18 / 35
18.オティーリエ王女との婚儀
オティーリエ王女は横暴だった。気分がころころ変わり、使用人達を振り回した。気に入らないと「首を斬るわよ」と脅す。
銀星宮には熟練した者達を配置したので、うまくかわしているがオティーリエ王女の我儘の報告はおびただしい。
バシュロ様を急かして商人を呼んだのだが、予算のことなど頭になく、あれもこれもと欲しがる。
私が調整に入り、予算内の品物を提案するのだが
「側妃の分際で指図しないで!わたくしは王太子妃なのよ!未来の王妃なのよ!そうなったらお前なんか斬首にしてやるわ!」
と、大変なおかんむりだ。
「斬首」発言はバシュロ様には伏せていたが、銀星宮の最高統括侍女から報告が上がってしまった。
バシュロ様は銀星宮に乗り込んで行った。
オティーリエ王女はバシュロ様の訪れに喜んで駆け寄り、
「バシュロ様!お会いしたかった」
としなだれかかった。それをぐいと押しのけて、バシュロ様は言い渡した。
「今後誰に対しても、"斬首"や"首を刎ねる"という脅しは禁じる!其方にその権限はない!」
オティーリエ王女は涙目で甘えた声を出した。
「わたくしは王太子妃ですもの。下のものを裁く権利が」
「ない!!」
ばっさり言い渡される。
「義務を果たさない者は何の権利もない。今後はベルナデットに何事も図るように」
「側妃の言うなりになれというのですか!?」
「ベルナデットは私の後宮の運営者だ。其方の相談役でもある。ゆめゆめ疎かに扱わないよう命じる」
バシュロ様はオティーリエ王女に厳しい。厳しくしなくてならない言動のせいだが、もっと言い様があるだろうと私は思う。
混乱もあったが、婚儀の準備はなんとか調い、その日が来た。
驚いたことに式典は小規模だった。
謁見の間で、臣下の立ち並ぶ中で宣言をし、王妃殿下からティアラを賜っただけで終わった。
バシュロ様は終始オティーリエ王女を見ようともせず、反対にオティーリエ王女はバシュロ様の腕に縋っていた。
最も驚いたことは、カテーナ王国からはインジャル王国に駐在している大使しか参列していなかったのだ。
これではあからさまな捨て駒扱いではないか。
婚儀が終わるとバシュロ様は腕を振りほどいて、一人でその場から去ってしまった。
臣下たちも大使も気にする風はない。
オティーリエ王女は銀星宮の侍女達に囲まれて退出した。
「あんまりです。バシュロ様」
その後、家族のサロンにオティーリエ王女以外が集まった時に、私は思わず抗議した。
「オティーリエ王女殿下、いえ王太子妃殿下にはバシュロ様しかいらっしゃらないも同然ではないですか。夫になる方にあんなに冷たくされるなんて、あんまりななさり様ですわ」
「臭かった」
ボソっと言う。
「あの香水はなんなんだ。臭くて鼻がまがりそうだった」
なんて子供っぽい言い様だろう。
とは言え、私もあのムスクのつけすぎが嫌だ。
「今後はムスクは仕入れません。別の香水になりますから、お優しくしてください」
「…わかった」
嫌そうな顔でおっしゃる。
「それにしても…」
王妃殿下がぽつりと言う。
「絶世の美少女という触れ込みでしたが、正装になっても割と平凡なお顔の方ですわね」
「きっと白いドレスと化粧のせいですわ。そばかすをお気にされて、白粉を厚く塗っていらっしゃいましたもの」
苦しい取り繕いをする私だが、実は素顔のオティーリエ王女が地味な顔立ちなことを知っている。でも、他国に来て孤立無援なオティーリエ王女に同情する。
「それにしても勉学もダメ、作法もいまひとつ、センスも悪い、性格も難あり。これでは人質の意味をなすのでしょうか」
王妃殿下の言葉に、何故かバシュロ様がにこっと笑っておっしゃった。
「いいではありませんか。条件が揃えば私の望みが叶います」
「バシュロよ」
国王陛下が重々しい声でおっしゃる。
「その場合は全て其方に任せる」
「お任せください、父上」
なぜかバシュロ様はうきうきしている。
その夜はバシュロ様とオティーリエ王太子殿下の新枕の儀だ。
私達が就寝しようとしていると、控えの間の侍女が驚いた顔で寝室に入ってきた。
「バシュロ殿下がいらっしゃいました」
控えの間の次女が告げ、私は心底驚いた。
新枕の儀の夜に側妃の元に来るなんて!
