独身おじさんの異世界おひとりさまライフ〜金や評価は要りません。コーヒーとタバコ、そして本があれば最高です〜

☆ほしい

文字の大きさ
131 / 243
第9章 おじさんとブッシュクラフト

第132話

しおりを挟む
朝の空気はすでに温かく、風が心地よく流れている。昨日、一日かけて小屋の最後の部分を完成させた。

屋根の草をしっかりと覆い、外壁も塗り固めて隙間を埋めた。

外見は粗いが、俺が望んでいたのはあくまで自然と調和する空間だ。それができたんだから、今日はその成果をじっくり味わおうと思っている。

「さて、これでひと段落だ」

小屋の中に入ると、木の香りが充満している。床に座り込んで、ゆっくりと視線を巡らせる。まだ家具はないが、必要最低限のものだけは整えておいた。寝袋を引いて、煙草を置く小さな木のテーブル、そして焚き火用の石囲い。あとは本を置くための棚も作っておいた。

「この場所、いいな」

外にいるのと違って、ここは完全に自分だけの空間だ。誰かが来ることもないし、何かに追われることもない。何もかも、自分のペースで進められる。その静けさが、心地よさを引き立ててくれる。

昼過ぎ、少しの休憩を取りながら考える。「このままのペースで、この場所を別荘のように使うのもいいな。」外の家から来て、自然の中で生活できる別荘、それこそがこの場所の使い方として最適だろう。

「でも、少し不安なこともあるな」

本来なら、モンスターや天候の変化など、あらゆる要素に対して準備が必要だ。俺は便利アイテムを使うつもりはないが、やはり安全に過ごすためには、何か工夫をしなければならない。それに、ここを完全に「自分の家」として使うためには、何か一つでも魔法で強化した方がいい。

「一応、少しだけ便利なことを考えてみよう」

まず、家の周りにモンスター避けの魔法をかけることに決める。強力な魔法は使いたくないが、せめて普通の魔物が入ってこないように、範囲内に結界を張る。それに、家自体には「状態保存」の魔法をかけて、何もかもそのまま保存できるようにする。これで、もし俺がここを離れていても、家の中はそのままの状態で残り続ける。

「よし、これで完璧だ」

魔法の設定が完了すると、すぐにその効力が実感できた。モンスターが近づく気配も感じないし、家の中も時間が止まったかのように静かだ。これで、もしもの時も安心だ。何も心配することはない。

その後は、さらに家の周りを整え、道を広げていく。今度は、山を登った先に展望台のような小さな休憩所を作ることに決めた。焚き火を囲むのもいいが、たまには違う景色を楽しみたいからだ。

作業が終わると、少し体を休めるために森の中を散歩してみる。風が木々を揺らし、鳥のさえずりが耳に心地よい。自然の中での生活が、ますます楽しく感じられてきた。何も急ぐことなく、無理に計画を立てることなく、ただこの場所で自分の時間を過ごすことができる。

「こんな静かな生活、やっぱり最高だな」

夕方になると、焚き火を囲みながら、本を開いて読んだり、煙草をくゆらせたりして過ごす。どこかのんびりとした時間が流れていくのが、最高にリラックスできる瞬間だ。

「明日はどんなことをしようか」

今後のことを少し考えながらも、結局大きな計画は立てないまま、自然の流れに身を任せることにした。少しずつ生活を整え、毎日を楽しんで過ごしていく。それが、今の俺にとって何よりも幸せなことだ。

その夜、寝袋に包まりながらふと思う。「次にやりたいことは何だろう?」 それは、今すぐには思い浮かばなかった。ただ、明日もまた静かに過ごせることが、何よりも心地よかった。

次の日、また朝が来る。焚き火を囲みながらコーヒーを飲む時間、煙草を吸いながら空を見上げる時間、そして本を読みながらゆっくり過ごす時間。それらが、少しずつ俺の「家」としてのリズムを作っていくのだろう。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。

アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚… スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。 いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて… 気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。 愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。 生きていればいつかは幼馴染達とまた会える! 愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」 幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。 愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。 はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

兄貴のお嫁さんは異世界のセクシー・エルフ! 巨乳の兄嫁にひと目惚れ!!

オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
ファンタジー
夏休み前、友朗は祖父の屋敷の留守を預かっていた。 その屋敷に兄貴と共に兄嫁が現れた。シェリーと言う名の巨乳の美少女エルフだった。 友朗はシェリーにひと目惚れしたが、もちろん兄嫁だ。好きだと告白する事は出来ない。 兄貴とシェリーが仲良くしているのを見ると友朗は嫉妬心が芽生えた。 そして兄貴が事故に遭い、両足を骨折し入院してしまった。 当分の間、友朗はセクシー・エルフのシェリーとふたりっきりで暮らすことになった。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

処理中です...