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クイーンズ 002
しおりを挟む当然と言えば当然だが、生きるのにはお金がいる。
完全に文明から隔絶された状態で過ごしていたとしても、多少の金銭は必要になるものだ……それが人間の業と言えば、それまでかもしれないけれど。
「ここ一カ月の路銀で、自由に動かせるお金は最低限しか残ってないの。宿を取ったら、それですっからかんね」
クイーンズを目指すにあたって、僕らは財布を一つにまとめることにした。
とは言っても、三百年ぶりに人間に戻ったレヴィが現金を持っているはずもないので、僕とミアの所持金を合わせた形である。
その金が、どうやら底をついてしまうらしい。
「ブラックマーケットで売買されてる品は、どれもそれなりの金額がするものばかりよ。違法ギリギリな物品なら、尚更値が張るわ」
「僕たちの探しているものが違法かはわからないけど、余裕があるに越したことはないってことか」
「そういうこと。それに、普通にこの街の観光も楽しみたいしね」
もっともな意見である。
僕たちは自由に、そして好きに人生を謳歌したいのだ。
時には遊ぶことも必要だろう。
「ちなみに、クイーンズには高級なレストランがいくつもあるらしいわ。酒と食、この二点に関して妥協は許されない……故に、余裕を持ってお金を稼ぐ必要がある」
「そんな神妙な面持ちで言われても挨拶に困るな」
「この街に滞在している間に有名店の料理は全制覇するわよ。高いお酒もジャンジャン開けて、酒池肉林の限りを尽くすわ!」
「お前、そんな成金キャラだっけ……」
一カ月に及ぶ長丁場の旅が、ミアの心に眠る成金魂を呼び起こしたらしい。
僕は庶民肌を地で行くタイプなので、豪奢な遊び方には抵抗がある。
「……あれ? そう言えば、ミアは何が何でも金持ちになりたくてギルドに入ったんだよな? なのに、持ち金が全部なくなっちゃったってことか?」
「もちろん貯金は別で確保しているけど、ここで使うわけにはいかないわね。遊ぶお金と必要経費はその都度稼ぐ。これが貯金の鉄則よ」
鉄則かは知らないが、その流儀に楯突くわけにもいくまい。
恐らく、ミアのポケットマネーを使えばブラックマーケット分の資金は賄えるのだろうが、ここで金を無心するのはダサ過ぎる。
そもそも、仲間の貯金を当てにして旅をしているようじゃあ、男が廃るってものだ。
僕もそろそろ一肌脱ぐ時が来たようだな。
「よし、とにかく行動あるのみだ……とりあえず、レヴィのスキルを封じるアイテムのために五0万E、観光資金のために三0万Eくらいあれば足りるかな?」
「どうかしら……後者は足りなくてもなんとかなるとしても、前者は未知数だしね。下手したら、百万を超えてくるかもしれないし」
ミアの懸念は正しい。
やはり、ブラックマーケットが始まるまでに稼げるだけ稼ぐしかないか。
「あ、あの……」
ふと、レヴィが小さく声を上げる。
「私のために必要な分は、私が一人で稼ぎますから……お二人に迷惑は掛けられません」
レヴィの気持ちもわからないでもないが、しかし僕らはもう仲間なのである。
互いに足りないところを補い合い、助け合っていくものじゃないかな。
なんて、格好良く見栄を切ろうとしたら、
「何言ってんの。私たちはもう仲間なんだから、互いに助け合っていくものでしょ? 三人で頑張りましょ!」
ミアさんに良いところを持っていかれてしまった。
ぐう、悔しい。
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