「やあ、ベル、こんばんは」
悪びれもせず、バシュロ殿下が言う。
「バシュロ殿下、今夜は新枕の儀でございます!」
「ああ、それね。失敗したよ」
失敗?どういうことなのだろう。
「オティーリア王女は床入りを急いで癇癪を起して、聖水を全部ひっくり返したんだ」
王家の儀式に必須な聖水は、神殿の女神の泉でしかいただけない。それも半年に一度と決められている。
「あと半年しないと新枕の儀は執り行えないってわけ」
バシュロ殿下は心から嬉しそうに笑った。
「婚儀はしたけど、実質まだ正妃じゃない。半年したら、もうオティーリエ王女に義理立てすることもない」
そしてさも嫌そうに
「ああ、化粧と香水の匂いで窒息しそうだった」
そして私を抱き寄せて髪に顔を埋めて、大きく息を吸った。
「ベルはいつもいい香りがする」
と笑った。
私は必死にバシュロ殿下の胸を押し返した。
「どうか困らせないでください。約束は約束です」
「わかっている。あと半年。今日はこのまま自分の部屋に帰るよ」
そう言って帰って行った。
銀星宮には熟練した者達を配置したので、うまくかわしているがオティーリエ王女の我儘の報告はおびただしい。
バシュロ様を急かして商人を呼んだのだが、予算のことなど頭になく、あれもこれもと欲しがる。
私が調整に入り、予算内の品物を提案するのだが
「側妃の分際で指図しないで!わたくしは王太子妃なのよ!未来の王妃なのよ!そうなったらお前なんか斬首にしてやるわ!」
と、大変なおかんむりだ。
「斬首」発言はバシュロ様には伏せていたが、銀星宮の最高統括侍女から報告が上がってしまった。
バシュロ様は銀星宮に乗り込んで行った。
オティーリエ王女はバシュロ様の訪れに喜んで駆け寄り、
「バシュロ様!お会いしたかった」
としなだれかかった。それをぐいと押しのけて、バシュロ様は言い渡した。
「今後誰に対しても、"斬首"や"首を刎ねる"という脅しは禁じる!其方にその権限はない!」
オティーリエ王女は涙目で甘えた声を出した。
「わたくしは王太子妃ですもの。下のものを裁く権利が」
「ない!!」
ばっさり言い渡される。
「義務を果たさない者は何の権利もない。今後はベルナデットに何事も図るように」
「側妃の言うなりになれというのですか!?」
「ベルナデットは私の後宮の運営者だ。其方の相談役でもある。ゆめゆめ疎かに扱わないよう命じる」
バシュロ様はオティーリエ王女に厳しい。厳しくしなくてならない言動のせいだが、もっと言い様があるだろうと私は思う。
混乱もあったが、婚儀の準備はなんとか調い、その日が来た。
驚いたことに式典は小規模だった。
謁見の間で、臣下の立ち並ぶ中で宣言をし、王妃殿下からティアラを賜っただけで終わった。
バシュロ様は終始オティーリエ王女を見ようともせず、反対にオティーリエ王女はバシュロ様の腕に縋っていた。
最も驚いたことは、カテーナ王国からはインジャル王国に駐在している大使しか参列していなかったのだ。
これではあからさまな捨て駒扱いではないか。
婚儀が終わるとバシュロ様は腕を振りほどいて、一人でその場から去ってしまった。
臣下たちも大使も気にする風はない。
オティーリエ王女は銀星宮の侍女達に囲まれて退出した。
「あんまりです。バシュロ様」
その後、家族のサロンにオティーリエ王女以外が集まった時に、私は思わず抗議した。
「オティーリエ王女殿下、いえ王太子妃殿下にはバシュロ様しかいらっしゃらないも同然ではないですか。夫になる方にあんなに冷たくされるなんて、あんまりななさり様ですわ」
「臭かった」
ボソっと言う。
「あの香水はなんなんだ。臭くて鼻がまがりそうだった」
なんて子供っぽい言い様だろう。
とは言え、私もあのムスクのつけすぎが嫌だ。
「今後はムスクは仕入れません。別の香水になりますから、お優しくしてください」
「…わかった」
嫌そうな顔でおっしゃる。
「それにしても…」
王妃殿下がぽつりと言う。
「絶世の美少女という触れ込みでしたが、正装になっても割と平凡なお顔の方ですわね」
「きっと白いドレスと化粧のせいですわ。そばかすをお気にされて、白粉を厚く塗っていらっしゃいましたもの」
苦しい取り繕いをする私だが、実は素顔のオティーリエ王女が地味な顔立ちなことを知っている。でも、他国に来て孤立無援なオティーリエ王女に同情する。
「それにしても勉学もダメ、作法もいまひとつ、センスも悪い、性格も難あり。これでは人質の意味をなすのでしょうか」
王妃殿下の言葉に、何故かバシュロ様がにこっと笑っておっしゃった。
「いいではありませんか。条件が揃えば私の望みが叶います」
「バシュロよ」
国王陛下が重々しい声でおっしゃる。
「その場合は全て其方に任せる」
「お任せください、父上」
なぜかバシュロ様はうきうきしている。
その夜はバシュロ様とオティーリエ王太子殿下の新枕の儀だ。
私達が就寝しようとしていると、控えの間の侍女が驚いた顔で寝室に入ってきた。
「バシュロ殿下がいらっしゃいました」
控えの間の次女が告げ、私は心底驚いた。
新枕の儀の夜に側妃の元に来るなんて!
「やあ、ベル、こんばんは」
悪びれもせず、バシュロ殿下が言う。
「バシュロ殿下、今夜は新枕の儀でございます!」
「ああ、それね。失敗したよ」
失敗?どういうことなのだろう。
「オティーリア王女は床入りを急いで癇癪を起して、聖水を全部ひっくり返したんだ」
