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第2章 おじさんとコーヒー
第42話
エスプレッソも水出しもやりきった。
次は──エアロプレスだ。
「よし、今日はお前だ」
カウンター奥、道具棚の隅に収めてあった簡素な筒型の器具を取り出す。
見た目は玩具みたいだが、その実力は侮れない。
「まずは、粉を……」
今回は中挽き。
エアロプレスでは、豆の個性を素直に引き出せるから、使う豆にもこだわった。
酸味とコクを兼ね備えた特別なロットだ。
グラインダーに豆を入れ、軽快なリズムで挽いていく。
挽き上がった粉を軽く指先で確かめる。
「悪くない」
すぐさまエアロプレス本体にフィルターをセット。
ペーパーフィルターと迷ったが、今回はクリーンな仕上がりを狙ってペーパーを選んだ。
「次は湯だな……」
湯温は、少し低めの85度。
沸騰直後から少しだけ冷ました。
これも、酸味と甘みのバランスを取るため。
計った量の粉を筒の中に入れ、タイマーをセット。
手際よくお湯を注ぎ、すばやく攪拌。
スプーンで十数回、丁寧に混ぜる。
「30秒──」
静かにカウントを取りながら、プランジャーをセット。
そして、圧をかける。
ぎゅう、と空気を押し出す感触。
手のひらに伝わる心地いい抵抗。
コポ、という小さな音とともに、濃厚なコーヒーがグラスに落ちていく。
「……よし」
抽出は、わずか一分足らずで完了だ。
カウンターに腰を下ろし、グラスを手に取る。
まずは香りを確かめる。
華やかさとコク、その両方が鼻腔をくすぐった。
「いただきます」
一口、含む。
──うまい。
最初にふわっと酸味。
すぐさま甘みが追いかけ、最後にはコクがじんわりと舌に広がる。
エスプレッソほどの重さはない。
ドリップほどの軽さもない。
絶妙な中間。
「……こりゃ、クセになるな」
思わず笑みがこぼれた。
もう一口。
今度は、タバコをくゆらせながら。
煙とエアロプレスのコーヒー、それぞれが喧嘩せずに馴染んでいく。
手間を惜しまず、豆に合わせて抽出法を選ぶ。
それだけで、こんなにも味が違う。
やっぱり、面白い。
「さて……次はどんな豆で試すか」
独り言をつぶやきながら、また新しいページをめくるような気分になった。
窓の外では、村の子供たちが笑いながら駆け回っている。
その声をBGMに、俺はもう一杯、エアロプレスでコーヒーを淹れる準備を始めた。
一杯目とは、また少しレシピを変えて。
粉の量を少し増やし、攪拌回数を減らしてみる。
抽出時間も短めにして、軽やかな飲み口を狙う。
「この世界で、ここまで贅沢できるとはな……」
異世界に来た直後は、こんなふうに珈琲に没頭できるとは思ってもみなかった。
だが、今は違う。
好きなようにコーヒーを淹れて、好きなときに一服する。
誰にも邪魔されず、誰にも急かされない。
これ以上、何を望むというんだ。
そう思いながら、二杯目を口に運ぶ。
──軽い。
でも、物足りなさはない。
爽やかで、すっと消える後味。
「こっちもいいな」
エアロプレスの可能性に、またひとつ、引き込まれていく。
片手にグラス、もう片方にはタバコ。
煙が昇り、香りが広がる。
誰もいないカウンター越しに、そっと目を細める。
「まあ……もうちょっとだけ、遊んでみるか」
小さく呟き、再びエアロプレスを手に取った。
試行錯誤は続く。
だが、それこそが俺の“至福”だ。
次は──エアロプレスだ。
「よし、今日はお前だ」
カウンター奥、道具棚の隅に収めてあった簡素な筒型の器具を取り出す。
見た目は玩具みたいだが、その実力は侮れない。
「まずは、粉を……」
今回は中挽き。
エアロプレスでは、豆の個性を素直に引き出せるから、使う豆にもこだわった。
酸味とコクを兼ね備えた特別なロットだ。
グラインダーに豆を入れ、軽快なリズムで挽いていく。
挽き上がった粉を軽く指先で確かめる。
「悪くない」
すぐさまエアロプレス本体にフィルターをセット。
ペーパーフィルターと迷ったが、今回はクリーンな仕上がりを狙ってペーパーを選んだ。
「次は湯だな……」
湯温は、少し低めの85度。
沸騰直後から少しだけ冷ました。
これも、酸味と甘みのバランスを取るため。
計った量の粉を筒の中に入れ、タイマーをセット。
手際よくお湯を注ぎ、すばやく攪拌。
スプーンで十数回、丁寧に混ぜる。
「30秒──」
静かにカウントを取りながら、プランジャーをセット。
そして、圧をかける。
ぎゅう、と空気を押し出す感触。
手のひらに伝わる心地いい抵抗。
コポ、という小さな音とともに、濃厚なコーヒーがグラスに落ちていく。
「……よし」
抽出は、わずか一分足らずで完了だ。
カウンターに腰を下ろし、グラスを手に取る。
まずは香りを確かめる。
華やかさとコク、その両方が鼻腔をくすぐった。
「いただきます」
一口、含む。
──うまい。
最初にふわっと酸味。
すぐさま甘みが追いかけ、最後にはコクがじんわりと舌に広がる。
エスプレッソほどの重さはない。
ドリップほどの軽さもない。
絶妙な中間。
「……こりゃ、クセになるな」
思わず笑みがこぼれた。
もう一口。
今度は、タバコをくゆらせながら。
煙とエアロプレスのコーヒー、それぞれが喧嘩せずに馴染んでいく。
手間を惜しまず、豆に合わせて抽出法を選ぶ。
それだけで、こんなにも味が違う。
やっぱり、面白い。
「さて……次はどんな豆で試すか」
独り言をつぶやきながら、また新しいページをめくるような気分になった。
窓の外では、村の子供たちが笑いながら駆け回っている。
その声をBGMに、俺はもう一杯、エアロプレスでコーヒーを淹れる準備を始めた。
一杯目とは、また少しレシピを変えて。
粉の量を少し増やし、攪拌回数を減らしてみる。
抽出時間も短めにして、軽やかな飲み口を狙う。
「この世界で、ここまで贅沢できるとはな……」
異世界に来た直後は、こんなふうに珈琲に没頭できるとは思ってもみなかった。
だが、今は違う。
好きなようにコーヒーを淹れて、好きなときに一服する。
誰にも邪魔されず、誰にも急かされない。
これ以上、何を望むというんだ。
そう思いながら、二杯目を口に運ぶ。
──軽い。
でも、物足りなさはない。
爽やかで、すっと消える後味。
「こっちもいいな」
エアロプレスの可能性に、またひとつ、引き込まれていく。
片手にグラス、もう片方にはタバコ。
煙が昇り、香りが広がる。
誰もいないカウンター越しに、そっと目を細める。
「まあ……もうちょっとだけ、遊んでみるか」
小さく呟き、再びエアロプレスを手に取った。
試行錯誤は続く。
だが、それこそが俺の“至福”だ。
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