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逢瀬と花
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グランデに手を引かれながら、屋敷を出て、林の中をゆっくりと歩いていく。林といっても、道は綺麗に整えられているし、所々に街灯が立っている為、少し明るい。
久しぶりに履いた草履は少し痛い。それをわかってくれているのかグランデは、俺の歩調に合わせて歩いてくれている。
「グランデがしたかった事って、着物を着て散歩がしたかったって事か?」
「違いますよ。もう少し行った先に、小さな村があります。そこに用事があるんです」
「こんな暗くなってからじゃなくて、明日に行けば良かったんじゃ」
「いえ、邪魔が入らない夜がいいんです。それとも、私との逢瀬はお嫌ですか」
「え……」
逢瀬って、デートってこと!? グランデは、レイルとデートしたかったってこと!? いつ、好感度が上がったんだ。それも、爆上がりしたって事だよな。
「さぁ、もうすぐ着きますよ」
「あ、あえ、ええ!?」
今日は、驚いてばかりだ。小さな村の中に、露店や屋台がそこらかしこに並んでいる。以前に、連れて行って貰った街の祭りと違い規模は小さいが立派なお祭りだ。
「今日は、夏の初頭に開かれる夏美祭です」
「なつびさい?」
「そうです。夏の始まりを花で美しく飾り祝おうとして始まった祭りです」
グランデの言うとおりに、村の所々に花で作られた飾りや絵がある。赤や黄色、ピンクに紫、青など色とりどりの花がとても綺麗だ。
「そうか」
「さぁ、早くしないと、始まりますよ」
「何が始まるんだ」
グランデの後を追いかけるように歩く。人混みの中を、グランデは俺が歩けるように道を開いてくれている。こんな時でも、手を離さないでいてくれるグランデの優しさに胸がドキドキする。
少し人ごみを抜けた先の河原にきた。ここで何が始まるというのだろう。
「ここならゆっくりと、見れそうですね」
「グランデ。ここで何が見られるっていうんだ」
「もうすぐ、見られますよ」
分からない。グランデが俺に……レイルに見せたいものってなんだろう。
そういえば、大分前に考えていた事。グランデに、レイルじゃないと言ったら、どうなるのだろうか。グランデは、受け入れてくれるだろうか。それとも、絶望するだろうか。俺じゃなくて、レイルだったら……レイルは、この逢瀬を喜んだだろうか。
「顔を上げてください。私は貴方に感謝しているんです」
そう言われて、顔を上げた。グランデの表情はとても優しげに微笑んでいた。
「感謝?」
「そうです。だから、笑って下さい」
そうグランデが言った瞬間、ドンといった大きな音が辺りに響き渡った。何が起こった! また、暗殺かと疑ったが、俺は大きな勘違いをしていた様だった。ヒュゥゥウウウと空気の切り裂く音に続いて、咲くあたたかな橙の花。そして、腹に響くバンという衝撃音。
「は、花火……」
「はい」
次々に開く色とりどりの花。この世界にも、花火があったんだ。本当に、久しぶりの花火だった。子どもの頃に見たきりだ。大人になってからは、仕事詰だった。遊びに行く暇なんてなくて、時間があれば体を休める為に寝ていたから。綺麗だった。この為に、グランデは連れてきてくれたのか。とても……嬉しい。
「グランデ……」
「はい」
「連れてきてくれて、ありがとう」
そう言ってグランデを見て、驚いた。花火を見ていると思っていたのに、こっちを見てるなんて思ってもみなかった。微笑むグランデはとてもカッコよかった。花火に照らされ、着物をきたグランデにときめいてしまう。
「……喜んでくれて、嬉しいです」
「うん……」
恥ずかしくて、花火が輝く夜空を見上げる。くそ、なんでこんなにも、頬が熱いんだろ。レイルの恋心に、引きずられているだけだと思っていても、自分に向けられた好意にどうすればいいのか分からない。手をギュッと握られて、まだ握っているのを思い出した。意識が手の方に向いてしまい、花火に集中できない。
「貴方とこうしてゆっくりするのも、久しぶりですね。この後、露店巡りをしましょう。誰にも邪魔されずに」
グランデが言っている誰かという人物が頭に浮かんだ。多分、合っている筈だ。グランデの方を向き、答える。
「それって、ライトの事?」
俺の答えを聞いて、グランデが少し不機嫌そうに唇を尖らせてる。
「空気を読んで下さい。今、あの人の名前なんか聞きたくないです」
少し子供じみた言葉と態度に、少し可愛いと思った。グランデもこんな一面があるんだと初めて知った。
「グランデに噂されて、今頃、くしゃみしてるんじゃないか」
俺の言葉に、ムスッとしていたグランデがくすりと笑い。お互いにくすくすと笑い合った。
「今頃、爆睡してますよ。今日邪魔されないように、雑用をたんまりと押し付けましたから」
「グランデもそんな悪いことするんだ」
「えぇ、貴方と一緒に過ごせる夜を邪魔されたくないですから」
「グランデ」
「さぁ、花火を楽しみましょう。それから、たくさんの思い出を作りましょう」
「おう」
グランデの優しさに助けられてばかりだ。気恥ずかしい思いをしている俺が困らない様に、話題を誘導してくれているがわかる。グランデの良い所は、その場の雰囲気がわかる所だと思う。敵対さえしなければ、とても頼りになる人だ。
久しぶりに履いた草履は少し痛い。それをわかってくれているのかグランデは、俺の歩調に合わせて歩いてくれている。
「グランデがしたかった事って、着物を着て散歩がしたかったって事か?」
「違いますよ。もう少し行った先に、小さな村があります。そこに用事があるんです」
「こんな暗くなってからじゃなくて、明日に行けば良かったんじゃ」
「いえ、邪魔が入らない夜がいいんです。それとも、私との逢瀬はお嫌ですか」
「え……」
逢瀬って、デートってこと!? グランデは、レイルとデートしたかったってこと!? いつ、好感度が上がったんだ。それも、爆上がりしたって事だよな。
「さぁ、もうすぐ着きますよ」
「あ、あえ、ええ!?」
今日は、驚いてばかりだ。小さな村の中に、露店や屋台がそこらかしこに並んでいる。以前に、連れて行って貰った街の祭りと違い規模は小さいが立派なお祭りだ。
「今日は、夏の初頭に開かれる夏美祭です」
「なつびさい?」
「そうです。夏の始まりを花で美しく飾り祝おうとして始まった祭りです」
グランデの言うとおりに、村の所々に花で作られた飾りや絵がある。赤や黄色、ピンクに紫、青など色とりどりの花がとても綺麗だ。
「そうか」
「さぁ、早くしないと、始まりますよ」
「何が始まるんだ」
グランデの後を追いかけるように歩く。人混みの中を、グランデは俺が歩けるように道を開いてくれている。こんな時でも、手を離さないでいてくれるグランデの優しさに胸がドキドキする。
少し人ごみを抜けた先の河原にきた。ここで何が始まるというのだろう。
「ここならゆっくりと、見れそうですね」
「グランデ。ここで何が見られるっていうんだ」
「もうすぐ、見られますよ」
分からない。グランデが俺に……レイルに見せたいものってなんだろう。
そういえば、大分前に考えていた事。グランデに、レイルじゃないと言ったら、どうなるのだろうか。グランデは、受け入れてくれるだろうか。それとも、絶望するだろうか。俺じゃなくて、レイルだったら……レイルは、この逢瀬を喜んだだろうか。
「顔を上げてください。私は貴方に感謝しているんです」
そう言われて、顔を上げた。グランデの表情はとても優しげに微笑んでいた。
「感謝?」
「そうです。だから、笑って下さい」
そうグランデが言った瞬間、ドンといった大きな音が辺りに響き渡った。何が起こった! また、暗殺かと疑ったが、俺は大きな勘違いをしていた様だった。ヒュゥゥウウウと空気の切り裂く音に続いて、咲くあたたかな橙の花。そして、腹に響くバンという衝撃音。
「は、花火……」
「はい」
次々に開く色とりどりの花。この世界にも、花火があったんだ。本当に、久しぶりの花火だった。子どもの頃に見たきりだ。大人になってからは、仕事詰だった。遊びに行く暇なんてなくて、時間があれば体を休める為に寝ていたから。綺麗だった。この為に、グランデは連れてきてくれたのか。とても……嬉しい。
「グランデ……」
「はい」
「連れてきてくれて、ありがとう」
そう言ってグランデを見て、驚いた。花火を見ていると思っていたのに、こっちを見てるなんて思ってもみなかった。微笑むグランデはとてもカッコよかった。花火に照らされ、着物をきたグランデにときめいてしまう。
「……喜んでくれて、嬉しいです」
「うん……」
恥ずかしくて、花火が輝く夜空を見上げる。くそ、なんでこんなにも、頬が熱いんだろ。レイルの恋心に、引きずられているだけだと思っていても、自分に向けられた好意にどうすればいいのか分からない。手をギュッと握られて、まだ握っているのを思い出した。意識が手の方に向いてしまい、花火に集中できない。
「貴方とこうしてゆっくりするのも、久しぶりですね。この後、露店巡りをしましょう。誰にも邪魔されずに」
グランデが言っている誰かという人物が頭に浮かんだ。多分、合っている筈だ。グランデの方を向き、答える。
「それって、ライトの事?」
俺の答えを聞いて、グランデが少し不機嫌そうに唇を尖らせてる。
「空気を読んで下さい。今、あの人の名前なんか聞きたくないです」
少し子供じみた言葉と態度に、少し可愛いと思った。グランデもこんな一面があるんだと初めて知った。
「グランデに噂されて、今頃、くしゃみしてるんじゃないか」
俺の言葉に、ムスッとしていたグランデがくすりと笑い。お互いにくすくすと笑い合った。
「今頃、爆睡してますよ。今日邪魔されないように、雑用をたんまりと押し付けましたから」
「グランデもそんな悪いことするんだ」
「えぇ、貴方と一緒に過ごせる夜を邪魔されたくないですから」
「グランデ」
「さぁ、花火を楽しみましょう。それから、たくさんの思い出を作りましょう」
「おう」
グランデの優しさに助けられてばかりだ。気恥ずかしい思いをしている俺が困らない様に、話題を誘導してくれているがわかる。グランデの良い所は、その場の雰囲気がわかる所だと思う。敵対さえしなければ、とても頼りになる人だ。
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良かった〜。
安心しました。
更新楽しみにしてました。
これからも応援してます!
ご感想、ありがとうございます!
ゆっくりとですが、最後まで頑張りたいと思いますので、これからも応援して頂けると嬉しいです。
ありがとうございます✨
更新お疲れ様です。
続きも楽しみにしてます。
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