死にゲーの世界のキャラに憑依したと思ったら、BL版の世界でした。 ~最悪領主になりきろうとしたが、日本人気質の所為でばれそうです~

番傘と折りたたみ傘

文字の大きさ
20 / 98
1

癒しの風呂場は何処

しおりを挟む
 執務を終えた俺は、自室へと戻った。綺麗に整えられたベッドの上に座り、ため息を吐いた。

 夕食を食べていないのに胸が苦しい所為で、腹が空かない。グランデに逢いたいと訴えてくるこの感情が辛い。いや、ライトに逢いたいなのかもしれない。いまいち、複雑すぎるレイルの身体の思いが分からない。

 それに、とても疲れた。風呂に入りたい。この世界に来て二日目だと言うのに、色々とあり過ぎて、ゆっくりとした時がなかった。のんびりと湯船に浸かってリラックスしたい。だが、この世界に湯船なんてものあるのだろうか。ゲームでは豪華な湯船があったが、果たしてこのレイルの屋敷にはあるのだろうか。取り敢えず、探しに行ってみようと、着替えを持って自室を後にした。風呂といえば、一階にあるイメージが強い。一階へと向かう為、階段を目指して廊下を歩いていく。廊下には所々にランタンの様なものが吊るしてあり、少しだけ薄暗い。暗い赤の絨毯は毛足が長く、幾ら高らかに足踏みをしても、足音は小さくなった。深夜という事もあってか、廊下には誰もいない。静かすぎる廊下は、何とも心細い。落ち着かない胸の内を抱えながらも、階段を下り一階へ移動した。広い玄関ホールを抜け、キッチンなどがありそうな廊下へと向かった。水周りの方へと行けば、見つかるだろうと思ったのだ。

 廊下に並ぶ扉の一つを開けてみると、そこは厨房だった。隣の部屋は、倉庫。その隣は、リネン室。やはり、風呂場はないのだろうか。諦め気味に、リネン室の隣の扉を開くと、そこは脱衣場だった。その奥に、もう一つ扉が見える。高鳴る胸を抑えながら、その扉を開くと温かな湯気が俺を包んだ。大浴場かと思う程の広い風呂場に唖然とした。

「で、でかい」

 泳げる程の広い浴槽が一つあって、洗い場も三箇所ある。流石、日本の会社が作ったゲーム。風呂に関しては全力である。壁だけではなく床も大理石で出来ているのかピカピカですべすべだ。これはもう、入るしかないだろ! 

 脱衣場に戻り、棚に置かれたカゴの中に着ていた服を脱いでいれた。裸になり、脱衣場においてあった姿見の前に立ってみる。レイルの体は筋肉だけではなく脂肪にも嫌われているようで、なかなか肉の付きづらい体質という設定だった。そんな体は華奢で、きめ細かく白い肌が目立つ。だが、そんな綺麗な体の所々には、切り傷の跡がある。レイルは、戦場に立つ領主でもあった。ゲーム内で主人公と何度も打ち合いをする場面があり、主人公を何度も窮地に追いやった敵だ。体の軽さを存分に使ったスピード重視の剣術がレイルの得意技だ。

 もし今、戦になったとしたら、俺は戦えるのだろうか。レイルの体だとしても、俺は俺だ。平和な日本育ちの俺が、戦える筈がない。運動系の部活とかに入っている暇なんて無かったから、俺は運動できない部類に入る。戦に巻き込まれないように、気を付けるしかないな。いや、今はこんな事考えるのはやめよう。それよりも、風呂だ!

