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ふと、店の入り口に目をやると、一人の若い娘が、ためらうように立っているのが見えた。年の頃は十六、七だろうか。質素だが清潔な着物をまとい、その手には小さな風呂敷包みを抱えている。どこか思い詰めたような表情で、店の暖簾をくぐるべきか、入るまいか、逡巡している様子だった。
「いらっしゃいませ。どうぞ、お入りなさい」
私が声をかけると、娘はびくりとしたように顔を上げた。そして、恐る恐るといった感じで、小さな声で言った。
「あの…こちらは、やわらぎ亭さん、でございますか?」
「ええ、そうですとも。さあ、そんなところに立っていないで、こちらへどうぞ」
私は娘を促し、空いていた席へと案内した。娘は深々と頭を下げると、おずおずと席に着いた。
「何か、召し上がりますか?ちょうど、お昼の定食がご用意できますが」
「あ、いえ…あの、私は、食事をいただきに参ったのでは…」
娘は俯いたまま、小さな声でそう言った。その手は、膝の上の風呂敷包みを固く握りしめている。何か、特別な事情があるのだろう。
「では、何かご用でしょうか?」
「あの…こちらのご主人様に、お渡ししたいものがございまして…」
娘はそう言うと、意を決したように顔を上げ、風呂敷包みを私の前にそっと差し出した。
「これは…?」
「私の父が、以前、こちらで大変お世話になったと聞きまして…。これは、父が亡くなる前に、私に託したものでございます。『いつか必ず、やわらぎ亭の主に届けてくれ』と…」
娘の瞳は潤んでいた。私はその風呂敷包みを、静かに受け取った。ずしりとした、確かな重みが手に伝わる。
「お父様は…いつ頃、こちらに?」
「もう、十年も前のことになると、母から聞いております。父は、若い頃に江戸で奉公しておりまして、その折に、こちらの煮売り屋さんで、それはそれは美味しいお粥をいただいたと…病で食欲もなかった父が、そのお粥だけは残さず食べることができ、おかげで元気を取り戻すことができたのだと、何度も話しておりました」
十年前のお粥…。私の記憶の糸が、たぐり寄せられる。確かに、そんなお客様がいらっしゃったような気がする。顔つきまではっきりとではないが、病み上がりで、お粥を美味しそうに食べてくださった若い男性の姿が、ぼんやりとだが思い出された。
「もしかして…お父様のお名前は…」
「はい、佐吉と申します」
佐吉さん…。そうだ、確かにそんな名前の、人の良さそうな青年だった。
「覚えていてくださったのですか…!」
娘の顔が、ぱっと明るくなった。その表情は、亡き父親の面影を宿しているようにも見えた。
「ええ、もちろんです。佐吉さんは、とても真面目な方でした。お粥を差し上げると、何度も何度も『美味しい、美味しい』と言ってくださって…私も嬉しかったのを覚えています」
「父も、きっと喜んでいることと存じます。あの…この包み、開けてみていただけますでしょうか」
私は頷き、風呂敷の結び目を解いた。中から現れたのは、古びた桐の小箱だった。そっと蓋を開けると、そこには、丁寧に畳まれた手拭いと、一本の古い木の匙が納められていた。
「これは…手拭いと、木の匙…?」
「はい。父が申しておりました。あの時、お粥をいただいた際に、お店の手拭いを汚してしまい、新しいものを返すとお約束したまま、果たせなかったと。そしてこの木の匙は、お粥をいただくのに使わせていただいたものだそうで…どうしてもお返ししたかったのだと」
手拭いを汚した…?木の匙…?その言葉に、私の記憶が鮮明に蘇ってきた。そうだ、あの時、佐吉さんはお粥を食べるのに夢中で、うっかり椀を倒してしまい、私の貸した手拭いを汚してしまったのだ。そして、木の匙は、私が「この匙で食べると、より美味しく感じますよ」と言って、特別に差し出したものだった。
「…思い出しました。佐吉さんは、とても恐縮されていましたね。手拭いのことなど、お気になさらないでと申し上げたのですが」
「父は、とても律儀な人間でございましたから…。ずっと、そのことを気に病んでいたのだと存じます。そしてこの木の匙も、お借りしたままになってしまったと…」
私はその木の匙を、そっと手に取った。磨り減ってはいるが、温かみのある、優しい手触りの匙だ。この匙で、佐吉さんはどんな思いでお粥を口にしたのだろう。
