に、わざわざ動画を小さくしたり、反転したり、音声のピッチを変えて奴らは違法投稿をするのだと師匠は語った。たったそれだけの事で、何の苦労もせずに手に入れたアニメやテレビ、映画などの動画をそのまま公開することが出来、違法投稿者に莫大な収益が入ってしまうのだと言う。

 これだけ聞くとそれらの動画が貼られる動画は全て違法動画になってしまう。
 ここで出てくる言葉が、先ほどの『フェアユース』だ。

 フェアユースが適用されている動画ではそれらの動画の使用が認められている。
 ではどういう場合に適用されるのか、それは簡単に言えばその動画を使って、別の動画を作るときである。

 例えばだ、好きなアニメでも思い浮かべてほしい。もしくは好きなドラマなんかをだ。
 これらを1話そのまま、もしくは名シーンなんかを切り取ってアップロードした場合は完全にアウトだ。当然ながら規約違反の違法動画になる。

 だが、それらの一部を切り取って、2016年人気アニメランキング、またはドラマランキングとした場合は、その動画の内容ではなく、どういったものが人気なのか。おすすめなのか。流行っているのか。と、動画が伝えたい内容が変わってくるためセーフになるのだ。

 わかりやすく例えるとこうだ。いずくの小説を俺が全文コピーしてどこかの投稿サイトに投稿すれば完全にアウトだろう? これが許されるのであれば著作権もへったくれもない。
 だが、いずくの小説の一部を俺がコピーして、面白い小説があるんです。その一部はこんな感じなんで皆見てください。これも原則にはアウトな気もするけどわかりやすく言えばそういう事だ。YouTubeではこれはセーフの内に入る。

 YouTubeには大量の違法動画が溢れている。
 見ている人の大半はその事実を知らないし、知っていても目を瞑るだろう。視聴者側は罪に捕らわれないからな。いずくの回で出てきたアフィカス動画だって本当は著作権違反だ。だが、誰も知らない。YouTubeの規約なんて誰も読まない。俺も読んだことはない。もしかしたら大物ユーチューバーだって見たことないんじゃないのか?
 だが、それによって確実に被害を受ける人間がいるという事を師匠は俺に語った。

「ふうん。なるほどな。わかったよ師匠。俺はそんな動画作らない。っていうか作れないしな」

 俺が笑ってそう言うと師匠は安心したかのような顔を見せた。

「そうね。幸おじさんにはどうせ作れないわよね。実は今日学校でね、アニメを投稿してる男子に自慢げに再生数を見せびらかされて悔しかったんだ」

「結構伸びてたのか?」

「30万再生されてたわ。ネットに違法投稿されてるアニメって外国語の字幕が付いてるのが多いのよ。だから世界中の人が見てしまう……。日本語で投稿している私達より圧倒的に顧客が多いのよ。大した事してるわけじゃないのにね……」

 これは俺たちがどうこうできる問題じゃないだろう。せいぜい人に知ってもらう程度の事しかできない。だから俺はここに書いた。
 これはYouTubeが対策を練らなくてはならない深刻な問題だ。
 かつてiPodが発売された時、音楽の違法ダウンロードが社会問題になった。
 便利な物を生み出すと、それと同時にまた別の問題が生まれるものなのである。

「まあ、そう気を落とすなよ師匠。そう言えば、ルミの奴が師匠に会いたいって言ってたぜ?」

「るみ……? ああ、ゲーム実況の? うん! 楽しみにしてる!!」

 どうやら少しは師匠の気も晴れたようだ。
 今日の講義はそれまでとし、俺は家路についた。





 家に帰る途中、いつものコンビニの前で見慣れた後姿を見かけた。
 間違いない。エリカだ。

「よう、エリカ。仕事がエリカ?」

「あ、よしおさん。こんにちわ。そうです。今終わって帰るとこなんですよ」

 華麗にスルーされた。

「そうか。それじゃあ気付けて帰れよ。じゃあなー」

「あっ! 待ってくださいよしおさん!!」

 呼び止められて俺は足を止めた。

「ん? どうしたエリカ?」

「えっと、ちょっとヨシオさんに聞きたい事があったんですけど、今から少し……、時間いいですか?」

 おおおおおお!!!
 なにこれ!?
 いきなりなになに!?
 現役JKに誘われるなんて!!
 ユーチューバー万歳!!

「あ、ああ。別に大丈夫だけど……」

「よかった。じゃあ、公園でも行きません?」

 そう言われたので、俺は師匠ととさっきまでいた荒川公園にエリカと戻った。
 とりあえずエリカをブランコに座らせて俺はあったかいコーヒーを買ってくる。

「あ、ありがとうございます。なんかすいません……」

 コーヒー代を出すのは必ず年上の人間でなくてはならないというポリシーが俺の中にはあった。
 そのポリシーが芽生えたのは俺が昔、仕事中に先輩に奢ってもらった時の話である。

 俺に買ってきたコーヒーを差し出す先輩は言った。「よう、お疲れ。遠慮しないで飲め」俺はいいんですか? いくらでした? と答えた。「その金でおまえは自分の後輩にコーヒーを飲ませてやれ。俺も先輩からそう言われてきた。それが仕事ってもんだ」
 俺はその先輩のセリフに痺れ、それ以来後輩には絶対にコーヒー代を出させないようにしている。

 まあこの話は今の状況と全然関係はない。
 ぶっちゃけて言うと文字数を稼いでいるだけだ。

「いえ、いいんですよ。それで? 聞きたい事ってのはなんですか?」

 エリカは恥ずかしそうに答える。

「実は、……私、好きなんです……」

 !!
 !?
 !?!?!?!?!?!?!?
 な、なんだってー!!!
 は!?
 なにこれ!?
 名に個のてんんかい!?
 いつからラブコメになったんだ!?
 とりあえずよっしゃあああああああ!!!
 全力で釣られてやるクマ―!!

「ほ、本当ですか!? じ、実は俺も……」

「好きなんです!! よしおさんの動画!!」

 ……。
 まあわかってたさ。
 お約束の展開だね。
 全ッ然期待とかしてなかったもんね!!
 ハァ……。

「そ、それは嬉しいなあ……。ハハ……」

「ルミさんの動画も好きなんですけど、よしおさんのはまた違って、なんか見てて元気が湧いてくるって言うか……」

 それはあれかい?
 世の中にはこんなごみ虫がいるんだからもっと頑張ろうっ的なやつかい?
 まあ、見てもらえるだけで嬉しいんだけどな。

「ありがとうエリカ。そう言ってもらえると作り甲斐があるな。で? 聞きたい事ってのは?」

「その……、私に動画を投稿する方法教えてくれませんか!? 私もユーチューバーになりたいんです!!」

「ええええ!! 本気で言ってんのか!?」

「やっぱり私じゃ無理ですか? 私もよしおさんみたいに面白い動画で人に楽しんでもらいたいんです……」

 エリカの顔が曇ったので俺は焦った。

「い、いや! 無理じゃないさ! きっとエリカならできると思うぞ!!」

「本当ですか!? よしおさんにそう言って貰えると、なんだかやれそうな気がしてきました」

「俺が出来る範囲だったら動画作りは教えるよ。それで? 一体どんな動画を作るつもりなんだ?」

 エリカはうーん、としばらく考えた末に口にする。

「やっぱりよしおさんみたいな面白い動画が作りたいです。あと見逃した人の為にドラマを投稿したりとか!!」

 お前ら、これが現実である。
 俺達にできる事なんてたかが知れているのかもしれない。
 だが、それでもYouTubeの問題を世間に広めなくてはいけないと、俺は心から思った。
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