 風呂場に入り、洗い場で簡単に体を洗ってから浴槽に近づいた。ふわふわと上がる湯気に、頬を緩ませながら、そっと足先を湯につけた。少し熱めのお湯だ。もっと熱めのお湯の方が好きなのだが、まぁ……この温度でも充分だ。

 足先から入り、脹脛、太腿、腰、腹、胸、肩と順に浸かる。ビリビリとした刺激が肌を走り、体を震わせた。この感覚が堪らない。お湯の温度に慣れて、体から強張りが消えていく。

「ふー、極楽だぁ」

 気持ちが良くて、力が抜けていく。何も考えずに天井を見上げると、所々にある紋様に目が行った。レイル家の家紋だろうか。丸の中にある花。桜の様な花をぼんやりと見ていると、日本を懐かしく思った。今頃、俺はどうなっているのだろうか。目を覚さずに眠り続けているのだろうか。それとも、もう死んで……。

 折角の風呂なのに、こんな事考えたくない。だが、不安が俺を襲う。もし、死んでいたら、妹はどうなってしまうのだろう。大学に通い出したばかりの妹。金の心配をさせたくなくて、一生懸命に働いてきた。通帳に貯めた金、少しでも、足しになればいいのだが……。

 そんな事を考えていた時、ガチャと扉の開く音が風呂場に響いた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ユキ・シオン

那月
BL
人間の姿をした、人間ではないもの。 成長過程で動物から人間に変わってしまう”擬人化種”の白猫青年と、16歳年上のオッサンとのお話。 出会ったのは猫カフェ。白猫従業員としての青年と客としてやってきたオッサン。 次に再会したのは青年が人間として通う大学。オッサンは保健室の先生だった。 青年が金のためにヤバいことをしていて、あるトラブルが起こる。 そこへ見計らったかのようにオッサンが飛び込んで救出したのをきっかけに2人の距離は縮まり…… ※表紙絵は自作。本編は進むにつれてどんどん動物園と化します(笑)

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

悪役令息に転生したらしいけど、何の悪役令息かわからないから好きにヤリチン生活ガンガンしよう!

ミクリ21 (新)
BL
ヤリチンの江住黒江は刺されて死んで、神を怒らせて悪役令息のクロエ・ユリアスに転生されてしまった………らしい。 らしいというのは、何の悪役令息かわからないからだ。 なので、クロエはヤリチン生活をガンガンいこうと決めたのだった。

同性愛者であると言った兄の為(?)の家族会議

海林檎
BL
兄が同性愛者だと家族の前でカミングアウトした。 家族会議の内容がおかしい

中年冒険者、年下美青年騎士に番認定されたことで全てを告白するはめになったこと

mayo
BL
王宮騎士(24)×Cランク冒険者(36) 低ランク冒険者であるカイは18年前この世界にやって来た異邦人だ。 諸々あって、現在は雑用専門冒険者として貧乏ながら穏やかな生活を送っている。 冒険者ランクがDからCにあがり、隣国の公女様が街にやってきた日、突然現れた美青年騎士に声をかけられて、攫われた。 その後、カイを〝番〟だと主張する美青年騎士のせいで今まで何をしていたのかを文官の前で語ることを強要される。 語らなければ罪に問われると言われ、カイは渋々語ることにしたのだった、生まれてから36年間の出来事を。

騎士団長の秘密の部屋に匿われています!?

krm
BL
王子なのに魔力が異端!?式典中にまさかの魔力暴走を起こした第三王子アストル。地下室に幽閉されそうになったその時、騎士団長グレンの秘密の部屋にかくまわれることに!けれどそれは、生活感ゼロ、無表情な騎士とふたりきりの、ちょっと不便な隠れ家生活だった。 なのに、どうしてだろう。不器用なやさしさや、ふいに触れる手の温もりが、やけに心に残ってしまう。 「殿下の笑顔を拝見するのが、私の楽しみですので」 「……そんな顔して言われたら、勘違いしちゃうじゃん……」 少しずつ近づいていく二人と、異端の魔力に隠された真実とは――? お堅い騎士×異端の王子の、秘密のかくれ家ラブコメディ♡

異世界転移した先は陰間茶屋でした

四季織
BL
気が付いたら、見たこともない部屋にいた。そこは和洋折衷の異世界で、俺を拾ってくれたのは陰間茶屋のオーナーだった。以来、俺は陰間として働いている。全くお客がつかない人気のない陰間だけど。 ※「異世界に来た俺の話」と同じ世界です。 ※謎解き要素はありません。 ※ミステリー小説のネタバレのようなものがありますので、ご注意ください。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

処理中です...