58 / 98
1
お祭りへ
しおりを挟む
天候は晴れ。絶好のお祭り日和だ! レイルの屋敷の敷地内から出たのは初めてだった。屋敷の入り口にある大きな門をくぐり抜け、駆けていく馬車の中、グランデとライトの間に俺が座り、三人でぎゅうぎゅうに乗っていた。本当であれば、馬車には二人が乗り、一人が護衛の人たちと一緒に馬に乗って並走する予定だったのだが、誰が俺と馬車に乗るかというので揉めたのだ。俺としては、気まずいグランデより、ライトの方がいいのだが。グランデが乗ると言い出し、ライトも譲れないと言い合いになった。
揉め合う二人を叱ってくれたのは、グレアだった。
「子どもではないのですから、大人しく三人で乗っては如何ですか?」
そうやって、今に至る訳だが、ライトの体が大きい為、細身のグランデに寄り添う形になってしまう。温かい体温、細身なのにガッチリとした体格は、細マッチョというやつだろうか。風呂場でも見ているが、とても羨ましい肉体である。グランデの方へ視線を向ける。変な喧嘩をしてしまった為、グランデと視線が合わせ辛い。グランデが振り向いた瞬間に、目を逸らし顔を伏せてしまう。あぁ、どうすれば良いんだ。この嫌な関係を修復したいのに、冷たい瞳を見たくなくて、ついつい逸らしてしまう。
ライトに誘われたこの祭りの件の了承を取るのにも、ほとんどライト頼みだった。
ライトのやや後ろで、グランデがどう出るか緊張していた。絶対ダメと言うと思っていた。だが、返ってきた答えは違った。共に行くと言ってきたグランデに、驚いたがそれ以上に嬉しいと思った。あんなに突き放したのに、ついて来てくれるんだと嬉しかった。その所為で、余計に恥ずかしくなり、視線を合わせ辛くなってしまった。何とか、関係修復を図らなければ……。
「レイル様。こうして、出かけるの久しぶりだな」
「え? あ、そうだな」
ライトの声に、焦った。グランデの事で頭が一杯だったなんて口が裂けても言えない。
それよりも、夜会とかあるとは知らなかった。ライトは祭りがあるとしか言わなかったのだ。グランデには何とか誤魔化したが、夜会での仮装……どうなるのだろうか。少し、不安だ。
「どうしました? 何か不安なことでもありますか?」
「いや、何でもない。大丈夫だ。それよりも、あそこか?」
グランデが心配そうに、声を掛けてきてくれたのに、俺は早々に話を切り上げた。これ以上根掘り葉掘り聞かれると、色々とバレてしまいそうだった。苦しいと訴えてくる胸の内は、俺の心なのか……それともレイルのものなのかは分からない。
それよりも、窓の外が木々から、レンガの街並みへと変わっていた。
「おぉ! 着いたな!」
俺の声に反応したライトが、大声を上げた。お祭りなんて、小学生の頃以来だ。どんな祭りなのか楽しみでならない。
馬車が止まり、グランデが馬車の扉を開けて降りていった。俺も降りようと、座面から腰を上げ、扉から身を乗り出そうとしたその時、グランデが右手を伸ばして来ていた。
「どうぞ。怪我をされても困ります」
「あ、ありがとう」
軽々と、俺を馬車から下ろしたグランデの紳士的な行動に、何となく気恥ずかしくて、視線を逸らしてしまう。
「いえ、それと」
グランデが肩掛けのカバンから、何やら布を出してきた。
「レイル様。貴方は多くの方から恨まれていらっしゃるので、これを被って下さい」
広げたそれをグランデが肩にかけてくれ、フードを被せてくれた。フードが大きめの様で、顔半分近くまで隠れてしまう。周りが見づらい。どうやら、これは外套の様だ。
「俺達がいるから、バレちまうんじゃないか?」
「いいえ。最近、レイル様は風邪を引いていました。どうやら、その噂が流れているようで、まさか祭りにいるとは思わないでしょう」
なるほど。
「そうか。それじゃ、行こうぜ!」
ライトの手が目の前に差し出された。その手をじっと見つめてから、ライトの顔を見る。
「迷子になったら困るだろ」
「迷子になんてならないって!」
「ダメだ。何もない時ですら、ここは人で凄いんだからな」
ライトの手が伸びてきて、俺の手を握ってきた。柔らかく握られた手はとても温かくて心がほかほかした。
揉め合う二人を叱ってくれたのは、グレアだった。
「子どもではないのですから、大人しく三人で乗っては如何ですか?」
そうやって、今に至る訳だが、ライトの体が大きい為、細身のグランデに寄り添う形になってしまう。温かい体温、細身なのにガッチリとした体格は、細マッチョというやつだろうか。風呂場でも見ているが、とても羨ましい肉体である。グランデの方へ視線を向ける。変な喧嘩をしてしまった為、グランデと視線が合わせ辛い。グランデが振り向いた瞬間に、目を逸らし顔を伏せてしまう。あぁ、どうすれば良いんだ。この嫌な関係を修復したいのに、冷たい瞳を見たくなくて、ついつい逸らしてしまう。
ライトに誘われたこの祭りの件の了承を取るのにも、ほとんどライト頼みだった。
ライトのやや後ろで、グランデがどう出るか緊張していた。絶対ダメと言うと思っていた。だが、返ってきた答えは違った。共に行くと言ってきたグランデに、驚いたがそれ以上に嬉しいと思った。あんなに突き放したのに、ついて来てくれるんだと嬉しかった。その所為で、余計に恥ずかしくなり、視線を合わせ辛くなってしまった。何とか、関係修復を図らなければ……。
「レイル様。こうして、出かけるの久しぶりだな」
「え? あ、そうだな」
ライトの声に、焦った。グランデの事で頭が一杯だったなんて口が裂けても言えない。
それよりも、夜会とかあるとは知らなかった。ライトは祭りがあるとしか言わなかったのだ。グランデには何とか誤魔化したが、夜会での仮装……どうなるのだろうか。少し、不安だ。
「どうしました? 何か不安なことでもありますか?」
「いや、何でもない。大丈夫だ。それよりも、あそこか?」
グランデが心配そうに、声を掛けてきてくれたのに、俺は早々に話を切り上げた。これ以上根掘り葉掘り聞かれると、色々とバレてしまいそうだった。苦しいと訴えてくる胸の内は、俺の心なのか……それともレイルのものなのかは分からない。
それよりも、窓の外が木々から、レンガの街並みへと変わっていた。
「おぉ! 着いたな!」
俺の声に反応したライトが、大声を上げた。お祭りなんて、小学生の頃以来だ。どんな祭りなのか楽しみでならない。
馬車が止まり、グランデが馬車の扉を開けて降りていった。俺も降りようと、座面から腰を上げ、扉から身を乗り出そうとしたその時、グランデが右手を伸ばして来ていた。
「どうぞ。怪我をされても困ります」
「あ、ありがとう」
軽々と、俺を馬車から下ろしたグランデの紳士的な行動に、何となく気恥ずかしくて、視線を逸らしてしまう。
「いえ、それと」
グランデが肩掛けのカバンから、何やら布を出してきた。
「レイル様。貴方は多くの方から恨まれていらっしゃるので、これを被って下さい」
広げたそれをグランデが肩にかけてくれ、フードを被せてくれた。フードが大きめの様で、顔半分近くまで隠れてしまう。周りが見づらい。どうやら、これは外套の様だ。
「俺達がいるから、バレちまうんじゃないか?」
「いいえ。最近、レイル様は風邪を引いていました。どうやら、その噂が流れているようで、まさか祭りにいるとは思わないでしょう」
なるほど。
「そうか。それじゃ、行こうぜ!」
ライトの手が目の前に差し出された。その手をじっと見つめてから、ライトの顔を見る。
「迷子になったら困るだろ」
「迷子になんてならないって!」
「ダメだ。何もない時ですら、ここは人で凄いんだからな」
ライトの手が伸びてきて、俺の手を握ってきた。柔らかく握られた手はとても温かくて心がほかほかした。
30
あなたにおすすめの小説
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
悪役令息に転生したらしいけど、何の悪役令息かわからないから好きにヤリチン生活ガンガンしよう!
ミクリ21 (新)
BL
ヤリチンの江住黒江は刺されて死んで、神を怒らせて悪役令息のクロエ・ユリアスに転生されてしまった………らしい。
らしいというのは、何の悪役令息かわからないからだ。
なので、クロエはヤリチン生活をガンガンいこうと決めたのだった。
ユキ・シオン
那月
BL
人間の姿をした、人間ではないもの。
成長過程で動物から人間に変わってしまう”擬人化種”の白猫青年と、16歳年上のオッサンとのお話。
出会ったのは猫カフェ。白猫従業員としての青年と客としてやってきたオッサン。
次に再会したのは青年が人間として通う大学。オッサンは保健室の先生だった。
青年が金のためにヤバいことをしていて、あるトラブルが起こる。
そこへ見計らったかのようにオッサンが飛び込んで救出したのをきっかけに2人の距離は縮まり……
※表紙絵は自作。本編は進むにつれてどんどん動物園と化します(笑)
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。
中年冒険者、年下美青年騎士に番認定されたことで全てを告白するはめになったこと
mayo
BL
王宮騎士(24)×Cランク冒険者(36)
低ランク冒険者であるカイは18年前この世界にやって来た異邦人だ。
諸々あって、現在は雑用専門冒険者として貧乏ながら穏やかな生活を送っている。
冒険者ランクがDからCにあがり、隣国の公女様が街にやってきた日、突然現れた美青年騎士に声をかけられて、攫われた。
その後、カイを〝番〟だと主張する美青年騎士のせいで今まで何をしていたのかを文官の前で語ることを強要される。
語らなければ罪に問われると言われ、カイは渋々語ることにしたのだった、生まれてから36年間の出来事を。
親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる