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二人しか知らない秘密・前編(柊山視点)
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――ピンポーン
玄関のチャイムが鳴ったので、慌てて飛び起きた。執筆の息抜きにリビングでコーヒーを飲み、そのまま眠っていたようだ。メガネも外さずにソファで寝ていたので、眉間に跡がついている気がする。
十一月前半は祝日と振替休日があったので、遥君が金曜の夜から月曜まで僕の家に来てくれることになった。
前回から間を空けずに会えることに浮かれ、スケジュールを繰り上げたのに、執筆作業が予定通り進んでいなかった。遥君は僕を気遣って次の機会にと言ってくれたけれど、大丈夫だからと無理を言って来てもらった。
玄関の扉を開けると、オフィスカジュアルなジャケット姿の遥君が鞄とスーパーの袋を持って立っていた。
「こんばんは、敬久さん」
二十時を過ぎていたので、遥君は小声でそう言って玄関に入った。
「こんばんは……いや……お帰り、遥君」
「……た、ただいま」
遥君は照れたようにそう言い、靴を脱ぐと荷物を持ったまま僕をギュッと抱きしめてくれた。
「夜、まだ食べていないですよね? 今、作りますから」
「遥君、来たばかりなんだから、ゆっくりしてもらって大丈夫だよ。僕が作るから……」
先週会ったばかりなのに、久しぶりに遥君の温もりを感じたような気がしてしまう。
「お惣菜も買って来ましたし。オレも簡単なものだけ作りますから……それに」
遥君はそっと体を離し、僕の耳の後ろの方の髪をちょいちょいと撫でた。
「ここ、寝癖ついてますよ?」
遥君がふっと微笑んでくれた。見ていると胸が切なくなるような魅力的な表情だった。
――僕だけに見せてくれる、僕への好意に溢れた遥君の笑顔だ……ずっと見ていたいなあ
「仮眠していたんですよね? メガネかけていますし……オレがパッと作りますので、休憩していてくださいよ」
遥君は相変わらず、ニコニコと笑ってくれる。僕は彼の頬を無言で撫でた。
「敬久さん? 撫でてくれるのは……嬉しいんですが……まだ、廊下ですから……」
彼は赤い顔で、僕の手から逃れた。以前遥君に廊下で色々としたことあるので、その時のことを思い出しているのだろうか。
「ごめん。触りたくなってしまって……」
「食材、生物もあるので今はダメですから……その、後でだったら良いですよ」
遥君は消え入りそうな声でそう言うと、パタパタと廊下を進んで行ってしまった。
「はぁ……閉じ込めてずっと撫でたいなあ……」
寝起きのせいか、自分でもどうかと思うような薄暗い欲望が口をついて出てきてしまった。遥君には聞こえていないようでホッとした。
玄関のチャイムが鳴ったので、慌てて飛び起きた。執筆の息抜きにリビングでコーヒーを飲み、そのまま眠っていたようだ。メガネも外さずにソファで寝ていたので、眉間に跡がついている気がする。
十一月前半は祝日と振替休日があったので、遥君が金曜の夜から月曜まで僕の家に来てくれることになった。
前回から間を空けずに会えることに浮かれ、スケジュールを繰り上げたのに、執筆作業が予定通り進んでいなかった。遥君は僕を気遣って次の機会にと言ってくれたけれど、大丈夫だからと無理を言って来てもらった。
玄関の扉を開けると、オフィスカジュアルなジャケット姿の遥君が鞄とスーパーの袋を持って立っていた。
「こんばんは、敬久さん」
二十時を過ぎていたので、遥君は小声でそう言って玄関に入った。
「こんばんは……いや……お帰り、遥君」
「……た、ただいま」
遥君は照れたようにそう言い、靴を脱ぐと荷物を持ったまま僕をギュッと抱きしめてくれた。
「夜、まだ食べていないですよね? 今、作りますから」
「遥君、来たばかりなんだから、ゆっくりしてもらって大丈夫だよ。僕が作るから……」
先週会ったばかりなのに、久しぶりに遥君の温もりを感じたような気がしてしまう。
「お惣菜も買って来ましたし。オレも簡単なものだけ作りますから……それに」
遥君はそっと体を離し、僕の耳の後ろの方の髪をちょいちょいと撫でた。
「ここ、寝癖ついてますよ?」
遥君がふっと微笑んでくれた。見ていると胸が切なくなるような魅力的な表情だった。
――僕だけに見せてくれる、僕への好意に溢れた遥君の笑顔だ……ずっと見ていたいなあ
「仮眠していたんですよね? メガネかけていますし……オレがパッと作りますので、休憩していてくださいよ」
遥君は相変わらず、ニコニコと笑ってくれる。僕は彼の頬を無言で撫でた。
「敬久さん? 撫でてくれるのは……嬉しいんですが……まだ、廊下ですから……」
彼は赤い顔で、僕の手から逃れた。以前遥君に廊下で色々としたことあるので、その時のことを思い出しているのだろうか。
「ごめん。触りたくなってしまって……」
「食材、生物もあるので今はダメですから……その、後でだったら良いですよ」
遥君は消え入りそうな声でそう言うと、パタパタと廊下を進んで行ってしまった。
「はぁ……閉じ込めてずっと撫でたいなあ……」
寝起きのせいか、自分でもどうかと思うような薄暗い欲望が口をついて出てきてしまった。遥君には聞こえていないようでホッとした。
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