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素直になって側にいたい
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「んん……」
「痛かったか?」
「何だかジンジンするかな。ね、もっとしてよ」
「ああ……」
カインはベッドに上がるとニーナを抱き寄せ、座ったまま腕の中に閉じ込めるようにして毛並みの良い肉厚の耳を甘噛みし、耳の内側に舌を這わせた。
「……ニーナ」
「ん……カイン……」
カインの腰に腕を回し、シャツの裾から手を入れ傷だらけの肌を直接撫でた。ニーナは久しぶりに触れたカインの素肌に興奮を覚え、傷跡を指先でそっと辿った。
「はぁ……」
カインは耳から唇を離すと、ニーナのフサフサの尻尾をなぞるように撫でた。
「ん……」
「さっきは強く掴んですまなかった」
「尻尾、そんなに好きなの?」
「ニーナのは特別に可愛らしくて好きだ」
尻尾をカインの手に絡めると、カインは嬉しそうにふっと笑った。
「優しくギュッてするなら、さっきみたいにしても良いよ」
「良いのか……?」
「カインだけ特別」
「特別……」
そう言うとカインは尻尾を柔らかく掴み、毛並みを扱くようにツーッと撫でた。
「ぅんッ……ぁ……」
ゾクゾクと尻尾の辺りから快楽が這い登り、ニーナは堪えるように震えた。
「はぁ……はぁ……もっと……カインの好きにしてよ」
「……ニーナにそんな風に言われるのは堪らないな。我慢が出来なくなる」
「我慢なんか、しないで……」
カインに甘い言葉を囁かれ、耳や尻尾を撫でられると、胸の内側が熱に満たされていく。
「ね……もっと、触れ合いたい……」
「そうだな……もっと……」
ニーナは服の布越しにカインとくっついているのがもどかしくなり、体を擦り寄せて囁いた。カインは吐息を漏らして体を離すと、ニーナのシャツを丁寧に脱がせた。
「あ……ちょっと待って」
「どうしたんだ?」
下を脱がせようと伸ばして来た手から逃れ、ニーナはポケットから小瓶を取り出した。
「はい、これ」
所在なさげなカインの手に小瓶を握り込ませるように渡した。
「……香油か」
「うん」
カインと初めて体を重ねた日にも使った香油は、国境沿いの歓楽街ではおなじみの魔法薬だ。娼館を引退する際に同僚達から貰った餞別品の中に紛れていた物を、ニーナはポケットに忍ばせていた。
「今日は突然来ちゃったからさ。ほら、男同士だと、こういうのが無いとね」
用意周到なのが気恥ずかしくなり、ニーナは早口になっていた。
「用意してくれたのか」
「う、うん……」
「ありがとう、ニーナ……だが」
カインは受け取った小瓶をコトリとサイドボードの上に置き、引き出しを開けた。
ニーナが引き出しを覗き込むと、カインは気まずそうに目を伏せた。引き出しの中にはあの香油の瓶がズラリと並んでいる。
「わあ、いっぱいあるね」
ニーナはベッドから身を乗り出して引き出しの小瓶を突いた。
「国境沿いの町を離れる前に、買っておいたんだ」
「そうだったんだ」
「その……誤解をしないで欲しいんだが。今日は……ニーナとこういうことしたさに、泊まって欲しいと言ったわけではなく……」
カインは困った風な表情をしている。
「この香油も、王都では手に入らないかもしれないので……出来るだけ買っておいた方が良いと思ったんだ。だから……その……けして、ニーナを抱きたいというだけの理由で、この量を準備したわけではないんだ。どうか信じて欲しい……」
しどろもどろとした口調のカインは初心で可愛い大型犬にしか見えない。ニーナはクスクスと笑って、引き出しの小瓶を一つ取り出した。
「大丈夫だよ。カインがオレの体目当てだなんて思わないよ」
「体目当て……」
カインは身も蓋もない言葉に羞恥を感じたのか俯いてしまった。
(カインは本当に初心で可愛いな。こんな反応もオレだけが知っていると思うと……すっごく嬉しい)
ニーナは上半身裸のままカインの膝に乗った。
「カイン君は本っ当に真面目だよなあ~」
「……真面目という程では、ない」
短い髪をワシャワシャと撫で回すと、カインは息をついて目を細め、ニーナの腰に腕を回した。
「恋人になったんだし、オレはカインとならエッチなこといくらでもしたいな」
「……いくらでも」
カインの喉がゴクリと鳴った。
「それに、香油はオレのために用意してくれたんだろ? これがあると便利だし、気持ち良いし、お互いにとって良い所しかないよね」
「ああ……」
「それとも、生でしたかったから?」
からかうように言うと、カインは珍しく焦った様子になり小瓶の入った引き出しから紙袋を取り出した。
「……避妊具も、買ってある」
「ふふっ……やっぱり真面目だ!」
「ニーナの体に負担かかかるだろ」
カインははぁっとため息を漏らし、膝上のニーナの胸に顔を埋めた。
「んー、でもオレは、今日はカインの好きにして欲しいから……こっちはなくても良いかな」
よしよしと頭を撫でながら紙袋を取り上げると、サイドボードに置いた。
「ニーナ……」
「……今日はカイン君のでオレの中を満たして欲しいんだ。ニーナお兄さんのお願い聞いてくれる?」
顔を上げたカインの唇にチュッとキスをした。
「痛かったか?」
「何だかジンジンするかな。ね、もっとしてよ」
「ああ……」
カインはベッドに上がるとニーナを抱き寄せ、座ったまま腕の中に閉じ込めるようにして毛並みの良い肉厚の耳を甘噛みし、耳の内側に舌を這わせた。
「……ニーナ」
「ん……カイン……」
カインの腰に腕を回し、シャツの裾から手を入れ傷だらけの肌を直接撫でた。ニーナは久しぶりに触れたカインの素肌に興奮を覚え、傷跡を指先でそっと辿った。
「はぁ……」
カインは耳から唇を離すと、ニーナのフサフサの尻尾をなぞるように撫でた。
「ん……」
「さっきは強く掴んですまなかった」
「尻尾、そんなに好きなの?」
「ニーナのは特別に可愛らしくて好きだ」
尻尾をカインの手に絡めると、カインは嬉しそうにふっと笑った。
「優しくギュッてするなら、さっきみたいにしても良いよ」
「良いのか……?」
「カインだけ特別」
「特別……」
そう言うとカインは尻尾を柔らかく掴み、毛並みを扱くようにツーッと撫でた。
「ぅんッ……ぁ……」
ゾクゾクと尻尾の辺りから快楽が這い登り、ニーナは堪えるように震えた。
「はぁ……はぁ……もっと……カインの好きにしてよ」
「……ニーナにそんな風に言われるのは堪らないな。我慢が出来なくなる」
「我慢なんか、しないで……」
カインに甘い言葉を囁かれ、耳や尻尾を撫でられると、胸の内側が熱に満たされていく。
「ね……もっと、触れ合いたい……」
「そうだな……もっと……」
ニーナは服の布越しにカインとくっついているのがもどかしくなり、体を擦り寄せて囁いた。カインは吐息を漏らして体を離すと、ニーナのシャツを丁寧に脱がせた。
「あ……ちょっと待って」
「どうしたんだ?」
下を脱がせようと伸ばして来た手から逃れ、ニーナはポケットから小瓶を取り出した。
「はい、これ」
所在なさげなカインの手に小瓶を握り込ませるように渡した。
「……香油か」
「うん」
カインと初めて体を重ねた日にも使った香油は、国境沿いの歓楽街ではおなじみの魔法薬だ。娼館を引退する際に同僚達から貰った餞別品の中に紛れていた物を、ニーナはポケットに忍ばせていた。
「今日は突然来ちゃったからさ。ほら、男同士だと、こういうのが無いとね」
用意周到なのが気恥ずかしくなり、ニーナは早口になっていた。
「用意してくれたのか」
「う、うん……」
「ありがとう、ニーナ……だが」
カインは受け取った小瓶をコトリとサイドボードの上に置き、引き出しを開けた。
ニーナが引き出しを覗き込むと、カインは気まずそうに目を伏せた。引き出しの中にはあの香油の瓶がズラリと並んでいる。
「わあ、いっぱいあるね」
ニーナはベッドから身を乗り出して引き出しの小瓶を突いた。
「国境沿いの町を離れる前に、買っておいたんだ」
「そうだったんだ」
「その……誤解をしないで欲しいんだが。今日は……ニーナとこういうことしたさに、泊まって欲しいと言ったわけではなく……」
カインは困った風な表情をしている。
「この香油も、王都では手に入らないかもしれないので……出来るだけ買っておいた方が良いと思ったんだ。だから……その……けして、ニーナを抱きたいというだけの理由で、この量を準備したわけではないんだ。どうか信じて欲しい……」
しどろもどろとした口調のカインは初心で可愛い大型犬にしか見えない。ニーナはクスクスと笑って、引き出しの小瓶を一つ取り出した。
「大丈夫だよ。カインがオレの体目当てだなんて思わないよ」
「体目当て……」
カインは身も蓋もない言葉に羞恥を感じたのか俯いてしまった。
(カインは本当に初心で可愛いな。こんな反応もオレだけが知っていると思うと……すっごく嬉しい)
ニーナは上半身裸のままカインの膝に乗った。
「カイン君は本っ当に真面目だよなあ~」
「……真面目という程では、ない」
短い髪をワシャワシャと撫で回すと、カインは息をついて目を細め、ニーナの腰に腕を回した。
「恋人になったんだし、オレはカインとならエッチなこといくらでもしたいな」
「……いくらでも」
カインの喉がゴクリと鳴った。
「それに、香油はオレのために用意してくれたんだろ? これがあると便利だし、気持ち良いし、お互いにとって良い所しかないよね」
「ああ……」
「それとも、生でしたかったから?」
からかうように言うと、カインは珍しく焦った様子になり小瓶の入った引き出しから紙袋を取り出した。
「……避妊具も、買ってある」
「ふふっ……やっぱり真面目だ!」
「ニーナの体に負担かかかるだろ」
カインははぁっとため息を漏らし、膝上のニーナの胸に顔を埋めた。
「んー、でもオレは、今日はカインの好きにして欲しいから……こっちはなくても良いかな」
よしよしと頭を撫でながら紙袋を取り上げると、サイドボードに置いた。
「ニーナ……」
「……今日はカイン君のでオレの中を満たして欲しいんだ。ニーナお兄さんのお願い聞いてくれる?」
顔を上げたカインの唇にチュッとキスをした。
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