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第13章:天下を光っつ光っつにしてやんよw
6畳1間の夢(最終話です)
しおりを挟む「うぉりゃああああ!!」
義元との戦闘が続いている一本道を渡り、天海の潜む藪に突っ込んで崖を登っていく。
奴がいる付近の藪がごそごそ動いている。
逃がすかよ!
俺は奴の進む方向へ回り込んだ。
「逃がすと思ったか。この糞坊主! 未来から追ってきてやったぜ」
「……」
僧形の男が這ってこちらへ向かって来る。
その顔は100歳をとうに超えたように小さくなっている。体はシューシュー音がして小さくなっていく。
まるで超人ロッ君みたいな音だな。
こっちの悪党は逆にしおれていくが。
きっと一人寂しく、ぼっちでロッ君していたんだろうな。
「ち、力を使い過ぎた……無念じゃ」
「へぇ~、そりゃそうだよね。普通の人間が往復400年以上タイムリープして平気なはずないよね」
結局、何かを代償にしないと、あの一子相伝の被害者はスキルを使えないらしい。時渡りの代償は、この肉体の老化か。
「お前の望みは潰えた。これからこの日本はサブカルに覆われて大繁栄を遂げるんだ。安心してくたばれ」
「……忌の際に、ヲタクは何というセリフを言うのだ」
「お前、言う気はないだろうけど教えてやる。あいむゆあふぁ~ざ~、だ」
「では儂らしく訳して言うてやる。儂はお前の父だ……」
俺はこいつの正体を知った時から、そのセリフを待っていた。だから思いっきり言ってやったんだ。
「おまえは俺の父なんかじゃない。俺の父はな。義父の杉原定利、剣術の師、上泉信綱、そして第六天魔王織田信長だ!」
ずざっ!
しなびた体を刃で刺す。
しなびているとは思えないほどの血が飛び散る。
こいつのお蔭でどれだけの無駄な血が流れたか。
俺が直接手を下したものが多いけど、そんなことしなくても治めることはできたはず。こいつが陰で暗躍して被害をさらに大きくした。
せっかく北伊勢の一向一揆とか、伊賀攻め、雑賀攻めを無くすことが出来たのに。比叡山がそむいたのも、こいつのせいだろう。
将軍を押さえ込むこともできただろうし、ひそかに暗殺もできたかもしれない。それが出来なかったのはこいつのせいだ。
これでいいかい? 信ちゃん。
天下はこのまま無事統一することできるよ。良かったね。安心して成仏してね。きっと誰かが天下を統一して……
……誰が天下を取るの?
信ちゃんいなくなっちゃったし、秀吉もいない?
家康君、まだ若いし、50万石くらいしかないから天下は取れないよね。
俺?
光秀?
利家のに~ちゃんはすぐ「この北陸は十兵衛のもんだぜ」とかいって俺に差し出すだろうしな。
伊賀甲賀はなぜか俺に歯向かわない。
伊勢は完全に平民が俺びいき。
美濃も尾張も文化的に俺の支配下。
数えてみると、400万石超えている?
金融産業も抑えているし、日本のGDPの1/3は手中にある。
これ1576年に帰った途端「あなたが天下人、確定! おめでとうございます!」とか割玉から垂れ幕と紙吹雪が落ちてくる的な状況?
か、帰りたくない。
天下人は嫌でござる。
拙者、働きたくないでござる!
でも、寧々ちゃんとかアゲハ置いてきちゃったし。
ここにいては『俺』の邪魔になるだけ。
なんとか逃げる方法はないもんか?
◇ ◇ ◇ ◇
「ただいま~。今日も疲れちゃったよ。寧々ちゃん、今日のおかずは何?」
俺は6畳間に入っていく。
フローリングの床に、質素な格安ジュータン。
遂に使えるようになったシリコンで作られたフィギュアがずらりと並ぶ板ガラス付き木製ラック。
もちろん壁にはアイドルポスター。最近結成された『明智坂47』の写真だ。
で。
片隅にはベビーサークル。
その上には自作ベビーメリーがカラコロと音を立てる。
その下には寧々ちゃんそっくりの顔をした女の子。
奥のキッチンでは寧々ちゃんが、アゲハに料理を教えてパニックを起こしている。相変わらずの風景。
俺、光秀。
遂に天下人に祭り上げられちゃいました。
最低でも「サブカル教教祖にはなりたくねぇええ!」と懇願したら、それだけは許してくれたよ、みんな。
冬木のやつに教祖代理を押し付けた。
そのかわり、この巨大な江戸城で天下人として新規採用されました。
8時から5時までのパートタイマー。
え? それって正規社員じゃね?
そう思うよね。
ベル持ちでいつでも呼び出されるんです。『5時から男』になりたかったんですけど、光秀。
天下人なんか重役出勤でいいんじゃね?
と、思っていた光秀が甘かったです。はい。
自分で作った稟議書制度に首を絞められている今日この頃。ハンコの豆ダコが出来ました。
信ちゃんの葬儀が行われて、織田家をどうするか、例の『清須会議』でもめるかと思ったら、最大のライバルになるはずの柴田のおじさまいないし。
利家は家来とか言い張るし。
ハスキー滝川は、「性に合わない」とか姿をくらますし。
家康君は俺に助けられた恩を返さねばと、家来から突き上げを喰らったそうで。
もうライバル、誰もいないんです。
信雄、信考とかは若すぎ。18じゃ誰も相手にしてくんない。
皆に織田家の勢力を光秀に明け渡せと迫られ引っ込みました。
みんな、なぜか「あのときの借りを返すぞ」とか、昔話をするんだよな。
俺、そんな大層な事、なんかしてあげたっけ?
とにかくだ。
でっかい江戸城の片隅にヲタク臭のする空間をでっち上げたぞ!
やっと天下を平定した気分。
この6畳1間が俺の天下だ。
「光秀様。本日は城内の長屋街を巡回していただきとうございまする」
入り口から石田三成の呼び出し。
「わかった、わかった。もう残業代記録しておいてよね」
「は。1時間983円でございますね」
「やっすいな~」と思いつつ、自分で決めた最低賃金に思いを馳せる。
「天下人は最低賃金で働く事」
こう決めちゃいました。
これで誰もやり手がいなくなれば謀反なんかないかな~っと、甘い考え。でもなんかみんな「なんと名君であらされるか!」とか言うけどね。当たり前でしょ? 人間、6畳1間で十分よ。
家なんか広いと掃除が大変なだけ。
「お~。今日も腰痛患者さんいっぱいだね。針は細いのちゃんと使ってよね。あと加熱殺菌」
整形医院を、なぜか大奥で始めちゃった黒古。
大奥っていったって、うちの身内だけだよ。
「外来患者さんが多くってね。江戸の大工さんとか怪我が絶えなくてね~」
その隣からは三味線が聞こえる。
「雪風。人形浄瑠璃は流行ってるか?」
「もう弟子がいっぱい来ちゃって大変よ! もっと入城管理しっかりしなさいよねっ!」
糸を何十本も操りながら三味線や人形を操っている元忍者。
「慶次! 傾奇踊りは人気が出たか~?」
「殿さんよ、何とかしてくれ。みんなMM踊りの方がいいとかぬかしおって。俺は引退するぞ!」
俺は奥の療養所に入る。
半兵衛っちが休んでいる所だ。
「半兵衛っち。体の調子は大丈夫か?」
「は……い。まだ死ねませぬ。これからもっと……」
「無理するなよ。天下は平定できたんだからゆっくり休んでね」
「いえ、殿から、もっともっと戦の神髄を……」
そう言って、鉄の心臓5を出して来る。
「さあ、ゲームを始めましょう、殿」
しかたないな。
また夢の戦、仮想の戦を始めるかね。
ゲームはヲタクの神髄。
人生はゲームだよね。
遊び心で渡っていこうよ。
偽光秀 『完』
10
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