社畜おじさん、仕事を辞めて辻ヒーラーになる。

七渕ハチ

文字の大きさ
89 / 147
第三章前半『おじメダル配布作戦』

第89話 ギルドホーム拡張チケット

しおりを挟む
「こんばんはでござる!」

「こんばんは」

 食事を終えて休憩後、ログインするとコヨミさんが囲炉裏の向こうに座っていた。ここでくつろぎたくなるのは一緒か。

「ナカノ殿、ついにきましたよ!」

 テンション高めで何事かを聞く前に一枚の紙を受け取る。そこには限定的な地形が書き込まれており、赤い印が目立った。

「宝の地図ですか」

 見た目がまさにですぐ分かる。沼地でもクロ蔵がいた場所を紙切れ片手に探し当てたアイテムだ。

「最高の忍者用武器をイベント報酬でお願いしたのですが、そのものを渡すのは難しいとのことで。ヒントを元に追い求めよとミッションを頂いた次第でござる」

 やはり要求の内容によっては渋られるらしい。けれど、宝の地図というワンクッションで許されるのだ。おそらく忍者用でジャンルを絞ったからこその対応か。有効期限切れでなければ自分のイベント報酬が残っている。権利を使うときはラインをしっかり見極めよう。

「探す楽しみが増えた、とも考えられます」

「拙者もそう思いましたが、実際手にして大仕事になると気づいたのでござるよ」

「……なるほど、確かに骨が折れるかもしれません」

 大仕事の表現で察しがつく。地図だけでは、おおまかな位置の見当を付けることすら困難だった。

「以前、叡智の沼地で宝箱に入っていたものは同じエリア内を調べればよかったでござるが。今回の場合はヒントのヒントが欲しいところです」

 さすがに、全体マップとにらめっこで歩き回るのは無理がある。

「プレイヤーの平均的攻略度を踏まえたエリアなら、ありがたいですね」

 攻略に攻略を重ねたプレイヤーにしか行けないとなると、報酬に適するかが疑問だ。運営の優しさに期待して探す方が気持ちは楽だった。

「メタ読みは大事でござるな。ながら作業で地図を確かめるぐらいがいいのでしょう」

 あまりに根を詰めると疲れてしまう。ゲームなのを忘れず遊ぶのが前提、とはいえだ。コヨミさんが望んだアイテムで、お預けが長くなるのも辛いはず。幸い自分には時間がある。今まで訪れたエリアだけでもしらみつぶしに練り歩こう。

「では、宝の地図は一度棚上げにホームの拡張アイテムを見るのはいかがです?」

「そうですね」

「きっと大きく広がるでござるよ!」

 報酬はまだあって、こちらは簡単に反映されるだろう。


【ギルドホーム屋外拡張チケットLv3】
『種類』特殊アイテム
『説明』ギルドホームに屋外を追加する


 まずはレベル表記付きの拡張チケットを使ってみる。部屋どころか屋外とは。嬉しいサプライズだった。


≪屋外の種類を選択してください≫


 システムメッセージと共にウィンドウが現れる。草原や森、砂地などの絵が一覧で並んだ。どうやらレベルによって種類が増える仕組みで、ロック状態の中には滝といったスケールが大きい環境も存在した。

 レベル3は高い方で選択肢が多くて悩む。和風を条件にしても、色々な自然に溶け込みそうで決めきれない。

「目の前に出ているウィンドウなんですが、コヨミさんに見えますか?」

「ウィンドウでござるな……いえ、見えませんね」

 横にきてくれたものの、上手くはいかなかった。

「今は何をされているので?」

「屋外の追加で種類を選んでいる最中です」

「ナカノ殿の好みで選んでくだされば大丈夫でござるよ!」

 のちに変更可能か分からない以上は慎重になるべきだけれど、コヨミさんの視線に期待を感じる。早く決めて変わり様を楽しみたいのと同時に責任もあって、少々待たせてしまう。

 何度も一覧を往復してロケーションが複数組み合わさるものを、お得な気がしたためピックアップ。最後は雰囲気重視で絞り込んだ。


≪建物の外観を選択してください≫


 屋外があれば建物の外観も必要か。テーマごとに分かれて選びやすいが、比較的シンプルな印象を受けた。家具に窓が存在したので、外観はそちらでカスタマイズを行うのだろう。とりあえずは木造の古民家にしておく。


≪ギルドホームが変更されます≫
≪再入場が行われますがよろしいですか?≫


「ホームの変更に伴って再入場になります」

「了解でござる!」

 土間で外していた足の装備を着け承諾すると、一瞬の浮遊感を受けて景色が広がる。土の道が真っすぐに伸びて、百メートルか二百メートルか分かりにくいが、向こう側に簡素な門が見えた。真後ろにも門がありポータル機能を持つのに加えてエリアの端らしく、ここを超えては進めなかった。

