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第1章 おじさんと異世界の人々
第22話
発酵技術──それは、古文書に記されていた忘れられた知識だった。
タバコの葉を特定の条件下で長期発酵させることで、味わいをさらに深め、隠れた効能まで引き出すという。
万能生成スキルを使えば、一瞬で仕上げることもできる。
だが。
「──こればっかりは、時間をかけたほうがいいだろうな」
俺は、ぽつりと呟いた。
手間を惜しまない。
焦らない。
最高の一服を目指すなら、それが当然だ。
煙草の葉を選び、適切な湿度と温度を維持できる特製の樽を用意する。
ブルナ草をベースに、香り高いハーブを微量混ぜ込んだブレンド。
発酵過程で生まれる微細な変化──それを期待して、じっくり待つ。
「さて……」
発酵に必要な環境を整えるため、外気の温度や湿度もチェックする。
幸い、今の季節は発酵に適している。
万能生成スキルは、ここでは使わない。
一流の道具と、必要最低限のサポートだけ。
あとは、自然と時間に任せる。
仕込みを終えた樽を、地下の貯蔵庫に運び入れる。
「焦ることはねぇ」
樽の上に布をかけ、そっと手を乗せる。
いつか、これがとびきりの一本になる。
その日を楽しみに待つのも、また一興だ。
◇
小屋に戻った俺は、次のことを考えた。
「──オリジナルブレンド、作るか」
一人ごちる。
コーヒー豆の新たなブレンド。
こだわるのは、ただ味や香りだけじゃない。
飲んだ瞬間、心がほぐれるような、そんな一杯。
今までのシングルオリジンも悪くない。
だが、複数の豆を組み合わせることでしか出せない味がある。
力強い苦味を持つ深煎り。
爽やかな酸味を持つ浅煎り。
甘みを引き出す中煎り。
これらを、絶妙なバランスでまとめあげる。
俺だけの、究極の一杯を。
──静かで、満ち足りた一杯を。
*
さて。
オリジナルブレンドを作ると決めたからには、試作を重ねるしかない。
俺は倉庫から、乾燥を終えたコーヒー豆のストックをいくつか引っ張り出した。
ベースにするのは、コクが強く、香りも高い『マーレ深緑豆』。
そこに、酸味と華やかなフレーバーが特徴の『ブルナ草由来種』を加える。
さらに、まろやかさを補うため、わずかに『レオナ湖畔豆』をブレンド。
「──まずは三種類だな」
豆の比率を微妙に変えながら、いくつかのサンプルを作る。
たとえば、マーレ深緑を五割、ブルナ草を三割、レオナを二割。
次は、マーレ四割、ブルナ四割、レオナ二割。
あるいは、逆にレオナを五割に増やして、酸味と甘みを際立たせる組み合わせも試す。
分量を計り、ミルで挽き、丁寧にハンドドリップで淹れる。
一杯一杯、集中して、雑味が出ないように気を配る。
◇
「……さて、どれから試すか」
テーブルに並んだ三つのカップを見下ろしながら、つぶやいた。
まずはスタンダードに、マーレ多めのブレンド。
香りは申し分ない。
口に含むと──。
「うん、コクは十分だが……ちょっと重いか」
後味に、やや苦味が強すぎる。
次。
ブルナ草多めのブレンド。
一口含んで──。
「……華やかだが、軽すぎるな」
飲みやすいが、飲み応えに欠ける。
最後。
レオナ湖畔多め。
啜る。
「……バランスは悪くねぇ。ただ、何かが足りない」
甘さも香りも申し分ないが、印象に残らない。
「……なるほどな」
コーヒーカップを置き、腕を組む。
理屈じゃない。
飲んだとき、心の奥にすっと入り込む、あの感覚。
あれが欲しい。
タバコの葉を特定の条件下で長期発酵させることで、味わいをさらに深め、隠れた効能まで引き出すという。
万能生成スキルを使えば、一瞬で仕上げることもできる。
だが。
「──こればっかりは、時間をかけたほうがいいだろうな」
俺は、ぽつりと呟いた。
手間を惜しまない。
焦らない。
最高の一服を目指すなら、それが当然だ。
煙草の葉を選び、適切な湿度と温度を維持できる特製の樽を用意する。
ブルナ草をベースに、香り高いハーブを微量混ぜ込んだブレンド。
発酵過程で生まれる微細な変化──それを期待して、じっくり待つ。
「さて……」
発酵に必要な環境を整えるため、外気の温度や湿度もチェックする。
幸い、今の季節は発酵に適している。
万能生成スキルは、ここでは使わない。
一流の道具と、必要最低限のサポートだけ。
あとは、自然と時間に任せる。
仕込みを終えた樽を、地下の貯蔵庫に運び入れる。
「焦ることはねぇ」
樽の上に布をかけ、そっと手を乗せる。
いつか、これがとびきりの一本になる。
その日を楽しみに待つのも、また一興だ。
◇
小屋に戻った俺は、次のことを考えた。
「──オリジナルブレンド、作るか」
一人ごちる。
コーヒー豆の新たなブレンド。
こだわるのは、ただ味や香りだけじゃない。
飲んだ瞬間、心がほぐれるような、そんな一杯。
今までのシングルオリジンも悪くない。
だが、複数の豆を組み合わせることでしか出せない味がある。
力強い苦味を持つ深煎り。
爽やかな酸味を持つ浅煎り。
甘みを引き出す中煎り。
これらを、絶妙なバランスでまとめあげる。
俺だけの、究極の一杯を。
──静かで、満ち足りた一杯を。
*
さて。
オリジナルブレンドを作ると決めたからには、試作を重ねるしかない。
俺は倉庫から、乾燥を終えたコーヒー豆のストックをいくつか引っ張り出した。
ベースにするのは、コクが強く、香りも高い『マーレ深緑豆』。
そこに、酸味と華やかなフレーバーが特徴の『ブルナ草由来種』を加える。
さらに、まろやかさを補うため、わずかに『レオナ湖畔豆』をブレンド。
「──まずは三種類だな」
豆の比率を微妙に変えながら、いくつかのサンプルを作る。
たとえば、マーレ深緑を五割、ブルナ草を三割、レオナを二割。
次は、マーレ四割、ブルナ四割、レオナ二割。
あるいは、逆にレオナを五割に増やして、酸味と甘みを際立たせる組み合わせも試す。
分量を計り、ミルで挽き、丁寧にハンドドリップで淹れる。
一杯一杯、集中して、雑味が出ないように気を配る。
◇
「……さて、どれから試すか」
テーブルに並んだ三つのカップを見下ろしながら、つぶやいた。
まずはスタンダードに、マーレ多めのブレンド。
香りは申し分ない。
口に含むと──。
「うん、コクは十分だが……ちょっと重いか」
後味に、やや苦味が強すぎる。
次。
ブルナ草多めのブレンド。
一口含んで──。
「……華やかだが、軽すぎるな」
飲みやすいが、飲み応えに欠ける。
最後。
レオナ湖畔多め。
啜る。
「……バランスは悪くねぇ。ただ、何かが足りない」
甘さも香りも申し分ないが、印象に残らない。
「……なるほどな」
コーヒーカップを置き、腕を組む。
理屈じゃない。
飲んだとき、心の奥にすっと入り込む、あの感覚。
あれが欲しい。
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