34 / 60
クイーンズ 001
しおりを挟むエール王国は五つの地方に分かれ、その地方がさらに数百の地域に分かれている。
五つの地方を治めるのは、「五王」と呼ばれる王族たち。
地域を治めるのは、いわゆる「領主」である。
例えば、僕らがいるフェスタ地方のトップに君臨しているのは王族のオルドア・エーラ、カザス地域の領主はクライリー家、といった感じだ。
もっとも、実際に各地の行政を担っているのは市長などの役人なので、僕ら下々の民が五王や領主と関わる機会は早々ないのだが……。
そんなこんなで。
僕とミアとレヴィの三人は、一カ月の旅を終えて目的地――クイーンズへと辿り着いたのだった。
「はー、ここがクイーンズですか。サリバよりも大きいですねぇ」
開口一番、レヴィがそんな感想を漏らす。
見た目はアルカやサリバのような煉瓦造りの街並みだが、一つ一つの建物や道幅がやたらとでかい……さすがは領主様の住まう街、といったところだろうか。
「それで、ブラックマーケットの開催日には間に合ってるんだよな?」
「もちのろん……って言うか、そんなことよりまずは宿を取りましょ。一にお風呂二にお風呂三にお風呂よ!」
約一カ月に及ぶ野宿旅を終えたことで、ミアは勝利のガッツポーズをする。
道中、宿場町に寄ることはあれど、決して清潔で素晴らしい宿とは言えなかったので、クイーンズでの滞在に胸が膨らんでいるのだろう。
「サリバで得た情報が正しければ、開催は三日後ね。ブラックマーケット自体は二週間執り行われるから、そのうちいずれかの日に潜り込めればモーマンタイよ」
「二週間か……そんなに長いこと同じ街で行われてて、軍にバレないもんなのかね」
「まあ、ほとんど黙認されてるようなもんだし。例えバレたとしても、あそこはやり方がやり方だから」
「ふうん?」
何か知っている口振りのミアだったが、詳しいことはまだ教えてくれないみたいだ。
まあ、直前になれば説明してくれるだろう。
「じゃ、とりあえず宿を取って身体を休めようか。レヴィも初めての旅で疲れただろうしな」
「いえいえ、私はまだまだ元気ですよ。それを言うなら、イチカさんも初めての長旅で疲れたのではないですか?」
「情けないけど、ぶっちゃけそうかな。大分疲労は溜まってるよ」
旅のノウハウがあるミアのお陰で、特にトラブルこそなかったものの……やはり慣れないことをすれば疲れるものだ。
今はとにかく、ふかふかのベッドが恋しい。
「私やミアさんのような魅力的な女性に囲まれながら理性を保つのは、さぞお辛かったと思います。心中お察ししますよ」
「一丁前に察するな。ちんちくりんが」
そりゃあ僕も男の子だし、溜まるモノは溜まるけれど。
仲間に欲情する程、落ちぶれてはいないのだ。
「ですが、あなたは童貞だとミアさんから伺いました。童貞の方は女体に飢えていると相場は決まっていますよ」
「随分赤裸々な女子トークをしてくれてるな、おい」
「私とミアさんが二人でいる時の話題は、基本的にイチカさんの悪口か性事情についてですから」
「性格悪過ぎるだろ。ほんとに仲間か、お前ら」
「常にイチカさんのことを考えていると言い換えれば可愛く聞こえるでしょう?」
「その言い換えには些かどころじゃない無理があるけどな」
というか、童貞とか普通に知ってるのね。
十歳か……子どものように見えて、案外大人と変わらない部分も多いのかもしれない。
「クイーンズでは存分に夜をお楽しみください。これだけ大きな街ですから、娼婦を見つけるのには困らないでしょうし。きっと童貞にも優しい方がいるはずです」
「頼むからもっと子どもらしい話をしてくれ……」
性にたくまし過ぎる。
将来が心配だ、切実に。
「ゆっくり休むのも大切だけど、重要なことが一つあるわ」
僕とレヴィの馬鹿話に、ミアが割って入ってきた。
その目は真剣そのものといった面持ちだ。
重要なこと……一体何だろう、見当もつかない。
旅の疲れを癒す以外に、今の僕たちがすべきことなんてないはずだが……。
「お金が全然ないの。みんな、仕事をしましょ」
46
あなたにおすすめの小説
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?
スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。
女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!?
ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか!
これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる