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リリアからの手紙は、冷たい毒蛇のように私の手の中で不気味な存在感を放つ。
ようやく掴んだ平穏な日々を、あざ笑うかのような宣戦布告であった。
忘れたくても忘れられない過去が、ついに私に追いついてきたのだ。
王太子妃候補と聖女という、二つの権威をかさに着た傲慢で身勝手な呼び出しである。
「どうかなさいましたか、エリアーナ様」
私の表情の変化に、アンナさんが心配そうな声をかけた。
工房にはミーナさんもいて、二人は私の手の中にある手紙と私の顔を交互に見ている。
私は震える手で、手紙をテーブルの上に置いた。
紙の上に並んだ美しい文字が、まるで私を縛る鎖のように見えてくる。
そして深呼吸を一つして、何とか冷静さを取り繕う。
「王都から、手紙が届きました。アルフォンス殿下と聖女リリア様からの、命令だそうです」
私の言葉に、工房の空気が一瞬で凍りついた。
ミーナさんの快活な表情から、すっと笑みが消える。
アンナさんは小さく息を呑み、青ざめていた。
私が王都から追放された聖女である過去は、ごく一部の人間しか知らない。
だがアルフォンス殿下とリリアが、私を追放した張本人であることは二人も薄々感づいていたのだろう。
二人の気遣いが、胸に染みた。
「命令ですって、一体どんな内容なの」
ミーナさんが、低い声で尋ねる。
その瞳には、隠しきれない怒りの色が燃えていた。
「私が作る薬が、人々をだますインチキではないか確かめたいそうです。近いうちに王都へ、出頭せよと」
「なっ、なんですって。そんなの、言いがかりにもほどがあるわ」
ミーナさんが、テーブルを力強く叩いて立ち上がった。
工房に置いてある、薬草の束が揺れる。
「エリアーナさんの薬が、どれだけの人を救ってきたと思ってるのよ。ふざけるのも、大概にしなさい」
「酷すぎます、自分たちの都合でエリアーナ様を追放しておいて。今度はそんな、理気尽な理由で呼びつけるなんて」
アンナさんも、悔しそうに唇を噛み締めている。
彼女の姉が、私の薬で救われたことを思い出す。
二人の怒りが、自分のことのように嬉しかった。
私のために、本気で憤ってくれる仲間がいる。
その事実が、私の心を強く支えてくれた。
「大丈夫です、二人とも。こうなることは、いつか来ると思っていましたから」
私は、努めて穏やかに微笑んでみせる。
「これは、逃げていては解決しない問題です。私自身の手で、決着をつけなければなりません」
その時、工房の扉が音もなく開かれラウル様が入ってきた。
彼は伝令兵から、リリアの手紙のことを聞いたのだろう。
その鋼のような表情は、いつも以上に険しいものになっていた。
彼の鋭い視線が、テーブルの上の手紙に注がれる。
「話は聞いた、エリアーナ。許しがたい、暴挙だ」
彼の声には、地殻変動のような抑えた、しかし底知れない怒りが込められている。
「ジルベール様は、王太子殿下からの不当な要求をはね除けてくださった。そのジルベール様の顔に、泥を塗るに等しい行為だ。聖女リリアという小娘が、独断でできることではない。背後にはアルフォンス殿下と、アルノー商会の思惑が黒い渦のように絡んでいるはずだ」
「はい、わたくしもそう思います」
ラウル様の推察は、的を射ていた。
「して、どうするつもりだ。もちろん、この命令に従う必要などない。ジルベール様は、必ずや君を最後までお守りになるだろう」
ラウル様の言葉は、力強くそして優しかった。
彼の後ろ盾があれば、王都からの呼び出しを無視し続けることも可能かもしれない。
しかしそれでは、根本的な解決にはならないだろう。
彼らは私が応じない限り、フロンティアの町への嫌がらせを、さらに陰湿な形で続けてくるはずだ。
