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第55話
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訓練を終えた兵たちが、荒い息を吐きながら整列する。
牙を剥き、爪を立て、獰猛な目でこちらを見据えている。
いい。殺し合いの修羅場を潜った連中だけが持つ、野生の光だ。
(次は──武装だ)
俺は手を振った。
運ばれてくるのは、討伐したエイ型提督の素材。
鱗、骨、内臓、筋肉。すべてが使える。
(まず、骨槍だ。剛性は十分。軽量化もできる)
命じると、魚人型兵たちが素早く骨を削り、槍を作り始める。
鰭をうまく使って細工する動きも、以前より格段に滑らかだ。
(次、盾だ。甲羅を加工しろ。硬度を保ったまま、形を整える)
鋏を鳴らした甲殻型兵たちが、分厚い甲羅を運び、甲盾に仕上げていく。
防御力は高い。だが重すぎて動きが鈍るやつもいる。
(重い盾は防衛隊用。突撃隊は小型の骨盾を持て)
次々に指示を飛ばす俺に、幹部たちも食らいついてくる。
巨大クラーケンの副官が、ぐねる触手でまとめ上げた素材の山を示した。
(提督の背鰭を、指揮官用の装飾に加工するか?)
(いいな。それで隊長クラスを区別する)
これで隊列も明確化できる。
兵士たちの士気はさらに高まるだろう。
(次は──)
偵察部隊が帰還してきた。
フィンが焦った様子で報告する。
(王、深海渓谷を発見した)
予想よりも早かった。
それだけ俺たちの成長速度が異常だということだ。
(深海渓谷の場所は?)
フィンが地図を指でなぞる。
沖合、外洋への中間地点。
深くえぐれた巨大な溝。闇そのもの。
(そこには、異常な敵影が存在する)
そう言ったフィンの顔は、わずかに強張っていた。
いつもは冷静なこいつがここまで緊張するとは、ただ事ではない。
(調査隊を編成する)
俺は即座に決断した。
躊躇している暇などない。
敵がいるなら叩き、資源があるなら奪う。
(隊長はフィン。護衛に突撃隊精鋭をつける。俺も同行する)
周囲がざわめいたが、誰も反対しない。
すでに俺の実力を、誰もが骨身に染みて知っている。
(準備は三刻以内だ。遅れたら置いていく)
命令一つで、群れが動き出す。
武装を整え、補給を詰め、各自点呼を取る。
血と鉄の匂いが、海中に満ちる。
そして、出発の時。
俺たちは海底を蹴り、深海渓谷を目指して進んだ。
流れは強い。光は薄い。だが、問題ない。
微光の祝福スキルが、視界を確保してくれる。
先頭を泳ぐ俺の前に、やがて異様な光景が現れた。
海底が裂けている。
まるで世界の裏側へ落ち込むかのような、暗黒の谷。
そして、その底から──異様な気配が滲み出していた。
(いるな)
深海種。
大洋の底に潜む、未知のモンスターども。
フィンが低く唸る。
(王、複数反応あり)
(構うな。予定通り、突入する)
部隊を引き連れ、俺は深海渓谷へと突き進んだ。
牙を研ぎ、爪を振りかざしながら。
牙を剥き、爪を立て、獰猛な目でこちらを見据えている。
いい。殺し合いの修羅場を潜った連中だけが持つ、野生の光だ。
(次は──武装だ)
俺は手を振った。
運ばれてくるのは、討伐したエイ型提督の素材。
鱗、骨、内臓、筋肉。すべてが使える。
(まず、骨槍だ。剛性は十分。軽量化もできる)
命じると、魚人型兵たちが素早く骨を削り、槍を作り始める。
鰭をうまく使って細工する動きも、以前より格段に滑らかだ。
(次、盾だ。甲羅を加工しろ。硬度を保ったまま、形を整える)
鋏を鳴らした甲殻型兵たちが、分厚い甲羅を運び、甲盾に仕上げていく。
防御力は高い。だが重すぎて動きが鈍るやつもいる。
(重い盾は防衛隊用。突撃隊は小型の骨盾を持て)
次々に指示を飛ばす俺に、幹部たちも食らいついてくる。
巨大クラーケンの副官が、ぐねる触手でまとめ上げた素材の山を示した。
(提督の背鰭を、指揮官用の装飾に加工するか?)
(いいな。それで隊長クラスを区別する)
これで隊列も明確化できる。
兵士たちの士気はさらに高まるだろう。
(次は──)
偵察部隊が帰還してきた。
フィンが焦った様子で報告する。
(王、深海渓谷を発見した)
予想よりも早かった。
それだけ俺たちの成長速度が異常だということだ。
(深海渓谷の場所は?)
フィンが地図を指でなぞる。
沖合、外洋への中間地点。
深くえぐれた巨大な溝。闇そのもの。
(そこには、異常な敵影が存在する)
そう言ったフィンの顔は、わずかに強張っていた。
いつもは冷静なこいつがここまで緊張するとは、ただ事ではない。
(調査隊を編成する)
俺は即座に決断した。
躊躇している暇などない。
敵がいるなら叩き、資源があるなら奪う。
(隊長はフィン。護衛に突撃隊精鋭をつける。俺も同行する)
周囲がざわめいたが、誰も反対しない。
すでに俺の実力を、誰もが骨身に染みて知っている。
(準備は三刻以内だ。遅れたら置いていく)
命令一つで、群れが動き出す。
武装を整え、補給を詰め、各自点呼を取る。
血と鉄の匂いが、海中に満ちる。
そして、出発の時。
俺たちは海底を蹴り、深海渓谷を目指して進んだ。
流れは強い。光は薄い。だが、問題ない。
微光の祝福スキルが、視界を確保してくれる。
先頭を泳ぐ俺の前に、やがて異様な光景が現れた。
海底が裂けている。
まるで世界の裏側へ落ち込むかのような、暗黒の谷。
そして、その底から──異様な気配が滲み出していた。
(いるな)
深海種。
大洋の底に潜む、未知のモンスターども。
フィンが低く唸る。
(王、複数反応あり)
(構うな。予定通り、突入する)
部隊を引き連れ、俺は深海渓谷へと突き進んだ。
牙を研ぎ、爪を振りかざしながら。
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