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第一部
未踏ダンジョン
ダンジョンの入り口は大体こんな感じの洞穴になっており、奥へ進むと魔法陣が設置してある。設置……とは言うものの、これは誰かが意図的に作ったものではない。
強いて言うなら、ダンジョンコア。
あの謎の魔力物体が、ダンジョンにまつわる全ての事象を生成している。
「えっと、一階層目は森林、と」
入り口の魔法陣を発動した僕は、無事に一階層目へと移動した。
ここもその他多くのダンジョンと同様に、エリア内は木々で覆われた森のようである。
一階層目から火山口や氷河なんていう過酷な地形の可能性もあったので、一応幸先いいスタートだ。
「……」
僕はいつでも腰の剣を引き抜けるように気を張りながら、森の中を進む。
地形的な難易度は低いが……問題は出現するモンスターの等級だ。
それこそ、未だ発見されていない未評価モンスターが生成されている可能性もある……そんな万が一を考えなければならないくらいには、今の僕は緊張していた。
なにせ、一人でダンジョン内を移動するなんて初めての経験だ。
冒険者は通常五人パーティーで行動する。難易度が低い場合や、既に攻略済みの場所に潜る場合はその限りではないが、それでも最低一人は仲間を連れていくものだ。
こうして単独行動すること自体、異常なのである。
「……」
周囲を警戒しながら、次の階層へ続く魔法陣を探す。
これも通常、探知系の魔法を使える後衛職がやることなのだが、今の僕は自分でやるしかない。
「……」
無理だ。
そもそも、僕は攻略済みのダンジョンで資源を回収するのが専門だったんだ……シリーと冒険するようになって、ようやく普通のダンジョンを攻略するようになったのである。
ノウハウも何もあったもんじゃない。
だから愚直に、自分の目と耳を信じるしかない。
「……――っ」
無理だ無理だと思っていた矢先、茂みの奥が揺れ動くのに気づいた。
それが何なのか特定する前に――何かが飛び出してくる。
「くっ!」
僕は剣を引き抜き、向かってきた物体を切りつけた……直後、緑色の液体が四方に飛散する。
……グリーンスライム!
飛び散った液体はうねうねと弾力を生み、ずるずると地面を張って一つに纏まった。
「……」
僕は剣を構え直し、グリーンスライムと一定の距離を取る。
大丈夫、こいつなら倒せる。
魔法以外の物理攻撃を受けると、その身を分裂させて再生する厄介なモンスターだが……ランクはC級だ。
僕の魔法でも、充分討伐できる……はず!
「【火炎斬り】!」
炎を纏った刀身が、スライムの柔らかい体を真っ二つに切り裂いた。
分裂は起きず、再生する気配はない。
数秒後、緑の液体が蒸発し――アイテムだけが残った。
「これは……『グリーンスライムの体液』か」
僕は腰に下げていた資源回収用の瓶で、その体液を掬う。
うん、我ながら上手くいった。
モンスターは討伐後、こうしてアイテムを残して消滅する……冒険者の仕事の一つは、その貴重な資源を回収することなのだ。
「報告用の分だけ拾って、後は放置するんだったよな……勿体ない」
探索係の任務は、あくまで未踏ダンジョンの難易度認定である。そこに資源の回収は含まれていない。
……少しだけちょろまかしたい衝動に駆られたが、カイさんの顔が浮かんできたのでやめておこう。
「さて、いきますか」
僕は再び森の中を歩き出す。
二階層目へ下りるための魔法陣を探して。
……それとまあ、心細いので誰でもいいから見つけたい。
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