姫と呼ばないで~男嫌いの元王女~

チャイムン

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3.三人の友達

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「クリストフも心配して、何度もお見舞いにきてくれたのよ」
 と祖母が心配顔で言った。

 私がようやくベッドから出て歩けるようになった日、あの時居合わせた女の子達のお見舞いを受け付けた。だが、男の子達は、特にクリストフとは絶対に会いたくないと告げた。

「いや!絶対にいや!二度と会いたくない!!」
 私は激しい調子で拒んだ。

「お母様、サーシャがこんなにいやがっているのですから」
 母は王宮で頑なに国王を拒んだ経験があるので、私の気持ちを慮ってくれた。

 お見舞いには、アナベル・クバーン、エラ・ハロフ、フィオナ・ラサークの三人がやってきた。

「もう大丈夫なの?」
 アナベルが心配そうに言った。
「あたし達、クリストフをとっちめてやったわ。人の嫌がることを言うなんて最低!」
 憤慨した顔でフィオナが言う。
「でもクリストフって普段は優しいのよ。それに素敵だし」
 エラが庇ったがすぐに
「でも嫌がることをしたのはいけないわ」
 と言った。
 アナベルは
「もとはと言えば、あたしが変なことを言っちゃったからよね。ごめんなさい」
 と謝った。

 私はどぎまきしてしまった。
 前回もそうだったが、同年代の子と話すのには慣れていないのだ。これで二回目だ。一回目はろくに話さずに終わってしまった。

「あの、私こそごめんなさい。お行儀が悪かったわ」
 小さな声で謝罪した。

 そして私達は顔を見合わせて、はにかんで笑い合った。

「あたし達ね、これからあなたのお母さんにお作法を教えてもうらうことになったのよ」
 エラが言う。
「あたし達、十二歳になったら公国立学院に通うことにしたの。試験の準備よ」
 アナベルが言う。
「サーシャも行くでしょう?あたし達、仲良くしましょうね」
 フィオナが満面の笑顔で言う。

 その翌日から、私達四人は私の母から作法の講義を受けた。
 公国立学院は元の王立学院で、作法の試験があるのだ。それに合格しなくては、庶民は入学できない。

 公国立学院を目指す大抵の子供は、塾や家庭教師に作法を学ぶ。当然、家計に余裕のある者しか入学できない。

 私は王宮で家庭教師がつけられていたし、母にも教えられていた。
 もうすっかり身についていたが、始めてみると同年代の三人と共に学ぶことは、とても楽しかった。

 三か月が過ぎる頃には、私達はとても仲良くなり、一緒にいることが楽しくてたまらくなった。
 それを観察していた祖父が
「サーシャもそろそろ町の学校に通ったらどうだろうか。いや、サーシャにはもう十分学力は身についているが、学校で友達と学ぶ経験も大切だよ」
 と、すすめてきた。

 アナベル達は修道院が経営する女の子だけの初期教育を施す学校に通っていたので、私もそこへ通うことになった。
 授業は午前中だけで、昼食をとるために家に帰ると、午後は三人が私の家に来て、母から作法を教えられる日々が続いた。

 最初、学校では「元王女」であることが知れ渡っていたので、好奇の目で見る者もいたが、アナベル達がその子達から守ってくれた。
 私をからかって、「姫」とか「王女様」とか呼ぶ子もいた。
 その度に嫌悪で身が震えたが、アナベルやエラやフィオナがやめさせてくれた。

 特にシイラ、アンネット、ステフの三人がひどかった。三人は他の子達もいじめていた。

 彼女達がいない所でもからかわれた。最初は耳を塞いで逃げたが、段々むかっ腹が立つようになり、ある日
「姫なんて呼んだら承知しないわ!」
 と歯向かった。

「へえ。承知しないってどうするつもりなの?お姫様」
 シイラがにやにやしながら言った。
 私は以前クリストフにやったように、横っ面を張り飛ばした。
 相手は突然のことに驚いたのと、頬の痛みで泣き出した。

 当然、私は修道院長室送りとなり、暴力をふるったことを叱られお説教を受けた。
 しかし私は元来の気の強さから、
「だっていつもいやがることを言うのですもの!」
 と修道院長に反発した。
「いかなる理由があっても、暴力はいけません」
 修道院長は言ったがすぐに生徒達に聞き取りを行って、日頃私をからかっているシイラ、アンネット、ステフの三人組にも厳重注意をしてくれた。

 実は、この三人は公国立学院への入学を親が認めてくれないため、進学する者達の中で言い返せないようなおとなしい子達をいじめていたのだ。

 厳重注意を受けた三人は反省していじめをしなくなったかと言うと、そうではなかった。
 私へのからかいはなくなったが、今まで通り言い返せないような気の弱い子達をいびり続けた。
 私達四人、私にアナベルにエラにフィオナは、そんな子達を庇い、暴力こそふるわないが母から教わった貴族式の毒舌をふるい、逆に三人の気持ちをぐたぐたに疲弊させた。その学期の終わりにはいじめっ子三人組は私達の姿を見るだけで逃げるようになった。

 そうして修道院の学校生活は終わり、公国立学院への入学試験が近づいてきた。
 私達は学力や作法の能力の心配はなかった。すんなり入学が許される自信があった。

 しかし私には一点、とてつもない不安があったのだ。
 この修道院の女学校とは違って、公国立学院は共学なのだ。大嫌いな男の子達もいる。
 特に大嫌いなクリストフ・ヤロシュも試験を受けると聞いて、私は願った。

 どうか試験に合格しませんようにと。
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