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「エリアーナ様、長老! とんでもねえ朗報だ!」
息を切らして執務室に飛び込んできたのは、地質調査に出ていたボルガンだった。彼の後ろには、同じく興奮した様子のヒューゴもいる。その手には、泥に汚れた奇妙な岩の塊がいくつか握られていた。
「ボルガン殿、どうしたのですか、そんなに慌てて」
「慌てもするさ! 見てくれ、これを!」
ボルガンは持っていた岩の一つを、執務机の上にドンと置いた。一見するとただの赤黒い石だが、内部に金属質のものが血管のように走っている。
「これは……鉄鉱石の一種かしら? でも、ヴァイスランド鋼の原料とは少し違うようね」
私がそう言うと、ボルガンはにやりと口の端を吊り上げた。
「ただの鉄鉱石じゃねえ。俺たちドワーフの古文書にだけ記されている、幻の金属。『ヒヒイロカネ』の原石だ!」
「ヒヒイロカネ?」
聞き慣れない名前に、私は首を傾げた。執務室にいたギムリ長老も、ボルガンの言葉に目を見開いている。
「ボルガン、それはまことか! 古文書にしか残っておらぬ、あの神々の金属が……!」
「ああ、長老! この俺の目が見間違えるはずがねえ! こいつは正真正銘、ヒヒイロカネだ!」
ボルガンの説明では、ヒヒイロカネは鋼鉄の数倍の強度と羽毛のような軽さを持つ。そして何よりも、あらゆる魔力をほぼ完璧な効率で伝導させるという、究極の金属らしかった。
「こいつがあれば、俺が言っていた『浮遊のルーン』と『怪力のルーン』を完璧な形で刻むことができる! いや、それどころか、あんたが言ってた『オリハルコン・アダマント』の核となる素材にもなり得る! こいつは、俺たちの計画を数十年は前倒しにできる、とんでもねえ代物なんだよ!」
ボルガンは、まるで恋人を見つめるような熱い眼差しで、その原石を撫でている。ヒューゴも、興奮を隠しきれない様子で続けた。
「それだけではありません、エリアーナ様。この鉱脈を発見した場所こそが、縦坑を掘るのにまさに最適な場所だったのです!」
彼は持っていた地図を机の上に広げた。そこには、村の東、森を抜けた先にある盆地が示されている。
「この盆地の地下には、非常に安定した巨大な岩盤が広がっています。そして、その真下を、この土地で最も強力な魔力の流れ――いわゆる『龍脈』が通っているのです。この龍脈のエネルギーを利用すれば、掘削作業に必要な動力を、外部から供給することなく半永久的に得られます!」
二つの、信じられないほどの朗報。幻の金属の発見と、計画に最適な場所の特定。まるで、この計画が大地そのものに祝福されているかのようだった。
「素晴らしいわ、二人とも! 本当に見事な働きよ!」
私は手放しで彼らを称賛した。二人は少し照れくさそうに、しかし誇らしげに胸を張った。
「よし、決めたわ。王都への食料輸送計画と並行して、『地下大動脈計画』も即座に始動します! ヒューゴ、ラルス、あなたたちには、すぐに掘削現場の基盤整備に取り掛かってもらうわ。ボリン、あなたとボルガン殿には、ヒヒイロカネを使った、新しい掘削機の開発を!」
私の号令に、その場にいた全員が力強く頷いた。
***
計画が始動してから数週間後。掘削現場から緊急の報せが届いた。
「エリアーナ様、長老! 掘削の途中でとんでもねえもんが見つかったぞ!」
現場に駆けつけると、ボルガンが興奮気味に出迎えた。彼は手にしていたものを差し出す。それはこれまで見たこともない金属で作られたプレートで、奇妙な模様がびっしりと刻まれていた。ドワーフのルーンとも古代遺跡で見た文字とも違う。幾何学的で、どこか未来的な印象を与える。プレートそのものが微かに魔力を帯びて淡い光を放っていた。
「これは……? 一体どこで……」
「地下三百メートルの地点だ。頑丈な岩盤を掘り進めていたら、突然このプレートで覆われた巨大な空洞に行き当たったんだ。その空洞の中には……信じられねえようなもんが眠ってやがった」
私はそのプレートを手に取った。ひんやりとしているが、金属特有の冷たさとは違う。まるで生きているかのような微かな温もりを感じる。
「ギムリ長老、この文字や素材に心当たりはありますか?」
私が尋ねると、ギムリ長老はその豊かな白髭を揺らし、プレートを食い入るように見つめ、やがてゆっくりと首を横に振った。
「いや……。我らドワーフが数千年かけて蓄積してきた知識の、どの頁にもこのようなものは記されておりませぬ。ルーン文字とは体系が全く異なる。これは、我らの文明よりもさらに古い、あるいは全く異質の文明の産物やもしれませぬな」
「異質の文明……。ボルガン、今すぐその場所へ案内しなさい。この目で確かめる必要があります」
「おう、待ってました!」
事を急ぐため、私とシラス、ギムリ長老、ボルガン、そして技術者代表のボリンとヒューゴは、シルヴァヌス号の試作機である小型蒸気機関車で東の盆地へと向かった。
現場に到着すると、そこには巨大な掘削機が鎮座し、その横に直径三十メートルほどの深い縦坑が口を開けている。私たちは作業用の昇降機に乗り込み、薄暗い縦坑をゆっくりと降りていった。
やがて昇降機が底に着く。目の前にはボルガンが話していた通り、未知の金属プレートで完全に覆われた壁が広がっていた。その表面は滑らかで、継ぎ目一つ見当たらない。
「これが……。信じられんな。これほどの大きさの金属を、どうやって加工し、ここまで運んできたというのだ……」
ボリンが鍛冶師としての驚愕の声を上げる。
「問題は、この先だ」
ボルガンが壁の中央部分を指差した。そこには彼が持ち帰ったものと同じプレートがはめ込まれており、それが扉の役割を果たしているようだった。
「この扉、俺たちの道具じゃ傷一つつけられなかった。びくともしねえんだ」
私は扉に近づき、そっと手を触れて創成魔法を発動させた。私の魔力が、扉の内部構造を解析していく。特定の魔力パターンと物理的なキーが組み合わさなければ開かない、極めて高度な錠前だ。
私はボルガンが持っていたプレートを返してもらうと、扉の中央にある窪みにそれをはめ込んだ。カチリ、と心地よい音がして、プレートは吸い込まれるようにぴったりと収まった。
次に私は、創成魔法で自らの魔力の波長を、この扉が要求するパターンへと精密に調整していく。指先から淡い蒼色の光が放たれ、プレートに刻まれた幾何学模様の溝をなぞった。すると、模様が一つ、また一つと光を放ち始め、やがて扉全体がまばゆい光に包まれた。
「ゴォォォン……」
低い、しかし荘厳な音と共に、巨大な金属の扉が滑るように静かに内側へと開いていった。
「お、開いた……!」
「すげえ……エリアーナ様は、やっぱり何でもできちまうんだな!」
ボリンたちが驚きの声を上げる。扉の向こう側には、信じられないような光景が広がっていた。そこは、金属と水晶で構成された未来的な空間だった。壁や天井は滑らかに磨き上げられ、塵一つない。一定間隔で配置された巨大な水晶が、まるで太陽光そのもののように、温かく優しい光を放っている。
「な、なんだ、ここは……。まるで神々の住処ではないか……」
ギムリ長老が呆然と呟いた。私たちは恐る恐るその内部へと足を踏み入れる。通路の壁には、私たちが理解できない複雑な図形や数式のようなものが無数に描かれていた。
どれくらい歩いただろうか。やがて私たちは、遺跡の中心と思われるドーム状の巨大な広間へとたどり着いた。
広間の中央には、直径五十メートルはあろうかという巨大な球体状の装置が、静かに浮かんでいた。その表面は磨き上げられた黒曜石のようで、内部からは青白い光が脈動するように明滅している。装置の周囲には、無数の光の粒子がまるで銀河のようにゆっくりと漂っていた。
その圧倒的で神秘的な光景に、私たちはただ立ち尽くす。私が装置に近づこうとした、その時だった。
球体状の装置が脈動を強め、私たちの目の前に、空間から直接、立体的な映像が浮かび上がった。映し出されたのは、人間ともドワーフとも、エルフとも異なる、背が高く優美な体つきをした知的生命体の姿だった。
『……ようこそ、目覚めし子らよ』
穏やかで澄み切った声が、脳内に直接響いてくる。
『我らは、かつてこの星を訪れた者。「星の民」と名乗ろう』
『我らがこの星に降り立った時、この星の生命は、まだ揺りかごの中で眠っていた。我らは、その幼い生命の進化に干渉することなく、この地下深くに観測所を築き、静かにその成長を見守ることを選んだ』
映像は、古代の地球の姿を映し出す。
『しかし、この星は若く、そして不安定だった。そこで我らは、この星の地脈エネルギー――龍脈を調整し、大規模な天変地異を防ぐための装置を、ここに遺すことにした。それが、この『アーク』だ』
人物は、背後に浮かぶ巨大な球体を示した。
『このアークは、この星の心臓そのもの。いつかこの星の知的生命体が、我らの遺産を正しく受け継ぎ、この星を守ってくれる日が来ることを信じていた』
人物の視線が、まっすぐに私に向けられた。
『そして今、その時が来たようだ。その強大で純粋な創成の力。あなたこそ、我らが待ち望んでいた、この星の新たな管理者だ』
「私が……管理者……?」
『そうだ。アークの制御権限を、あなたに譲渡する。これより、この星の未来は、あなたとその仲間たちの手にかかっている』
その言葉と共に、映像の人物がそっと手を差し伸べた。球体状の装置から一筋の眩い光が放たれ、まっすぐに私の胸へと吸い込まれていく。
「――っ!」
瞬間、膨大な情報が脳内に流れ込んできた。アークの操作方法、この遺跡に眠る超古代の科学技術、そして、この星が誕生してから現在に至るまでの、気の遠くなるような時間の記録。私の創成魔法がその情報を瞬時に整理し、完全に私の知識として定着させていく。
「これが……星の民の遺産……」
これは、ただの古代遺跡ではない。この星そのものの運命を左右するほどの、超技術の結晶なのだ。ギムリ長老やボリンたちは、何が起きたのか理解できず、ただ呆然と私と巨大な球体を見比べている。
息を切らして執務室に飛び込んできたのは、地質調査に出ていたボルガンだった。彼の後ろには、同じく興奮した様子のヒューゴもいる。その手には、泥に汚れた奇妙な岩の塊がいくつか握られていた。
「ボルガン殿、どうしたのですか、そんなに慌てて」
「慌てもするさ! 見てくれ、これを!」
ボルガンは持っていた岩の一つを、執務机の上にドンと置いた。一見するとただの赤黒い石だが、内部に金属質のものが血管のように走っている。
「これは……鉄鉱石の一種かしら? でも、ヴァイスランド鋼の原料とは少し違うようね」
私がそう言うと、ボルガンはにやりと口の端を吊り上げた。
「ただの鉄鉱石じゃねえ。俺たちドワーフの古文書にだけ記されている、幻の金属。『ヒヒイロカネ』の原石だ!」
「ヒヒイロカネ?」
聞き慣れない名前に、私は首を傾げた。執務室にいたギムリ長老も、ボルガンの言葉に目を見開いている。
「ボルガン、それはまことか! 古文書にしか残っておらぬ、あの神々の金属が……!」
「ああ、長老! この俺の目が見間違えるはずがねえ! こいつは正真正銘、ヒヒイロカネだ!」
ボルガンの説明では、ヒヒイロカネは鋼鉄の数倍の強度と羽毛のような軽さを持つ。そして何よりも、あらゆる魔力をほぼ完璧な効率で伝導させるという、究極の金属らしかった。
「こいつがあれば、俺が言っていた『浮遊のルーン』と『怪力のルーン』を完璧な形で刻むことができる! いや、それどころか、あんたが言ってた『オリハルコン・アダマント』の核となる素材にもなり得る! こいつは、俺たちの計画を数十年は前倒しにできる、とんでもねえ代物なんだよ!」
ボルガンは、まるで恋人を見つめるような熱い眼差しで、その原石を撫でている。ヒューゴも、興奮を隠しきれない様子で続けた。
「それだけではありません、エリアーナ様。この鉱脈を発見した場所こそが、縦坑を掘るのにまさに最適な場所だったのです!」
