独身おじさんの異世界おひとりさまライフ〜金や評価は要りません。コーヒーとタバコ、そして本があれば最高です〜

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第4章 おじさんとソロキャンプ

第74話

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焚き火の炎が、ぱちぱちと乾いた音を立ててはじける。

俺は手元の小鍋に、そっと水を張った。
森で汲んだ湧き水だ。口に含んで確かめたが、癖のない柔らかい味だった。
これなら素材の邪魔をしない。

「火加減、これくらいでいい」

エルフがぼそりと呟く。
俺は軽くうなずいて、鍋を網の上にセットした。
彼女の見立てに間違いはない。火勢は穏やか、じっくりと熱を入れるのにちょうどいい。

まずはウサギの肉を一口大にカットする。
骨から外し、余分な脂肪を取り除き、筋を断ち切る。
ナイフの動きは滑らかだ。
こっそりラーニングしたエルフの技術のおかげで、俺の手元も普段よりだいぶ冴えている。

肉を湯にくぐらせ、アクを丁寧に取る。
アクの処理を怠ると、仕上がりの味に濁りが出るからな。

「……いい香り」

エルフが、ほんの少しだけ、表情を緩めた。
沸き立つ湯気に、ウサギ肉の淡い香ばしさが乗っている。

次に、刻んだ山菜を投入する。
こごみ、たらの芽、山ウド。
どれも採れたてで、生命力に満ちている。
さっと湯に通して、色鮮やかな緑を引き出す。

「調味料は?」

「これ」

俺は万能生成スキルで生成した天然塩を取り出した。
異世界素材から作った、角の取れたまろやかな塩だ。

ぱらりと一つまみ。
味を見て、さらにごく少量加える。

「うまいな……」

スープを一口すすると、素材の甘みと旨味がじんわりと広がった。
調味料は塩だけ。
それで十分だ。

「次は、きのこ」

エルフが手際よく、収穫したきのこを選別していく。
傘が厚く、肉質のしっかりしたものだけを使う。
細い茎の部分はスープに溶け込みやすいから、別に分けた。

きのこは、スープには入れず、網焼きにすることにした。

「……網に乗せる前に、これを」

エルフが取り出したのは、森で摘んだハーブだ。
セージに似た香りがする。

俺は小さく頷き、ハーブをきのこの傘の裏に詰める。
ほんのりとした苦味と芳香が、きのこの甘みを引き立ててくれるはずだ。

網の上できのこをじっくりと焼き上げる。
香ばしい匂いが立ち昇り、思わず腹が鳴った。

「……いい匂いだな」

「当然」

エルフは胸を張った。
また、耳がぴくぴく動いている。
自慢しているつもりはないのかもしれないが、わかりやすい。

最後に、甘い実を使ったデザートも仕込む。

摘みたてのベリーを潰し、ほんの少しのハチミツを加えてソースにする。
それを、軽く炙ったきのこにちょっとだけかける。

甘みと酸味、そしてきのこの旨味。
絶妙なバランスになりそうだ。

「……準備完了だな」

すべての料理が整った。
あとは、夜の帳が降りるのを待って、じっくり味わうだけ。

エルフも、俺も、言葉少なに頷き合う。

食事の前に、もうひと仕事。

俺は腰を上げ、コーヒーの用意を始めた。
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