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8.真実の愛の行方《最終話》
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何を言っているのだろう、この男は。
両親もアイラも呆れ果てた。
呆気にとられた三人にかまわず、グレイグはなおも続けた。
「若い身空で後妻なんて、君が可哀想すぎる。相手は二十歳も年上の男だろう!?その結婚は承服致しかねる!」
何を言っているの?あなたが捨てたのよ。
グレイグがアイラに婚約解消を告げた時、土壇場で婚約者に逃げられた女がどんな目に遭うか、必死に言い募った時は冷たく、いや、アイラに何の関心もないと言った風で切り捨てたのに。
グレイグはフィル・スノウを、バーナード・マクブライドに横から掻っ攫われたように感じていた。しばらくぐちぐちと文句を言い、両親に訴えたが相手にされなかった。
「お前はただ、欲しいものを手に入れたいだけで何の代償も支払う気がなかっただろう。バーナードはフィルを得るために代償を払ったのだ。きっとお前は代償を払おうと払うまいと、フィルを手に入れたらあっと言う間に飽きて後悔しただろう。そこがお前とバーナードの違いだ」
父は諭したが、グレイグには刺さらなかった。
「そうです。長年婚約者だったアイラをあっさり捨て去るあなたですもの。そんな男にフィルを渡すわけがないでしょう?フィルはわたくし達家族にとっても大切な人なのよ」
グレイグは、たかが使用人だろうと心の中で思った。
そこではっとした。
たかが使用人のために、自分は廃嫡されたのだと。なんとつまらない理由だろう。
グレイグ・ウォーラーのフィル・スノウに対する、恋の熱病はその瞬間に覚めた。
「父上、フィル・スノウのようなつまらない者のために、私を廃嫡したのですか。私はもうフィル・スノウに何の未練もありません」
あっと言う間の手の平返しに、両親は呆れた。
「そういうところですよ!グレイグ!!」
母は我慢できずに声を荒らげた。
「さっきまで、フィルに未練たらたらだったではないですか!それをつまらない者?廃嫡されたのは自業自得です!」
「お兄様、フィルは素晴らしい人よ。もしもお兄様がフィルのことを思いやって行動したら、全てが違っていたとわからないの?」
ダニエラも責め立てた。
しかし、身勝手なグレイグにはそんな言葉は染み入らない。
「そうだ、アイラだ」
突然言い出した。
「また、アイラと婚約します。アイラとならば文句はないのでしょう?」
「グレイグ!!」
父が厳しく窘めた。
「もう遅い!婚約破棄は成立したのだ。もう引き返せない」
それでもグレイグは言う。
「アイラに求婚してきます」
一同は再び呆れ果てた。
「アイラはもうすぐ婚約が調うことになっている。お相手はオウェイン公国のウーゼル殿だ」
しばしの沈黙が流れた。
「オウェイン公はアイラより二十も年上ではないですか!しかも後妻ですよ!」
「アイラが選んだのだ。お前は手出しすることまかりならぬ」
「可哀想に。私が捨てたばかりにみすみす二十も年上の後妻に入らなくてはならないなんて」
独り言のように言うグレイグに父は言い渡した。
「お前はすぐに領地に送る!!こちらが許可を出すまでそこで謹慎しなさい!」
グレイグは速やかに領地に送られた。しかし、すぐに抜け出して王都へ出てきた。
そして今、アイラの前にぬけぬけと立っているのだ。
自分はなにひとつ非がないと言わんばかりの態度で。まるでアイラを救いに来たと言わんばかりの構えで。
アイラはむらむらっと、グレイグに意趣返しをしてやりたくなった。
「あなたは真実の愛をみつけたからわたくしと婚約解消を望みましたわ。わたくしどもは婚約破棄を致しました。あなたはそれでどの方とでも、お好きなように結婚できるようになりましたでしょう?」
