サハギンに転生した俺、最弱から進化して海の覇王になりました

☆ほしい

文字の大きさ
1 / 79

第1話

しおりを挟む
目を覚ました瞬間、俺は、すべてを失ったことを悟った。

目の前に広がるのは、透き通る青と、果てしない水の壁。
身体を動かそうとすれば、ぬるりとした感触が皮膚を滑った。

手を見れば、鱗だ。腕の形も人間とは程遠い。指は三本、鋭く尖り、指の間には薄膜が張っている。

それだけじゃない。胸に手を当てれば、呼吸をしているはずなのに、肺ではなく、何か別の器官が動いている感覚があった。

(なんだ……これ……俺の身体か……?)

混乱しながらも、思い出そうとする。だが、記憶は断片的だった。
名前、年齢、家族。全部が水に溶けるように曖昧で、ひとつだけ、はっきりしている。

──俺は死んだ。あの世界では。

それだけだ。理由も経緯もわからない。ただ、死んだ先で目を開けたら、ここにいた。
そして、明らかに自分のものとは思えないこの異形の体。
俺は、異世界に転生した。しかも──

「ぎぎっ、ぎぎぎっ!」

声を出してみるが、人間の言葉にはならなかった。
驚いて水中をばたつかせると、自分の姿が水面に映った。

そこに映っていたのは、魚のような顔と、しなびた青緑色の肌を持つ異形の存在──サハギンだった。
それも、見た目からして、ひどく貧相で頼りなさそうな個体。

(これ……最弱の魔物じゃねえか……!)

ゲームでもよく見る、最序盤のザコ敵。冒険者に秒で狩られる、経験値にもならないモブ。
そんな存在に、俺は転生してしまったのだ。

だが、絶望している暇はなかった。
俺の視界に、突然、半透明のウィンドウが浮かび上がった。

【種族:サハギン(幼生)】
【レベル:1】
【HP:10/10】
【MP:1/1】
【筋力:3】
【敏捷:5】
【知力:2】
【耐久:2】
【スキル:なし】

(ステータス……!ゲームみたいなステータスが……)

これは、チャンスだと思った。
もし、この世界に「レベル」や「スキル」が存在するなら──
生き延びて、成長して、進化していける可能性がある。

海の中、荒波の向こうに、巨大な影が見えた。
肉食魚だ。俺より何倍も大きい、鋭い牙を持つ怪物。

(……まずい)

こんな体で、あんな奴に見つかったら、ひとたまりもない。
俺は必死で、手足をばたつかせた。
泳げ、逃げろ、生きろ──本能が叫んでいる。

だが、動きはぎこちない。水をかく感覚も不安定で、思うように進まない。

背後から、水を切る鋭い音が近づいてきた。

(まだ……死ねるかよ!)

息もできないほどの緊張の中、俺は目の前にあった岩陰へと身を滑り込ませた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした

夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業SEの相馬海斗は、勇者として異世界に召喚された。だが、授かったのは地味な【システム解析】スキル。役立たずと罵られ、無一文でパーティーから追放されてしまう。 死の淵で覚醒したその能力は、世界の法則(システム)の欠陥(バグ)を読み解き、修正(デバッグ)できる唯一無二の神技だった! 呪われたエルフを救い、不遇な獣人剣士の才能を開花させ、心強い仲間と成り上がるカイト。そんな彼の元に、今さら「戻ってこい」と元パーティーが現れるが――。 「もう手遅れだ」 これは、理不尽に追放された男が、神の領域の力で全てを覆す、痛快無双の逆転譚!

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

神様の人選ミスで死んじゃった!? 異世界で授けられた万能ボックスでいざスローライフ冒険!

さかき原枝都は
ファンタジー
光と影が交錯する世界で、希望と調和を求めて進む冒険者たちの物語 会社員として平凡な日々を送っていた七樹陽介は、神様のミスによって突然の死を迎える。そして異世界で新たな人生を送ることを提案された彼は、万能アイテムボックスという特別な力を手に冒険を始める。 平穏な村で新たな絆を築きながら、自分の居場所を見つける陽介。しかし、彼の前には隠された力や使命、そして未知なる冒険が待ち受ける! 「万能ボックス」の謎と仲間たちとの絆が交差するこの物語は、笑いあり、感動ありの異世界スローライフファンタジー。陽介が紡ぐ第二の人生、その行く先には何が待っているのか——?

処理中です...