【完結】恋愛経験ゼロ、モテ要素もないので恋愛はあきらめていたオメガ男性が運命の番に出会う話

十海 碧

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過去の話

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 静と柊里は硬直する。静はおろおろと「私のせいだわ」と言い、柊里が静を支えた。
「僕、美月さん、追いかけてくる」
 蓮は部屋を出た。外を出て見回すと、美月は数十メートル先をとぼとぼ歩いていた。蓮はそちらに走っていった。
「美月さん」
 美月は振り返る。
「ごめんね。僕みたいのお兄さんでショックだったよね」
 美月は首を振る。
「違うの。勘違いさせたらごめんなさい。桐生先生とあなたのことが嫌なんじゃないの。私、徹さんを父と思ってたから血の繋がりがないことが衝撃的で」
「そっか……。僕はいないと思ってたお母さんが静さんで、おまけに美月さんみたいなすごい妹がいるって分かって、すごく幸せな気持ちだけど、お父さんだと思ってた人が違うって分かったらびっくりするよね」
「私、徹さんにすごい甘えていたの。でも、父親なんだから、それ位してくれてもいいと傲慢に思ってたの」
 美月は蓮にフランスでリュカと番になり林家に養子にしてもらった話をした。
 蓮はにこにこして「僕、リュカ君に会いたいな」と笑った。
「美月さんは心配してるけど、徹さんは美月さんに頼られて嬉しかったと思うな。美月さんはしっかりしてるから人に頼らないから大変なことをしたと考えてると思うけど。僕なんて頼ってばかりで……あ、ダメなお兄ちゃんだね」
 蓮のお喋りを聞いていると、美月は暗い気分から少し立ち直った。
「徹さんに会おうよ。僕も付いていってあげるから。そして迷惑かけてごめんなさいしてありがとうって言お。僕、お兄ちゃんだから、一緒に怒られてあげる」
 蓮はにこにこして美月を見つめた。こういう所に優斗が魅かれたんだな、と美月もストンと理解した。
「じゃ、お兄ちゃん、お願いするよ」
 美月はにこっと笑った。美月の『お兄ちゃん』呼びは破壊力すさまじく蓮はドキドキした。とりあえず、静と柊里が心配しているので、もう一度家に戻った。
 蓮が事情を説明している最中、静と美月は無言で見つめ合った。この2人はお互いアルファ女性で常に片意地の張り合いをしていたのかもしれない。蓮という中和剤が入ると、穏やかな雰囲気になるのは不思議だった。
「リュカの件に関しては徹からも電話あったけど、美月が林一家と仲良くなれるきっかけにもなったし、嬉しかった様よ。怒ってるとは思わないけど、1度徹と話すのは必要ね」

 後日、徹の元に美月と蓮が訪れた。
 徹は温かい眼差しで、血の繋がりだけが親子じゃない、美月もリュカも大切な子供と思ってると話してくれた。静のことは今でも尊敬してるし素晴らしい女性と思っているが、運命の番である沙雪とその子ども3人を守らなければならず、静や美月に申し訳ないと謝った。

 静と徹は話合い離婚した。徹は沙雪と再婚して林徹になった。伊集社の副社長は続けるが、美月が大学を卒業したら美月に譲り退職する予定になった。

 柊里と静はお互いに家族のように大事な関係だが、恋愛感情はないので再婚はしなかった。

 美月は林リュカが16歳になる来年の4月に結婚予定である。リュカが伊集院リュカになる。美月は大学卒業後、伊集社就職し徹から仕事を引きつぎ副社長になる予定なので、在学中から徹の元で仕事を学び始めた。リュカはインターナショナルの高校を卒業後は、日本の調理専門学校に進学する予定なので日本語の勉強を頑張っている。

 蓮は来年の6月に結婚して沢渡蓮になる予定なので、桐生蓮のまま戸籍を動かさなかった。優斗にだけ、静が親で美月が双子の兄弟だと説明した。優斗は少し驚いたが、最初の出会いで美月に魅かれた理由が分かったと言った。
 優しい父だけではなく、素晴らしい母と妹がいる。漫画の仕事も順調で、信頼できる友人もいる。運命の番である優斗と結婚もできる。この幸せを大事にしてさらに幸せになるために頑張っていこうと蓮は心に誓った。

 おしまい
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