彼は持っていた地図を机の上に広げた。そこには、村の東、森を抜けた先にある盆地が示されている。
「この盆地の地下には、非常に安定した巨大な岩盤が広がっています。そして、その真下を、この土地で最も強力な魔力の流れ――いわゆる『龍脈』が通っているのです。この龍脈のエネルギーを利用すれば、掘削作業に必要な動力を、外部から供給することなく半永久的に得られます!」
二つの、信じられないほどの朗報。幻の金属の発見と、計画に最適な場所の特定。まるで、この計画が大地そのものに祝福されているかのようだった。
「素晴らしいわ、二人とも! 本当に見事な働きよ!」
私は手放しで彼らを称賛した。二人は少し照れくさそうに、しかし誇らしげに胸を張った。
「よし、決めたわ。王都への食料輸送計画と並行して、『地下大動脈計画』も即座に始動します! ヒューゴ、ラルス、あなたたちには、すぐに掘削現場の基盤整備に取り掛かってもらうわ。ボリン、あなたとボルガン殿には、ヒヒイロカネを使った、新しい掘削機の開発を!」
私の号令に、その場にいた全員が力強く頷いた。
***
計画が始動してから数週間後。掘削現場から緊急の報せが届いた。
「エリアーナ様、長老! 掘削の途中でとんでもねえもんが見つかったぞ!」
現場に駆けつけると、ボルガンが興奮気味に出迎えた。彼は手にしていたものを差し出す。それはこれまで見たこともない金属で作られたプレートで、奇妙な模様がびっしりと刻まれていた。ドワーフのルーンとも古代遺跡で見た文字とも違う。幾何学的で、どこか未来的な印象を与える。プレートそのものが微かに魔力を帯びて淡い光を放っていた。
「これは……? 一体どこで……」
「地下三百メートルの地点だ。頑丈な岩盤を掘り進めていたら、突然このプレートで覆われた巨大な空洞に行き当たったんだ。その空洞の中には……信じられねえようなもんが眠ってやがった」
私はそのプレートを手に取った。ひんやりとしているが、金属特有の冷たさとは違う。まるで生きているかのような微かな温もりを感じる。
「ギムリ長老、この文字や素材に心当たりはありますか?」
私が尋ねると、ギムリ長老はその豊かな白髭を揺らし、プレートを食い入るように見つめ、やがてゆっくりと首を横に振った。
「いや……。我らドワーフが数千年かけて蓄積してきた知識の、どの頁にもこのようなものは記されておりませぬ。ルーン文字とは体系が全く異なる。これは、我らの文明よりもさらに古い、あるいは全く異質の文明の産物やもしれませぬな」
「異質の文明……。ボルガン、今すぐその場所へ案内しなさい。この目で確かめる必要があります」
「おう、待ってました!」
事を急ぐため、私とシラス、ギムリ長老、ボルガン、そして技術者代表のボリンとヒューゴは、シルヴァヌス号の試作機である小型蒸気機関車で東の盆地へと向かった。
現場に到着すると、そこには巨大な掘削機が鎮座し、その横に直径三十メートルほどの深い縦坑が口を開けている。私たちは作業用の昇降機に乗り込み、薄暗い縦坑をゆっくりと降りていった。
やがて昇降機が底に着く。目の前にはボルガンが話していた通り、未知の金属プレートで完全に覆われた壁が広がっていた。その表面は滑らかで、継ぎ目一つ見当たらない。
「これが……。信じられんな。これほどの大きさの金属を、どうやって加工し、ここまで運んできたというのだ……」
ボリンが鍛冶師としての驚愕の声を上げる。
「問題は、この先だ」
ボルガンが壁の中央部分を指差した。そこには彼が持ち帰ったものと同じプレートがはめ込まれており、それが扉の役割を果たしているようだった。
「この扉、俺たちの道具じゃ傷一つつけられなかった。びくともしねえんだ」
私は扉に近づき、そっと手を触れて創成魔法を発動させた。私の魔力が、扉の内部構造を解析していく。特定の魔力パターンと物理的なキーが組み合わさなければ開かない、極めて高度な錠前だ。
私はボルガンが持っていたプレートを返してもらうと、扉の中央にある窪みにそれをはめ込んだ。カチリ、と心地よい音がして、プレートは吸い込まれるようにぴったりと収まった。
