僕だけレベル1~レベルが上がらず無能扱いされた僕はパーティーを追放された。実は神様の不手際だったらしく、お詫びに最強スキルをもらいました~

いとうヒンジ

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これからとそれから 003

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 部屋の主である僕よりも堂々とした態度で椅子にふんぞり返るカミサマが、嬉しそうに口を開く。

「ここから西へ行ったところに、サリバという街がある。そこには地域一帯を担う墓所があるんだが、少し問題があってね」
「問題……?」
「ああ。場所が場所だけに、と言ったら失礼かもしれないが、アンデッド系の魔物が住み着いてしまったらしくてね。そいつがかなりの曲者で、近隣のギルドじゃ太刀打ちできない強さをしているそうなんだ。幸い、墓所から外に出ることはないから実害はそこまでじゃあないが、サリバの人たちは先祖の墓へお参りに行けなくなってしまった……困ったものだね」
「……そのアンデッドを、僕に何とかしろと?」
「そうは言ってないよ。これは命令でもお願いでもない、ただのお節介……仲間を得た君が次に何をするのか迷っているようだったから、こういう話もあると聞かせてみただけさ」

 お願いでも命令でもないと言われても、面と向かって言われちゃ強制と変わらない気もするが。
 そんなこちらからの視線を感じたのか、カミサマは笑顔を強める。

「別に、嫌なら行かなければいい。繰り返すが、これはお願いじゃあないからね」
「そこまで言うなら、逆にお願いとして頼んでくれた方が気は楽なんですけど」
「おいおい、そんなことできるわけないだろ? カミサマが人間に願い事をするなんて、本末転倒どころの騒ぎじゃないさ」

 言われてみればそれもそうか……そういう設定を守るために、あくまでお節介というスタンスを崩さないのだろう。

「他にやりたいことがあるなら、もちろんそっちを優先してくれたまえ。アンデッドなんかに関わりたくないというのなら、スルーしてくれて構わない。私がわざわざ会いにきたからといって、そこに負い目を感じる必要もないよ」
「……そうは言いますけれど、負い目は感じますよ。わざわざ僕を訪ねてくるなんて、何か裏があるのかと勘繰ってしまいますし」
「はっはー、相変わらずいろいろ考える子だね、イチカくんは。だけど、その思考は徒労であると断言する。今君が考えるべきなのは、もっと別のことさ」

 カミサマは笑う。

「大事なのはイチカくんが何をしたいか、それだけが肝心でそれだけが肝要だ。今回はアフターフォローのお節介で雑談をしにきたけど、当然無視したっていいんだよ。カミサマは無視されるのも仕事のうちだからね。今自分が何をしたいのか、その気持ちに正直に生きてくれればいいんだ」
「……」

 自分の気持ちに正直なった経験が少ない僕にとって、それは中々難しい注文である。
 上手く生きられていないと評された原因は、恐らくその辺りなのだろう。

「……わかりましたよ、わかりました。僕は僕なりに、これからも好きに行動させてもらいます。サリバって街に行くも行かないも、気分次第……それで問題ないってことですよね?」
「その通りさ。ようやくわかってきたじゃないか、私は嬉しいよ」

 わざとらしく涙ぐむ演技をして、カミサマは椅子から立ち上がった。

「さてと……それじゃあ私は行くとしよう。雑談と言うには短く、戯言と言うには長すぎた話だったね。もう一度念を押しておくけれど、さっきの話はお願いじゃない。イチカくんの好きなように、勝手に我儘に動いてくれたまえ」
「委細承知です……ああそれと、もしまたこうやって雑談をしに来る時があったら事前に教えてくださいね。身構えちゃうんで」
「ははっ、その点に関しては私のミスだったかな。君の肝っ玉の小ささを勘案していなかったよ。ごめんごめん」

 失礼に謝るという器用なことをしながら、カミサマは扉の前に立つ。
 長いようで短い数分の会話だったが、これでやっと肩の荷が下りるというものだ。
 マジで急に訪ねてこないでほしい。
 心臓に悪過ぎる。

「あ、そうそう、またこうして訪ねることもあると思うけれど、その時は甘味を用意してくれると助かるな。私は無類の甘党でね。甘ければ甘い程いい」

 最後に厚かましいところを見せつけてきやがった。
 まあ、そのくらいの注文だったらいいか……甘きゃ何でもいいなら、最悪砂糖でも舐めてもらおう。
 カブトムシよろしく、砂糖水を吸ってもらうのもいいかもしれない。
 そんな風に内心失礼なことを考えていると、

「あー、それから」

 カミサマが、思い出したように言葉を続けた。

「君の仲間になったミア・アインズベルくんだけどね……彼女のことは、是非気に掛けてあげてくれたまえ。まあこれも、ただの雑談なんだけどさ」





 カミサマとのくだらない雑談を終えた僕は、荷物を持って宿を出る。
 待ち合わせ場所に指定された噴水広場を目指してトボトボ歩いていると、

「あ、イチカ~。こっちこっち~」

 先に僕を見つけたミアが、元気に手を振っていた。

「……」
「どうして白けた顔してるのよ。超絶美少女の私が可愛らしく手を振ってるんだから、飼い犬よろしく尻尾を振り乱して走ってきなさいよね」
「……ワンワン」

 僕はにやけそうな口元を押さえながら小走りする。
 ミアのことを友人と呼んだら、彼女は怒るだろうか。
 ……いや、きっと今みたいに、快活に笑ってくれるはずだ。
 相手の生命力を1にできる僕と。
 どんな敵にも必ず1のダメージを与えられるミア。
 僕らは、出会うべくして出会ったのかもしれない。
 それを運命と呼んだら、あの性悪なカミサマは意地悪く笑うのだろうけれど。
 あの人が別れ際に告げた、意味深な言葉はとりあえず考えないことにして。
 僕は、走る。
 友達の元へ。

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