町の商人や私の大切な仲間たちが、これ以上危険な目に遭うのは耐えられなかった。
バルトさんの運送ギルドや、他の商店にも迷惑がかかるだろう。
「いいえ、ラウル様。わたくしは、王都へ行きます」
私の決意に、その場にいた全員が息を呑んだ。
「無茶よ、エリアーナさん。罠に、決ってるわ」
ミーナさんが、悲鳴のような声を上げる。
「そうだぞ、エリアーナ。敵の真っ只中に、自ら飛び込むようなものだ」
ラウル様も、厳しい表情で私を諭そうとする。
「罠であることは、承知の上です。ですがこのまま辺境の地にいて、防戦一方ではジリ貧になるだけでしょう。いずれアルノー商会の経済封鎖によって、町の活気は失われてしまいます」
私は皆の顔を一人一人、まっすぐに見つめて言った。
「それにわたくしにはもう、失うことを恐れて隠れるような生き方はできません。私には、私の作るものを信じてくれる人たちがいます。その信頼に応えるためにも、王都の権威の前で私の薬が本物であることを証明してみせます」
私の瞳に宿る、揺るぎない光を見てラウル様は深く息をついた。
彼は私が一度決めたことは、決して曲げないことを理解してくれたのだろう。
「君の覚悟、分かった。ならば、私も共に行こう。このラウル・ド・ヴァリエール、命に代えても君を守り抜く」
「私も行くわよ、エリアーナさん一人を敵地に送り出すわけないじゃない」
ミーナさんも、即座に続く。
「わ、わたくしも、お店のことは一時的にザック先生にお願いして。身の回りのお世話を、させてください」
アンナさんまで、そう言ってくれた。
皆の温かい言葉に、胸が熱くなる。
だがこの件は、私一人の問題として片付けるべきであった。
仲間を、これ以上危険な道連れにするわけにはいかない。
「お気持ちは、本当に嬉しいです。ですが、皆さんを巻き込むわけには」
「何を、水臭いことを言うんだ」
私の言葉を、遮ったのはラウル様だった。
「君は、もう一人ではない。君の身はジルベール様が、そしてこの私が預かっている。君を守ることは、私の騎士としての務めであり誇りだ。それを、侮辱するようなことを言うな」
彼の真剣な眼差しに、私は何も言い返すことができなかった。
「そうよそうよ、私たちもう家族みたいなもんでしょ。困った時は、お互い様じゃない」
ミーナさんが、私の背中を力強く叩く。
その手の温かさが、私の迷いを吹き飛ばしてくれた。
「ありがとうございます、皆さん。わたくしは、本当に幸せ者です」
涙をこらえて、そう言うのが精一杯だった。
話はすぐに、ジルベール辺境伯様ご本人に伝えられた。
ラウル様からの報告を受けたジルベール様は、最初こそ烈火のごとく怒る。
王太子への侮辱を、許すまじと息巻いたそうだ。
だが私自身が王都へ行くことを望んでいると知ると、しばらく考え込んだ後、一つの条件付きでそれを許可してくださった。
その条件とは、私の王都への訪問を辺境伯からの正式な使節団という形にすること。
そしてラウル様が率いる近衛騎士団三十名を、その護衛として随行させることだった。
それは、王太子への明確な牽制である。
エリアーナは、辺境伯ジルベールが公式に認めた重要な人物である。
その身に何かあれば、王家との全面的な対立も辞さないという、強い意志表示に他ならない。
ジルベール様の、あまりに大きな配慮に私は身が引き締まる思いだった。
出発は、五日後と決まった。
フロンティアの町へ戻っていたバルトさんにも、すぐに連絡が届く。
彼はジルベール様の決定を聞いて、それなら安心だと豪快に笑っていたそうだ。
ザック先生も、何かあった時のためにと特別な解毒薬や眠り薬などをいくつも私に持たせてくれた。
「王都の連中は、陰険な手を使うやもしれんからのう」と、先生は心配そうに言った。
アンナさんは、旅の準備のためにてきぱきと必要なものを揃えてくれる。
着替えや保存食など、その手際は見事なものだ。
ミーナさんは、王都の地理や貴族街の噂などを彼女の情報網を駆使して集めてくれた。
「アルノー商会と繋がりのある貴族のリストよ、頭に入れておいて損はないわ」と、分厚い資料を渡される。
プルンも、これから始まる大きな戦いを予感しているのか。
私の肩の上で、体を震わせている。
皆が、私のために動いてくれていた。
私は、一人ではない。
その事実が、これから待ち受ける困難に立ち向かうための何よりの力となった。
王都へ向かうための準備は、着々と進んでいく。
今回は、辺境伯家の公式な使節団だ。
みすぼらしい格好は、できない。
ヴァイスブルグの最高の仕立て屋が、私のために何着もの美しいドレスや旅装束を仕立ててくれた。
辺境伯家の色である、深い青を基調とした上品なデザインである。
馬車も、辺境伯家の紋章が入った豪華で頑丈なものが用意された。
内装には衝撃を和らげる工夫がされており、長旅の疲れを軽減してくれるらしい。
その馬車の中には、王都の貴族たちを黙らせるための、私の最高傑作たちがこれでもかと積み込まれていく。
最高級のポーションだけでなく、美容効果のあるクリームや希少な薬草も含まれていた。
出発の日の朝、ヴァイスブルグの城門の前は、見送りの人々でごった返していた。
ジルベール辺境伯様ご自身も、ラウル様の両親であるヴァリエール公爵夫妻と共に直々に見送りに来てくださった。
公爵夫妻は、私に「息子のことを、よろしく頼みます」と優しく微笑んだ。
「エリアーナ薬師長、気をつけていくのだぞ」
ジルベール様が、馬上から力強い声で私を激励してくださる。
「お前の背後には、常に我がジルベール家の旗があることを忘れるな。堂々と胸を張って、王都の者どもにお前の真価を見せつけてやるといい」
「はい、必ずやご期待に応えてみせます」
私は、馬車の窓から深く頭を下げた。
ようやく掴んだ平穏な日々を、あざ笑うかのような宣戦布告であった。
忘れたくても忘れられない過去が、ついに私に追いついてきたのだ。
王太子妃候補と聖女という、二つの権威をかさに着た傲慢で身勝手な呼び出しである。
「どうかなさいましたか、エリアーナ様」
私の表情の変化に、アンナさんが心配そうな声をかけた。
工房にはミーナさんもいて、二人は私の手の中にある手紙と私の顔を交互に見ている。
私は震える手で、手紙をテーブルの上に置いた。
紙の上に並んだ美しい文字が、まるで私を縛る鎖のように見えてくる。
そして深呼吸を一つして、何とか冷静さを取り繕う。
「王都から、手紙が届きました。アルフォンス殿下と聖女リリア様からの、命令だそうです」
私の言葉に、工房の空気が一瞬で凍りついた。
ミーナさんの快活な表情から、すっと笑みが消える。
アンナさんは小さく息を呑み、青ざめていた。
私が王都から追放された聖女である過去は、ごく一部の人間しか知らない。
だがアルフォンス殿下とリリアが、私を追放した張本人であることは二人も薄々感づいていたのだろう。
二人の気遣いが、胸に染みた。
「命令ですって、一体どんな内容なの」
ミーナさんが、低い声で尋ねる。
その瞳には、隠しきれない怒りの色が燃えていた。
「私が作る薬が、人々をだますインチキではないか確かめたいそうです。近いうちに王都へ、出頭せよと」
「なっ、なんですって。そんなの、言いがかりにもほどがあるわ」
ミーナさんが、テーブルを力強く叩いて立ち上がった。
工房に置いてある、薬草の束が揺れる。
「エリアーナさんの薬が、どれだけの人を救ってきたと思ってるのよ。ふざけるのも、大概にしなさい」
「酷すぎます、自分たちの都合でエリアーナ様を追放しておいて。今度はそんな、理気尽な理由で呼びつけるなんて」
アンナさんも、悔しそうに唇を噛み締めている。
彼女の姉が、私の薬で救われたことを思い出す。
二人の怒りが、自分のことのように嬉しかった。
私のために、本気で憤ってくれる仲間がいる。
その事実が、私の心を強く支えてくれた。
「大丈夫です、二人とも。こうなることは、いつか来ると思っていましたから」
私は、努めて穏やかに微笑んでみせる。
「これは、逃げていては解決しない問題です。私自身の手で、決着をつけなければなりません」
その時、工房の扉が音もなく開かれラウル様が入ってきた。
彼は伝令兵から、リリアの手紙のことを聞いたのだろう。
その鋼のような表情は、いつも以上に険しいものになっていた。
彼の鋭い視線が、テーブルの上の手紙に注がれる。
「話は聞いた、エリアーナ。許しがたい、暴挙だ」
彼の声には、地殻変動のような抑えた、しかし底知れない怒りが込められている。
「ジルベール様は、王太子殿下からの不当な要求をはね除けてくださった。そのジルベール様の顔に、泥を塗るに等しい行為だ。聖女リリアという小娘が、独断でできることではない。背後にはアルフォンス殿下と、アルノー商会の思惑が黒い渦のように絡んでいるはずだ」
「はい、わたくしもそう思います」
ラウル様の推察は、的を射ていた。
「して、どうするつもりだ。もちろん、この命令に従う必要などない。ジルベール様は、必ずや君を最後までお守りになるだろう」
ラウル様の言葉は、力強くそして優しかった。
彼の後ろ盾があれば、王都からの呼び出しを無視し続けることも可能かもしれない。
しかしそれでは、根本的な解決にはならないだろう。
彼らは私が応じない限り、フロンティアの町への嫌がらせを、さらに陰湿な形で続けてくるはずだ。
町の商人や私の大切な仲間たちが、これ以上危険な目に遭うのは耐えられなかった。
バルトさんの運送ギルドや、他の商店にも迷惑がかかるだろう。
「いいえ、ラウル様。わたくしは、王都へ行きます」
私の決意に、その場にいた全員が息を呑んだ。
「無茶よ、エリアーナさん。罠に、決ってるわ」
ミーナさんが、悲鳴のような声を上げる。
「そうだぞ、エリアーナ。敵の真っ只中に、自ら飛び込むようなものだ」
ラウル様も、厳しい表情で私を諭そうとする。
「罠であることは、承知の上です。ですがこのまま辺境の地にいて、防戦一方ではジリ貧になるだけでしょう。いずれアルノー商会の経済封鎖によって、町の活気は失われてしまいます」
私は皆の顔を一人一人、まっすぐに見つめて言った。
「それにわたくしにはもう、失うことを恐れて隠れるような生き方はできません。私には、私の作るものを信じてくれる人たちがいます。その信頼に応えるためにも、王都の権威の前で私の薬が本物であることを証明してみせます」
私の瞳に宿る、揺るぎない光を見てラウル様は深く息をついた。
彼は私が一度決めたことは、決して曲げないことを理解してくれたのだろう。
「君の覚悟、分かった。ならば、私も共に行こう。このラウル・ド・ヴァリエール、命に代えても君を守り抜く」
「私も行くわよ、エリアーナさん一人を敵地に送り出すわけないじゃない」
ミーナさんも、即座に続く。
「わ、わたくしも、お店のことは一時的にザック先生にお願いして。身の回りのお世話を、させてください」
アンナさんまで、そう言ってくれた。
皆の温かい言葉に、胸が熱くなる。
だがこの件は、私一人の問題として片付けるべきであった。
仲間を、これ以上危険な道連れにするわけにはいかない。
「お気持ちは、本当に嬉しいです。ですが、皆さんを巻き込むわけには」
「何を、水臭いことを言うんだ」
私の言葉を、遮ったのはラウル様だった。
「君は、もう一人ではない。君の身はジルベール様が、そしてこの私が預かっている。君を守ることは、私の騎士としての務めであり誇りだ。それを、侮辱するようなことを言うな」
彼の真剣な眼差しに、私は何も言い返すことができなかった。
「そうよそうよ、私たちもう家族みたいなもんでしょ。困った時は、お互い様じゃない」
ミーナさんが、私の背中を力強く叩く。
その手の温かさが、私の迷いを吹き飛ばしてくれた。
「ありがとうございます、皆さん。わたくしは、本当に幸せ者です」
涙をこらえて、そう言うのが精一杯だった。
話はすぐに、ジルベール辺境伯様ご本人に伝えられた。
ラウル様からの報告を受けたジルベール様は、最初こそ烈火のごとく怒る。
王太子への侮辱を、許すまじと息巻いたそうだ。
だが私自身が王都へ行くことを望んでいると知ると、しばらく考え込んだ後、一つの条件付きでそれを許可してくださった。
その条件とは、私の王都への訪問を辺境伯からの正式な使節団という形にすること。
そしてラウル様が率いる近衛騎士団三十名を、その護衛として随行させることだった。
それは、王太子への明確な牽制である。
エリアーナは、辺境伯ジルベールが公式に認めた重要な人物である。
その身に何かあれば、王家との全面的な対立も辞さないという、強い意志表示に他ならない。
ジルベール様の、あまりに大きな配慮に私は身が引き締まる思いだった。
出発は、五日後と決まった。
フロンティアの町へ戻っていたバルトさんにも、すぐに連絡が届く。
彼はジルベール様の決定を聞いて、それなら安心だと豪快に笑っていたそうだ。
ザック先生も、何かあった時のためにと特別な解毒薬や眠り薬などをいくつも私に持たせてくれた。
「王都の連中は、陰険な手を使うやもしれんからのう」と、先生は心配そうに言った。
アンナさんは、旅の準備のためにてきぱきと必要なものを揃えてくれる。
着替えや保存食など、その手際は見事なものだ。
ミーナさんは、王都の地理や貴族街の噂などを彼女の情報網を駆使して集めてくれた。
「アルノー商会と繋がりのある貴族のリストよ、頭に入れておいて損はないわ」と、分厚い資料を渡される。
プルンも、これから始まる大きな戦いを予感しているのか。
私の肩の上で、体を震わせている。
皆が、私のために動いてくれていた。
私は、一人ではない。
その事実が、これから待ち受ける困難に立ち向かうための何よりの力となった。
王都へ向かうための準備は、着々と進んでいく。
今回は、辺境伯家の公式な使節団だ。
みすぼらしい格好は、できない。
ヴァイスブルグの最高の仕立て屋が、私のために何着もの美しいドレスや旅装束を仕立ててくれた。
辺境伯家の色である、深い青を基調とした上品なデザインである。
馬車も、辺境伯家の紋章が入った豪華で頑丈なものが用意された。
内装には衝撃を和らげる工夫がされており、長旅の疲れを軽減してくれるらしい。
その馬車の中には、王都の貴族たちを黙らせるための、私の最高傑作たちがこれでもかと積み込まれていく。
最高級のポーションだけでなく、美容効果のあるクリームや希少な薬草も含まれていた。
出発の日の朝、ヴァイスブルグの城門の前は、見送りの人々でごった返していた。
ジルベール辺境伯様ご自身も、ラウル様の両親であるヴァリエール公爵夫妻と共に直々に見送りに来てくださった。
公爵夫妻は、私に「息子のことを、よろしく頼みます」と優しく微笑んだ。
「エリアーナ薬師長、気をつけていくのだぞ」
ジルベール様が、馬上から力強い声で私を激励してくださる。
「お前の背後には、常に我がジルベール家の旗があることを忘れるな。堂々と胸を張って、王都の者どもにお前の真価を見せつけてやるといい」
「はい、必ずやご期待に応えてみせます」
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○更新状況○
2023/2/15投稿開始
毎週水曜20時頃次回投稿の予定