聖女も聖職者も神様の声が聞こえないって本当ですか?

ねここ

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ビスケットの町に到着

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「えっと、まずは光魔法のスキルが使えることはエタ―リアナ王国の教会にバレてしまっているので、光魔法だけ使えるということにはできないでしょうか。治癒魔法ではなく、明かりとしての光魔法だけが使えることに。」

「無理だな。」

バラスチアン帝国の国境検問所は、ジョルクおじさんの冒険者証ではない身分証明書によって、付き添いの私たちはスルーパスだった。
今は検問所から一番近い町、ビスケットという美味しそうな名前の町の宿にいる。



エタ―リアナ王国を出国してから、体力のない私を片腕で抱っこしたまま、ジョルクおじさんが国境を走り抜けた。
馬車で3日かかる行程が、その日の夕方にはバラスチアン帝国の国境検問所に着いた。
朝遅めに教会に行き、昼前にエタ―リアナ王国を出国したので、驚きの速さだ。
それでも私に負荷がかからないように、風魔法で私を包みながらゆっくりめに走ったそうだ。
ジョルクおじさん凄い。
さすがSランク冒険者の王弟殿下。

国境検問所が見えてきたところで、お母さんにディメンションホームから出てきてもらった。
なんと、ディメンションホームの中で、持ってきた薬草や花の植え替えをしていたそうな。
そしていつもやっていることを繰り返しているうちに、少し落ち着いてきたようだ。

「ちゃんとした食事は町に着くまで取れそうにない。何か食べたかったら、すぐ森で調達してくるが。」

マジックバックに手を突っ込みながら、ジョルクおじさんが聞いてくる。
ジョルクおじさんのことだ。
家に来るだけだったから、携帯食も持っていないんじゃないだろうか。
Sランクだからなのか、Sランクなのになのか。
私は後者に1票だ。

私はとことこ道の横に歩いて行き、敷物を敷く。
食べ物がなくて、申し訳なさそうに言葉を選んで気を使ってくれるジョルクおじさんとお母さんに、創造魔法で創造したハンバーガーとフレンチフライズとリンゴジュースを小さなお盆に乗せて渡す。

「マジでとんでも3歳児…‥この見慣れないモンはどっから出してきた。」

ジト目で見つめられる。
大丈夫だよ。ジョルクおじさんはいい男だよ。
あの台詞を飲み込んだジョルクおじさんに、心の中で拍手を送る。

「創造魔法で作ってみた。美味しいといいな。食べてみて。」

私はまだ3歳なので小さなハンバーガーとリンゴジュースだけだ。
恐る恐る口を付けた2人だが、ジョルクおじさんは旨い旨いと大喜びし、お母さんは一口食べるごとに、目に力強さが戻ってきているように感じた。

3人並んで国境検問所まで歩く。
大勢の人が並んでいたけれど、ジョルクおじさんは列の横の別の扉に向かった。
軽く挨拶して、サラッと身分証を見せただけで、私たち母子は何の検問も、質問すら受けずに入国できた。

「最近よく通っていたからな。顔パス、は流石にな。一応身分証は見せたから問題ない…はず。」

ヘタレめ。
そこは「問題ないよ」と言い切ってよ。
そんなんだからお父さんがお母さんを先に射止めちゃったんじゃないの?と思わなくもない。
だって、肩書と実力はジョルクおじさんの方がお父さんよりはるかに上じゃないの?
顔は…お父さんの方が好みだけどね!

入国後、もう一度お母さんにはディメンションホームに入ってもらい、ジョルクおじさんが私を抱えて走った。
数十分でビスケットの町に到着した。
ここでもジョルクおじさんのサラッと身分証明書提示のスルーパスだった。

宿を取り(結構高級なところ)、夕食前にさっきの提案をしてみた。
部屋は追手が来るかもしれないため、3人一緒だ。
一緒と言っても、前世で言うところのスイートルーム的な?部屋の中には複数の部屋があり、やたらと豪華だった。
王族であることを抜きにしても、Sランク冒険者は高所得者だからね。
ジョルクおじさん、本当に頼りになります。
頼りにしてるのにぃ~!

「えっと、まずは光魔法のスキルが使えることはエタ―リアナ王国の教会にバレてしまっているので、光魔法だけ使えるということにはできないでしょうか。治癒魔法ではなく、明かりとしての光魔法だけが使えることに。」

「無理だな。」

「平穏な生活を送りたいんです。」

「無理だな。」

「そこをなんとか。」

「無理だな。」

お前は壊れたレコードか!!
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