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第4章:ちょっと伊勢を切り取ってこよう
半兵衛の上司って大変です
しおりを挟む1567年9月
北伊勢桑名
「では、この桑名の商人に八風越えの独占権を頂けると」
(伊勢から京都へ抜ける商業路の通行権)
目の前に平伏している5人の豪商に対して、俺は鷹揚な態度で首を縦に振る。
これ練習しているけど、まだまだだなぁ。アニメ化された人気ラノベの、骸骨的な主人公の気持ちがよくわかるよ。
平凡な平社員が突然管理職やれとかいう無茶振り。
毎晩寧々ちゃんとの夜戦に勝利してから外に出て、こそこそと練習してる。だけどねアゲハがついて来て、
「ご主人様。かっこいいです」
とか言われると背筋が果てしなくむずかゆくなるんだよ。
「その代わり、この北伊勢の国衆48家を服従させよ。矢銭は要求せぬ故、持ち出しで調略せよ」
「ははっ。
しかし北伊勢国衆筆頭の千草殿は厄介にて。南朝からの威光を笠にして、周りの者を服従させておりまする」
北伊勢の主な豪族、長野工藤氏と関氏は中が悪い。すでに滝川一益くんが南伊勢の長野工藤は調略済み。残るは長野氏と仲の悪い関氏と、この北伊勢の盟主、千草氏の籠る千草城。関氏も千草氏も総動員して兵800というところ。南伊勢の北畠が出てこなければ風前の灯火ですね。
勝ったな。
さきおめ。
「しかし口先だけでは何ともいえましょう。熊野牛王符の誓いをさせましょう」
隣に座る半兵衛っちが口をはさむ。
「はっ。それならば約束を違えますまい。この伊勢にて熊野権現様への誓いを破る者、生きてはいけませぬ」
ことは俺を差し置いてどんどん進んでいく。
は~、楽ちんらくちん。
「光秀様。あの仕掛け、最後になさるのでしょうか?」
あれ?
なにそれ。
これ、それ、どれ?
な、なんのことかなぁ。
半兵衛く~ん(汗
こちらを見る智将、竹中半兵衛。
全幅の信頼を置いているまなざし、頂きました~~><;
どうする?
どうする?
あ、そうだ。
こういう時こそサブカルの知識だ!
「うむ。それは半兵衛。お前に譲る。更に勲功を立てて出世し、俺に尽くしてくれ」
「承知いたしました」
そうだよ。
先輩の真似っこだ!
骸骨の先輩がいると楽だなぁ~!
「皆に説明する栄誉をお前に与えよう」
という奴。
「しかれば。
八風越えの権利に加え、以下の商品の委託製造販売の権利を与える。その代わり、末代までこの光秀様のご下令に服すべし」
え?
何あげるの?
聞いてないよ!
「一つ。冬木芸術館作の萌絵と金属人形複製権。
二つ。これの独占販売権5年間。
三つ。金次郎立志伝シリーズの委託販売権。
対する条件として、これらを主に北伊勢で速やかに流行らせる事。ことに一向宗の願正寺の近辺で盛んにすること」
「あ、あれを頂けるのでしょうか??
この北伊勢でも大人気にて!
有難く、有難く~~」
ご満悦そうにこっちを向く半兵衛。
そっか。
前に「この北伊勢の一向一揆怖いからサブカル流行らせて一向宗の結束弱らせよっか」とか冗談を言っていた……気がする。
よく覚えているね。
君、実は正体が悪魔で、顔がカエルみたいな人でない? 言っとくけど世界征服なんか考えていないから! もちろん天下統一も言ってないから!
とにかく、経済の方から北伊勢を屈服させることはできた。
あとは千草と関だね。
◇ ◇ ◇ ◇
「まんまと策にはまりました。これも光秀様の英知。感服いたします」
……
俺、何もしていないっす。
ぜ~んぶ半兵衛くん。君がしたんだよ??
「流石、戦の神髄を知り尽くしたお方。この半兵衛、必ずやその英知を生かす手足となる栄誉を賜りたく」
……
骸骨先輩。
お気持ち、よ~~っくわかります。俺も感情の高ぶりを押さえる仕様が欲しい!
