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素直になって側にいたい
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「色々買ったな」
「うん、カインと食べたい物がいっぱいあるんだ」
「そうか……嬉しいな」
ニーナが抱えた大きな紙袋を見て、隣を歩くカインは照れくさそうに言った。
「重くないか? やはり俺が持とう」
「ううん、自分で選んだ物だし、自分で持ってたい。カインと手を繋げないのが……残念だけど」
「そうだな……」
昼食を済ませてから近くの市場まで買い物に行き、美味しそうだと思う物を色々と見繕って来た所だ。
「他に気になる物はあるか?」
「うーん……お昼のパイが美味しかったから、持ち帰りを頼みに行こうかな」
「気に入ってくれたのか」
「うん、すごく!」
カインが昼食にと案内してくれた店は、ギルド通りを少し歩いた場所にあるレストランだった。
小さな看板が出ていなければ見逃してしまいそうな素朴な外観で、国境沿いの町でカインと食事した店を思い出してニーナは懐かしい気持ちがした。
何でもパイが絶品とのことで、大きなパイを注文して二人で楽しいひとときを過ごしていたのだが――ニーナは何だか心ここにあらずで、料理を美味しいと思いつつも、そわそわと落ち着かない気持ちで食事をしてしまった。
「では最後にあの店に寄って帰ろう」
「うん!」
ニーナは今度こそは落ち着いて、カインおすすめの美味しいパイを味わいたいと考えていた。
(カインの家に行けると思うと……妙に意識してしまったからな)
流石に王都に着いてすぐ一緒に暮らそうと言われたのには面食らったが、カインの家には正直に言えばとても行きたかった。
(恋人の家でご飯を一緒に食べるなんて、色んなお話が出来るし、ずっとくっついていられるし……絶対に楽しい!)
考えただけでニーナは頬が緩んだ。
「ニーナ、パイを買ったら……家に来る前に宿を探しておくか? 下宿なら、いくつか心当りがある……」
こちらをチラリと見たカインは窺うような表情をしている。
「……もしくは、ニーナさえ良ければだが、その……今日は……俺の家に泊まって行くか?」
カインは小さな声で呟いた。通りの雑踏にかき消されそうな声色だったが、ニーナのよく聞こえる耳にはカインの言葉は届いていた。
「うん。泊まりたい。夜もずっと……カインと一緒にいたい」
「……分かった」
カインはどこかほっとしたように返事をした。
「うん、カインと食べたい物がいっぱいあるんだ」
「そうか……嬉しいな」
ニーナが抱えた大きな紙袋を見て、隣を歩くカインは照れくさそうに言った。
「重くないか? やはり俺が持とう」
「ううん、自分で選んだ物だし、自分で持ってたい。カインと手を繋げないのが……残念だけど」
「そうだな……」
昼食を済ませてから近くの市場まで買い物に行き、美味しそうだと思う物を色々と見繕って来た所だ。
「他に気になる物はあるか?」
「うーん……お昼のパイが美味しかったから、持ち帰りを頼みに行こうかな」
「気に入ってくれたのか」
「うん、すごく!」
カインが昼食にと案内してくれた店は、ギルド通りを少し歩いた場所にあるレストランだった。
小さな看板が出ていなければ見逃してしまいそうな素朴な外観で、国境沿いの町でカインと食事した店を思い出してニーナは懐かしい気持ちがした。
何でもパイが絶品とのことで、大きなパイを注文して二人で楽しいひとときを過ごしていたのだが――ニーナは何だか心ここにあらずで、料理を美味しいと思いつつも、そわそわと落ち着かない気持ちで食事をしてしまった。
「では最後にあの店に寄って帰ろう」
「うん!」
ニーナは今度こそは落ち着いて、カインおすすめの美味しいパイを味わいたいと考えていた。
(カインの家に行けると思うと……妙に意識してしまったからな)
流石に王都に着いてすぐ一緒に暮らそうと言われたのには面食らったが、カインの家には正直に言えばとても行きたかった。
(恋人の家でご飯を一緒に食べるなんて、色んなお話が出来るし、ずっとくっついていられるし……絶対に楽しい!)
考えただけでニーナは頬が緩んだ。
「ニーナ、パイを買ったら……家に来る前に宿を探しておくか? 下宿なら、いくつか心当りがある……」
こちらをチラリと見たカインは窺うような表情をしている。
「……もしくは、ニーナさえ良ければだが、その……今日は……俺の家に泊まって行くか?」
カインは小さな声で呟いた。通りの雑踏にかき消されそうな声色だったが、ニーナのよく聞こえる耳にはカインの言葉は届いていた。
「うん。泊まりたい。夜もずっと……カインと一緒にいたい」
「……分かった」
カインはどこかほっとしたように返事をした。
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