アイラは微笑んで言った。
「この年で婚約がご破算になった娘が結婚したかったら、よほどの持参金付きで格下の家へ嫁ぐか、後妻しかございませんのよ」
グレイグはぐっと詰まった。
「幸い、ウーゼル様はわたくしを真実の愛の相手だとおっしゃってくださいますの。あなたに見習ってわたくしはウーゼル様の真実の愛を信じてみたくなりましたの。どうぞ祝ってくださいな。わたくしの真実の愛を」
グレイグはなおも食い下がった。
「私が間違っていた。私の真実の愛は君だったんだアイラ。強がっていないで私と結婚してくれ」
アイラは朗らかに笑った。
「まあ、わたくし、その結婚は承服致しかねますわ。だってわたくし、真実の愛に目覚めかけているのですもの」
そしてベルを鳴らした。
「ウォーラー様のお帰りです。車止めまでお見送りを」
オウェイン大公から派遣された警備が、グレイグを半ば引きずるように連れ出していった。
アイラは独り言を言って笑った。
「本当に、その結婚、承服致しかねますわ。わたくしはわたくしの幸せを追うのですもの」
翌月、アイラは幸せな花嫁としてオウェイン公国へ旅立って行き、オウェイン公夫人となった。
一方グレイグは領地を抜け出したものの、苦労知らずの為おめおめとウォーラー家のタウンハウスに戻って行った。両親は呆れ果て、監視を増員して再び地方の領地にグレイグを戻した。
「お前を居食いの居候にするつもりはない。まずは領地の管理人に領地経営を習って、土地の管理を学ぶといい。しかし、他の職に就くというのならその協力はしよう」
と言い渡した。
バーナード・マクブライドとフィル・スノウ、いやフィル・マクブライドは、愛し合い慈しみ合って、幸せな生涯を送った。
アイラ・ボールドウィンもアイラ・オウェイン夫人として、オウェイン公国へ歓迎され、ほどなく跡継ぎの男児をあげて、下へも置かぬ扱いを受けて大切に慈しまれた。
結局、「真実の愛」に踊らされた女性二人は、そのために結局自分の「真実の愛」に巡り合って、幸せになったのだ。
両親もアイラも呆れ果てた。
呆気にとられた三人にかまわず、グレイグはなおも続けた。
「若い身空で後妻なんて、君が可哀想すぎる。相手は二十歳も年上の男だろう!?その結婚は承服致しかねる!」
何を言っているの?あなたが捨てたのよ。
グレイグがアイラに婚約解消を告げた時、土壇場で婚約者に逃げられた女がどんな目に遭うか、必死に言い募った時は冷たく、いや、アイラに何の関心もないと言った風で切り捨てたのに。
グレイグはフィル・スノウを、バーナード・マクブライドに横から掻っ攫われたように感じていた。しばらくぐちぐちと文句を言い、両親に訴えたが相手にされなかった。
「お前はただ、欲しいものを手に入れたいだけで何の代償も支払う気がなかっただろう。バーナードはフィルを得るために代償を払ったのだ。きっとお前は代償を払おうと払うまいと、フィルを手に入れたらあっと言う間に飽きて後悔しただろう。そこがお前とバーナードの違いだ」
父は諭したが、グレイグには刺さらなかった。
「そうです。長年婚約者だったアイラをあっさり捨て去るあなたですもの。そんな男にフィルを渡すわけがないでしょう?フィルはわたくし達家族にとっても大切な人なのよ」
グレイグは、たかが使用人だろうと心の中で思った。
そこではっとした。
たかが使用人のために、自分は廃嫡されたのだと。なんとつまらない理由だろう。
グレイグ・ウォーラーのフィル・スノウに対する、恋の熱病はその瞬間に覚めた。
「父上、フィル・スノウのようなつまらない者のために、私を廃嫡したのですか。私はもうフィル・スノウに何の未練もありません」
あっと言う間の手の平返しに、両親は呆れた。
「そういうところですよ!グレイグ!!」
母は我慢できずに声を荒らげた。
「さっきまで、フィルに未練たらたらだったではないですか!それをつまらない者?廃嫡されたのは自業自得です!」
