3 / 243
第1章 おじさんと異世界の人々
第3話
しおりを挟む
翌朝。
軽く伸びをして、小屋を出た俺は、昨日作った畑を眺めた。
「……やっぱ、悪くねえな」
コーヒーの木も、煙草の葉も、朝露をまとって瑞々しく輝いている。万能生成スキルの育成効果が効きすぎてる気もするが、細かいことは気にしない。
もう少し畑を広げたほうがいいかもしれない。コーヒー豆も煙草葉も、消耗品だ。俺が満足する量を確保するには、いまの倍はいる。
俺は万能生成スキルを使って、畑の拡張を始めた。雑草や小石を取り除き、土をふかふかに耕し、種をまく。その作業も、意外と悪くない。
「まあ、サボらず世話はしねえとな……」
ぼそりと呟いて、種に軽く水をやる。 不思議なもので、こういう地道な作業も、やってみると案外楽しい。なにより、誰にも邪魔されない。この自由こそ、俺が一番欲しかったものだ。
◇
昼前。
「よし、今日も一杯やるか」
俺は小屋に戻り、昨日収穫したコーヒー豆を手挽きミルに放り込んだ。ごりごりと心地よい音を立てながら、豆を挽いていく。
湯を沸かし、丁寧にドリップする。立ちのぼる香りに、自然と顔がほころんだ。
一口含む。
「……うん。やっぱ、うめえな」
昨日よりも少しだけ、味に深みが出ている気がする。豆の熟成が進んだせいかもしれない。いや、たぶん、俺が淹れる手つきに慣れたからだ。
煙草も、昨日とは違う品種を試してみた。こっちはやや苦味が強いが、その分、吸いごたえがあった。
「ふぅー……」
紫煙を吐き出しながら、木の丸太にもたれかかる。
たったこれだけのことで、俺は今、心から満たされている。
◇
そのときだ。
「おーい!」
不意に、遠くから声が聞こえた。どうやら、村の誰かがこっちに向かってきている。
「……んだ?」
俺は身を起こし、声のほうを見た。
近づいてきたのは、見覚えのある顔。村の若者、ギルという奴だ。筋肉質で、日に焼けた顔をしている。
「おっさん、ここにいたのか!」
ギルは息を切らせながら駆け寄ってきた。
「村長が呼んでるぞ。ちょっと手伝ってほしいってよ」
「手伝い、ねぇ……何やるんだ?」
「んー、羊が逃げたとかなんとか。おっさん、体力ありそうだしさ!」
「……俺、農作業要員じゃなかったか?」
肩をすくめて見せると、ギルはにやにや笑った。
「ま、硬ぇこと言うなよ。すぐ終わるって!」
ったく。面倒事はごめんだが、村に世話になってる以上、無碍にもできねえ。
「わかったよ。どこ行きゃいい?」
「村の広場! すぐ来てくれよな!」
ギルはそう言い残して、また走り出していった。
俺は一息ついてから、煙草の火をもみ消し、立ち上がった。
「……まあ、体動かすのもたまにはいいか」
コーヒーカップを丸太の上に置き、腰の後ろで手を組んで、のんびりと村へ向かう。
──とはいえ、早く終わらせて、またコーヒー淹れたいところだ。
軽く伸びをして、小屋を出た俺は、昨日作った畑を眺めた。
「……やっぱ、悪くねえな」
コーヒーの木も、煙草の葉も、朝露をまとって瑞々しく輝いている。万能生成スキルの育成効果が効きすぎてる気もするが、細かいことは気にしない。
もう少し畑を広げたほうがいいかもしれない。コーヒー豆も煙草葉も、消耗品だ。俺が満足する量を確保するには、いまの倍はいる。
俺は万能生成スキルを使って、畑の拡張を始めた。雑草や小石を取り除き、土をふかふかに耕し、種をまく。その作業も、意外と悪くない。
「まあ、サボらず世話はしねえとな……」
ぼそりと呟いて、種に軽く水をやる。 不思議なもので、こういう地道な作業も、やってみると案外楽しい。なにより、誰にも邪魔されない。この自由こそ、俺が一番欲しかったものだ。
◇
昼前。
「よし、今日も一杯やるか」
俺は小屋に戻り、昨日収穫したコーヒー豆を手挽きミルに放り込んだ。ごりごりと心地よい音を立てながら、豆を挽いていく。
湯を沸かし、丁寧にドリップする。立ちのぼる香りに、自然と顔がほころんだ。
一口含む。
「……うん。やっぱ、うめえな」
昨日よりも少しだけ、味に深みが出ている気がする。豆の熟成が進んだせいかもしれない。いや、たぶん、俺が淹れる手つきに慣れたからだ。
煙草も、昨日とは違う品種を試してみた。こっちはやや苦味が強いが、その分、吸いごたえがあった。
「ふぅー……」
紫煙を吐き出しながら、木の丸太にもたれかかる。
たったこれだけのことで、俺は今、心から満たされている。
◇
そのときだ。
「おーい!」
不意に、遠くから声が聞こえた。どうやら、村の誰かがこっちに向かってきている。
「……んだ?」
俺は身を起こし、声のほうを見た。
近づいてきたのは、見覚えのある顔。村の若者、ギルという奴だ。筋肉質で、日に焼けた顔をしている。
「おっさん、ここにいたのか!」
ギルは息を切らせながら駆け寄ってきた。
「村長が呼んでるぞ。ちょっと手伝ってほしいってよ」
「手伝い、ねぇ……何やるんだ?」
「んー、羊が逃げたとかなんとか。おっさん、体力ありそうだしさ!」
「……俺、農作業要員じゃなかったか?」
肩をすくめて見せると、ギルはにやにや笑った。
「ま、硬ぇこと言うなよ。すぐ終わるって!」
ったく。面倒事はごめんだが、村に世話になってる以上、無碍にもできねえ。
「わかったよ。どこ行きゃいい?」
「村の広場! すぐ来てくれよな!」
ギルはそう言い残して、また走り出していった。
俺は一息ついてから、煙草の火をもみ消し、立ち上がった。
「……まあ、体動かすのもたまにはいいか」
コーヒーカップを丸太の上に置き、腰の後ろで手を組んで、のんびりと村へ向かう。
──とはいえ、早く終わらせて、またコーヒー淹れたいところだ。
556
あなたにおすすめの小説
科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜
難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」
高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。
だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや——
「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」
「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」
剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める!
魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」
魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」
神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」
次々と編み出される新技術に、世界は驚愕!
やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め——
「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」
最強の頭脳戦が今、幕を開ける——!
これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語!
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
異世界転移魔方陣をネットオークションで買って行ってみたら、日本に帰れなくなった件。
蛇崩 通
ファンタジー
ネットオークションに、異世界転移魔方陣が出品されていた。
三千円で。
二枚入り。
手製のガイドブック『異世界の歩き方』付き。
ガイドブックには、異世界会話集も収録。
出品商品の説明文には、「魔力が充分にあれば、異世界に行けます」とあった。
おもしろそうなので、買ってみた。
使ってみた。
帰れなくなった。日本に。
魔力切れのようだ。
しかたがないので、異世界で魔法の勉強をすることにした。
それなのに……
気がついたら、魔王軍と戦うことに。
はたして、日本に無事戻れるのか?
<第1章の主な内容>
王立魔法学園南校で授業を受けていたら、クラスまるごと徴兵されてしまった。
魔王軍が、王都まで迫ったからだ。
同じクラスは、女生徒ばかり。
毒薔薇姫、毒蛇姫、サソリ姫など、毒はあるけど魔法はからっきしの美少女ばかり。
ベテラン騎士も兵士たちも、あっという間にアース・ドラゴンに喰われてしまった。
しかたがない。ぼくが戦うか。
<第2章の主な内容>
救援要請が来た。南城壁を守る氷姫から。彼女は、王立魔法学園北校が誇る三大魔法剣姫の一人。氷結魔法剣を持つ魔法姫騎士だ。
さっそく救援に行くと、氷姫たち守備隊は、アース・ドラゴンの大軍に包囲され、絶体絶命の窮地だった。
どう救出する?