王家の儀式に必須な聖水は、神殿の女神の泉でしかいただけない。それも半年に一度と決められている。
「あと半年しないと新枕の儀は執り行えないってわけ」
バシュロ殿下は心から嬉しそうに笑った。
「婚儀はしたけど、実質まだ正妃じゃない。半年したら、もうオティーリエ王女に義理立てすることもない」
そしてさも嫌そうに
「ああ、化粧と香水の匂いで窒息しそうだった」
そして私を抱き寄せて髪に顔を埋めて、大きく息を吸った。
「ベルはいつもいい香りがする」
と笑った。
私は必死にバシュロ殿下の胸を押し返した。
「どうか困らせないでください。約束は約束です」
「わかっている。あと半年。今日はこのまま自分の部屋に帰るよ」
そう言って帰って行った。
あなたにおすすめの小説
王宮地味女官、只者じゃねぇ
宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。
しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!?
王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。
訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ――
さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。
「おら、案内させてもらいますけんの」
その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。
王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」
副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」
ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」
そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」
けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。
王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。
訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る――
これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。
★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。
【番外編も完結】で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?
Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。
簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。
一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。
ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。
そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。
オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。
オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。
「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」
「はい?」
ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。
*--*--*
覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾
★2/17 番外編を投稿することになりました。→完結しました!
★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓
このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。
第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」
第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」
第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」
どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ
もしよかったら宜しくお願いしますね!
