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7.「真実の愛」とは(ウーゼル・オウェイン)
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バーナードとフィルはその二週間後、教会で慎ましい式を挙げてバーナードの領地へ旅立って行った。幸せな二人、いや、娘を含めて四人だった。
グレイグはバーナードがフィルと結婚することを聞いて
「私はそんな結婚、承服致しかねます!!」
とひとしきり騒いだが、すぐにウォーラー家の領地に送られ、廃嫡の手続きが進められた。ほどなく嫡男は次男のオースティンになり、グレイグは無役の居候となる。このまま居食いの居候となるか、自分で道を立てる職に就くか、オースティンを助けて領地の管理をするしかなくなる。
一方、アイラ・ボールドウィンは、婚約破棄から一か月後、王宮の夜会に出席していた。
本当は婚約破棄に気分がめいり、どの催しにも参加したくなかったのだが、父の強い願いだった。
グレイグから婚約解消の話が出たと両親に告げた時、なぜか彼らの顔には喜色が見て取れた。アイラは不審に思った。
父は
「婚約解消なんて甘い。こちらから破棄の手続きをしよう」
とすぐ取り掛かった。
残されたアイラに母が説明した。
「実は去年、王家からウォーラー家との婚約を解消して、ウーゼル・オウェン公の後添えにならないかと打診があったのですよ」
驚きだった。
「オウェイン公国を知っているでしょう?それほど大きくない国ですけれど、我が国とは欠かせない貿易関係にあります。そのオウェイン公ウーゼル様が、あなたに御心があると、前々から打診があったのです。でも、あなたとグレイグ・ウォーラーはうまく行っているように見えたので、お断りしていたのですが…」
母は続ける。
「先日のベルラン大公の夜会で、あなた達の様子がおかしいことにベルトラン大公夫人が気づいて、今、我が国に滞在しているオウェイン公に話したのです。オウェイン公は望みがあるならば是非とおっしゃっているのですわ」
母はアイラに優しく諭すように言った。
「お相手のオウェイン公は二十歳も年上です。無理にとはいいません。あなたの気持ち次第です」
婚約破棄の願い出を受けた王家の動きは早かった。
婚約破棄が調った翌週には、アイラに夜会の招待状が届いた。
アイラは迷ったが、王家からの招待状であるし、両親が強く進めるので兄のエスコートで夜会へ出席した。
正直、アイラは世間の目が怖かった。アイラは結婚直前で婚約者に裏切られたのだ。きっと噂の的になって、嘲笑をうけるだろうと思っていた。
ところが夜会に出席した人達は、アイラに同情的だった。醜聞として噂になっていたのは、グレイグ・ウォーラーの方だった。
グレイグ・ウォーラーは妹の侍女に懸想したが、マクブライド伯爵家のバーナードが貴族の身分を捨ててまでその侍女を救い出し、結婚した。
バーナード・マクブライドは実のある男だと、評価されていた。
一方、グレイグ・ウォーラーは滑稽な片恋の道化として語られていた。
その上、廃嫡されたと言う。
その夜会は、実は王家がアイラ・ボールドウィンとウーゼル・オウェイン公との、見合いの席だと多くの出席者は知っていた。
そしてそのウーゼル・オウェイン公はアイラにダンスを申し込んできた。
アイラはその手を取った。
アイラとオウェイン公は、グレイグ・ウォーラーの遊学中に何度か踊ったことがある。おそらくオウェイン公がこの国に来るたびに踊ったのだろう。
温厚で穏やかなオウェイン公に、アイラは好意は持っていた。だが、いざ結婚相手としてみると…
驚いたことにアイラは胸がときめいた。
三十七歳のオウェイン公は若々しく、力強かった。そしてアイラを見る目には、グレイグにはなかった何か静かで確実な情熱があった。
踊りながらオウェイン公は、アイラに気持ちを伝えた。
「私は五年前に妻を亡くしていますが、望まれても今まで再婚に踏み切れなかったのはあなた故でした。一昨年、夜会であなたをお見かけしてから忘れられなかったのです。しかし外国へご遊学中の婚約者がいると知っていたので、心を隠してまいりました。それでも一時でもお手に触れられるダンスを申し込みすることを我慢できなかったのです。女々しい男でしょう?」
アイラは何も言えずに俯いたが、顔が熱くなった。
わたくし、グレイグにこんな気持ちになったことがあったかしら?
アイラは自問自答した。
グレイグとは親が決めた婚約者同士として適切にお付き合いをしていたつもりだった。
そう、適切に。
そこに情熱はあっただろうか。
今、オウェイン公に手を取られときめく胸、言葉に赤らみ熱くなる頬。
そんなものはなかったと、アイラは今更ながらに気づいた。
「こんなことを言ったら笑われるかもしれませんが、あなたは私の真実の愛なのです」
真実の愛。
グレイグの口から出た言葉と同じなのに、どうしてこんなにも重みが違うのだろう。
その夜、アイラはウーゼル・オウェインの、そして自分の真実の愛を信じる決断をした。
すぐにその結婚は認証され、公布された。
アイラはこんなに幸せなのが自分では不思議だった。
そんな幸せなアイラを、グレイグ・ウォーラーが突然訪ねてきた。領地を抜け出してきたのだ。
アイラの両親が付き添って対応した。
グレイグは不満顔だった。そして言ったのだ。
「その結婚、承知致しかねます!!」
グレイグはバーナードがフィルと結婚することを聞いて
「私はそんな結婚、承服致しかねます!!」
とひとしきり騒いだが、すぐにウォーラー家の領地に送られ、廃嫡の手続きが進められた。ほどなく嫡男は次男のオースティンになり、グレイグは無役の居候となる。このまま居食いの居候となるか、自分で道を立てる職に就くか、オースティンを助けて領地の管理をするしかなくなる。
一方、アイラ・ボールドウィンは、婚約破棄から一か月後、王宮の夜会に出席していた。
本当は婚約破棄に気分がめいり、どの催しにも参加したくなかったのだが、父の強い願いだった。
グレイグから婚約解消の話が出たと両親に告げた時、なぜか彼らの顔には喜色が見て取れた。アイラは不審に思った。
父は
「婚約解消なんて甘い。こちらから破棄の手続きをしよう」
とすぐ取り掛かった。
残されたアイラに母が説明した。
「実は去年、王家からウォーラー家との婚約を解消して、ウーゼル・オウェン公の後添えにならないかと打診があったのですよ」
驚きだった。
「オウェイン公国を知っているでしょう?それほど大きくない国ですけれど、我が国とは欠かせない貿易関係にあります。そのオウェイン公ウーゼル様が、あなたに御心があると、前々から打診があったのです。でも、あなたとグレイグ・ウォーラーはうまく行っているように見えたので、お断りしていたのですが…」
母は続ける。
「先日のベルラン大公の夜会で、あなた達の様子がおかしいことにベルトラン大公夫人が気づいて、今、我が国に滞在しているオウェイン公に話したのです。オウェイン公は望みがあるならば是非とおっしゃっているのですわ」
母はアイラに優しく諭すように言った。
「お相手のオウェイン公は二十歳も年上です。無理にとはいいません。あなたの気持ち次第です」
婚約破棄の願い出を受けた王家の動きは早かった。
婚約破棄が調った翌週には、アイラに夜会の招待状が届いた。
アイラは迷ったが、王家からの招待状であるし、両親が強く進めるので兄のエスコートで夜会へ出席した。
正直、アイラは世間の目が怖かった。アイラは結婚直前で婚約者に裏切られたのだ。きっと噂の的になって、嘲笑をうけるだろうと思っていた。
ところが夜会に出席した人達は、アイラに同情的だった。醜聞として噂になっていたのは、グレイグ・ウォーラーの方だった。
グレイグ・ウォーラーは妹の侍女に懸想したが、マクブライド伯爵家のバーナードが貴族の身分を捨ててまでその侍女を救い出し、結婚した。
バーナード・マクブライドは実のある男だと、評価されていた。
一方、グレイグ・ウォーラーは滑稽な片恋の道化として語られていた。
その上、廃嫡されたと言う。
その夜会は、実は王家がアイラ・ボールドウィンとウーゼル・オウェイン公との、見合いの席だと多くの出席者は知っていた。
そしてそのウーゼル・オウェイン公はアイラにダンスを申し込んできた。
アイラはその手を取った。
アイラとオウェイン公は、グレイグ・ウォーラーの遊学中に何度か踊ったことがある。おそらくオウェイン公がこの国に来るたびに踊ったのだろう。
温厚で穏やかなオウェイン公に、アイラは好意は持っていた。だが、いざ結婚相手としてみると…
驚いたことにアイラは胸がときめいた。
三十七歳のオウェイン公は若々しく、力強かった。そしてアイラを見る目には、グレイグにはなかった何か静かで確実な情熱があった。
踊りながらオウェイン公は、アイラに気持ちを伝えた。
「私は五年前に妻を亡くしていますが、望まれても今まで再婚に踏み切れなかったのはあなた故でした。一昨年、夜会であなたをお見かけしてから忘れられなかったのです。しかし外国へご遊学中の婚約者がいると知っていたので、心を隠してまいりました。それでも一時でもお手に触れられるダンスを申し込みすることを我慢できなかったのです。女々しい男でしょう?」
アイラは何も言えずに俯いたが、顔が熱くなった。
わたくし、グレイグにこんな気持ちになったことがあったかしら?
アイラは自問自答した。
グレイグとは親が決めた婚約者同士として適切にお付き合いをしていたつもりだった。
そう、適切に。
そこに情熱はあっただろうか。
今、オウェイン公に手を取られときめく胸、言葉に赤らみ熱くなる頬。
そんなものはなかったと、アイラは今更ながらに気づいた。
「こんなことを言ったら笑われるかもしれませんが、あなたは私の真実の愛なのです」
真実の愛。
グレイグの口から出た言葉と同じなのに、どうしてこんなにも重みが違うのだろう。
その夜、アイラはウーゼル・オウェインの、そして自分の真実の愛を信じる決断をした。
すぐにその結婚は認証され、公布された。
アイラはこんなに幸せなのが自分では不思議だった。
そんな幸せなアイラを、グレイグ・ウォーラーが突然訪ねてきた。領地を抜け出してきたのだ。
アイラの両親が付き添って対応した。
グレイグは不満顔だった。そして言ったのだ。
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