<第3章の主な内容>
南城壁第十六砦の屋上では、三大魔法剣姫が、そろい踏みをしていた。氷結魔法剣の使い手、氷姫。火炎魔法剣の炎姫。それに、雷鳴魔法剣の雷姫だ。
そこへ、魔王の娘にして、王都侵攻魔王軍の総司令官、炎龍王女がやって来た。三名の女魔族を率いて。交渉のためだ。だが、炎龍王女の要求内容は、常軌を逸していた。
交渉は、すぐに決裂。三大魔法剣姫と魔王の娘との激しいバトルが勃発する。
驚異的な再生能力を誇る女魔族たちに、三大魔法剣姫は苦戦するが……
<第4章の主な内容>
リリーシア王女が、魔王軍に拉致された。
明日の夜明けまでに王女を奪還しなければ、王都平民区の十万人の命が失われる。
なぜなら、兵力の減少に苦しむ王国騎士団は、王都外壁の放棄と、内壁への撤退を主張していた。それを拒否し、外壁での徹底抗戦を主張していたのが、臨時副司令官のリリーシア王女だったからだ。
三大魔法剣姫とトッキロたちは、王女を救出するため、深夜、魔王軍の野営陣地に侵入するが……
最弱弓術士、全距離支配で最強へ
Y.
ファンタジー
「弓術士? ああ、あの器用貧乏な最弱職のことか」
剣と魔法が全てを決める世界において、弓は「射程は魔法に及ばず、威力は剣に劣る」不遇の武器と蔑まれていた。
若き冒険者リアンは、亡き叔父から譲り受けた一振りの弓「ストーム・ウィスパー」を手に、冒険者の門を叩く。周囲の嘲笑を余所に、彼が秘めていたのは、世界をナノ単位で解析する「化け物じみた集中力」だった。
リアンの放つ一矢は、もはや単なる遠距離攻撃ではない。
風を読み、空間を計算し、敵の急所をミリ単位で射抜く精密射撃。
弓本体に仕込まれたブレードを操り、剣士を圧倒する近接弓術。
そして、魔力の波長を読み取り、呪文そのものを撃ち落とす対魔法技術。
「近距離、中距離、遠距離……俺の射程に逃げ場はない」
孤独な修行の末に辿り着いた「全距離対応型弓術」は、次第に王道パーティやエリート冒険者たちの常識を塗り替えていく。
しかし、その弓には叔父が命を懸けて守り抜いた**「世界の理(ことわり)」を揺るがす秘密**が隠されていた――。
最弱と笑われた少年が、一張の弓で最強へと駆け上がる、至高の異世界アクションファンタジー、開幕!
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。
アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚…
スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。
いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて…
気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。
愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。
生きていればいつかは幼馴染達とまた会える!
愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」
幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。
愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。
はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
兄貴のお嫁さんは異世界のセクシー・エルフ! 巨乳の兄嫁にひと目惚れ!!
オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
ファンタジー
夏休み前、友朗は祖父の屋敷の留守を預かっていた。
その屋敷に兄貴と共に兄嫁が現れた。シェリーと言う名の巨乳の美少女エルフだった。
友朗はシェリーにひと目惚れしたが、もちろん兄嫁だ。好きだと告白する事は出来ない。
兄貴とシェリーが仲良くしているのを見ると友朗は嫉妬心が芽生えた。
そして兄貴が事故に遭い、両足を骨折し入院してしまった。
当分の間、友朗はセクシー・エルフのシェリーとふたりっきりで暮らすことになった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる