僕だけレベル1~レベルが上がらず無能扱いされた僕はパーティーを追放された。実は神様の不手際だったらしく、お詫びに最強スキルをもらいました~

いとうヒンジ

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初仕事

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「……こんなもんかな」

 ギルドでの目的……レベル1の僕と仲間になってくれる人を探すために、僕はパーティー募集用紙に条件を記入した。
 レベルの最低値や求めている役職などをかなり細かく設定できるようだが、僕には関係ない項目である。

 条件は一つ。
 パーティーの募集主がレベル1でも構わないこと、これに尽きる。

 それさえ飲んでくれれば、後は野となれ山となれだ。
 こちとら、長年付き合いのあった幼馴染三人と縁を切ったばかりである。
 どんな相手がこようとも、広い心で受け入れよう。
 ……受け入れてもらうのは僕の方なのだが、それは置いておいて。

 僕はパーティーボードの隅っこに用紙を貼り、パンッと柏手を打ってゲンを担ぐ。
 ちなみに、念のため他人の募集要項を見てみたが、案の定レベル1が条件に含まれているものはなかった。

 ある程度予想はしていたけれど、中々ショックである。
 この世界に僕の居場所はないような絶望……までは感じないけれど、普通に悲しかった。
 ので、気分転換に依頼を請けてみることにする。

「……」

 酒場の喧騒を背に受けながら、僕はクエストボードを眺めた。
 依頼には目安となる難易度が設定されており、各々が自身のランクと照らし合わせて好きなクエストを選ぶ仕組みらしい。
 冒険者ランクはレベルによって区切られており、例えばレベル11~20はFランク、21~30はEランクといった具合である。
 ではイチカ・シリルのランクはと言えば……ランクなしだ。
 レベル10以下の冒険者には、ランクが割り振られていないのである。
 従って、僕には目安となる難易度も存在しないことになるのだが……まあ、ここは無難に最低ランクのクエストを受注することにしよう。

「……これかな」

 僕は手頃そうな依頼――アルカ郊外でのスライムの群れ退治を選び、ギルドを後にする。
 ギルドに所属して、初めてのクエスト。
 精々嫌な思い出にならないよう、気張っていこうと思う。





 ギルドを出て一時間弱。
 僕は目的の場所、スライムの群れが出没している森まで辿り着いた。
 魔物の姿はまだ目視できていないが、僕の身体は緊張でガチガチである。

「……ふう」

 力を抜くため、わざと大きめなため息をついてみる。
 一応、僕が緊張している理由を説明しておこう。
 実は、ルッソ村を出てからアルカの街に到着するまでの三日間、一度も魔物と戦うことがなかったのだ。
 一人での戦闘は今回が初めてということになる。
 いくらカミサマから最強のスキルをもらったとは言え、不安は拭えない。
 僕のレベルは変わらず1で、ステータスは最弱のままなのだから。

「……」

 と、慎重に慎重を重ねて身を屈めていた僕の近くで、何かの気配がする。
 目を凝らしてみると、そこには五体のスライム。
 直径一メートル程の球形をした、緑色のゼリーみたいな身体。
 村にいた時は何度も倒したことがある、低級の魔物だ。
 落ち着いて対処さえすれば、僕一人でも何とかなる相手なのは間違いない。

「……落ち着け、イチカ・シリル」

 声に出して自分に言い聞かせ、僕は右手を構える。
 スキルの発動には体内のマナを消費するのだが、【神様のサイコロトリックオアトリート】はほとんどマナを使わないらしく、気兼ねなく連発できる仕様だ。
 マナ力の低い僕のことをカミサマが気遣ってくれたのかもしれない……いや、あの人に限ってそれはないか。
 とにかく、スキルを外す心配をしなくていいのはありがたい。
 僕は緊張で震える手をスライムに向ける。

「【神様のサイコロ】!」

 黄金の光が弾け、スライムたちを包み込んだ。
 上手くいった……のか?
 もしそうなら、あいつらの生命力は1になっている……はず。
 こちらから確認する術は一つ、攻撃を仕掛ければいい。

「……」

 僕は腰から引き抜いたナイフを構え、ひっそりとスライムの一体に近づき――一突き。
 本来なら、僕如きの攻撃力で魔物を絶命させられるわけもない。
 だが、ナイフは敵の柔らかな身体に深く突き刺さり。
 直後――スライムが爆散した。

「……っ」

 間違いない。
 カミサマ特製のスキルは、しっかりと魔物相手にも効果を発揮している。
 これなら。
 これなら、レベル1の僕でも、この世界で生きていけるんじゃないか?

「……」

 僕は残った四体のスライムも倒しきり、依頼達成に必要な素材とコアを回収する。
 こうして、ギルドに所属して初めての仕事を、僕は見事にやり遂げたのだった。
 他の人に比べれば小さ過ぎる一歩だけれど。
 僕はやっと、この世界で生き始めることができたのかもしれない。

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