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風の色
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亮の部屋のテラスに家中のクッションを集めて、二人は腰を下ろした。お昼を過ぎると外気も上がり、日向ぼっこをするにはもってこいの陽気だ。
亮は上着を脱いで、ブラウス一枚で喬一の傍らに寄り添った。痣が透けやしないかと気が気ではない。
喬一が亮の腰を抱き寄せ、白いうなじにキスを落とすと、亮は首を竦めて困った顔をした。もちろん喬一には強引に進めようなどという考えはなかった。傍に亮がいるということが嬉しくて、つい口づけてしまったのだ。亮の体調が悪いことを知っていて、それを強要するほど悪趣味ではないと思っている。
くすぐったいと言って亮が小さく笑った。喬一は唇をうなじにあてたまま、そういう言い方はなしだと拗ねた口調で言う。
「他人みたいだからそういう喋り方はやめろよ」
でもと言いかけて、亮は唇を塞がれた。啄ばむように喬一が何度も口づけてくる。吸っては離し、離れてはまた口づける。激しく舌を絡ませてくる恋人に、亮は積極的に応えた。いつもと違うその反応に喬一は驚きもしたが、それだけ彼の想いが深いのだと知らされているようで堪らなくなる。
そんな濃厚な口づけを交わしているのだから、欲望が高まらないはずがない。しかし、亮の身体を気遣う喬一は行為を途中でやめてしまう。これ以上は抑えられないと思ったからだ。
亮は途中で放り出される形になった。すでに亮の前はわかる程に張り詰めている。田畑との行為では一度も達していないし、勃起そのものをしないのだからこの反応は自然だった。
泣きそうな顔で同じく張り詰めている喬一の箇所を擦る。喬一はその手を握り締め首を振った。亮を傷つけてしまう行為には及べない。
頬を上気させ、亮はなりふり構わず喬一を求める。見られては困る痣がその身にあることも忘れていた。熱っぽい吐息を喬一の首筋に吐いた。
「喬一さん……。ぼくは平気だから抱いて欲しい」
そんな言葉を囁かれて、拒めるほど喬一は聖人君子などではない。もう一度キスをして、と囁いて亮は倒れ込み、喬一の唇を軽く食んだ。
喬一はズボンの後ろから手を滑り込ませて、下着の上からすぼみに触れた。軽くなぞっただけなのに、亮は大袈裟に声を上げて腰を跳ね上げさせた。
その顔は苦痛に歪んでいる。喬一は身体を起こし、亮のズボンを下着ごと下ろした後、双丘を広げさせた。興奮して上気した肌も露に僅かに震えながら、その痛みに耐えている少年がいる。
裂けて傷ついて、膨れあがったそれには見覚えがあった。加減がわからずに抱いていた初めの頃だ。それでも、ここまで酷い裂傷を負わせたことなどない。
ここ数日間の亮の極端な体調不良の理由がこれでわかった。それにしてもあの誓約書はどうしたんだと頭の中が混乱する。
喬一に向き直り、伸ばしてきた亮の手を掴んでぐいと引っ張る。膝元に倒れ込む亮のブラウスを肌蹴させると、剥き出しになった青白い肌には、乳首の辺りを中心にたくさんの内出血と痣、その上噛み傷までもがあった。
「なんだよ、これは!」
怒気のこもった声で叫ぶ。
「ごめんなさい。喬一さん、ごめんなさい」
少しも悪くないのに亮はひたすら謝った。
「あの……女将っ」
叫んで飛び出そうとする喬一の腰辺りに取り縋り、引き止める。
「雪也さんが誓約書を……反古にしてくれって持ってきたんです」
離せ離せとそれまで暴れていた青年の動きがぴたりと止まる。信じられないという表情で、喬一は縋る亮に目を向けた。そんなことをするはずがないと思いはしても、信じきる自信がない。今までの不可思議な兄の行動は、説明のつかないものばかりだったからだ。
確認してくると言って、部屋を飛び出した。
程なくして戻って来た彼は、酷いショックを受けていた。あるはずの誓約書がどこを探しても見当たらなかったからだ。
当たり前だ。それはすでに月季花の女将の元へと戻されているのだから。
亮の傍らに腰を下ろした喬一は、落ち着こうと何度か深呼吸をした。そうして落ち着きを取り戻すと、視線の端に映る濃い紫色をした痣に触れた。
「そのせいでこんな目に合っていたのか。立てないくらい酷い目に──?」
迷いながらも小さく頷いて答えた。
「ねえ、喬一さん。もう、ぼくを抱く気はしなくなった?」
「な……に言ってるんだ。そんな身体で」
「せっかく喬一さんといられるのに……。こんなのは嫌……。だって、ずっと我慢していたのに……喬一さんにぎゅってしてもらいたかったのに……」
喬一の顔にほろ苦そうな笑みが浮かぶ。瞼を固く瞑った亮の頬に優しく両手を宛がい、
「だって、そいつと同じことはしたくないからな。そんな身体のお前を抱いたら、きっと壊してしまうから」
頬にある喬一の手を握り締めて、それでもいいんだと少年は悲しげに笑う。
「今はぼくを見ていて欲しい。ぼくに酷いことをした人のことも、女将のことも、雪也さんのことも考えたら嫌だ。ぼくのことだけを考えて……」
それでも抱くことはしないと喬一は答えて抱き締めた。
恋人の腕の中で嗚咽を漏らす少年が、もっと強くと可愛い駄々を捏ねれば、喬一はそれに従うように腕に力を込めた。汗で張り付いた少年の髪の毛を形のいい耳に掛けてやり、