白い結婚の行方
宵森みなと
恋愛
「この結婚は、形式だけ。三年経ったら、離縁して養子縁組みをして欲しい。」
そう告げられたのは、まだ十二歳だった。
名門マイラス侯爵家の跡取りと、書面上だけの「夫婦」になるという取り決め。
愛もなく、未来も誓わず、ただ家と家の都合で交わされた契約だが、彼女にも目的はあった。
この白い結婚の意味を誰より彼女は、知っていた。自らの運命をどう選択するのか、彼女自身に委ねられていた。
冷静で、理知的で、どこか人を寄せつけない彼女。
誰もが「大人びている」と評した少女の胸の奥には、小さな祈りが宿っていた。
結婚に興味などなかったはずの青年も、少女との出会いと別れ、後悔を経て、再び運命を掴もうと足掻く。
これは、名ばかりの「夫婦」から始まった二人の物語。
偽りの契りが、やがて確かな絆へと変わるまで。
交差する記憶、巻き戻る時間、二度目の選択――。
真実の愛とは何かを、問いかける静かなる運命の物語。
──三年後、彼女の選択は、彼らは本当に“夫婦”になれるのだろうか?
虐げられていた次期公爵の四歳児の契約母になります!~幼子を幸せにしたいのに、未来の旦那様である王太子が私を溺愛してきます~
八重
恋愛
伯爵令嬢フローラは、公爵令息ディーターの婚約者。
しかし、そんな日々の裏で心を痛めていることが一つあった。
それはディーターの異母弟、四歳のルイトが兄に虐げられていること。
幼い彼を救いたいと思った彼女は、「ある計画」の準備を進めることにする。
それは、ルイトを救い出すための唯一の方法──。
そんな時、フローラはディーターから突然婚約破棄される。
婚約破棄宣言を受けた彼女は「今しかない」と計画を実行した。
彼女の計画、それは自らが代理母となること。
だが、この代理母には国との間で結ばれた「ある契約」が存在して……。
こうして始まったフローラの代理母としての生活。
しかし、ルイトの無邪気な笑顔と可愛さが、フローラの苦労を温かい喜びに変えていく。
さらに、見目麗しいながら策士として有名な第一王子ヴィルが、フローラに興味を持ち始めて……。
ほのぼの心温まる、子育て溺愛ストーリーです。
※ヒロインが序盤くじけがちな部分ありますが、それをバネに強くなります
※「小説家になろう」が先行公開です(第二章開始しました)
【完結】【番外編追加】お迎えに来てくれた当日にいなくなったお姉様の代わりに嫁ぎます!
まりぃべる
恋愛
私、アリーシャ。
お姉様は、隣国の大国に輿入れ予定でした。
それは、二年前から決まり、準備を着々としてきた。
和平の象徴として、その意味を理解されていたと思っていたのに。
『私、レナードと生活するわ。あとはお願いね!』
そんな置き手紙だけを残して、姉は消えた。
そんな…!
☆★
書き終わってますので、随時更新していきます。全35話です。
国の名前など、有名な名前(単語)だったと後から気付いたのですが、素敵な響きですのでそのまま使います。現実世界とは全く関係ありません。いつも思いつきで名前を決めてしまいますので…。
読んでいただけたら嬉しいです。
恋は、母をやめてから始まる――正体を隠したまま、仮の婚約者になりました
あい
恋愛
両親を失ったあの日、
赤子の弟を抱いて家を出た少女がいた。
それが、アリア。
世間からは「若い母」と呼ばれながらも、
彼女は否定しなかった。
十六年間、弟を守るためだけに生きてきたから。
恋も未来も、すべて後回し。
けれど弟は成長し、ついに巣立つ。
「今度は、自分の人生を生きて」
その一言が、
止まっていた時間を動かした。
役目を終えた夜。
アリアは初めて、自分のために扉を開く。
向かった先は、婚姻仲介所。
愛を求めたわけではない。
ただ、このまま立ち止まりたくなかった。
――けれどその名前は、
結婚を急かされていた若き当主のもとへと届く。
これは、
十六年“母”だった女性が、
もう一度“ひとりの女”として歩き出す物語。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」
公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。
死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」
目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。
「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」
隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。
そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……?
「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」
資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。