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再会
33 林 雅司
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雅司は仕事帰りに時間が取れると西山淳写真展に足を運んだ。そしてりょういちの写真を閉館時間まで見ている。ついに最終日であった。前向きのりょういちとはお別れだ。写真集は購入したので後ろ姿で満足しなければならない。
雅という、りょういちの子供と会って、オメガ女性と結婚していることを知った。おそらく、雅と司はオメガ女性の子ではない。身請けされた人との子だろう。自分の子だと嬉しいが、あの6日間はヒートではなかった。身請けされた人とは番にならずに、何らかの理由でお別れしたのだろう。もしかしたら、高齢の人で死別したのかもしれない。そして、オメガ女性と結婚したのであれば、それはりょういちの意志でした結婚である。りょういちの本当に好きな人なんだろう。
以前、りょういちと見た『運命に逆らって』のアルファ男性のように、運命の番であるりょういちの本当の幸せを望んでいるので自分は身を引かなければならない。
立ち尽くす雅司に西山淳がまた声をかけた。
「何回も見に来ていただいてありがとうございます」
「今日でこの写真見れるのも最後だと思うと寂しいです」
最初は良一のストーカーかも、と用心していたが、良一の好きだった人と分かり、心配する必要はなくなった。自分の写真展に頻回に来てくれているのはシンプルに嬉しい。何回も見かけているうちに知り合いになった錯覚も覚えていた。今日が最終日ということもあり、少し雅司に踏み込みたくなった。淳はちらりと雅司の手元を見る。
「失礼ですが、林さんは結婚されてますか?」
急なプライベートな質問に少し動揺の色を見せたが、微笑んで指輪のはまってない手を見せる。
「離婚しました。バツイチですね」
「そうなんですか」と淳は小声で呟く。
家庭持ちなら終了しようと思っていたが、離婚しているのなら問題ない。
「良一さんに会いたいですか?」
淳がさらに問いかける。自分の写真展に足しげく通って良一の写真を眺めている雅司に同情し力になりたい気持ちも出てきた。
「会いたいです。会いたかったんですが、りょういちさん、結婚されてるそうですね。私が会うと迷惑かもしれません」
(由里のこと知ってるんだ)
淳は驚く。あの2人はビジネスパートナーだけど、それを言っていいのかどうかは良一に聞いてみないと分からない。
「迷惑、というと? ただのお知り合いではないんですか?」
「私はりょういちさんの事、好きだったんですが、振られてしまいました。あきらめて別の人と結婚したのですが上手くいきませんでした」
「そうでしたか」
淳は躊躇う。
(この2人、両想い? これ以上はお節介?)
「一応、名刺は良一さんに渡したのですが……」
「ありがとうございました。無理言ってすみませんでした。名刺を見て、りょういちさんの息子さんの雅君が会いに来てくれました。りょういちさんに似て綺麗なお子さんですね」
(雅君が動いたんだ)
2人はボタンを掛け違えているように思った。良一には写真のモデルをしてもらった恩もあるので、役に立ちたいが、何をどこまで説明していいのか淳には分からない。仕方なく挨拶して雅司の元を去った。
雅という、りょういちの子供と会って、オメガ女性と結婚していることを知った。おそらく、雅と司はオメガ女性の子ではない。身請けされた人との子だろう。自分の子だと嬉しいが、あの6日間はヒートではなかった。身請けされた人とは番にならずに、何らかの理由でお別れしたのだろう。もしかしたら、高齢の人で死別したのかもしれない。そして、オメガ女性と結婚したのであれば、それはりょういちの意志でした結婚である。りょういちの本当に好きな人なんだろう。
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立ち尽くす雅司に西山淳がまた声をかけた。
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「離婚しました。バツイチですね」
「そうなんですか」と淳は小声で呟く。
家庭持ちなら終了しようと思っていたが、離婚しているのなら問題ない。
「良一さんに会いたいですか?」
淳がさらに問いかける。自分の写真展に足しげく通って良一の写真を眺めている雅司に同情し力になりたい気持ちも出てきた。
「会いたいです。会いたかったんですが、りょういちさん、結婚されてるそうですね。私が会うと迷惑かもしれません」
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淳は驚く。あの2人はビジネスパートナーだけど、それを言っていいのかどうかは良一に聞いてみないと分からない。
「迷惑、というと? ただのお知り合いではないんですか?」
「私はりょういちさんの事、好きだったんですが、振られてしまいました。あきらめて別の人と結婚したのですが上手くいきませんでした」
「そうでしたか」
淳は躊躇う。
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「一応、名刺は良一さんに渡したのですが……」
「ありがとうございました。無理言ってすみませんでした。名刺を見て、りょういちさんの息子さんの雅君が会いに来てくれました。りょういちさんに似て綺麗なお子さんですね」
(雅君が動いたんだ)
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