「自由になったら、好きなだけ抱いてやる」
愛しい想いが溢れる気持ちで、腕の中のか細い恋人に囁く。
「絶対……迎えに行くからな」
亮は大きく頷いて、繋いだ手をきゅうと強く握り返した。
亮は上着を脱いで、ブラウス一枚で喬一の傍らに寄り添った。痣が透けやしないかと気が気ではない。
喬一が亮の腰を抱き寄せ、白いうなじにキスを落とすと、亮は首を竦めて困った顔をした。もちろん喬一には強引に進めようなどという考えはなかった。傍に亮がいるということが嬉しくて、つい口づけてしまったのだ。亮の体調が悪いことを知っていて、それを強要するほど悪趣味ではないと思っている。
くすぐったいと言って亮が小さく笑った。喬一は唇をうなじにあてたまま、そういう言い方はなしだと拗ねた口調で言う。
「他人みたいだからそういう喋り方はやめろよ」
でもと言いかけて、亮は唇を塞がれた。啄ばむように喬一が何度も口づけてくる。吸っては離し、離れてはまた口づける。激しく舌を絡ませてくる恋人に、亮は積極的に応えた。いつもと違うその反応に喬一は驚きもしたが、それだけ彼の想いが深いのだと知らされているようで堪らなくなる。
そんな濃厚な口づけを交わしているのだから、欲望が高まらないはずがない。しかし、亮の身体を気遣う喬一は行為を途中でやめてしまう。これ以上は抑えられないと思ったからだ。
亮は途中で放り出される形になった。すでに亮の前はわかる程に張り詰めている。田畑との行為では一度も達していないし、勃起そのものをしないのだからこの反応は自然だった。
泣きそうな顔で同じく張り詰めている喬一の箇所を擦る。喬一はその手を握り締め首を振った。亮を傷つけてしまう行為には及べない。
頬を上気させ、亮はなりふり構わず喬一を求める。見られては困る痣がその身にあることも忘れていた。熱っぽい吐息を喬一の首筋に吐いた。
「喬一さん……。ぼくは平気だから抱いて欲しい」
そんな言葉を囁かれて、拒めるほど喬一は聖人君子などではない。もう一度キスをして、と囁いて亮は倒れ込み、喬一の唇を軽く食んだ。
喬一はズボンの後ろから手を滑り込ませて、下着の上からすぼみに触れた。軽くなぞっただけなのに、亮は大袈裟に声を上げて腰を跳ね上げさせた。
その顔は苦痛に歪んでいる。喬一は身体を起こし、亮のズボンを下着ごと下ろした後、双丘を広げさせた。興奮して上気した肌も露に僅かに震えながら、その痛みに耐えている少年がいる。
裂けて傷ついて、膨れあがったそれには見覚えがあった。加減がわからずに抱いていた初めの頃だ。それでも、ここまで酷い裂傷を負わせたことなどない。
ここ数日間の亮の極端な体調不良の理由がこれでわかった。それにしてもあの誓約書はどうしたんだと頭の中が混乱する。
喬一に向き直り、伸ばしてきた亮の手を掴んでぐいと引っ張る。膝元に倒れ込む亮のブラウスを肌蹴させると、剥き出しになった青白い肌には、乳首の辺りを中心にたくさんの内出血と痣、その上噛み傷までもがあった。
「なんだよ、これは!」
怒気のこもった声で叫ぶ。
「ごめんなさい。喬一さん、ごめんなさい」
少しも悪くないのに亮はひたすら謝った。
「あの……女将っ」
叫んで飛び出そうとする喬一の腰辺りに取り縋り、引き止める。
「雪也さんが誓約書を……反古にしてくれって持ってきたんです」
離せ離せとそれまで暴れていた青年の動きがぴたりと止まる。信じられないという表情で、喬一は縋る亮に目を向けた。そんなことをするはずがないと思いはしても、信じきる自信がない。今までの不可思議な兄の行動は、説明のつかないものばかりだったからだ。
確認してくると言って、部屋を飛び出した。
程なくして戻って来た彼は、酷いショックを受けていた。あるはずの誓約書がどこを探しても見当たらなかったからだ。
当たり前だ。それはすでに月季花の女将の元へと戻されているのだから。
亮の傍らに腰を下ろした喬一は、落ち着こうと何度か深呼吸をした。そうして落ち着きを取り戻すと、視線の端に映る濃い紫色をした痣に触れた。
「そのせいでこんな目に合っていたのか。立てないくらい酷い目に──?」
迷いながらも小さく頷いて答えた。
「ねえ、喬一さん。もう、ぼくを抱く気はしなくなった?」
「な……に言ってるんだ。そんな身体で」
「せっかく喬一さんといられるのに……。こんなのは嫌……。だって、ずっと我慢していたのに……喬一さんにぎゅってしてもらいたかったのに……」
喬一の顔にほろ苦そうな笑みが浮かぶ。瞼を固く瞑った亮の頬に優しく両手を宛がい、
「だって、そいつと同じことはしたくないからな。そんな身体のお前を抱いたら、きっと壊してしまうから」
頬にある喬一の手を握り締めて、それでもいいんだと少年は悲しげに笑う。
「今はぼくを見ていて欲しい。ぼくに酷いことをした人のことも、女将のことも、雪也さんのことも考えたら嫌だ。ぼくのことだけを考えて……」
それでも抱くことはしないと喬一は答えて抱き締めた。
恋人の腕の中で嗚咽を漏らす少年が、もっと強くと可愛い駄々を捏ねれば、喬一はそれに従うように腕に力を込めた。汗で張り付いた少年の髪の毛を形のいい耳に掛けてやり、
「自由になったら、好きなだけ抱いてやる」
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