 道の左側には畑、右側には森に囲まれた空き地が作られ古民家がどでんと中央に建つ。開けた空間に対し、いささかアンバランスな位置取りだ。

「こんなに広々としたエリアが付与されるのでござるな!」

 馬車が一台通れるほどの道幅を進み、辺りを見回す。一朝一夕で飾り付けるには規模が大きすぎた。

「畑では作物を育てられそうですし、想像以上にやれることが増えましたね! しかし、家の位置が気になるでござる」

 抱く感想は似ており試しにギルドの画面を確認する。内装の他、建物の移動項目があったので簡単に調整だ。

「おお! 移動しましたよ!」

「特に制限なく変更できるみたいです」

 横にずらすだけでがらりと印象は変わる。縁側や庭を整備すればもっと立派になるのだが。

「ナカノ殿! もうひとつの拡張アイテムをぜひ!」

「分かりました」


【ギルドホーム家数拡張チケット】
『種類』特殊アイテム
『説明』ギルドホームに新たな建物を増やす


 次の拡張チケットは建物自体を増やすもの。部屋に先駆ける形でまたホームが充実するな。


≪建物の外観を選択してください≫


 使うと再びウィンドウが出た。一覧はさっきと同じなため迷わずに決めて配置に移る。ちょうど空いたスペースを選ぶと蔵が現れた。

「蔵でござる!」

 これぞ和風という建物にコヨミさんが喜んでくれる。タルや棺桶、壺などが家具で用意されていれば保管にも役立つ。今後は宝の地図を探しながらギルドホームのカスタマイズを考えよう。



 ◇



【DAO】総合スレPart170

913 名前:名無しの古代人
    変わった模様のマント見かけたけど
    自作?

914 名前:名無しの古代人
    ぽいね

915 名前:名無しの古代人
    生産で図形とか模様の組み合わせで作れる

916 名前:名無しの古代人
    そういう系か
    別ゲー持ち込んだりでちょっと苦手

917 名前:名無しの古代人
    俺は好き
    職人技が光るやつ

918 名前:名無しの古代人
    武器に銘を刻むのはカッコいい

919 名前:名無しの古代人
    こだわりを出せるしモチベにはつながる

920 名前:名無しの古代人
    下手だから誰かに頼みたいな

921 名前:名無しの古代人
    普通に依頼で作りますって人はいるでしょ

922 名前:名無しの古代人
    あれ
    なんか公式にきた?

923 名前:名無しの古代人
    イベント予告か
    また早いね

924 名前:名無しの古代人
    でも今日とか明日じゃなさそう?

925 名前:名無しの古代人
    生産向けのイベントしますって感じだ
    詳細な情報はほとんどない

926 名前:名無しの古代人
    対人が続いたもんな
    生産にも活躍の場をって声は多かったし

927 名前:名無しの古代人
    すぐにやるから待てと

928 名前:名無しの古代人
    準備はいらんのか

929 名前:名無しの古代人
    部屋の飾りつけってワードが気になる

930 名前:名無しの古代人
    単なる生産が活躍する云々の紹介では
    深読みかもよ

931 名前:名無しの古代人
    イベントでギルドを作らせたんだぞ
    ホームバトルに決まってるだろ

932 名前:名無しの古代人
    自分プライベートルームでもいいすか?

933 名前:名無しの古代人
    さっさと頭下げてギルドに入れてもらえ

934 名前:名無しの古代人
    前回のイベント報酬だけど
    ギルドのホーム関連だったんじゃ

935 名前:名無しの古代人
    いぶし銀の連中が嬉しそうに画像を上げてたっけ

936 名前:名無しの古代人
    スタート時点で差がついてるって話?

937 名前:名無しの古代人
    運営の文面からは緩い空気を感じる

938 名前:名無しの古代人
    まあ生産でバチバチに戦うのは想像できん

939 名前:名無しの古代人
    ホーム同士で殴らせろ

940 名前:名無しの古代人
    闘争を求めすぎだ

941 名前:名無しの古代人
    ギルドホームが変形してロボットになるんだぞ

942 名前:名無しの古代人
    そこまで突き抜けてくれたら笑える
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

異世界転移魔方陣をネットオークションで買って行ってみたら、魔王軍と戦うはめになった!

蛇崩 通
ファンタジー
 ネットオークションに、異世界転移魔方陣が出品されていた。  三千円で。  二枚入り。  手製のガイドブック『異世界の歩き方』付き。  ガイドブックには、異世界会話集も収録。  出品商品の説明文には、「魔力が充分にあれば、異世界に行けます」とあった。  おもしろそうなので、買ってみた。  使ってみた。  帰れなくなった。日本に。  魔力切れのようだ。  しかたがないので、異世界で魔法の勉強をすることにした。  それなのに……  気がついたら、魔王軍と戦うことに。  はたして、日本に無事戻れるのか?  <第1章の主な内容>  王立魔法学園南校で授業を受けていたら、クラスまるごと徴兵されてしまった。  魔王軍が、王都まで迫ったからだ。  同じクラスは、女生徒ばかり。  毒薔薇姫、毒蛇姫、サソリ姫など、毒はあるけど魔法はからっきしの美少女ばかり。  ベテラン騎士も兵士たちも、あっという間にアース・ドラゴンに喰われてしまった。  しかたがない。ぼくが戦うか。  <第2章の主な内容>  救援要請が来た。南城壁を守る氷姫から。彼女は、王立魔法学園北校が誇る三大魔法剣姫の一人。氷結魔法剣を持つ魔法姫騎士だ。  さっそく救援に行くと、氷姫たち守備隊は、アース・ドラゴンの大軍に包囲され、絶体絶命の窮地だった。  どう救出する?  <第3章の主な内容>  南城壁第十六砦の屋上では、三大魔法剣姫が、そろい踏みをしていた。氷結魔法剣の使い手、氷姫。火炎魔法剣の炎姫。それに、雷鳴魔法剣の雷姫だ。  そこへ、魔王の娘にして、王都侵攻魔王軍の総司令官、炎龍王女がやって来た。三名の女魔族を率いて。交渉のためだ。だが、炎龍王女の要求内容は、常軌を逸していた。  交渉は、すぐに決裂。三大魔法剣姫と魔王の娘との激しいバトルが勃発する。  驚異的な再生能力を誇る女魔族たちに、三大魔法剣姫は苦戦するが……  <第4章の主な内容>  リリーシア王女が、魔王軍に拉致された。  明日の夜明けまでに王女を奪還しなければ、王都平民区の十万人の命が失われる。  なぜなら、兵力の減少に苦しむ王国騎士団は、王都外壁の放棄と、内壁への撤退を主張していた。それを拒否し、外壁での徹底抗戦を主張していたのが、臨時副司令官のリリーシア王女だったからだ。  三大魔法剣姫とトッキロたちは、王女を救出するため、深夜、魔王軍の野営陣地に侵入するが……

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜

きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。 遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。 作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓―― 今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!? ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。 癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

親がうるさいのでVRMMOでソロ成長します

miigumi
ファンタジー
VRが当たり前になった時代。大学生の瑞希は、親の干渉に息苦しさを感じながらも、特にやりたいことも見つからずにいた。 そんなある日、友人に誘われた話題のVRMMO《ルーンスフィア・オンライン》で目にしたのは――「あなたが求める自由を」という言葉。 軽い気持ちでログインしたはずが、気づけば彼女は“ソロ”で世界を駆けることになる。 誰にも縛られない場所で、瑞希は自分の力で強くなることを選んだ。これは、自由を求める彼女のソロ成長物語。 毎日22時投稿します。

ダンジョン菌にまみれた、様々なクエストが提示されるこの現実世界で、【クエスト簡略化】スキルを手にした俺は最強のスレイヤーを目指す

名無し
ファンタジー
 ダンジョン菌が人間や物をダンジョン化させてしまう世界。ワクチンを打てば誰もがスレイヤーになる権利を与えられ、強化用のクエストを受けられるようになる。  しかし、ワクチン接種で稀に発生する、最初から能力の高いエリート種でなければクエストの攻略は難しく、一般人の佐嶋康介はスレイヤーになることを諦めていたが、仕事の帰りにコンビニエンスストアに立ち寄ったことで運命が変わることになる。

スキルハンター~ぼっち&ひきこもり生活を配信し続けたら、【開眼】してスキルの覚え方を習得しちゃった件~

名無し
ファンタジー
 主人公の時田カケルは、いつも同じダンジョンに一人でこもっていたため、《ひきこうもりハンター》と呼ばれていた。そんなカケルが動画の配信をしても当たり前のように登録者はほとんど集まらなかったが、彼は現状が楽だからと引きこもり続けていた。そんなある日、唯一見に来てくれていた視聴者がいなくなり、とうとう無の境地に達したカケル。そこで【開眼】という、スキルの覚え方がわかるというスキルを習得し、人生を大きく変えていくことになるのだった……。

処理中です...