「こ、米だったか。敵の」
「はっ。以前、光秀様が仰られておりました。鉄砲隊の弱点は守備には強いが攻勢には出にくいと。だからこちらへ寄せてくるように仕向けると」
「うむ。だから米だ」
「はい。米をあらかじめ買い占めまして。これも以前、歴史の書で読まれた策とお伺いしました」
あ~、あれね。
秀吉が鳥取城の餓え攻めのときに使った作戦。商人使って春夏に高値で買い取らせて、秋の刈り入れ時に攻め込むやつ。
8月に北伊勢侵攻命令されたから、それ伝えると半兵衛っちが即座にそれ始めたんよ。
◇ ◇ ◇ ◇
その結果。
目の前には、南伊勢の北畠まで含めて動員された兵、8000。俺たちの後ろの千草城を救援するため出兵してきました。このままでは兵糧が尽きて北伊勢が織田家の手に落ちる。
総動員すれば10000超えるだろうけどね。流石に刈り入れ時に総動員できんでしょ?
こっちが6500だからそのくらいでいいでしょ、的な数字。
多過ぎず少なすぎず。北畠まで一撃加える事できる。信ちゃんのオーダー通り。
「いやぁ。今回も見事に明智殿の策がハマりましたなぁ。お蔭で楽が出来る」
と、悟りの恒興君。
「まだですぞ、池田殿。戦は何が起きるか分かりませぬ。それに依然、敵方が数の上では優勢」
と、今回の大将、髭面の滝川一益。
俺、この人好き。
だって鉄砲隊上手に使えるし、調略も忍者の使い方もうまい。
ゲームやっていて一番使い勝手が良かった。いつも最初にスカウトしていたよ。
「一益殿。そちらの鉄砲隊400。訓練の具合は如何に?」
「光秀殿の隊程ではござらぬが、良き放ち手は100近くになりました。これも煙硝が豊富である故」
現在、織田家の鉄砲所持数、1500。
内、500は明智機動部隊が装備。
残る1000のうち、600の足軽鉄砲隊を佐々成政の元で、野々村正成・福富秀勝とかいう威勢の良い連中が訓練している。
400はこの甲賀出身の髭面おじさんがまとめ上げて、実戦に投入できるようにまでなったんだ。
総員600の鉄砲隊。
うちは射手が200人しかいないから。1人2丁ちょっと。
長篠の戦いで使われた織田家の鉄砲は、実は1000丁くらいだったんだよ。何かの新しいWeb小説に出ていた。
実際、鉄砲って当たんない。
ある(小)説によれば、長篠の合戦で鉄砲傷で戦死した人数は500人程度。あとは撤退戦で首を取られているとか。
つまり鉄砲って士気を破砕する兵器っていう事。実際の殺傷能力は低いんだよ。特にこの時代の足軽は、まだ鉄砲の音に慣れていない
だが!
うちの鉄砲隊にはライフル銃がいくつかある。
これで敵の武将を狙い撃ち。その指揮能力と継戦能力を奪う。
「では、手筈通り。我が隊の狙撃から開始。一斉射撃の後。横やりを騎馬隊を両脇より回り込ませて、一気に勝敗を決しましょうぞ!」
『悟りの仮面』を脱いだ池田君が豪快に笑う。そのうち白目で「光、恐ろしい子!」とか言いそう。ここ千草城だし~
「横槍の栄誉は……あ奴でしょうか?」
一益くん。
なんだか不安そう。
だよね。
あいつだよ。
鼻ほじほじ男。慶次。
あいつは一益の親戚だから。
やらかさないか心配なんでしょ。
「大丈夫でござる。手綱はしっかりと握り申す故。安心されよ」
全く、安心できないけど、こう言っておこう。
半兵衛も「うんうん」頷いている。「慶次郎殿は殿に心服しています故」とかなんとか。
どうしてこうも部下が全幅の信頼を預けてくるんだ?
俺。ただのヲタクだよ?
戦国一二を争う策士と、超有名なひねくれ傾奇者がどうして忠誠度MAXなんだ?
ぼ、ぼろ出さないか心配。
あとでアゲハに胃薬作ってもらお……
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