39 / 108
第一部
急変
しおりを挟む闇ギルド。
国の管理下にある正規ギルドと違い、違法に組織されたギルド。その多くはただの犯罪集団で、徴税を逃れてダンジョン資源を売買したり、薬物の斡旋や誘拐をしたりなど、とにかく金のために動いているそうだ。
だが中には、国家転覆を謀る者たちや壮大な理念を掲げている者たちもいるらしい。
ニニの村を襲ったという男は――恐らく後者なのだろう。
「村を出た私は、男を追ってギルドからギルドへと渡り歩きました。田舎で得られる情報には、限りがありますから」
「……それで、今は『竜の闘魂』にいるってわけか」
「はい。ですが、この国で三本の指に入る巨大ギルドでさえ、闇ギルドについて詳しく把握していません……上層部になれば違うでしょうけれど、私に知ることはできませんでした」
「だから、国の持つ情報に目を付けたんだな」
特別公務メンバーになれば、場面によっては公務員と同等の扱いを受けることができる。その立場を利用し、国やソリアが持つ闇ギルドの情報にアクセスしようとしたのだろう。
「その通りです。ギルドの一員として自由に動きつつ、役人の権限も一部手に入れることができる……特別公務メンバーの募集は、私にとって渡りに船でした」
「……じゃあ、どうして今までは応募してなかったんだ?」
「それは単純に、存在を知らなかったからです。ベスさんやクロスさんの活躍のお陰で明るみに出ただけで、ギルドのみんなもそんな募集があることすら知りませんでしたよ」
「……」
仕事しろよ、広報係。
もしかして、ただの宣伝不足で人手が足りないんじゃないのか? ……でもまあ、カイさんはそういう小手先の宣伝は嫌いそうだし、仕方ないのかもしれない。
「若いのにいろいろと大変じゃのう……そうか、ミミの子孫の村がなくなってしまったのか」
ずっと黙っていたベスが、静かに呟いた。
昔の仲間が脈々と築いてきた歴史が途絶えたことに、何か思うところがあるのかもしれない。
「……ニニは、どうしてその話を僕たちにしてくれたんだ? 思い出すのだって、辛いだろうに」
「……確かに、話すだけでも辛いですね。現に、これまで他人に語ったことはありません。ですが、お二人には聞いてもらいたかったのです。私のご先祖と旅をしていたベスさんと、その仲間のクロスさん……そんな人たちに隠しておくことは、できません」
それにと、ニニは続ける。
「正直、自分一人で背負い続けるのに疲れていたんです。誰かに頼りたかったけど、信用できる相手はいない……でも、さっきの戦いで確信したんです。あの時、ご先祖から代々伝わる魔法を使えたのは、きっとクロスさんを守るという使命があるからだと。だから、私はお二人を信頼します……私を、助けてもらえないでしょうか」
彼女の言葉に身が引き締まる。
信頼には、応えなければならない。
「……僕も、できる限りの協力をするよ。闇ギルドについて、集められる情報を集めてみる」
「ありがとうございます……お二人には迷惑を掛けませんから」
「僕たちはもう仲間なんだから、お互いに迷惑をかけあってもいいんだ。だろ? ベス」
僕は後ろを振り返り、ベスを視界に捉える。
ふらっと。
彼女の小さな体が――前のめりに倒れた。
「っ! ベス!」
咄嗟に受け止め、倒れないように体重を支える。
ベスは呼びかけに応えることなく、目を閉じたままだった。
意識はなく、顔は苦悶の表情で歪んでいる。
「く、クロスさん! ベスさんが……」
「わかってる! ニニ、急いで街に戻るぞ!」
どうして突然? ……いや、予兆ならあったじゃないか。
ベスの身に何かあるとわかっていたのに……彼女が話すまで待とうと、気にしないようにしてしまった。
それは信頼じゃない――放置だ。
ベスのSOSサインを、見逃した。
僕は一体、何度間違えれば気が済むんだよ……!
「【レイズ】‼」
意識のないベスを背中に背負い、身体強化魔法をフルパワーで発動する。街に戻って医者に診せるのが最善だろうけど……しかし、エルフを扱ってくれるだろうか。
考えていてもしょうがない――今は走れ。
僕は、お前を失うわけにはいかないんだ。
0
あなたにおすすめの小説
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~
楠富 つかさ
ファンタジー
ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。
そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。
「やばい……これ、動けない……」
怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。
「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」
異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。
しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。
彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。
一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!
ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた
ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。
今の所、170話近くあります。
(修正していないものは1600です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる