サハギンに転生した俺、最弱から進化して海の覇王になりました

☆ほしい

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第12話

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アーマータートルの巨体が、ゆっくりと沈んでいく。
その様子を見届けながら、俺はしばらくその場にとどまっていた。

油断はできない。
どんなに勝ったとしても、息の根を確かめるまでは完全な勝利とは言えない。

ゆらりと近づき、慎重に確認する。
もはや動かない。
完全に事切れている。

(……これで、本当に、勝ったんだ)

身体の奥底から、じわじわと力が湧き上がる感覚。
初めてだった。
こんな強敵に、自力で勝てたのは。

サハギンのちっぽけな体が、誇らしく思えた。

勝利の余韻に浸りながらも、俺はすぐに周囲を警戒する。
強敵を倒したあとの隙が、いちばん危ない。

感知スキルを最大限に研ぎ澄ます。
周囲に敵意を持つ存在はいない。

今は安全だ。

(なら──)

俺はアーマータートルの亡骸に手をかけた。
この世界では、強い魔物の素材は貴重だ。
食べれば経験値になるし、もしかしたら特別なスキルや恩恵が得られるかもしれない。

顎を大きく開き、硬い甲羅の隙間に噛みついた。
がりっ、と固い感触。
それでも、俺はあきらめずに食らいつく。

血の味。
肉の味。
鉄と塩と、少しの苦味。

そのすべてを、俺の身体が貪欲に受け入れていく。

食べ終わるころには、身体中が熱を持ち、脈打つような感覚に包まれた。

【経験値を大量に獲得しました】
【新スキル:甲羅強化(初級)を習得しました】
【種族進化条件を一部達成しました】

(……進化条件……!)

心臓が跳ねた。

そうだ。
俺は、ただレベルを上げるだけじゃない。
いつか進化して、もっと強い存在になるんだ。

しかも、一部とはいえ、進化条件を満たした。

これが何を意味するか、俺は知っている。

このまま順調にいけば、俺はサハギンの枠を超える。
もっと上の存在──海を支配するにふさわしい存在へと、変われる。

(やるしかねえ……絶対に)

ステータスを確認する。

【種族:サハギン(幼生)】
【レベル:8】
【HP:26/26】
【MP:4/4】
【筋力:10】
【敏捷:12】
【知力:3】
【耐久:8】
【スキル:水中遊泳(初級)、噛みつき(初級)、水圧噴射(初級)、感知(初級)、硬鱗化(初級)、甲羅強化(初級)】

新しく手に入れた【甲羅強化】スキル。
さっそく詳細を読む。

【甲羅強化(初級):一時的に身体表面を硬質化し、防御力を中程度上昇させる】

硬鱗化と似ているが、併用できればさらに鉄壁になる。

(これでもっと戦える……!)

俺は拳を握りしめ、再び前を見据えた。

ここまで来た。
このまま止まるわけにはいかない。

腹はほどよく満たされ、身体も軽い。

狩りの感覚も掴みつつある。
次は、もっと上を目指す番だ。

未知の敵、未踏の領域、そして進化。

すべてを手に入れてやる。
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