「この匙は、差し上げたものですよ。佐吉さんが、あまりにも美味しそうにお粥を食べてくださるので、つい嬉しくなってしまって」
「えっ…そうなのですか?」
「ええ。ですから、お気になさらずとも良かったのですが…。でも、こうして届けてくださって、ありがとうございます。佐吉さんのお気持ち、確かに受け取りました」
私は娘に深々と頭を下げた。娘の瞳からは、大粒の涙がこぼれ落ちていた。
「父の長年の気がかりが、ようやく晴れたことと存じます。本当に、ありがとうございました」
「いえ…。良ければ、少し休んでいってください。何か温かいものでも…」
「ありがとうございます。でも、私はこれで失礼いたします。父の言いつけを果たすことができましたので…」
娘はそう言うと、もう一度深く頭を下げ、静かに店を後にした。その後ろ姿は、来た時よりもずっと軽やかに見えた。
私は桐の小箱を手に取り、炊き場の棚の奥に、そっと仕舞った。手拭いと木の匙。そこには、十年という歳月と、一人の客人の誠実な思いが詰まっている。やわらぎ亭は、ただ飯を出すだけの場所ではない。人と人との縁を結び、心を繋ぐ場所でもあるのだと、改めて感じさせられた出来事だった。
「おし乃さん、なんだか…じんと来ちまったな」
いつの間にか、私の仕事ぶりを黙って見ていた良太が、ぽつりと言った。その目も、少し潤んでいるように見えた。
「ええ、本当に。人の心というものは、温かいものね」
「俺も、いつか誰かの心に残るような飯を作れるようになりてえです」
「良太君なら、きっとできるわ。あなたの料理には、もうその心が込められているもの」
「…ありがとうございます!」
良太の声は、いつにも増して力強かった。
陽が少し傾きかけ、西の空が茜色に染まり始めた頃、やわらぎ亭の暖簾を勢いよくくぐって、一人の男が駆け込んできた。その顔には喜びと安堵の色が浮かんでいる。
「おし乃さん!おし乃さん、聞いてくれ!」
それは、今朝、娘のお花ちゃんのことで血相を変えてやって来た、八百屋の忠吉だった。
「忠吉さん!どうしました?お花ちゃんの具合は…!」
「それがな、おし乃さんにもらったあの梅葛湯、あれをお花に少しずつ飲ませたら、しばらくして、すうっと汗をかいて、熱が少し下がったんだ!それに、ほんの少しだけど、『おいしい』って言って、自分から口を開けてくれてな!」
「まあ、それは良かった!本当に良かった!」
忠吉の言葉に、私と良太は思わず顔を見合わせ、安堵の息を漏らした。
「医者も驚いてたよ。こんなに早く良くなるなんてってな。これもみんな、おし乃さんのおかげだ!本当に、ありがとう!ありがとう!」
忠吉は何度も何度も頭を下げ、その目には涙が光っていた。
「いえ、私など何も。お花ちゃん自身の力と、忠吉さんの看病のおかげですよ」
「そんなことねえ!おし乃さんのあの梅葛湯がなかったら、どうなってたか…。そうだ、これ、ほんの気持ちばかりだが、礼だ。受け取ってくれ」
忠吉はそう言って、懐から丁寧に包まれた紙包みを取り出し、私に差し出した。
「まあ、忠吉さん、こんなもの…」
「いいから、いいから!今日採れたばかりの、一番いい大根と蕪だ。おし乃さんの料理に使ってくれりゃあ、こいつらも本望だろうよ」
その気持ちが嬉しくて、私はありがたくそれを受け取った。
「ありがとうございます、忠吉さん。美味しく料理させていただきますね」
「おう!じゃあ、俺はこれでお花のとこに戻るよ。まだ油断はできねえからな。本当に、今日は助かったぜ!」
嵐のようにやって来て、嵐のように去って行った忠吉。その後ろ姿は、朝とは比べ物にならないほど力強く、父親としての愛情に満ちていた。
「良かったですね、おし乃さん。お花ちゃん、元気になって」
良太が心底嬉しそうに言った。
「ええ、本当に。人の役に立てるというのは、料理人にとって何よりの喜びね」
今日一日の出来事が、胸の中で温かく広がっていくのを感じた。佐吉さんの娘さんの誠実な心、そしてお花ちゃんの回復。このやわらぎ亭という小さな飯屋が、誰かの心に寄り添い、誰かの力になれている。その実感が、私にとって何よりの励みになる。
「さあ、良太。夕餉の支度を始めましょうか。忠吉さんにもらったこの立派な大根と蕪、どう料理してくれようかしらね」
「はい、おし乃さん!腕によりをかけて、美味しいものを作りましょう!」
