【完結/R18】恋人として君と過ごす日々

テルマ江

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また君と星を見上げて・後編(柊山視点)

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「ん……敬久さん、もっと……」
「うん……」

 軽いキスを繰り返して、唇が離れる度に見つめ合いキスをねだられ、お互いの体を強く抱きしめた。

 昼下りの旅館の窓から見える普段と違う景色や畳のい草の香り、それに浴衣姿の遥君が、今この瞬間は全て僕だけのものだと思うと甘い喜びが胸に湧いてくる。

「はぁ……こんな風にしていたら部屋から出たくなくなっちゃうよね」
「そ、そうですね」

 遥君は体を少し離して気恥ずかしそうに僕を見つめてから、またギュッと抱きしめた。

「何だか離れ難いです。でもせっかくの温泉旅行なのに……大きいお風呂にあなたと浸かって……楽しい思い出を沢山……沢山……」

 遥君は葛藤しているのか僕をギュウギュウと抱きしめて背中や髪を撫でてくれた。モゴモゴと呟いている言葉が聞き取れないくらい小さくなっていく。

――このまま遥君に一方的にもみくちゃにされたい気持ちもあるけれど……やっぱり旅行に来たら思い出を作るようなことをしたいよなあ。遥君も葛藤しているし僕がしっかりしないと……

 僕は遥君の頭を優しく撫でて唇を落とした。

「ちょっと興奮しちゃったね。いつもと違う場所だと気が昂ぶっちゃうよね」
「はい……オレ、このままあなたにめちゃくちゃに抱き潰されたいなんて思ってしまって」
「ッ……そうなんだ」

 遥君はいっぱいいっぱいになっているためかとんでもないことを口走ったのでなだめるように撫でた。

「深呼吸してお茶を飲んだら二人で温泉に入りに行こうよ」
「はい……あの、最後にもう一度キスしても良いですか」
「うん、もちろん良いよ」

 遥君は大きく深呼吸すると、優しく唇を合わせてきた。触れるだけのキスにしては長い時間唇が重なっている。遥君の熱をすぐ側に感じて頭がクラクラしてくる。僕のそんな気持ちをかき乱すように、顔が離れる時に唇を舌先でペロリと舐められた。

「誘惑するのはダメだよ」
「ゆ、誘惑じゃないです! 名残惜しかっただけですっ」

 遥君は少しだけムキになったように言い、僕の膝から降りると冷めているであろうお茶を飲み干した。

「お茶、温かいの淹れて来るよ」
「……ぅ、ありがとう、ございます」

 彼は急に恥ずかしくなったのかしどろもどろとした喋り方になっている。僕は自分の熱を冷ますために温くなったお茶をぐっと飲み、立ち上がって新しくお茶を淹れた。

「はい、遥君の分」
「頂きます……」

 彼は赤い顔で乱れた髪の毛を手で直し、熱いお茶を啜った。

「先程はすみません。オレの煩悩が口から出て来てしまって……恥ずかしいです」
「ああ、僕に、その、めちゃくちゃに抱き潰されたいっていう」

 彼は自分が口走ったことを思い出して身悶えている。

「謝ることなんてないよ。そういう気持ちを持つのは何も恥ずかしいことじゃないから。僕は君の気持ちを聞けて嬉しかったよ」
「敬久さん……」

 返答を間違えれば旅行中口を聞いてもらえなくなるかもしれないなと思い、僕は慎重に言葉を選んだ。

「ぅう、でも、オレは自分の煩悩に打ち勝たないと」

 遥君は熱いお茶を少しずつ啜りながら呻いた。先程の色っぽい姿と今の縮こまった姿のギャップに僕はふっと笑った。

「遥君はくるくる変わる表情が本当に魅力的だよね。君のそういう所すごく素敵だよ」

 笑いながら彼の頭をポンポンと撫でると、遥君は横目で僕をチラリと見た。

「もう……敬久さんは、そうやってすぐオレを口説いて……」

 遥君は熱いため息をついて、また肩を寄せてくれた。

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