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20.お披露目の夜会
夜会の夜、バシュロ様は私を迎えにきた。
「王太子妃殿下をお迎えにいくべきです」
驚いた私が言うと
「王太子妃殿下の呼称は禁じる。まだ実質そうなっていないんだから」
と不機嫌だ。
「オティーリエ王女殿下のエスコートをなさらないと」
「君も一緒に会場入りするんだよ」
そう言って私の手を取ってしまった。
私達が会場の王族の控室に入った少し後、侍女達に囲まれてオティーリエ王女が入室してきた。
私が見立てたエメラルド・グリーンのドレスだ。赤銅色の髪によく似合う。
オティーリエ王女が赤と緑が好きなことを聞いていたので、特に力を入れて作らせたものだ。
今夜はオティーリエ王女の侍女に言い含めていた、王妃殿下が用意したダイヤモンドのジュエリーセットを着けていた。化粧も厚すぎないよう言いつけていた。香水も控え目にと。
クラウン型の金のティアラがよく似合う。
私のドレスは淡いブルー。ジュエリーセットはサファイアだ。ティアラは銀に真珠のカチューシャ型だ。
オティーリエ王女はバシュロ様が私の手を取っているのをみると、あからさまに嫌そうな表情になった。それは当たり前だと私も思う。
「まさか、側妃も一緒にエスコートする気ですか?」
笑いに胡麻化すように、からかうようにオティーリエ王女がバシュロ様に言う。
バシュロ様は冷たく
「嫌なら君一人で入るか、部屋に残るんだな」
と言い放った。
思わず私はドレスのスカートに隠れて、バシュロ様の脛を蹴った。
「いっ…」
バシュロ様が私を見たが、私は首を振って見せた。
「二人をエスコートする。どちらも私の妃だから」
渋々と言った調子で、バシュロ様はオティーリエ王女に手を差し出す。オティーリエ王女はバシュロ様の腕に自分の腕を絡ませた。
私はバシュロ様に手をあずけたものの、半歩後ろに下がって付いて行く形をとった。
オティーリエ王女がバシュロ様の腕に自分の腕を絡ませて必死に縋っている様子が見えて、胸が痛んだ。ほんの少しの嫉妬もあるが、その様がオティーリエ王女の孤独を見せられているような気がしたからだ。
夜会の会場に入ると、国王陛下がオティーリエ王女を紹介する。オティーリエ王女は拍手で迎えられて嬉しそうだ。
音楽が始まるとバシュロ様が
「ベル、おど、いった!」
踊ろうと言うつもりだったのを察してまた脛を蹴る羽目になった。
いつからこんなポンコツになったのだろう。いや、性悪だろうか。
私はバシュロ様から手を放し、一歩後ろを下がって膝を深く折って礼をした。
「お二人のファーストダンスでございますわ。楽しんでくださいませ」
二人はホールの真ん中へ進み、ダンスが始まった。
踊るオティーリエ王女は足取りが軽やかで優雅で、美しいダンス姿だった。
オティーリエ王女はバシュロ様を熱く見つめる。
バシュロ様は…オティーリエ王女から目をそらすように遠くをみているのが、ここからでもわかる。
「バシュロには困ったわ」
いつの間にか近づいていらした王妃殿下が私に呟く。
私は礼をして、なんと答えたらいいものか言葉を探した。
「あなたがうまくバシュロを操縦している様子、安心しました。本当に…」
王妃殿下は声を顰めた。
「あなたには可哀想なことをしたと思っています。でもオティーリエ王女の様子を見ると…」
ふうとため息をつく。
「国際情勢も変化していますからね。そのうちうまくいくでしょう」
と謎めいた言葉を呟く。
「さ、国賓の方々にご挨拶致しましょう」
王妃殿下は私を連れて、国賓の方々に紹介しながら挨拶に回って行った。
挨拶をしながら、私は訝しんだ。
これはオティーリエ王女のやるべきことではないのだろうか。
カテーナ語しか話したがらないオティーリエ王女の様子を危ぶんで、私にさせているのだろうか。
「実は我が国の王弟殿下が、一時オティーリエ王女をお望みだったのですよ」
とんでもないことをフェディリア王国の大使が言う。
「まあ、フェディリア王国の王弟殿下はお妃様がいらっしゃるではないですか。お年もかなり上でいらっしゃいますし」
ご冗談をといわんばかりに、王妃殿下が笑う。
「王弟殿下は艶福家でいらっしゃって、お妃様は三人いらっしゃるのですよ。第四妃に望まれていらっしゃったのですが」
と笑う大使に、私は嫌悪感を覚えた。
王妃殿下は怯まずに
「まあ、ご冗談がお上手ですこと」
とかわされた。
「ねえ、ベルナデット」
と私に振られる。
「左様でございますわね。オティーリエ王太子妃殿下は、あのようにお可愛らしい方ですもの。羨ましがられるのも当然ですわ」
嫌悪を堪えて微笑む。
フェディリア王国の大使と離れて他へ向かおうとすると、曲が終わった。
バシュロ様とオティーリエ王女が近づいてくる。
「ベル、次は君と」
とおっしゃるバシュロ様を制して
「今夜は王太子妃殿下のお披露目の場ですわ。どうか王太子妃殿下を皆様にご紹介なさってください」
と言うと王妃殿下もそれを後押しなさった。