夕暮れ時のやわらぎ亭に、また活気が戻ってきた。包丁がまな板を叩く軽快な音、鍋から立ち上る湯気の香り、そして、私たちの弾む声。この場所で、明日もまた、たくさんの笑顔と温かい物語が生まれるのだろう。そんな確信にも似た思いを胸に、私は一心に手を動かし続けた。
「いらっしゃいませ。どうぞ、お入りなさい」
私が声をかけると、娘はびくりとしたように顔を上げた。そして、恐る恐るといった感じで、小さな声で言った。
「あの…こちらは、やわらぎ亭さん、でございますか?」
「ええ、そうですとも。さあ、そんなところに立っていないで、こちらへどうぞ」
私は娘を促し、空いていた席へと案内した。娘は深々と頭を下げると、おずおずと席に着いた。
「何か、召し上がりますか?ちょうど、お昼の定食がご用意できますが」
「あ、いえ…あの、私は、食事をいただきに参ったのでは…」
娘は俯いたまま、小さな声でそう言った。その手は、膝の上の風呂敷包みを固く握りしめている。何か、特別な事情があるのだろう。
「では、何かご用でしょうか?」
「あの…こちらのご主人様に、お渡ししたいものがございまして…」
娘はそう言うと、意を決したように顔を上げ、風呂敷包みを私の前にそっと差し出した。
「これは…?」
「私の父が、以前、こちらで大変お世話になったと聞きまして…。これは、父が亡くなる前に、私に託したものでございます。『いつか必ず、やわらぎ亭の主に届けてくれ』と…」
娘の瞳は潤んでいた。私はその風呂敷包みを、静かに受け取った。ずしりとした、確かな重みが手に伝わる。
「お父様は…いつ頃、こちらに?」
「もう、十年も前のことになると、母から聞いております。父は、若い頃に江戸で奉公しておりまして、その折に、こちらの煮売り屋さんで、それはそれは美味しいお粥をいただいたと…病で食欲もなかった父が、そのお粥だけは残さず食べることができ、おかげで元気を取り戻すことができたのだと、何度も話しておりました」
十年前のお粥…。私の記憶の糸が、たぐり寄せられる。確かに、そんなお客様がいらっしゃったような気がする。顔つきまではっきりとではないが、病み上がりで、お粥を美味しそうに食べてくださった若い男性の姿が、ぼんやりとだが思い出された。
「もしかして…お父様のお名前は…」
「はい、佐吉と申します」
佐吉さん…。そうだ、確かにそんな名前の、人の良さそうな青年だった。
「覚えていてくださったのですか…!」
娘の顔が、ぱっと明るくなった。その表情は、亡き父親の面影を宿しているようにも見えた。
「ええ、もちろんです。佐吉さんは、とても真面目な方でした。お粥を差し上げると、何度も何度も『美味しい、美味しい』と言ってくださって…私も嬉しかったのを覚えています」
「父も、きっと喜んでいることと存じます。あの…この包み、開けてみていただけますでしょうか」
私は頷き、風呂敷の結び目を解いた。中から現れたのは、古びた桐の小箱だった。そっと蓋を開けると、そこには、丁寧に畳まれた手拭いと、一本の古い木の匙が納められていた。
「これは…手拭いと、木の匙…?」
「はい。父が申しておりました。あの時、お粥をいただいた際に、お店の手拭いを汚してしまい、新しいものを返すとお約束したまま、果たせなかったと。そしてこの木の匙は、お粥をいただくのに使わせていただいたものだそうで…どうしてもお返ししたかったのだと」
手拭いを汚した…?木の匙…?その言葉に、私の記憶が鮮明に蘇ってきた。そうだ、あの時、佐吉さんはお粥を食べるのに夢中で、うっかり椀を倒してしまい、私の貸した手拭いを汚してしまったのだ。そして、木の匙は、私が「この匙で食べると、より美味しく感じますよ」と言って、特別に差し出したものだった。
「…思い出しました。佐吉さんは、とても恐縮されていましたね。手拭いのことなど、お気になさらないでと申し上げたのですが」
「父は、とても律儀な人間でございましたから…。ずっと、そのことを気に病んでいたのだと存じます。そしてこの木の匙も、お借りしたままになってしまったと…」
私はその木の匙を、そっと手に取った。磨り減ってはいるが、温かみのある、優しい手触りの匙だ。この匙で、佐吉さんはどんな思いでお粥を口にしたのだろう。
「この匙は、差し上げたものですよ。佐吉さんが、あまりにも美味しそうにお粥を食べてくださるので、つい嬉しくなってしまって」
「えっ…そうなのですか?」
「ええ。ですから、お気になさらずとも良かったのですが…。でも、こうして届けてくださって、ありがとうございます。佐吉さんのお気持ち、確かに受け取りました」
