僕だけレベル1~レベルが上がらず無能扱いされた僕はパーティーを追放された。実は神様の不手際だったらしく、お詫びに最強スキルをもらいました~

いとうヒンジ

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初めての仲間 001

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 無事にスライム討伐の依頼を終えた僕だが、その足取りは軽いものではなかった。
 そりゃ、自分一人で魔物を倒せたのは喜ばしいことではある。

 けれど、今回はたまたま運と相手が良かっただけだ。

 例えば、討伐対象が防御力の高い魔物だった場合――レベル1の僕では、ダメージを与えることができない。
 スキルで相手の生命力を1にできたとしても、最後の最後で倒しきれないという事態が発生してしまうのだ。

 それに、防御方面のステータスもスカスカな僕にとって、魔物との戦闘は常に命懸けである。
 スライムから不意打ちでも食らってしまえば、一発で気絶してしまうくらいには貧弱だ。
 最強のスキルを手に入れたからと言って、慢心はできない。

 故に、今の僕に一番必要なのは仲間なのである。

 互いに守り合う……とまで言ってしまうと、些か自意識過剰が過ぎるだろうか。
 ただ少なくとも、背中くらいは預け合えるような、そんな仲間。

 ……果たしてレベル1の僕とパーティーを組んでくれる人物はいるのか、心配は尽きないが。
 いやマジで、そんな人がいたとしたら、割と変人じゃないか?
 それか、目も潰れてしまう程の聖人か。
 どちらにしろ、容易に出会うことができないのは想像に難くなかった。

「……」

 僕はアルカの街中をフラフラと観光しながら、ゆっくり時間を掛けてギルドへ向かう。
 募集に気づく人が増えればいいなという、せめてもの抵抗である。
 陽は傾き、街は夕焼けに染まっていた。
 ……まあ、今日や明日で結果が出るとは思っていないし、気楽に構えることにしよう。
 ギルドの冒険者になった今、支部がある都市ならどこでもパーティーメンバーの募集はできるので、焦ることもない。
 僕の旅は、また始まったばかりなのだし。

「……」

 と、内心落ち着こうと思ってはいても、しかし気になってしまうのが人間の性である。
 僕はギルドへ戻り、昼間よりも一層盛り上がりを見せる酒場を抜け、早足で受付カウンターを目指した。

「あのー、すみません。パーティーメンバーの募集に応募があったか確認したいんですけれど」
「はい。冒険証はお持ちですか?」
「あ、まだ頂いていなくて……名前はイチカ・シリルです」
「かしこまりました。少々お待ちください」

 昼に話した受付のお姉さんとは別の女性に応対してもらいながら、僕はできるだけ平静を保つよう心掛ける。
 どれだけ心配をしていても、どこか期待してしまうものなのだ、正直。
 低レベルな冒険者に対して優しい誰かが、僕の募集に気づいてくれたんじゃないかとか……ちょっとくらいは考えてしまう。

「お待たせしました、シリル様」

 カウンターの奥から戻ってきたお姉さんは、例に漏れずニコニコな営業スマイルを浮かべていた。
 その表情だけを見ると応募はあったように見えるが、それは物事を楽観的に捉え過ぎだろう。
 高野一夏が生きていた世界では、ファストフード店の店員が無償のスマイルを提供してくれたものだし。
 彼女の笑顔に特別な意味を見出すのは、都合が良すぎである。

「パーティーメンバーの募集に関してですが、一件の応募がありますね」
「……マジですか?」

 当たり前のように言われたので聞き逃しかけたが、今確かに、応募が一件あったと言っていた。
 お姉さんは微笑みながら、一枚の紙を手渡してくる。

「こちらが、応募者の冒険証の写しになります……つい数分前に受理されたようなので、まだギルド内にいらっしゃるかもしれません。もしパーティーを組むことになったら、また受付までお越しくださいね。では、よい冒険者ライフを」
「はあ……」

 お決まりの文句を右から左に聞き流してしまい申し訳ないが、僕は受け取った紙をじっと見つめる。
 そこには、冒険者の氏名と現在のレベル・ランク、それから顔写真が写されていた。

「ミア・アインズベル……」

 それが、レベル1の僕を見つけてくれた、女の子の名前だった。


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