次に私は、創成魔法で自らの魔力の波長を、この扉が要求するパターンへと精密に調整していく。指先から淡い蒼色の光が放たれ、プレートに刻まれた幾何学模様の溝をなぞった。すると、模様が一つ、また一つと光を放ち始め、やがて扉全体がまばゆい光に包まれた。
「ゴォォォン……」
低い、しかし荘厳な音と共に、巨大な金属の扉が滑るように静かに内側へと開いていった。
「お、開いた……!」
「すげえ……エリアーナ様は、やっぱり何でもできちまうんだな!」
ボリンたちが驚きの声を上げる。扉の向こう側には、信じられないような光景が広がっていた。そこは、金属と水晶で構成された未来的な空間だった。壁や天井は滑らかに磨き上げられ、塵一つない。一定間隔で配置された巨大な水晶が、まるで太陽光そのもののように、温かく優しい光を放っている。
「な、なんだ、ここは……。まるで神々の住処ではないか……」
ギムリ長老が呆然と呟いた。私たちは恐る恐るその内部へと足を踏み入れる。通路の壁には、私たちが理解できない複雑な図形や数式のようなものが無数に描かれていた。
どれくらい歩いただろうか。やがて私たちは、遺跡の中心と思われるドーム状の巨大な広間へとたどり着いた。
広間の中央には、直径五十メートルはあろうかという巨大な球体状の装置が、静かに浮かんでいた。その表面は磨き上げられた黒曜石のようで、内部からは青白い光が脈動するように明滅している。装置の周囲には、無数の光の粒子がまるで銀河のようにゆっくりと漂っていた。
その圧倒的で神秘的な光景に、私たちはただ立ち尽くす。私が装置に近づこうとした、その時だった。
球体状の装置が脈動を強め、私たちの目の前に、空間から直接、立体的な映像が浮かび上がった。映し出されたのは、人間ともドワーフとも、エルフとも異なる、背が高く優美な体つきをした知的生命体の姿だった。
『……ようこそ、目覚めし子らよ』
穏やかで澄み切った声が、脳内に直接響いてくる。
『我らは、かつてこの星を訪れた者。「星の民」と名乗ろう』
『我らがこの星に降り立った時、この星の生命は、まだ揺りかごの中で眠っていた。我らは、その幼い生命の進化に干渉することなく、この地下深くに観測所を築き、静かにその成長を見守ることを選んだ』
映像は、古代の地球の姿を映し出す。
『しかし、この星は若く、そして不安定だった。そこで我らは、この星の地脈エネルギー――龍脈を調整し、大規模な天変地異を防ぐための装置を、ここに遺すことにした。それが、この『アーク』だ』
人物は、背後に浮かぶ巨大な球体を示した。
『このアークは、この星の心臓そのもの。いつかこの星の知的生命体が、我らの遺産を正しく受け継ぎ、この星を守ってくれる日が来ることを信じていた』
人物の視線が、まっすぐに私に向けられた。
『そして今、その時が来たようだ。その強大で純粋な創成の力。あなたこそ、我らが待ち望んでいた、この星の新たな管理者だ』
「私が……管理者……?」
『そうだ。アークの制御権限を、あなたに譲渡する。これより、この星の未来は、あなたとその仲間たちの手にかかっている』
その言葉と共に、映像の人物がそっと手を差し伸べた。球体状の装置から一筋の眩い光が放たれ、まっすぐに私の胸へと吸い込まれていく。
「――っ!」
瞬間、膨大な情報が脳内に流れ込んできた。アークの操作方法、この遺跡に眠る超古代の科学技術、そして、この星が誕生してから現在に至るまでの、気の遠くなるような時間の記録。私の創成魔法がその情報を瞬時に整理し、完全に私の知識として定着させていく。
「これが……星の民の遺産……」
これは、ただの古代遺跡ではない。この星そのものの運命を左右するほどの、超技術の結晶なのだ。ギムリ長老やボリンたちは、何が起きたのか理解できず、ただ呆然と私と巨大な球体を見比べている。
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