私は娘に深々と頭を下げた。娘の瞳からは、大粒の涙がこぼれ落ちていた。
「父の長年の気がかりが、ようやく晴れたことと存じます。本当に、ありがとうございました」
「いえ…。良ければ、少し休んでいってください。何か温かいものでも…」
「ありがとうございます。でも、私はこれで失礼いたします。父の言いつけを果たすことができましたので…」
娘はそう言うと、もう一度深く頭を下げ、静かに店を後にした。その後ろ姿は、来た時よりもずっと軽やかに見えた。
私は桐の小箱を手に取り、炊き場の棚の奥に、そっと仕舞った。手拭いと木の匙。そこには、十年という歳月と、一人の客人の誠実な思いが詰まっている。やわらぎ亭は、ただ飯を出すだけの場所ではない。人と人との縁を結び、心を繋ぐ場所でもあるのだと、改めて感じさせられた出来事だった。
「おし乃さん、なんだか…じんと来ちまったな」
いつの間にか、私の仕事ぶりを黙って見ていた良太が、ぽつりと言った。その目も、少し潤んでいるように見えた。
「ええ、本当に。人の心というものは、温かいものね」
「俺も、いつか誰かの心に残るような飯を作れるようになりてえです」
「良太君なら、きっとできるわ。あなたの料理には、もうその心が込められているもの」
「…ありがとうございます!」
良太の声は、いつにも増して力強かった。
陽が少し傾きかけ、西の空が茜色に染まり始めた頃、やわらぎ亭の暖簾を勢いよくくぐって、一人の男が駆け込んできた。その顔には喜びと安堵の色が浮かんでいる。
「おし乃さん!おし乃さん、聞いてくれ!」
それは、今朝、娘のお花ちゃんのことで血相を変えてやって来た、八百屋の忠吉だった。
「忠吉さん!どうしました?お花ちゃんの具合は…!」
「それがな、おし乃さんにもらったあの梅葛湯、あれをお花に少しずつ飲ませたら、しばらくして、すうっと汗をかいて、熱が少し下がったんだ!それに、ほんの少しだけど、『おいしい』って言って、自分から口を開けてくれてな!」
「まあ、それは良かった!本当に良かった!」
忠吉の言葉に、私と良太は思わず顔を見合わせ、安堵の息を漏らした。
「医者も驚いてたよ。こんなに早く良くなるなんてってな。これもみんな、おし乃さんのおかげだ!本当に、ありがとう!ありがとう!」
忠吉は何度も何度も頭を下げ、その目には涙が光っていた。
「いえ、私など何も。お花ちゃん自身の力と、忠吉さんの看病のおかげですよ」
「そんなことねえ!おし乃さんのあの梅葛湯がなかったら、どうなってたか…。そうだ、これ、ほんの気持ちばかりだが、礼だ。受け取ってくれ」
忠吉はそう言って、懐から丁寧に包まれた紙包みを取り出し、私に差し出した。
「まあ、忠吉さん、こんなもの…」
「いいから、いいから!今日採れたばかりの、一番いい大根と蕪だ。おし乃さんの料理に使ってくれりゃあ、こいつらも本望だろうよ」
その気持ちが嬉しくて、私はありがたくそれを受け取った。
「ありがとうございます、忠吉さん。美味しく料理させていただきますね」
「おう!じゃあ、俺はこれでお花のとこに戻るよ。まだ油断はできねえからな。本当に、今日は助かったぜ!」
嵐のようにやって来て、嵐のように去って行った忠吉。その後ろ姿は、朝とは比べ物にならないほど力強く、父親としての愛情に満ちていた。
「良かったですね、おし乃さん。お花ちゃん、元気になって」
良太が心底嬉しそうに言った。
「ええ、本当に。人の役に立てるというのは、料理人にとって何よりの喜びね」
今日一日の出来事が、胸の中で温かく広がっていくのを感じた。佐吉さんの娘さんの誠実な心、そしてお花ちゃんの回復。このやわらぎ亭という小さな飯屋が、誰かの心に寄り添い、誰かの力になれている。その実感が、私にとって何よりの励みになる。
「さあ、良太。夕餉の支度を始めましょうか。忠吉さんにもらったこの立派な大根と蕪、どう料理してくれようかしらね」
「はい、おし乃さん!腕によりをかけて、美味しいものを作りましょう!」
夕暮れ時のやわらぎ亭に、また活気が戻ってきた。包丁がまな板を叩く軽快な音、鍋から立ち上る湯気の香り、そして、私たちの弾む声。この場所で、明日もまた、たくさんの笑顔と温かい物語が生まれるのだろう。そんな確信にも似た思いを胸に、私は一心に手を動かし続けた。
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