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二人しか知らない秘密・中編(此木視点)
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連休二日目は、車で一時間程の場所にある山中の湖へ紅葉を見に来ていた。
散策コースを敬久さんと歩きながら、普段の生活では感じることができない自然を満喫している。暗い色をした湖周辺の木々は燃える様に色づき、空気は冷たく澄み渡っていて、清々しい気持ちになる。
「山の方は空気が冷たいっていうか、寒いですね」
オレは極力ニヤけないように、努めて表情を作っていた。肌を刺すような寒さは表情を引き締めるのに丁度良い。
――昨日は泊まって、朝は敬久さんと朝食を作って、そこから二人で紅葉を見にドライブなんて……幸せだ……
「この上着で丁度良いくらいです」
オレは敬久さんの予備の上着を羽織っているのもあり、気を抜くとニヤけてしまいそうだった。自分の上着は着ていたのだけれど、山の方はだいぶ寒いかもしれないと言って、彼が予備の厚手の上着を貸してくれた。
「ふふっ、良かった」
敬久さんはカメラをオレに向けて微笑んだ。
「やっぱり町中よりも寒いよね。昨日の夜、雨も降っていたみたいだし」
「ええ、本当ですね……」
散策コースの地面は雨を含んでいるためか、しっとりしている。険しい山道というわけではないけれど、濡れた草を踏んで滑る可能性があるので気が抜けない。これまでの様々なことを思い出し、息を吐いた。折角のハイキングデートなのに、滑って転ぶわけにはいかない。
――オレは、敬久さんの前だと、足元をおろそかにしてしまうからな……
「遥君、こっち向いてよ」
そんなオレの思いをよそに、敬久さんは朗らに笑いかけてくる。彼は首からストラップでカメラを下げているので、先程からパシャパシャと撮られていた。
「オレも後で、あなたの写真を撮りたいです」
紅葉の中で佇む敬久さんはきっと絵になるだろう。オレの画像フォルダに、高画質の敬久さんは何枚あっても嬉しい。
「うん、後で交代しようね」
「ありがとうございます! 沢山撮りますね」
「ふふっ、もう少し歩いた所に、見晴らしが良い所があるから、二人でも撮ろうね」
「はい!」
他愛ない会話をしながら、紅葉の美しさや、空気の清らかさ、隣にいる敬久さんの穏やかな眼差しを心に刻みつけていた。
――幸せだ……しかも、今日もまた敬久さんの家に帰って、一緒に過ごせるなんて……
やはり顔がニヤけている気がする。湖を見つめるふりをしながら、呼吸を整えた。敬久さんはそんなオレを愛しそうに見つめている。オレはこの人の隣にいられることを、心から幸福に感じていた。
――いつも、オレのために時間を作ってくれて、ありがたいな……
敬久さんは三連休明けに〆切が控えていた。さすがに今回は休日を一緒に過ごすのを見送ろうと提案した所、無理をしてスケジュールを繰り上げてくれた。
――敬久さん、金曜はやつれていたからな……はぁ……メガネをかけている敬久さんも好きだな……でも、体は大事にして欲しい……どうしよう……好きだ……
彼への好意が溢れてしまいそうになったので、冷たい空気を肺いっぱいに吸い込んだ。
散策コースを敬久さんと歩きながら、普段の生活では感じることができない自然を満喫している。暗い色をした湖周辺の木々は燃える様に色づき、空気は冷たく澄み渡っていて、清々しい気持ちになる。
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「この上着で丁度良いくらいです」
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「ふふっ、良かった」
敬久さんはカメラをオレに向けて微笑んだ。
「やっぱり町中よりも寒いよね。昨日の夜、雨も降っていたみたいだし」
「ええ、本当ですね……」
散策コースの地面は雨を含んでいるためか、しっとりしている。険しい山道というわけではないけれど、濡れた草を踏んで滑る可能性があるので気が抜けない。これまでの様々なことを思い出し、息を吐いた。折角のハイキングデートなのに、滑って転ぶわけにはいかない。
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「オレも後で、あなたの写真を撮りたいです」
紅葉の中で佇む敬久さんはきっと絵になるだろう。オレの画像フォルダに、高画質の敬久さんは何枚あっても嬉しい。
「うん、後で交代しようね」
「ありがとうございます! 沢山撮りますね」
「ふふっ、もう少し歩いた所に、見晴らしが良い所があるから、二人でも撮ろうね」
「はい!」
他愛ない会話をしながら、紅葉の美しさや、空気の清らかさ、隣にいる敬久さんの穏やかな眼差しを心に刻みつけていた。
――幸せだ……しかも、今日もまた敬久さんの家に帰って、一緒に過ごせるなんて……
やはり顔がニヤけている気がする。湖を見つめるふりをしながら、呼吸を整えた。敬久さんはそんなオレを愛しそうに見つめている。オレはこの人の隣にいられることを、心から幸福に感じていた。
――いつも、オレのために時間を作ってくれて、ありがたいな……
敬久さんは三連休明けに〆切が控えていた。さすがに今回は休日を一緒に過ごすのを見送ろうと提案した所、無理をしてスケジュールを繰り上げてくれた。
――敬久さん、金曜はやつれていたからな……はぁ……メガネをかけている敬久さんも好きだな……でも、体は大事にして欲しい……どうしよう……好きだ……
彼への好意が溢れてしまいそうになったので、冷たい空気を肺いっぱいに吸い込んだ。
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