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第1話
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目を覚ました瞬間、俺は、すべてを失ったことを悟った。
目の前に広がるのは、透き通る青と、果てしない水の壁。
身体を動かそうとすれば、ぬるりとした感触が皮膚を滑った。
手を見れば、鱗だ。腕の形も人間とは程遠い。指は三本、鋭く尖り、指の間には薄膜が張っている。
それだけじゃない。胸に手を当てれば、呼吸をしているはずなのに、肺ではなく、何か別の器官が動いている感覚があった。
(なんだ……これ……俺の身体か……?)
混乱しながらも、思い出そうとする。だが、記憶は断片的だった。
名前、年齢、家族。全部が水に溶けるように曖昧で、ひとつだけ、はっきりしている。
──俺は死んだ。あの世界では。
それだけだ。理由も経緯もわからない。ただ、死んだ先で目を開けたら、ここにいた。
そして、明らかに自分のものとは思えないこの異形の体。
俺は、異世界に転生した。しかも──
「ぎぎっ、ぎぎぎっ!」
声を出してみるが、人間の言葉にはならなかった。
驚いて水中をばたつかせると、自分の姿が水面に映った。
そこに映っていたのは、魚のような顔と、しなびた青緑色の肌を持つ異形の存在──サハギンだった。
それも、見た目からして、ひどく貧相で頼りなさそうな個体。
(これ……最弱の魔物じゃねえか……!)
ゲームでもよく見る、最序盤のザコ敵。冒険者に秒で狩られる、経験値にもならないモブ。
そんな存在に、俺は転生してしまったのだ。
だが、絶望している暇はなかった。
俺の視界に、突然、半透明のウィンドウが浮かび上がった。
【種族:サハギン(幼生)】
【レベル:1】
【HP:10/10】
【MP:1/1】
【筋力:3】
【敏捷:5】
【知力:2】
【耐久:2】
【スキル:なし】
(ステータス……!ゲームみたいなステータスが……)
これは、チャンスだと思った。
もし、この世界に「レベル」や「スキル」が存在するなら──
生き延びて、成長して、進化していける可能性がある。
海の中、荒波の向こうに、巨大な影が見えた。
肉食魚だ。俺より何倍も大きい、鋭い牙を持つ怪物。
(……まずい)
こんな体で、あんな奴に見つかったら、ひとたまりもない。
俺は必死で、手足をばたつかせた。
泳げ、逃げろ、生きろ──本能が叫んでいる。
だが、動きはぎこちない。水をかく感覚も不安定で、思うように進まない。
背後から、水を切る鋭い音が近づいてきた。
(まだ……死ねるかよ!)
息もできないほどの緊張の中、俺は目の前にあった岩陰へと身を滑り込ませた。
目の前に広がるのは、透き通る青と、果てしない水の壁。
身体を動かそうとすれば、ぬるりとした感触が皮膚を滑った。
手を見れば、鱗だ。腕の形も人間とは程遠い。指は三本、鋭く尖り、指の間には薄膜が張っている。
それだけじゃない。胸に手を当てれば、呼吸をしているはずなのに、肺ではなく、何か別の器官が動いている感覚があった。
(なんだ……これ……俺の身体か……?)
混乱しながらも、思い出そうとする。だが、記憶は断片的だった。
名前、年齢、家族。全部が水に溶けるように曖昧で、ひとつだけ、はっきりしている。
──俺は死んだ。あの世界では。
それだけだ。理由も経緯もわからない。ただ、死んだ先で目を開けたら、ここにいた。
そして、明らかに自分のものとは思えないこの異形の体。
俺は、異世界に転生した。しかも──
「ぎぎっ、ぎぎぎっ!」
声を出してみるが、人間の言葉にはならなかった。
驚いて水中をばたつかせると、自分の姿が水面に映った。
そこに映っていたのは、魚のような顔と、しなびた青緑色の肌を持つ異形の存在──サハギンだった。
それも、見た目からして、ひどく貧相で頼りなさそうな個体。
(これ……最弱の魔物じゃねえか……!)
ゲームでもよく見る、最序盤のザコ敵。冒険者に秒で狩られる、経験値にもならないモブ。
そんな存在に、俺は転生してしまったのだ。
だが、絶望している暇はなかった。
俺の視界に、突然、半透明のウィンドウが浮かび上がった。
【種族:サハギン(幼生)】
【レベル:1】
【HP:10/10】
【MP:1/1】
【筋力:3】
【敏捷:5】
【知力:2】
【耐久:2】
【スキル:なし】
(ステータス……!ゲームみたいなステータスが……)
これは、チャンスだと思った。
もし、この世界に「レベル」や「スキル」が存在するなら──
生き延びて、成長して、進化していける可能性がある。
海の中、荒波の向こうに、巨大な影が見えた。
肉食魚だ。俺より何倍も大きい、鋭い牙を持つ怪物。
(……まずい)
こんな体で、あんな奴に見つかったら、ひとたまりもない。
俺は必死で、手足をばたつかせた。
泳げ、逃げろ、生きろ──本能が叫んでいる。
だが、動きはぎこちない。水をかく感覚も不安定で、思うように進まない。
背後から、水を切る鋭い音が近づいてきた。
(まだ……死ねるかよ!)
息もできないほどの緊張の中、俺は目の前にあった岩陰へと身を滑り込ませた。
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