バシュロ様の手の温みを、私も欲していることは否めない。
けれど私はあくまで側妃なのだ。
側妃の役目は正妃の露払い。
この王宮は私には安全で快適で、少し寂しい場所だ。
それはオティーリエ王女に味合わせてはいけない。
「王太子妃殿下をお迎えにいくべきです」
驚いた私が言うと
「王太子妃殿下の呼称は禁じる。まだ実質そうなっていないんだから」
と不機嫌だ。
「オティーリエ王女殿下のエスコートをなさらないと」
「君も一緒に会場入りするんだよ」
そう言って私の手を取ってしまった。
私達が会場の王族の控室に入った少し後、侍女達に囲まれてオティーリエ王女が入室してきた。
私が見立てたエメラルド・グリーンのドレスだ。赤銅色の髪によく似合う。
オティーリエ王女が赤と緑が好きなことを聞いていたので、特に力を入れて作らせたものだ。
今夜はオティーリエ王女の侍女に言い含めていた、王妃殿下が用意したダイヤモンドのジュエリーセットを着けていた。化粧も厚すぎないよう言いつけていた。香水も控え目にと。
クラウン型の金のティアラがよく似合う。
私のドレスは淡いブルー。ジュエリーセットはサファイアだ。ティアラは銀に真珠のカチューシャ型だ。
オティーリエ王女はバシュロ様が私の手を取っているのをみると、あからさまに嫌そうな表情になった。それは当たり前だと私も思う。
「まさか、側妃も一緒にエスコートする気ですか?」
笑いに胡麻化すように、からかうようにオティーリエ王女がバシュロ様に言う。
バシュロ様は冷たく
「嫌なら君一人で入るか、部屋に残るんだな」
と言い放った。
思わず私はドレスのスカートに隠れて、バシュロ様の脛を蹴った。
「いっ…」
バシュロ様が私を見たが、私は首を振って見せた。
「二人をエスコートする。どちらも私の妃だから」
渋々と言った調子で、バシュロ様はオティーリエ王女に手を差し出す。オティーリエ王女はバシュロ様の腕に自分の腕を絡ませた。
私はバシュロ様に手をあずけたものの、半歩後ろに下がって付いて行く形をとった。
オティーリエ王女がバシュロ様の腕に自分の腕を絡ませて必死に縋っている様子が見えて、胸が痛んだ。ほんの少しの嫉妬もあるが、その様がオティーリエ王女の孤独を見せられているような気がしたからだ。
夜会の会場に入ると、国王陛下がオティーリエ王女を紹介する。オティーリエ王女は拍手で迎えられて嬉しそうだ。
音楽が始まるとバシュロ様が
「ベル、おど、いった!」
踊ろうと言うつもりだったのを察してまた脛を蹴る羽目になった。
いつからこんなポンコツになったのだろう。いや、性悪だろうか。
私はバシュロ様から手を放し、一歩後ろを下がって膝を深く折って礼をした。
「お二人のファーストダンスでございますわ。楽しんでくださいませ」
二人はホールの真ん中へ進み、ダンスが始まった。
踊るオティーリエ王女は足取りが軽やかで優雅で、美しいダンス姿だった。
オティーリエ王女はバシュロ様を熱く見つめる。
バシュロ様は…オティーリエ王女から目をそらすように遠くをみているのが、ここからでもわかる。
「バシュロには困ったわ」
いつの間にか近づいていらした王妃殿下が私に呟く。
私は礼をして、なんと答えたらいいものか言葉を探した。
「あなたがうまくバシュロを操縦している様子、安心しました。本当に…」
王妃殿下は声を顰めた。
「あなたには可哀想なことをしたと思っています。でもオティーリエ王女の様子を見ると…」
ふうとため息をつく。
「国際情勢も変化していますからね。そのうちうまくいくでしょう」
と謎めいた言葉を呟く。
「さ、国賓の方々にご挨拶致しましょう」
王妃殿下は私を連れて、国賓の方々に紹介しながら挨拶に回って行った。
挨拶をしながら、私は訝しんだ。
これはオティーリエ王女のやるべきことではないのだろうか。
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とんでもないことをフェディリア王国の大使が言う。
「まあ、フェディリア王国の王弟殿下はお妃様がいらっしゃるではないですか。お年もかなり上でいらっしゃいますし」
ご冗談をといわんばかりに、王妃殿下が笑う。
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とかわされた。
「ねえ、ベルナデット」
と私に振られる。
「左様でございますわね。オティーリエ王太子妃殿下は、あのようにお可愛らしい方ですもの。羨ましがられるのも当然ですわ」
嫌悪を堪えて微笑む。
フェディリア王国の大使と離れて他へ向かおうとすると、曲が終わった。
バシュロ様とオティーリエ王女が近づいてくる。
「ベル、次は君と」
とおっしゃるバシュロ様を制して
「今夜は王太子妃殿下のお披露目の場ですわ。どうか王太子妃殿下を皆様にご紹介なさってください」
と言うと王妃殿下もそれを後押しなさった。
バシュロ様の手の温みを、私も欲していることは否めない。
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