29 / 147
第一章『妖精おじさんがあらわれた。ただし、その姿は見えない』
第29話 フレンドの礼儀作法
しおりを挟む
「いけいけー!」
皆が声を上げながら走っていく。お祭り感もイベントを思い出す盛り上がりだ。
「トリガー、パワースラッシュ!」
「トリガー、チャージストライク!」
「トリガー、パワーヒット!」
スキルを各々が自由に発動させる。ドクトカゲ・アビスの体力は一気に二割ほども削れた。序盤のクエストなりに強さは抑えられているらしい。
「ぐはっ!」
「やっべ!」
しかし、相手の攻撃は前方への範囲で数人が巻き込まれる。
「トリガー、ヒール!」
「あざす!」
自分以外にも回復魔法を使うプレイヤーたちがいたようで、犠牲者は出なかった。
「命奪撃!」
コヨミさんは短剣を手に半透明で攻撃を仕掛けている。上手く動き回ってダメージを受けないのはさすがだ。ゲームが上手い人は安心できた。
パーティを組んだ際に出てきたバーには赤色と青色のゲージがあり、体力と精神力なのが直感的に分かる。回復を行う側としては管理しやすくて大助かりだった。
適当に回復を振りまいて動向を見守る。
「ギシャアアア!」
ドクトカゲ・アビスの体力が半分に減ると紫色の煙が周囲に噴出した。離れた場所にいる自分にも届きそうで慌てて後ろへ退避する。
「やっぱり毒かよー!」
「ポーション切れてんだけど!」
全方位への毒攻撃とはいやらしい。回復魔法の出番にコヨミさんを追うが、上空に飛んで着地したところだった。
体力のゲージは満タンで状態異常を受けている様子もない。あの攻撃を直前で避けるのは、さすが忍者と称賛したくなった。
「トリガー、詠唱」
――シュンッ!
「トリガー、キュアポイズン」
回復役よりは攻撃役の方が圧倒的に数は多い。毒を癒すだけで精神力が持っていかれた。
マナポーションを飲んで通常の回復も挟む。忙しい操作の中にも周りを見る余裕は十分にあった。
「ありがとうございます! ぐえっ!」
振り向いてお辞儀した後ろで再び攻撃を受ける姿を笑って流す。たまには透明にならず同じ空気感を味わうのも楽しかった。
「フシュウウウ……」
紫色の煙以降は変わり種の行動がなく、ドクトカゲ・アビスの体力は順当に減ってゼロになった。これもコヨミさんを含め、他のプレイヤーがいてくれたおかげ。キュル助だけだと厳しい戦いだったはずだ。
「やったでござるな! ナカノ殿の頑張りで無事に倒せましたよ!」
「コヨミさんへのサポートはなくても平気でしたね」
「忍者の面目躍如でござる!」
まさしくその通りで脱帽だ。
広場には鎧を着たNPCが現れて話しかけるとイベントが進む。すでに盗賊団はおらず王都にある騎士団の建物へ戻るように言われた。
プレイヤーたちがポータルを使ってか、徐々にいなくなっていく。最後に残ったのは自分とコヨミさんだった。
「きりがいいので、拙者はそろそろ落ちるでござるよ」
「分かりました。今日は誘っていただいてありがとうございます。一緒に遊べてよかったです」
「こちらこそ! よい時間を過ごせました!」
≪フレンド申請が届きました≫
二度目のフレンド通知は戸惑わずに承諾する。もちろん緊張や高揚に似た気持ちは湧くのだが。
「また機会があれば、ご一緒しましょう!」
「はい、よろしくお願いします」
コヨミさんの姿が消えてパーティが解散になった。人と接した疲れは多少あるけれど、満足感の方が遥かに大きかった。
今後は透明になる手段を積極的に探していこう。それぐらいはフレンド間での礼儀と思うことにした。
ただ、気にかけていたのが伝わるのは逆効果。有用なスキルを見つけても、恩着せがましさ皆無の自然な会話で知らせたい。まずは会話が上達する本の購入を検討だ。
◇
「ふー……」
ゲーム機を外して天井を見上げる。仕事が休みだったこともあって、ゆっくりゲームに熱中できた。今日はたくさん楽しめて気分よく伸びをする。
ペットのスキルで透明になれるのには驚いたけど、まさか使ってる人がイベントで一番だったなんて。ランキング表ではプレイヤー名じゃなくてニックネームだったから、軽はずみに聞いてしまったのは反省しないと。
「誘い方も、ちょっと強引だったかな……」
あの時は透明化を見て思わず前のめりに。久しぶりのオンラインゲームで距離感を間違えた。でも、物腰が柔らかい人で助けられたな。
道行く人に回復をするのは辻ヒールって言うんだっけ。透明で気づかれずに行うのは筋金入りだ。
私のロールプレイは初挑戦で手探りだった。違う自分を出してみたなかで、情緒の表現を振り返ると少し恥ずかしくなる。
DAOで誰かと関わりを持ったのも初めて。フレンドの申請をしたのは私からだし、次もパーティに誘うのが自然なはず。ロールプレイをしながらだと、また強引な誘い方になりそうだけど。
皆が声を上げながら走っていく。お祭り感もイベントを思い出す盛り上がりだ。
「トリガー、パワースラッシュ!」
「トリガー、チャージストライク!」
「トリガー、パワーヒット!」
スキルを各々が自由に発動させる。ドクトカゲ・アビスの体力は一気に二割ほども削れた。序盤のクエストなりに強さは抑えられているらしい。
「ぐはっ!」
「やっべ!」
しかし、相手の攻撃は前方への範囲で数人が巻き込まれる。
「トリガー、ヒール!」
「あざす!」
自分以外にも回復魔法を使うプレイヤーたちがいたようで、犠牲者は出なかった。
「命奪撃!」
コヨミさんは短剣を手に半透明で攻撃を仕掛けている。上手く動き回ってダメージを受けないのはさすがだ。ゲームが上手い人は安心できた。
パーティを組んだ際に出てきたバーには赤色と青色のゲージがあり、体力と精神力なのが直感的に分かる。回復を行う側としては管理しやすくて大助かりだった。
適当に回復を振りまいて動向を見守る。
「ギシャアアア!」
ドクトカゲ・アビスの体力が半分に減ると紫色の煙が周囲に噴出した。離れた場所にいる自分にも届きそうで慌てて後ろへ退避する。
「やっぱり毒かよー!」
「ポーション切れてんだけど!」
全方位への毒攻撃とはいやらしい。回復魔法の出番にコヨミさんを追うが、上空に飛んで着地したところだった。
体力のゲージは満タンで状態異常を受けている様子もない。あの攻撃を直前で避けるのは、さすが忍者と称賛したくなった。
「トリガー、詠唱」
――シュンッ!
「トリガー、キュアポイズン」
回復役よりは攻撃役の方が圧倒的に数は多い。毒を癒すだけで精神力が持っていかれた。
マナポーションを飲んで通常の回復も挟む。忙しい操作の中にも周りを見る余裕は十分にあった。
「ありがとうございます! ぐえっ!」
振り向いてお辞儀した後ろで再び攻撃を受ける姿を笑って流す。たまには透明にならず同じ空気感を味わうのも楽しかった。
「フシュウウウ……」
紫色の煙以降は変わり種の行動がなく、ドクトカゲ・アビスの体力は順当に減ってゼロになった。これもコヨミさんを含め、他のプレイヤーがいてくれたおかげ。キュル助だけだと厳しい戦いだったはずだ。
「やったでござるな! ナカノ殿の頑張りで無事に倒せましたよ!」
「コヨミさんへのサポートはなくても平気でしたね」
「忍者の面目躍如でござる!」
まさしくその通りで脱帽だ。
広場には鎧を着たNPCが現れて話しかけるとイベントが進む。すでに盗賊団はおらず王都にある騎士団の建物へ戻るように言われた。
プレイヤーたちがポータルを使ってか、徐々にいなくなっていく。最後に残ったのは自分とコヨミさんだった。
「きりがいいので、拙者はそろそろ落ちるでござるよ」
「分かりました。今日は誘っていただいてありがとうございます。一緒に遊べてよかったです」
「こちらこそ! よい時間を過ごせました!」
≪フレンド申請が届きました≫
二度目のフレンド通知は戸惑わずに承諾する。もちろん緊張や高揚に似た気持ちは湧くのだが。
「また機会があれば、ご一緒しましょう!」
「はい、よろしくお願いします」
コヨミさんの姿が消えてパーティが解散になった。人と接した疲れは多少あるけれど、満足感の方が遥かに大きかった。
今後は透明になる手段を積極的に探していこう。それぐらいはフレンド間での礼儀と思うことにした。
ただ、気にかけていたのが伝わるのは逆効果。有用なスキルを見つけても、恩着せがましさ皆無の自然な会話で知らせたい。まずは会話が上達する本の購入を検討だ。
◇
「ふー……」
ゲーム機を外して天井を見上げる。仕事が休みだったこともあって、ゆっくりゲームに熱中できた。今日はたくさん楽しめて気分よく伸びをする。
ペットのスキルで透明になれるのには驚いたけど、まさか使ってる人がイベントで一番だったなんて。ランキング表ではプレイヤー名じゃなくてニックネームだったから、軽はずみに聞いてしまったのは反省しないと。
「誘い方も、ちょっと強引だったかな……」
あの時は透明化を見て思わず前のめりに。久しぶりのオンラインゲームで距離感を間違えた。でも、物腰が柔らかい人で助けられたな。
道行く人に回復をするのは辻ヒールって言うんだっけ。透明で気づかれずに行うのは筋金入りだ。
私のロールプレイは初挑戦で手探りだった。違う自分を出してみたなかで、情緒の表現を振り返ると少し恥ずかしくなる。
DAOで誰かと関わりを持ったのも初めて。フレンドの申請をしたのは私からだし、次もパーティに誘うのが自然なはず。ロールプレイをしながらだと、また強引な誘い方になりそうだけど。
10
あなたにおすすめの小説
癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。
branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位>
<カクヨム週間総合ランキング最高3位>
<小説家になろうVRゲーム日間・週間1位>
現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。
目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。
モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。
ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。
テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。
そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が――
「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!?
癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中!
本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ!
▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。
▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕!
カクヨムで先行配信してます!
異世界転移魔方陣をネットオークションで買って行ってみたら、魔王軍と戦うはめになった!
蛇崩 通
ファンタジー
ネットオークションに、異世界転移魔方陣が出品されていた。
三千円で。
二枚入り。
手製のガイドブック『異世界の歩き方』付き。
ガイドブックには、異世界会話集も収録。
出品商品の説明文には、「魔力が充分にあれば、異世界に行けます」とあった。
おもしろそうなので、買ってみた。
使ってみた。
帰れなくなった。日本に。
魔力切れのようだ。
しかたがないので、異世界で魔法の勉強をすることにした。
それなのに……
気がついたら、魔王軍と戦うことに。
はたして、日本に無事戻れるのか?
<第1章の主な内容>
王立魔法学園南校で授業を受けていたら、クラスまるごと徴兵されてしまった。
魔王軍が、王都まで迫ったからだ。
同じクラスは、女生徒ばかり。
毒薔薇姫、毒蛇姫、サソリ姫など、毒はあるけど魔法はからっきしの美少女ばかり。
ベテラン騎士も兵士たちも、あっという間にアース・ドラゴンに喰われてしまった。
しかたがない。ぼくが戦うか。
<第2章の主な内容>
救援要請が来た。南城壁を守る氷姫から。彼女は、王立魔法学園北校が誇る三大魔法剣姫の一人。氷結魔法剣を持つ魔法姫騎士だ。
さっそく救援に行くと、氷姫たち守備隊は、アース・ドラゴンの大軍に包囲され、絶体絶命の窮地だった。
どう救出する?
<第3章の主な内容>
南城壁第十六砦の屋上では、三大魔法剣姫が、そろい踏みをしていた。氷結魔法剣の使い手、氷姫。火炎魔法剣の炎姫。それに、雷鳴魔法剣の雷姫だ。
そこへ、魔王の娘にして、王都侵攻魔王軍の総司令官、炎龍王女がやって来た。三名の女魔族を率いて。交渉のためだ。だが、炎龍王女の要求内容は、常軌を逸していた。
交渉は、すぐに決裂。三大魔法剣姫と魔王の娘との激しいバトルが勃発する。
驚異的な再生能力を誇る女魔族たちに、三大魔法剣姫は苦戦するが……
<第4章の主な内容>
リリーシア王女が、魔王軍に拉致された。
明日の夜明けまでに王女を奪還しなければ、王都平民区の十万人の命が失われる。
なぜなら、兵力の減少に苦しむ王国騎士団は、王都外壁の放棄と、内壁への撤退を主張していた。それを拒否し、外壁での徹底抗戦を主張していたのが、臨時副司令官のリリーシア王女だったからだ。
三大魔法剣姫とトッキロたちは、王女を救出するため、深夜、魔王軍の野営陣地に侵入するが……
【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
────────
自筆です。
もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜
きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。
遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。
作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓――
今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!?
ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。
癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!
親がうるさいのでVRMMOでソロ成長します
miigumi
ファンタジー
VRが当たり前になった時代。大学生の瑞希は、親の干渉に息苦しさを感じながらも、特にやりたいことも見つからずにいた。
そんなある日、友人に誘われた話題のVRMMO《ルーンスフィア・オンライン》で目にしたのは――「あなたが求める自由を」という言葉。
軽い気持ちでログインしたはずが、気づけば彼女は“ソロ”で世界を駆けることになる。
誰にも縛られない場所で、瑞希は自分の力で強くなることを選んだ。これは、自由を求める彼女のソロ成長物語。
毎日22時投稿します。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
ダンジョン菌にまみれた、様々なクエストが提示されるこの現実世界で、【クエスト簡略化】スキルを手にした俺は最強のスレイヤーを目指す
名無し
ファンタジー
ダンジョン菌が人間や物をダンジョン化させてしまう世界。ワクチンを打てば誰もがスレイヤーになる権利を与えられ、強化用のクエストを受けられるようになる。
しかし、ワクチン接種で稀に発生する、最初から能力の高いエリート種でなければクエストの攻略は難しく、一般人の佐嶋康介はスレイヤーになることを諦めていたが、仕事の帰りにコンビニエンスストアに立ち寄ったことで運命が変わることになる。
スキルハンター~ぼっち&ひきこもり生活を配信し続けたら、【開眼】してスキルの覚え方を習得しちゃった件~
名無し
ファンタジー
主人公の時田カケルは、いつも同じダンジョンに一人でこもっていたため、《ひきこうもりハンター》と呼ばれていた。そんなカケルが動画の配信をしても当たり前のように登録者はほとんど集まらなかったが、彼は現状が楽だからと引きこもり続けていた。そんなある日、唯一見に来てくれていた視聴者がいなくなり、とうとう無の境地に達したカケル。そこで【開眼】という、スキルの覚え方がわかるというスキルを習得し、人生を大きく変えていくことになるのだった……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる