死にゲーの世界のキャラに憑依したと思ったら、BL版の世界でした。 ~最悪領主になりきろうとしたが、日本人気質の所為でばれそうです~

番傘と折りたたみ傘

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グランデ・エトワールの視点『カゴの中身』

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 廊下に叩きつけれたカゴは、衝撃で蓋が開いたのか。中身を飛び散らかせて、転がった。それを見て、自らが犯した罪に気が付いた。

 数日かけて、犯人らしき人物がいないか駆け回っていた。それは私だけでは無い。ライトやマルバールもしてくれていたのに、それを棒に振る様なレイル様の行動についカッとしてしまった。それに、キエナの視界に今のレイル様に入れたくなかったのだ。キエナを屋敷の入り口に誘導している時に、会議を終えたライトが現れてから、私の予定が崩れ始めた。さっさと、追い出したいのに、ライトがうだうだとキエナと話を始めてしまったのだ。なかなか終わらない会話にイライラしていた。そこに、現れて欲しくないレイル様が廊下の角から現れて、なぜかキエナに体当たりしてしまう出来事だ。

 キエナに抱かれ、キエナの顔が近づくのに、ぼんやりとして何もしない彼。以前のレイル様なら、抱かれた瞬間、キエナの顔面にビンタを飛ばしていただろう。このまま流されるものなら、キスされてもおかしくなかった。それを防ぐ為、行動に移そうとした時、ライトの方が一瞬だけ早かった。キエナからライトの腕の中に一瞬で移動したレイル様は、何が起こったのか理解できない様子だった。

 ライトの腕に抱かれている事に気が付いた彼は、頬を赤く染めていた。それを見て、何故だろうか苦しくなる胸の内が理解できない。その感情を無視し、キエナを追い出した。その後、安心してホッとしている彼の表情を見て、もう……抑えられなかった。
 
 溢れる怒りと憤りを彼にぶつけた。何故守ろうとしてくれる人の苦労を解ろうとしないのか。何故、分かったという一言で終わらせようとするのか。どうして、分かってくれないのだ。

 何も言わず、黙って聞く事の多い彼が、爆発した。大事そうに持っていたカゴを叩きつけ、屋敷の上にいく階段を駆け上がっていく彼を見続けた。

 それから、叩きつけられたカゴの中から、飛び散った物に意識を向ける。ぐちゃぐちゃになったそれと、皿が割れて落ちていた。

「これって、ケーキか? それも、二種類あるな」

 ライトが、ぐちゃぐちゃになったものを指で掬い上げて、口に入れた。

「うまい! これは、紅茶。こっちは酒漬けの苺か」

 それは、私とライトの好物が入ったものだった。

「くそ、惜しい事した。グランデが責め立てなければ、美味いものが食えたかも知れないのに」

 じろっと、恨めしい視線を送ってくるライトを無視する。彼は、私の為に、ケーキを作ってくれていたのか。ライトの分もあるが、私の事を思って作ってくれていたのかと思うと、嬉しかった。それなのに、私は彼に何も分かっていないと、知る努力しろと責任転嫁していた。彼は分かっていたのだ。何も知ろうとせずに、分かったフリをしていたのは私だった。私も彼を知らなければなるまい。

 跪き、絨毯を汚した……いや、絨毯に汚されてしまったそれを持ち上げ、立ち上がる。

「棄てんのか」

「いいえ。そんな、勿体ない事致しません。ライト、今日の護衛をお願いします。私では……辛いかと思いますので」

「……分かった」

 ライトに、レイル様の護衛を託し、歩みを進めた。ある所へと向かう。彼らなら、もう一度何とかなるのではないかと思ったのだ。

 彼の悲しむ顔を見たくない。それなのに、気づけば責め続けてしまう。こんなにも、短気ではなかった筈なのに……。

「あ、エトワール様!」

 声をかけられた為、俯いていた顔を上げた。そこにいたのは、庭師のデリック・ロードだ。

「どうかしましたか?」

「レイル様が、何処にいらっしゃるか分かりますか?」

「レイル様なら、多分お部屋に……何かあったのですか?」

 これから、何か起こるのかもしれない。もしかすると、毒殺をしようとしたのはデリックなのだろうか。彼は、数日前、レイル様に追放を言い渡されていた。恨みがあってもおかしくは無い。だが、レイル様の言っていた容姿と大分違う。と言うことは、犯人ではなく、協力者か?

「いいえ。レイル様に、採れたばかりの紅茶の茶葉を持って行こうかと思いまして」

「レイル様にですか!? しかし、デリック……貴方は」

「えぇ、レイル様に追放を命じられました。ですが、今は違います。レイル様はここに居ても良いと仰ってくれたのです」

「レイル様がですか?」

「はい! とてもお優しく仰られて、大変嬉しかったのです。その後、レイル様が紅茶をお求めになっていたのでして、一応差し上げてのですが、また良い紅茶の茶葉が手に入りましてね。レイル様が、エトワール様にお作りするんだと張り切っていましたので……エトワール様! どうされたのです?」

 傷口を抉られるとはこう言うことか。何かが頬を伝う感じがする。

「いいえ。何でもありません。レイル様ですが、今はご気分悪いと言われていましたので、私が後でお渡しして置きますよ」

「はい……。それでは、お願い致します」

「それでは、失礼致します」

 紅茶の茶葉を受け取り、心配そうに視線を向けてくるデリックに背を向け、歩き出す。苦しい。馬鹿な事をした。何故にあんな酷い事を言ったのだろう。時間を戻せるなら、あの時の馬鹿な自分に説教したい。

 これから向かう先の扉からは、賑やかな笑い声が聞こえてくるのに、それが届かない程、ここは後悔という名の静寂に包まれていた。
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