NO MUSIC・NO LIFE

甘酒

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一章

意味 ☆☆

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「は??」

頭がハテナでいっぱいになる。
いや、確かに友人の多さを頼りにメンバーを探すとは言っていた。しかし、こんなにも短期間で見つかるものだろうか?それに、いつ俺に相談した?どんな奴かも分からないのに、明日紹介するって...。

「だから、明日紹介するよ!って放課後言ってたじゃん。」

こいつはいつもそうだ。俺の知らない間に、事を進めている。確かにあいつは、実行力・コミュ力もある。だから、ボッチの俺に手を差し出してくれたんだろう。でも、それとこれとは別問題だ。
なんで教えてくれなかったんだ。紹介するにも、相手のことを教えて欲しかった。

「え、えっと、単なにか怒ってる?」
「別に」

ぶっきらぼうに返事をしてしまう。
俺にとったら何気ない返事だった。しかし、瞳にとっては何かを感じとってしまったのだろう。
それから解散までの30分の間、何も話すことは無かった。

「じゃあ、また明日。」
「お、おう。気をつけてな」

いつもの満開の笑顔は消え失せ、どこか寂しさの残る笑みとともに、瞳の背中が遠くなる。

ーあいつにとって、俺ってなんなんだ?ー

扉を閉めた次の瞬間、俺の拳は壁を殴っていた。
何か、心の底から溢れるものがあった。熱いが、なにか冷たいドロドロとしたものが...。
この感情の正体は分からない。でも、きっと良くないものだ...。

「く、くそっ!」

壁をもう1発殴ろうと振り上げた瞬間、誰かに腕を優しく握られた。
振り返るとそこには、スーツを着た黒髪の兄がたっていた。

「兄さん...。」
「どうしたんだ?単らしくないぞ。」
「な、なんでもないよ!!壁に虫がついていたんだ」

憧れの人を心配させまいと、無理して笑顔を作る。しかし、その仮面もすぐに破られた。

「痛かっただろう?処置してあげよう。先にリビングで待っててくれ。」

軽く頭を撫で、無言で自室に戻る兄。その姿を確認して、俺はリビングへと向かった。


「ほら、これで大丈夫。ただ、腫れてるから3~4日は安静にしてなよ」


腫れた右手を処置してくれた兄は、笑顔でこちらを見てくる。
申し訳なくて、顔を逸らしてしまう。
夕日が2人しかいないリビングに灯りをともす。

「何があったんだい?瞳くんと喧嘩でもしたかい?」

首を横に振る。声に出すと何が壊れる気がした。

「もしかして、○○してるのかい?」

次の瞬間、涙が溢れ出た。
いつ以来だろう?こんなに涙が溢れるのは。絶対に見せまいとしてきた姿を、憧れの人に見られた。恥ずかしい、見せたくない。でも、涙が溢れ出てしまう。
その感情の正体を本当は知っていた。でも、でも、気付きたくなかった。

「うっ...うぅ...。うわぁぁ」

泣き叫ぶ俺をゆっくりと抱きしめる兄の温度は、世界一温かかった。

「単。色々な感情を身につけなさい。それがどれだけ醜くてもいい。いつか、綺麗な感情に移り変わるんだから...。」
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