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第4章 おじさんとソロキャンプ
第77話
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朝の森は、夜とはまるで別世界だ。
木々の隙間から差し込む陽光が、地面にまだら模様を描き、湿った土と若葉の匂いが鼻をくすぐる。小鳥たちがちゅんちゅんと騒がしく鳴き交わしていて、どこか落ち着かない気分にもなる。
テントの中でごろりと転がりながら、俺はうんざりするように息を吐いた。
「……帰るか」
ぽつりと口にした言葉が、自分でも意外なほどすんなり腹に落ちた。
あれだけ自然に溶け込んでいたはずなのに、今はもう、家のコーヒーと、店で吸うタバコが恋しくなっている。
「やれやれ、勝手なもんだな」
独りごちて、のそのそと起き上がる。焚き火の跡をしっかり消し、ゴミ一つ残さず片付ける。焚き火台を解体して、テントをたたみ、荷物袋に押し込んでいく。
作業は手慣れたものだ。だが、今日はやたらと段取りがいい。多分、心がもう次の場所に向かっているからだろう。
「コーヒー淹れたいしな……まともなやつを」
昨日のキャンプコーヒーも悪くなかった。むしろ、十分うまかった。けれど、やっぱり俺がこだわり抜いた店の道具と豆じゃないと、本当に満たされる気がしない。
あれは、単なる嗜好じゃない。俺にとっては、生き方そのものだ。
背中の荷物が重くなると同時に、足取りは妙に軽くなった。
「さて」
最後にサイト跡をもう一度見回し、問題がないことを確認する。何度もやってきたことだ。誰にも迷惑はかけない。誰にも文句を言わせない。
それが、俺の流儀だ。
小道に向かって歩き出す。森の空気はまだ冷たく、だが心地よかった。
足元に広がる下草を踏みしめるたび、葉擦れの音が耳に優しく響く。キャンプ場を後にしながら、ちらりと後ろを振り返った。
「……また来るかもな」
誰にともなく呟いて、俺は歩みを進めた。
道中、拾ったのは小さな野いちごだった。片手に数粒摘んで、ぽいと口に放り込む。
甘酸っぱい汁が舌に広がり、思わず目を細めた。
「……悪くない」
こんな些細なことでも、満足できる。満足できるってことは、今、自分がちゃんと生きてる証拠だろう。
森を抜けると、広がるのは村へと続く丘陵地帯だ。
遠くにマーレ村の輪郭が見える。赤い屋根と、白い煙が、絵本の挿絵みたいにゆらゆらしている。
「帰る場所があるってのも、案外悪くないな」
そう思いながら、俺はまた歩き出した。
ポケットに手を突っ込み、ふと触れたのは、手作りのタバコ。
「……ふう」
自然と微笑みがこぼれる。家に着いたら、あれを吸いながら、じっくりコーヒーを淹れよう。
何をするでもなく、誰かと話すでもなく。ただ、俺が俺のために淹れた一杯を飲むために。
そのためだけに、俺は今、歩いている。
木々の隙間から差し込む陽光が、地面にまだら模様を描き、湿った土と若葉の匂いが鼻をくすぐる。小鳥たちがちゅんちゅんと騒がしく鳴き交わしていて、どこか落ち着かない気分にもなる。
テントの中でごろりと転がりながら、俺はうんざりするように息を吐いた。
「……帰るか」
ぽつりと口にした言葉が、自分でも意外なほどすんなり腹に落ちた。
あれだけ自然に溶け込んでいたはずなのに、今はもう、家のコーヒーと、店で吸うタバコが恋しくなっている。
「やれやれ、勝手なもんだな」
独りごちて、のそのそと起き上がる。焚き火の跡をしっかり消し、ゴミ一つ残さず片付ける。焚き火台を解体して、テントをたたみ、荷物袋に押し込んでいく。
作業は手慣れたものだ。だが、今日はやたらと段取りがいい。多分、心がもう次の場所に向かっているからだろう。
「コーヒー淹れたいしな……まともなやつを」
昨日のキャンプコーヒーも悪くなかった。むしろ、十分うまかった。けれど、やっぱり俺がこだわり抜いた店の道具と豆じゃないと、本当に満たされる気がしない。
あれは、単なる嗜好じゃない。俺にとっては、生き方そのものだ。
背中の荷物が重くなると同時に、足取りは妙に軽くなった。
「さて」
最後にサイト跡をもう一度見回し、問題がないことを確認する。何度もやってきたことだ。誰にも迷惑はかけない。誰にも文句を言わせない。
それが、俺の流儀だ。
小道に向かって歩き出す。森の空気はまだ冷たく、だが心地よかった。
足元に広がる下草を踏みしめるたび、葉擦れの音が耳に優しく響く。キャンプ場を後にしながら、ちらりと後ろを振り返った。
「……また来るかもな」
誰にともなく呟いて、俺は歩みを進めた。
道中、拾ったのは小さな野いちごだった。片手に数粒摘んで、ぽいと口に放り込む。
甘酸っぱい汁が舌に広がり、思わず目を細めた。
「……悪くない」
こんな些細なことでも、満足できる。満足できるってことは、今、自分がちゃんと生きてる証拠だろう。
森を抜けると、広がるのは村へと続く丘陵地帯だ。
遠くにマーレ村の輪郭が見える。赤い屋根と、白い煙が、絵本の挿絵みたいにゆらゆらしている。
「帰る場所があるってのも、案外悪くないな」
そう思いながら、俺はまた歩き出した。
ポケットに手を突っ込み、ふと触れたのは、手作りのタバコ。
「……ふう」
自然と微笑みがこぼれる。家に着いたら、あれを吸いながら、じっくりコーヒーを淹れよう。
何をするでもなく、誰かと話すでもなく。ただ、俺が俺のために淹れた一杯を飲むために。
そのためだけに、俺は今、歩いている。
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本当に、ありがとうございます。
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