隷属したのは元勇者!?

くろこう

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召喚

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 「よし、書けました。」
 そんな可愛い声を出しながら大きな紙に魔法陣を書いた銀髪ショートの女の子の名はシャル・L・カナデリア。今年メリーナ魔法学院高等部に進級した王国の第3王女だ。今シャルのいる場所は城の中にある書庫。ここが唯一シャルがシャルで居られる所。周りを見渡せばシャルの周りには何冊も積まれた本がのタワーのようになっていた。
 「これで上手くいくはずです、お願いします。」
 祈るように手を顔の前で組みながら魔力を今し方書いた魔法陣に注ぎ込む。シャルの魔力が込められた魔法陣が徐々に赤く光り出した。
 あまりの眩しさで目を開けていられなくなったシャルは本能的に目を固く瞑った。
 赤く光っていた魔法陣の光が消えていき恐る恐る固く瞑っていた目を開けると目の前には自分とおなじ年頃の男の子が立ってこっちに微笑みかけていた。
 「どうもお初にお目にかかります。呼ばれ、飛び出て、参上しました。僕の名前は奏。君たちの国でいう勇者…いや、元勇者だよ主様。」
 自分のことを奏と名乗った少年はとても綺麗なお辞儀を見せた。
 「勇者?」
 私が創った魔法陣は精霊契約をするためのもの、勇者なんて呼ぶようなのではなかったはずです。
 今シャルの頭の中では自分が見つけた本と内容が違ったことと目の前の少年が自分のことを勇者などと変なことを言ってることで頭がパンパンで考えが全然まとまらない。
 「違うよ、勇者じゃなくて元勇者だよ。もっというと勇者と呼んでいたのは周りの人で僕はどっちかっていうと愚者かな?」
 そんな風におどけてみせる奏にシャルは少しずつ理解と矛盾をみつけていく。
 「あなたは私が召喚した精霊ではないのですか?」
 まずは自分が目的としていた精霊なのかどうかを聞いてみることにした。
 昔文献で読んだことがあります。精霊は嘘がとても好きでよく人を騙して遊んでいたと。もしかしたら目の前のカナデという少年は嘘をついて私を混乱させて遊んでいるのかもしれません。
 「今言ったでしょ。僕は君たちの国でいう元勇者、それにあんな魔法陣で精霊なんて呼べないよ。念を押して言っとくけど嘘じゃないからね。」
 シャルにはカナデが嘘をついているようには見えなかった。
 「もしかして本当に精霊じゃないんですか!」
 「最初からそう言ってるじゃん。」
 「でもでも勇者様は1000年前に魔王を討伐した後にこの国を滅ぼそうとして先代の王が討ち取ったって。」
 言い伝えでは勇者が召喚されたのは約1000年前で魔王を討伐した後に何故かこの王国を滅ぼそうとし、その当時の王が討ち取ったとされている。 
 「何それ、面白い!僕があんなデブのブス王に負けるわけないじゃん。それに僕は魔王なんて討伐してないよ。」
 えっ?えっ?分からない。カナデ様が嘘ついているようには見えない。でも全部が全部本当とも限らない。だってもし勇者が魔王を討伐していなかったら誰が討伐したのでしょう。
 「わかる、わかるよ主様の心の声が。そしたら1個だけネタばらしをしてあげよう。ぼくは魔王を討伐したんじゃなくて封印したんだよ。封印魔法でね。」
 「封印魔法なんて聞いたことありません。……でも勇者様は誰にも使えない特殊な魔法を使用出来るって文献で読んだことが。」
 「飲み込みが早くて助かるよ主様、そんな主様にもう1つサービスで教えちゃう。魔王は近いうちに封印が解けて復活しまーす!」
 「えっ・・・!?」
 人間とは本気で驚くとフリーズしてしまうという事がわかりました。
 まだ目の前の少年が本当に元勇者であるかは断言できない。しかし、本当に元勇者であり今言ったことが本当ならこれはとても大きな一大事一刻も早く国王に知らせなければ。
 そう考えるとシャルは全速力で王の元へ行こうと走り出そうとしたがその進路をカナデに塞がれる。
 「すいません、そこをどいてください。一刻も早く国王に知らせなければ。」
 そう言いカナデに道をあけてもらおうとするがカナデはただ笑ったまま道を開けようとしない。
 「ちょっと待ってよ。僕を召喚したのに、僕を無視して王の所に行こうとしないでよ。それに君が言ったところで誰も君の言葉に耳を傾けようとはしないよ。」
 最初は邪魔しないでと思っていたが最後の一言でシャルの身体がその場に固まった。
 「どういう、意味ですか。」
 肩を震わせながら 今言った言葉の説明を求める。
 「どういう意味もないも君が1番わかってるんじゃないかな。この城でのみんなの態度や言動。あわやメイドにまでさり気ないいじめをされ気づいているのに気づかない振りをして自分を押し殺して生きてきた。違うかな?」
 「あなたはどこで…。」
 「だから言ったでしょ。僕は君たちの国でいう元勇者だってね。そしてこの城の地下で自分を封印してクソなこの国から逃げたのさ。だからこの1000年この城のみんなを見てきた。もちろん君のお母さんもね。」
 「カナデ様の話は信用できません。」
 「様なんて付けないでよ、それに信用出来ないなら君はなんでその場には立ち止まったのかな。それに信用出来ないなら僕は命を掛けよう。」
 「何を言っているんですか…。」
 突然のカナデの発言に少し困惑する。
 「何って君が信じないならなら僕の話が嘘なら僕の命を掛けようって言ってるんだよ。」
 「それはどうしたら証明できるんですか。」
 「悪いけど証明はできないかな。コレはいわば僕が嘘をついてないって言う誠意を見せてるのさ。」
 「お母様はどうなったのですか。」
 確実には信用はしてない。でも嘘をついているようにはやはりどうしても見えなかった。
 昔から気になっていた。物心着いた頃にはみんなから嫌われ、私の母親は処刑された、夜逃げした、病気で亡くなったなど色々聞かされたがどれが本当か分からなかった。
 「ということは僕を信用してくれるんだね、嬉しいよ。でもごめんね、申し訳ないけどそれは今は話せないかな。それにどうするの、王に言いに行くのかな?」
 そうでした、お母様のことも大切ですが、少しでも可能性のある話を少しでも可能性のある元勇者が話したのです。一刻も早く国王に知らせなければ。
 「私はそれでもこの国の第3王女です。民が危険にさらされるかもしれないとわかっていながら聞かなかったことにする訳には行きません。カナデさんも一緒に来て説明していただけないでしょうか。」
 「悪いけど僕はここにいるよ、王に話したらここに戻って来て。僕との契約の話も終わってないからね。」
 契約?そんな話したでしょうか。でも今はそれよりも魔王の話を言いに行かなければ。
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