独身おじさんの異世界おひとりさまライフ〜金や評価は要りません。コーヒーとタバコ、そして本があれば最高です〜

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第4章 おじさんとソロキャンプ

第70話

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川での血抜きと内臓処理を終えた俺は、夕暮れに染まりつつある森へ足を踏み入れた。
今度はウサギを美味く食うための、付け合わせを探す。

まず狙うのは山菜だ。
場所を選べば、春先ならタラの芽やワラビが簡単に見つかる。
今の時期なら、ちょうどいい若芽が出ているかもしれない。

俺は森の斜面を見上げ、目を凝らした。

「……あったな」

ぽつぽつと生えている若い芽を発見する。
葉先がちりちりと縮れた、それらは間違いなく食べられる山菜だ。
万能生成スキルで補正している目利きには自信がある。

ナイフを取り出し、根元から丁寧に摘み取っていく。
量は欲張らない。必要な分だけ、慎ましく。

次に、きのこを探す。
朽ちた倒木の影を覗くと、小さな群生を見つけた。
笠の裏側を確認して、毒の兆候がないか、しっかり見極める。
香りを嗅ぎ、指先で軽く弾くと、柔らかく弾力のある感触が返ってきた。

「これなら、いける」

採取したきのこは布袋にそっとしまう。
一緒に、道すがら目に留まった赤い小粒の実──森苺らしきものも、少しだけ摘んでおいた。

──準備完了。

天幕へと戻るころには、森がすっかり金色に包まれていた。

焚き火に火を入れ直し、熾火を作る。
その上に鉄製の網を渡し、じわじわと熱を溜める。

さて、ここからは料理の時間だ。

まずは山菜から取りかかる。
摘んできた若芽をざっと水洗いし、根元を切り落とす。
シェラカップに湯を沸かし、そこへサッとくぐらせる。

一瞬、鮮やかな緑が濃くなったところで引き上げ、氷水──持参していたクーラーバッグの氷を使った即席の冷水──に落とす。

シャキッとした食感を残すための手間だ。

次に、きのこ。
適度な大きさに裂き、ほんの少しだけ塩をふる。
油は使わない。焚き火の香ばしさをそのまま纏わせたかった。

ウサギの肉も、改めて確認する。

先ほど仕込んだハーブと塩がいい具合に馴染んで、ほのかに香っていた。

「よし」

串に刺して、焚き火の網へと載せる。
じっくりと、遠火で火を通す。

パチ、パチッ──

肉の脂が滴り落ち、火に小さな音を立てさせる。

香ばしい匂いが立ち上るなか、俺はきのこも網の端に並べた。
時折、肉を回しながら、火の入り具合を調整する。

焦げすぎないように、かといって火が通りきる前に取り出さないように。
焚き火料理は、火力との静かな駆け引きだ。

仕上げに、山菜をシェラカップでさっと温め直し、少量の天然塩をパラリと振った。

あとは、さっき摘んだ森苺を皿代わりの木の板に乗せて添える。

──完成。

皿も何もない、ただ木の上に並べただけの、原始的な夕餉。
けれど、たまらなく贅沢だった。

タバコに火をつけて、ひと息。

そして、串に刺したウサギ肉をひと口──

「……うまい」

声にならない溜息が漏れる。

外側は香ばしく、中はふっくらと柔らかい。
ハーブの香りがじんわり広がり、ウサギ肉特有の旨味を引き立てている。

続けてきのこを摘み、かじる。
軽い塩気と、焚き火のスモーキーな香りが口いっぱいに広がった。

山菜は、ほんのり苦味があって、肉やきのこの濃厚さを程よく引き締める。

最後に森苺。
小さな実をつまみ、噛みしめた瞬間、爽やかな酸味が舌に弾けた。

(……完璧だ)

夜の森をバックに、ただ一人。
誰に気兼ねすることもない、俺だけの時間と飯。

これだから、やめられない。
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