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第1章 おじさんと異世界の人々
第5話
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次の日の朝。
畑の見回りを終え、豆と葉の状態を確認してから、俺はふと思い立った。
「……そろそろ、試作品でも作ってみるか」
これまでは自分用に簡単な加工しかしてなかったが、もし人に出すことを考えるなら、もっときっちりしたものを用意したほうがいい。
万能生成スキルを使えば、専門的な器具だって作れる。
俺はまず、コーヒーの焙煎機をバージョンアップした。
手回し式だったドラムに、均一に熱を伝える魔法陣を組み込み、回転速度も細かく調整できるようにした。焙煎中の温度変化すら、指先ひとつでコントロールできる。
煙草用には、葉の発酵と熟成を管理できる木製の熟成庫を作った。もちろん、適度な湿度と温度を自動で保つ機能付きだ。
「──よし」
すべてが整ったところで、豆の選別を始めた。
熟成が進み、油分が表面ににじみ出た豆だけを選び取る。煙草の葉も、色艶のいいものだけを慎重に選別した。
焙煎、ミル、ドリップ。乾燥、揉み、熟成。
すべての工程を、丁寧に、丁寧に、積み重ねる。
何時間かかったか、もう分からない。ただ、出来上がったコーヒーと煙草を前に、自然と顔がほころんだ。
「さて、試飲といくか」
カップに注いだコーヒーは、濃厚な琥珀色。たった一口含んだだけで、思わず目を瞠った。
「……すげえな」
豊かな甘み、複雑な酸味、深く続くコク。どれか一つが突出してるわけじゃない。すべてが、絶妙なバランスで溶け合っている。
煙草も同じだった。
ひと吸いした瞬間、ふわりと広がる芳香。舌の上で転がすたびに、スパイスのような刺激と、深い甘みが交互に顔を出す。
これはもう、異世界だろうが現代だろうが、どこに出しても通用する逸品だ。
「──ま、俺しか味わわねえけどな」
ぽつりと呟き、ふっと笑った。
◇
しばらくすると、小屋の周囲に、かすかに人の気配を感じた。
「……誰だ?」
耳を澄ますと、小さな声が聞こえる。
「ここだよ、あれ……森の外れの小屋って……」
「でも、ほんとに美味い匂いするな……」
どうやら、村の子どもたちらしい。
俺の作ったコーヒーと煙草の香りに釣られて、ここまで来たらしい。まだ営業なんかしてないのに、早速鼻を利かせやがる。
「……ったく」
カップを片手に、俺は扉を開けた。
「何してんだ?」
びくっと飛び上がるガキども。
その中の一人、まだ顔にそばかすが残る少年が、おずおずと前に出た。
「あ、あの……いい匂いがして……。つい……」
「ほう」
じろりと睨むと、少年は肩をすぼめた。
だが、その後ろで、別のガキがぽそっと言った。
「オッサン……魔法使いか? すげー香りだもん……」
「違ぇよ」
即答してやった。
俺は、ただ、自分の好きなものを、好きなように作ってるだけだ。魔法も、スキルも、必要最低限しか使わねえ。
それでも、この世界じゃ、ありえないレベルの品ができるらしい。
「ほれ、これでも舐めとけ」
俺は小さな試作用のコーヒー豆を一粒、手渡した。
試しに食べてみたら、豆だけでも最高に美味い、チート豆になっていたんだよな。
少年はびくびくしながら、それを口に入れる。
「──ん……!」
その顔が、ぱっと輝いた。
「す、すげえ……甘い……! なんで豆なのに……!」
「そういうもんだ」
適当に流す。
子どもたちは目を輝かせながら、豆一粒に群がった。ああ、こいつら、放っといたら村中に噂広めやがるだろうな──そんな予感がした。
「……まあ、いっか」
俺はコーヒーカップを傾けながら、もう一度空を見上げた。
畑の見回りを終え、豆と葉の状態を確認してから、俺はふと思い立った。
「……そろそろ、試作品でも作ってみるか」
これまでは自分用に簡単な加工しかしてなかったが、もし人に出すことを考えるなら、もっときっちりしたものを用意したほうがいい。
万能生成スキルを使えば、専門的な器具だって作れる。
俺はまず、コーヒーの焙煎機をバージョンアップした。
手回し式だったドラムに、均一に熱を伝える魔法陣を組み込み、回転速度も細かく調整できるようにした。焙煎中の温度変化すら、指先ひとつでコントロールできる。
煙草用には、葉の発酵と熟成を管理できる木製の熟成庫を作った。もちろん、適度な湿度と温度を自動で保つ機能付きだ。
「──よし」
すべてが整ったところで、豆の選別を始めた。
熟成が進み、油分が表面ににじみ出た豆だけを選び取る。煙草の葉も、色艶のいいものだけを慎重に選別した。
焙煎、ミル、ドリップ。乾燥、揉み、熟成。
すべての工程を、丁寧に、丁寧に、積み重ねる。
何時間かかったか、もう分からない。ただ、出来上がったコーヒーと煙草を前に、自然と顔がほころんだ。
「さて、試飲といくか」
カップに注いだコーヒーは、濃厚な琥珀色。たった一口含んだだけで、思わず目を瞠った。
「……すげえな」
豊かな甘み、複雑な酸味、深く続くコク。どれか一つが突出してるわけじゃない。すべてが、絶妙なバランスで溶け合っている。
煙草も同じだった。
ひと吸いした瞬間、ふわりと広がる芳香。舌の上で転がすたびに、スパイスのような刺激と、深い甘みが交互に顔を出す。
これはもう、異世界だろうが現代だろうが、どこに出しても通用する逸品だ。
「──ま、俺しか味わわねえけどな」
ぽつりと呟き、ふっと笑った。
◇
しばらくすると、小屋の周囲に、かすかに人の気配を感じた。
「……誰だ?」
耳を澄ますと、小さな声が聞こえる。
「ここだよ、あれ……森の外れの小屋って……」
「でも、ほんとに美味い匂いするな……」
どうやら、村の子どもたちらしい。
俺の作ったコーヒーと煙草の香りに釣られて、ここまで来たらしい。まだ営業なんかしてないのに、早速鼻を利かせやがる。
「……ったく」
カップを片手に、俺は扉を開けた。
「何してんだ?」
びくっと飛び上がるガキども。
その中の一人、まだ顔にそばかすが残る少年が、おずおずと前に出た。
「あ、あの……いい匂いがして……。つい……」
「ほう」
じろりと睨むと、少年は肩をすぼめた。
だが、その後ろで、別のガキがぽそっと言った。
「オッサン……魔法使いか? すげー香りだもん……」
「違ぇよ」
即答してやった。
俺は、ただ、自分の好きなものを、好きなように作ってるだけだ。魔法も、スキルも、必要最低限しか使わねえ。
それでも、この世界じゃ、ありえないレベルの品ができるらしい。
「ほれ、これでも舐めとけ」
俺は小さな試作用のコーヒー豆を一粒、手渡した。
試しに食べてみたら、豆だけでも最高に美味い、チート豆になっていたんだよな。
少年はびくびくしながら、それを口に入れる。
「──ん……!」
その顔が、ぱっと輝いた。
「す、すげえ……甘い……! なんで豆なのに……!」
「そういうもんだ」
適当に流す。
子どもたちは目を輝かせながら、豆一粒に群がった。ああ、こいつら、放っといたら村中に噂広めやがるだろうな──そんな予感がした。
「……まあ、いっか」
俺はコーヒーカップを傾けながら、もう一度空を見上げた。
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そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
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