「お兄様、フィルは素晴らしい人よ。もしもお兄様がフィルのことを思いやって行動したら、全てが違っていたとわからないの?」
ダニエラも責め立てた。
しかし、身勝手なグレイグにはそんな言葉は染み入らない。
「そうだ、アイラだ」
突然言い出した。
「また、アイラと婚約します。アイラとならば文句はないのでしょう?」
「グレイグ!!」
父が厳しく窘めた。
「もう遅い!婚約破棄は成立したのだ。もう引き返せない」
それでもグレイグは言う。
「アイラに求婚してきます」
一同は再び呆れ果てた。
「アイラはもうすぐ婚約が調うことになっている。お相手はオウェイン公国のウーゼル殿だ」
しばしの沈黙が流れた。
「オウェイン公はアイラより二十も年上ではないですか!しかも後妻ですよ!」
「アイラが選んだのだ。お前は手出しすることまかりならぬ」
「可哀想に。私が捨てたばかりにみすみす二十も年上の後妻に入らなくてはならないなんて」
独り言のように言うグレイグに父は言い渡した。
「お前はすぐに領地に送る!!こちらが許可を出すまでそこで謹慎しなさい!」
グレイグは速やかに領地に送られた。しかし、すぐに抜け出して王都へ出てきた。
そして今、アイラの前にぬけぬけと立っているのだ。
自分はなにひとつ非がないと言わんばかりの態度で。まるでアイラを救いに来たと言わんばかりの構えで。
アイラはむらむらっと、グレイグに意趣返しをしてやりたくなった。
「あなたは真実の愛をみつけたからわたくしと婚約解消を望みましたわ。わたくしどもは婚約破棄を致しました。あなたはそれでどの方とでも、お好きなように結婚できるようになりましたでしょう?」
アイラは微笑んで言った。
「この年で婚約がご破算になった娘が結婚したかったら、よほどの持参金付きで格下の家へ嫁ぐか、後妻しかございませんのよ」
グレイグはぐっと詰まった。
「幸い、ウーゼル様はわたくしを真実の愛の相手だとおっしゃってくださいますの。あなたに見習ってわたくしはウーゼル様の真実の愛を信じてみたくなりましたの。どうぞ祝ってくださいな。わたくしの真実の愛を」
グレイグはなおも食い下がった。
「私が間違っていた。私の真実の愛は君だったんだアイラ。強がっていないで私と結婚してくれ」
アイラは朗らかに笑った。
「まあ、わたくし、その結婚は承服致しかねますわ。だってわたくし、真実の愛に目覚めかけているのですもの」
そしてベルを鳴らした。
「ウォーラー様のお帰りです。車止めまでお見送りを」
オウェイン大公から派遣された警備が、グレイグを半ば引きずるように連れ出していった。
アイラは独り言を言って笑った。
「本当に、その結婚、承服致しかねますわ。わたくしはわたくしの幸せを追うのですもの」
翌月、アイラは幸せな花嫁としてオウェイン公国へ旅立って行き、オウェイン公夫人となった。
一方グレイグは領地を抜け出したものの、苦労知らずの為おめおめとウォーラー家のタウンハウスに戻って行った。両親は呆れ果て、監視を増員して再び地方の領地にグレイグを戻した。
「お前を居食いの居候にするつもりはない。まずは領地の管理人に領地経営を習って、土地の管理を学ぶといい。しかし、他の職に就くというのならその協力はしよう」
と言い渡した。
バーナード・マクブライドとフィル・スノウ、いやフィル・マクブライドは、愛し合い慈しみ合って、幸せな生涯を送った。
アイラ・ボールドウィンもアイラ・オウェイン夫人として、オウェイン公国へ歓迎され、ほどなく跡継ぎの男児をあげて、下へも置かぬ扱いを受けて大切に慈しまれた。
結局、「真実の愛」に踊らされた女性二人は、そのために結局自分の「真実の愛」に巡り合って、幸せになったのだ。
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